兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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ルビは脳内補正よろしくお願いします


11話

「やはり────ー」

「ああだから────ー」

「──ーするのか?」

「もちろん、あとは──────ー」

「……」

「私たちは────ー」

 オラリオでの我が家に着くと家の中から聞き慣れた義母(アルフィア)おじさん(ザルド)の声と何処となく自分と似た声が聞こえて来た

「誰か来てるのッ!?!?」

 家の前に着くと見知らぬ気配と共に悪意の視線ががベルを襲う

 即座にその背にアルテミスとヘスティアを庇い腰に差していた剣を抜く

「……」

 アルテミスもベルの背から弓を取り矢をつがえる

「え? え?」

 ヘスティアだけは状況を理解できずキョロキョロとあたりを見回す

 辺りは一触即発の気配に包まれベルの頬を汗が伝いそれが滴り落ちると同時に

「フッ!!」

 ベルが動き出そうとする

「ベル」

 —それと同時に家の戸が開き義母(アルフィア)の声が届く

「お義母さん! 大丈夫!? 怪我とかしてない?」

 瞬間ベルの姿はアルフィアの側まで全力で向かいその綺麗な肌に傷などがついていないか確認をする

「阿呆め、誰に向かって言っている」

 その焦りきった顔に手刀を落としベルを悶絶させながら

「帰ってきたのならまず何というか忘れたか?」

 暴君(アルフィア)はその頭を見下ろす

「うう、ただいまお義母さん」

 痛みに耐えながら義母の顔を見て挨拶するベル

「おかえり、ベル」

 先程までと異なり優しい声音でベルの頭を撫でる

「帰ったかベル」

「おじさん! ただいま」

「うむ、神アルテミスと神ヘスティアも戻りましたか」

 いつのまにかザルドまで出迎えに来てくれていた

「ああ、ただいま」

「今日も厄介になるよ」

 アルテミスとヘスティアも挨拶をし2人に近寄っていく

 そして中にいる恐ろしいほど容姿の整った男の姿を見つけ

「あれ? エレボスかい? 君も下界に来てたのか?」

 ヘスティアがキョトンとした声でその男神の名を呼ぶ

「ああ、ヘスティア何万年ぶりだ? 相変わらず小さい癖に胸だけは立派だな。それと確かアルテミスとは初めましてだったか」

 男神は不穏な笑みを浮かべ

「改めて俺の名はエレボスしがない神の1柱さ」

「私はアルテミス。ベルの主神だ」

 自己紹介を簡潔に行う2(たり)

「ベル……?」

 エレボスはその名を聞き真っ白な髪の少年に眼を向ける

「あ、初めましてエレボス様。ベル・クラネルと言います。よろしくお願いします」

 突然話にでて驚きながらも丁寧に挨拶をするベル

「君が……そうか」

 ベルの顔と眼を見て頷くエレボスに

「あの……僕何かしましたか?」

 ベルが不安そうに尋ねる

「ああ、何でもない実は俺はアルフィアとザルドとは古い知り合いでねオラリオに来たって言う話を小耳に挟んだから会いに来たんだ」

「それでアルフィアが目に入れても痛くないほど可愛がっている息子の話を聞いてね」

 アルフィアを揶揄うエレボス

「黙れ殺すぞ」

 微妙に頬を染め照れ隠しにその手を振り上げる

「ちょっ!? お義母さん! 神様にそんなことしちゃダメだよ!?!?」

 その手に飛びつき義母を宥めるベル

「はははは、ありがとうベル君。いやマジで死ぬかと思ったわ」

 冷や汗を流しながら真面目にベルに感謝するエレボス

「さて、俺はこれで失礼するよ」

 流れに任せエレボスは立ち上がり玄関へと歩いていく

「あ、はい気をつけて……」

 ベルの言葉を受け手をヒラヒラさせながら音もなく帰っていくエレボス

「「「「……」」」」

 2人と2柱は思案にふけながらその背が去っていった方向を見つめる

「……まぁ気にしてもしょうがないか。それじゃベル、ステイタスの更新をしようか」

 かぶりを振りアルテミスがベルへ向き直り告げる

「あ、はい!」

 よくわからない展開に頭が追いつかなくなっていたがステイタス更新という楽しみにベルの意識が向く

「じゃあっちのベッドで服を脱いでうつ伏せで寝転がって」

 アルテミスが指示を出すとヘスティアの顔をチラチラ見て恥ずかしそうにもじもじしながら服を脱ぐ

(か、可愛い……なんて初情なんだ)

 とヘスティアがベルへ邪な視線を向ける

「……」ギロ

「」

 そんな視線を義母(アルフィア)が許すはずもなく睨みを効かしヘスティアを眼を閉じさせる

「……」ナニモミテマセン

 ザルドは空気に徹し目を閉じ更新を待つ

「さて始めようか」

 ベルの横に座りアルテミスは自らの手を針で刺し神の(イコル)をベルの背へ垂らす

 するとその背に刻まれた月と弓のエンブレムが浮かび上がりベルの経験値(エクセリア)を拾い上げその数値を変えていく

「「「「……」」」」

 数値の変動が終わりベル以外の全員が絶句する

 力:I89→H130 耐久:I72→I90 器用:I:84→H143 敏捷:H101→H182 魔力:I0

 魔法:【  】

 スキル:【英雄宣誓(テロスオース)

