兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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ルビは脳内補正よろしくお願いします


13話

 コツコツ……と足音が響く

 そこはメインストリートから大きく離れた路地裏

 後ろ暗い脛に傷のある者たちが集まる地である

 そんな場所をローブを目深に被り顔を隠した若い女性が1人で歩く

 そこに住まう者たちは奇異の視線を向けるも女性は気にも止めずただ目的の地まで進む

「おいおいお姉ちゃん、ここを通ろうってのに俺たちに一言もないたぁ如何な了見だい?」

 そんな女性を見逃す事なくハイエナのように近づく住人の一部

 女性に絡みに行った者たちを見て

「あーああの姉ちゃん終わったな」

「相変わらずナナワツィンファミリアの連中は……」

 女性を憐れむ視線を送る

「……」

 そんな視線も声も一切を無視し女性は目的の地まで歩く

「おいてめぇ無視してんじゃ──」

 直後ドゴンという音とそれに少し遅れてガララという音が響く

 コテコテのチンピラ台詞を遺言に男は壁に突き刺さっていた

「「「「「……は?」」」」」

 何が起きたのか全く理解できず唖然とするならず者達

 それを背にし女性はコツコツという足音を残して歩き去る

 

 そうして幾ばくか歩いたのち女性は普通の民家にしか見えない家の扉を無造作に開ける

 そこは脛に傷があるもの達が集う店

 表では出回らない情報やその者たちの資産を預かりを生業とする

 強面の店主は引退したとはいえ第一級冒険者(レベル5)というまさしく化け物であるためその腕っ節への信頼のためいつ何時起こるかもわからない抗争や被討伐戦に備え道具この店に預けている

「なんだこんな時間から……げ!? お前は元最強(ヘラファミリア)のアルフィア!?」

 そんな強面の店主に思わず「げ!?」などという言葉を出させてしまうほどの畏怖の対象たる元最強(ヘラファミリア)の元幹部にして才禍の怪物

「うるさい」

 一言

「すんません!!」

 反射的に頭を下げ平伏してしまう店主

 それもそのはずヘラファミリアといえばその主神を始めとして傍若無人・暴虐非道・最強最悪の三拍子揃った女性が数多くいた恐怖の象徴

 いくら時間がたったとはいえ心身の芯まで刻み込まれた恐怖は拭いきれはしない

「預けてあった私の得物と狒々爺のとこ(ゼウスファミリア)の「暴食」の得物、それと預けていた金をを出せ」

 アルフィアは端的に要件を告げる

「す、すぐに」

 吃りながらも敬礼をし、店の裏へとドタバタ走っていく

 どんな理由があってあの「静寂」と「暴食」の2人の武器が必要になっているのか、そもそもなぜともに行動をしているのか想像もつかないが店主は一切の疑問を飲み込みただただ忠実にオーダーを叶えることだけ考える

「お待たせいたしました」

 数分後店主はカウンターにオーダーの品を並べる

 自分たちの得物を確認するアルフィア

 ゴクリと店主の唾を飲み込む音のみが響くなか

 実際には数分程度であるが店主にとっては無限のように感じられた時間が終わり

「金はここに置いておくぞ」

 アルフィアはお金の詰まった袋を置き荷物を持つとさっさと帰って行く

「あ、ありがとうございました!」

 その背を見送りその姿、気配が消えると

「た、たすかった……」ハァ

 店主はその場へたり込む

 寿命が縮みかけたが無事に暴君の襲来を乗り切り安堵のため息を再度漏らす

「しかし……一体何事だ? 今更旧時代の残党が武器を用意するなんて」

 余裕ができ改めて何故彼女が戻ってきたのか考えを巡らせる

「嫌な予感しかしねぇ……おい野郎ども今日は店じまいだ! 情報屋どもからダンジョンでおかしなことが起きてないか情報を買ってこい!!」

「「「へ、へい!!」」」

「俺も久々に得物の準備をしておくか」

 危険を告げる第6感は彼が冒険者のころから信頼してきた感覚である

 ゆえにその感覚に従い、かすかな嵐のにおいを感じ取った

 

 

