兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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2話

 時は過ぎベルが12歳になろうかと言う頃

「わぁ……!?」

 ベルたちはプチ遠征と称しとある森を訪れていた

「お義母さん、ここ綺麗なとこだね」

 肺いっぱいに新鮮な空気を行き渡らせると、相変わらず無邪気な笑顔を浮かべながらアルフィア達の方を見るベル。 

「ああ、ここは静かで良いな空気も澄んでいて過ごしやすい」

 アルフィアとザルド、祖父も同じように清涼感のある彼の地を思い思いに楽しんでいた

「さて俺はまず拠点を作成する、ベル少し付き合え」

 束の間の休息をとるとザルドは荷物をおろし中身を広げてベルを呼ぶ

「うん! 何からやればいい?」

 文句一つ漏らさずザルドの言う事を聞くベルは、2人で拠点を作成する

 —と言っても本格的な物ではなく1日2日過ごすのに不便がない程度に椅子変わりの石などを用意するだけだが

「いいかベル、拠点を作る時はいかに素早く効率よくできるかどうかが1番の要点になる」

「はい!」

「まずは……」

 かつてファミリアでの幾度も行った深層への遠征経験をベルへ伝えていく

「……」

 そんな2人を横目に1人1番良い場所を陣取り優雅に読書をするアルフィアと彼女にちょっかいをかけ地面にめり込んでいる祖父

 その姿をなるべく視界に移さないようにしながら2人は拠点を作っていく

 程なくして完成した拠点を前に

「……よしこんな物だろう、やり方は覚えたか?」

 ザルドがベルに問う

「大体は……」

 正直に答えるベルに笑みを浮かべ

「全部は覚えられなくても良い、大事な基本さえ押さえておけばなんとかなる」

 その頭を優しく撫でると同じくベルは笑みを浮かべてなすがままを受け入れる

「……」

 毎度のことながら実の親子以上に親子らしい2人の姿に若干イラつきを覚えなくもないものの

「お義母さん! 準備できたよ!」

 これまた満面の笑みを浮かべ自分を呼ぶベルに癒されるアルフィアと「ベル〜助けてくれ〜」と情けない声を上げる祖父

「もうおじいちゃんいい加減懲りたら? そのうち死んじゃうよ?」

「ベルその糞爺は放っておけ」

「でも可哀想だから……」

 そう言いながら慣れた手つきで祖父を掘り起こすベル

「何を言う、そこに綺麗な女子の尻があるのならば触らねばそれこそ無礼というものだ」

 ベルは顔をキリッとさせながらそんな事をのたまうセクハラ爺に呆れた笑みを浮かべる

「さて、そこの爺は後でまたしばいておくとして……ベル訓練の時間だ」

 不穏な事を言いながら開けた場所に向かうアルフィア

「はい!」

 その背に迷う事なく続いていくベル

「そら、かかってこい」

 いつも通りに無手で構えすら取らずただ立っているだけのアルフィアに対しザルドと祖父が作ってくれた木製の短剣を構え腰を低く構える

「ッ!!」

 数年間毎日訓練を続けてきたベルの動きは鋭く速い

 一切の迷いなく心臓目がけ突き立てられる短剣

 

 ベルの渾身の一撃を2本の指で受け止めそのまま優しく奪い取ると

「狙いは悪くないが遅い、そして素直過ぎだ」

 目にも止まらぬ速さで人体の急所を突く、切るを繰り返す

「わ、わ、!?」

 切られた後でないと切られた事に気づくことができないほどの圧倒的な速度にまともに悲鳴をあげることもできないベルは最後の一撃をくらい尻餅をつく

「休むな」

 短剣を投げ渡され間合いを詰めてくるアルフィアに

「ッ!」

 即座に立ち上がり戦闘体制に入りつつ距離を取る

「相手から一瞬たりとも眼を離すなと言っているだろう? 追いきれないのなら気配を探れ」

 構えを取ったベルの目の前には手刀が迫っていた

 

 

「はあはあ……」

 仰向けに倒れ指一本動かす事ができないほど疲労したベルは荒い呼吸を繰り返す

 あれから3時間ぶっ通しでボコボコにされ続けたベルに無事な箇所など1つもなくボロ雑巾のような有様であった

「いいかベル、実力が余りにかけ離れている相手に対し素人に毛が生えた程度のフェイントなぞ通用しないとは言ったが馬鹿正直に突っ込んで行けと言ってるわけじゃない。あのような場合は……」

 そんなベルとは対照的に息一つ乱さずベルに膝枕をしながら反省点を教えていくアルフィア

「は、はいぃ」

 息も絶え絶えになりながらも話を聴き次に繋げることができるよう一言一句逃さぬように頭と身体に今日の経験を刻み込む

「あと、やはりお前には短剣の方が向いている。大剣の扱いも多少マシにはなってきたが圧倒的に背が足りん」

「うぐっ」

 年頃の男の子に悲しい現実を叩きつける様は正に母である

 ベルの身長は特別低い訳ではないが決して高くないそれゆえにどうしても大剣に振り回されているような動きになってしまうのだ

「で、でもカッコいいから……」

 尚も大剣への未練を捨てきれないベルの頭を小突き

「見た目など捨て置け、実用性が1番だそれにお前は小さいままの方が良い」

 現実主義のありがたい言葉と願望を告げる

「うぅぅ」

 自分の膝の上で恨めしそうにこちらを見るベルの顔に形容しがたい感情を抱くもおくびにも出さずアルフィアはその頭を撫で「悔しければ大きくなって見せろ」

 と微笑みながら言う

「見ててね、すぐにザルドおじさんみたいに大きくなってみせる!」

 拳を握り母に宣誓する

「さていつになる事やら……」

「大丈夫僕は成長期だからすぐだよ! だから約束だよ? ちゃんと一緒にいて僕が大きくなって英雄になるのを見てて」

 小指を差し出すベルに

「……ああその時までちゃんと見ててやる」

 一瞬間を置きながらも小指を絡める

 そんな2人の約束を少し離れたところからザルドと祖父もその様子を見守るのだった

 だがしかし家族の間に別れは近づいている

 アルフィアは血の混じった咳を隠せなくなってきているし、ザルドの身体も毒に耐えきれなくなって歩くだけで全身に激痛が走るようになっている

 そんな2人の様子に気づいているからベルは感情に素直に笑顔を浮かべる。2人が少しでも笑顔になってくれるように「誰かを笑顔にしたいならまずは自分が笑顔にならなくちゃ」と

 

 

 

「・・・・・けて」

「・・・・めて」

 

 

 

 




不穏な事書いてますがネタバレするとご都合主義のハッピーな展開にします
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