 ・早熟する

 ・誓いが続く限り効果は持続

 アルテミスは結果を共通語(コイネー)に直しベルへ紙を渡す

「頑張ったなベル、今回も凄く伸びたぞ」

「わぁ! 結構伸びましたね! でもやっぱりスキルは出てないかぁ……」

 ベルはステイタスの上がり方に喜び、空白になっているスキルの欄をみて少し悲しむ

(なんだこれは!?『早熟する』だって? そんな曖昧なスキル聞いたことないぞ)

(それにこのステイタスの上がり幅……いくら新米で伸びやすい時期だからって限度があるだろう)

「神ヘスティア」

 驚愕を隠せないヘスティアへアルフィアが声をかけ目で着いてこいと促すとそれに黙って従う

 部屋を移しヘスティアはアルフィアへ疑問をぶつける

「ベル君のあのスキルは何なんだい? 聞いたこともないレアスキルだよね? アルテミスのことだからチートなんて使ってないだろうけど」

 余りにも異質なスキルに対する疑問を率直にぶつける

「……ベルのスキルは我々も未知だし意味もわからん。ただわかっているのは『早熟する』と書かれている通り馬鹿げた速度でベルは成長していく」

「ベルはステイタスを刻まれまだ一週間も経っていない。なのにほぼ全ての数値が100を超えている」

 わかっている事実をありのままに伝える

「……ベル君にはスキルのこと伝えてないんだね」

 唖然としながらヘスティアは事実の確認をしていく

「ああ、スキルを知ってしまったらどのような影響を受けるかわからなかったからな」

 聞きたいことを聴き終えウンウン唸りながら頭を整理していくヘスティア

「…………わかった。僕もこの件は胸の内に留めておくよ。ところで何で僕にそんな重大な秘密を教えてくれたんだい」

 最後に1番の疑問を伝える

「神アルテミスの意志だ」

「私は反対だったんだがな」と呟きながら言う

「アルテミスが……?」

 神友(しんゆう)が何故自分に秘密を明かしてくれたのか思考を巡らせる

(下界に降りて来て日が浅いとはいえ()ですら未知のレアスキル……そんな存在を知ったら他の神たちはどんな手を使ってでもベル君にちょっかいをかけようとするだろう。なら神友とはいえ僕に話すメリットは無いはず……)

 そんなことを考えているうちに1つの答えに至る

(もしかして……何かあった時にベル君の味方を1人でも増やすため?)

 ベルのスキルが誰かにバレてしまうリスクというのはどうしても無くせないものだ

 万が一バレてしまった時に神たちから無遠慮に浴びせられる好奇の視線から彼を守る盾を増やそうとしているのだと悟る

「全く、アルテミスはよっぽどベル君のことが大好きなんだね」

 呆れたように呟くヘスティアにアルフィアは沈黙で答える

「お義母さ〜ん、ヘスティア様〜ご飯ですよ〜」

 自分のことでこれほど周りが頭を悩ませているなんてつゆ知らずベルの暢気ないつも通りの声が2人に届く

「……ふふ。はーい、今行くよ!」

 その声に置かしそうに笑いながら2人はベルの待つテーブルへと向かうのだった

 

 

「……ザルド達の件、よろしかったのですか?」

 エレボスが路地裏を歩いていると影から声が届く

「ああ、上々だよ2人が手出しをしないでくれるだけでも作戦の成功率は上がる」

 その声に先程までとは異なり氷のように冷たい声音で答える

「お前たちは引き続き準備を進めろ。計画はもう間も無く始まる」

「承知しました」

 影はそこにまるで何もなかったかのように溶けて消えていく

 その気配を感じ空に浮かぶ月を見る

「おめでとう。アルフィア、ザルド」

 —同志となり得た友への祝いを謳う

「『黒き終末』は越えられなくとも『陸の王者』と『海の覇者』を打ち倒した紛れもない英雄であるお前たちには幸せになる権利がある」

「なに、『絶対悪』なんて役割俺1人でどうでもなる」

「だから自分達の選択を後悔するな。誰が認めなかろうともこの俺が認めるさ」

 彼等の成した偉業を称えそれに対するささやかな褒美であると神は言う

救界(マキア)へ導く最後の英雄はこの絶対悪(エレボス)が見定めてやる」

 そして彼等の心の隅に残る憂いを己のなす業で果たすと誓う

 

 

 誰にも聞こえないその決意と祝辞は彼の姿と共に闇へ消えていく

 これより1週間後、オラリオを史上最悪の神災が襲う

 







これからベル君を襲うものは決まってるけどリュー達をどう登場させるか悩み中


2023/04/26編集
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