「はあ!」

 裂ぱくの気合いとともに大剣が振り下ろされる

 迎え撃つのはその辺に転がっていた木の棒

 結果は歴然である

「遅い」

 はずだった

 木の棒は緩やかにかつしなやかに大剣の一撃をいなし

「がら空きだ」

 そのまま流れるように相手の体を滅多打ちにしていく

「へぶっ!?」

 情けない声を上げその場に倒れこむ白髪の少年

「ベル、新しい武器を手に入れてうれしい気持ちは理解してやるが、そんな蚊のとまるような一撃だとアルフィアに殴られるぞ」

 大男(ザルド)が粉々になってしまった棒を投げ捨てながら教育を行う

「は、はい!!」

 滅多打ちにされ痛む体に鞭を打ちベルはザルドに向かっていく

 風のような速度で向かってくるベルに対して、余裕の表情で足元に転がる木の枝を拾い振り下ろされる連撃を簡単にいなしながら

「相手の動き、そして目をよく見ろ、次に何をする気なのか予測し続けろ」

 アドバイスを送る

「っはい!」

 そのアドバイスを素直に聞き入れザルドの動きや目線を観察し隙を伺いながら牽制のために大剣を振り続ける

 そして

「ん?」

 ザルドの視線がよそに向いた瞬間に

「はあぁぁ!!」

 渾身の一撃を叩き込む

「悪くはないが」

 ザルドは見切り紙一重の最小限の動きで避け

「勝負を決めるための一撃は最も油断につながると前にも教えたぞ」

「ぐぇ!?!?」

 ボロボロに崩れた木の枝を握り潰し、ベルの腹に強烈な一撃をぶち込む

「そこまで」

 その勝負を見届けたアルテミスが終了の合図をだすと同時にベルが倒れこむ

「あ、ありがとうございました」

 虫の息になりつつもベルは訓練を付けてくれた伯父に感謝を告げる

「昔より良くなってきているがまだまだだな」

「いいかこういう時は……」と具体的なシチュエーションを想起させながら対応した動きを見せる

 ベルは正座しながらその動きを見よう見まねでやってみると

「違う、いいか……」とザルドがベルを立ち上がらせそのまま改善点に手を加え正しい動きを覚えさせていく

「相変わらずザルドは教えるのが上手だな」

 その様子を見てアルテミスが微笑みをたたえながら言う

「まあ俺も大きなファミリアにいたしな、ガキに教えることもそれなりにあった」

 なんてことのないようにザルドはうそぶくと

「さて、そろそろアルフィアも帰ってくる。休憩にするぞ」

 訓練を切り上げる

「はい、ありがとうございました!」

 アルテミスはぜぇはぁと息も絶え絶えになりながらも礼を忘れないベルの頭にタオルをかぶせ

「うんうん、えらいえらい」

 となでながらその汗を拭いていく

「ちょっ汚れちゃいますから大丈夫ですよ神様! 自分でできますから!!」

 ほほを赤く染め口では抵抗するベルはアルテミスの優しさに手を払えずにいた

「ふふ、頑張ったご褒美だと思えベル」

 可愛らしいベルの反応にほほを緩めながら頭だけでなく顔も拭いていく

 

「随分と楽しそうだなベル」

 そんな日常の一コマを切り裂く凍えるような冷たさを宿した声がベルの耳に届く

「いっ!!?? お義母さん!?」

 ビクンと体を震わせこの方向へと振り向こうとするも

「こらベルまだ拭き終わってない。動くな」

 とその顔の動きを優しく封じ込めるアルテミス

 その動きに逆らえず成すがままにされるベルはどうにか抜け出せないか必死に頭を巡らせつつ

 味方になってくれそうな人を探す

「ってあれ!? おじさん!?」

 いつの間にか姿を消していた伯父(ザルド)

(に、逃げられた……)

 これから起きる惨劇を予期して第1級冒険者はその場から逃走を図っていた

「さてベル」

 希望(ザルドの助け)を失ったベルは今度こそ暴君(アルフィア)のほうへ振り向き

「え、えっとお帰りなさいお義母さん」

 とぎこちない笑顔を浮かべるのであった

 

 

 

 

 




この後ベル君はどうなってしまったんでしょうね(すっとぼけ)



長らくお待たせしました。
また少しずつ進めていければと思っています。
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