兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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※この二次創作はご都合主義です
※2 ルビがおかしくなってますが諦めました脳内で変換しといてください


3話

「? お義母さん今何か聞こえた」

 途切れ途切れの声が聞こえた気がしてベルはアルフィアに確認する

「いや何も聞こえなかったが」

 怪訝そうな顔をする母に

「うーん気のせいだったのかな」

 

「……けて」

 

「!やっぱり聞こえる!」

 ベルの耳には今度は前よりもハッキリと聞こえ

「誰? なんて言ってるの?」神の力(アルカナム)

 その声に対し語りかける

 

「たすけて」

 

「!!」

 か細い声であったがハッキリとした意思で告げられた言葉にベルにスイッチが入る

「どこにいけば君を助けられる?」

 真剣な声で謎の声に問いかける

 すると淡い光が浮かび上がりふわふわと漂い森の奥へと導く

「ついていけばいいんだね?お義母さん行ってくるね」

「あ、おい待て」

 アルフィアの静止の声すら無視し光を追いかけるベル

 

 

「……なんだこれは?またいつもの神々のお遊びか?」

 久々の意味のわからない展開に取り残されたアルフィアは独りごちた

「確かに神の意志を感じるが、これは間違いなく遊びではない」

 物陰から祖父の声が聞こえる

「ゼウス……どう言う事だ?」

 その神名を出し問いかける

「あれは精霊だ、しかもある神の直属とも言える精霊の欠けらだろう」

「……欠けら?」

「どう言う事だゼウス、神の直属の精霊であるのならば大精霊であって然るべきだろう?」

 近くにいたザルドがその言葉に疑問を呈す

「そうだな、神に直接従ってくれる精霊は力を持つものが多い」

 ゼウスはその疑問を肯定する。それが意味することはただ一つ

「まさか……大精霊ほどの力の持ち主が欠けらになってしまうだけのダメージを受けたと?」

「馬鹿な、あり得ない」と呟きながらもそうとしか言えない状況に

「十中八九そうであろうな」

 神たるゼウスが事実であろうと認める

「ッ! ベル!」

「ッ!!」

 2人は焦りを隠せず音すら置き去りにする速度でベルを追いかける。その背を追いながら

「アルテミス……何があった?無事なのか?」

 自身の姉の神友の名を呼びその身を案じる

 

 

 精霊を追いかけ森を抜けると開けた場所に出る

「ここは……?」

 田舎に住みまともに村の外に出るのはこれが初めてであるベルにはその建物はわからない

 その白く美しい建物には女神の像がその御旗をかざし威光を示し訪れたものに自然と敬意を抱かせるに足る雰囲気を持っていた

 しかし、その神殿から漂う気配は余りにもその雰囲気とかけ離れている

「……」

 おどろおどろしいその気配はベルの脚を竦ませるのには充分であった

「たすけて」

 余りにも凶悪な気配に飲まれかけていたベルはそのか細い声我に返る

「この中に行けばいいの?」

 扉へ近づき開けようとしたところで

「やめろベル」

 アルフィアがその手を掴み止める

「お義母さん……」

「おい、ジジイなんだこれは?」

 共に追いついたザルドが祖父に問う

「見ての通り神の力(アルカナム)じゃ」

 一切の誤魔化しなく答えを告げる祖父

神の力(アルカナム)?」

 疑問を呈すベルと

「チッ……最悪の状態か」

 状況を理解したザルドとアルフィアは天を仰ぎみる

「ベル、神の力(アルカナム)とは言葉通り神の持つ力の一端じゃ」

「神様の?」

「そう、そしてここはその神の力(アルカナム)によって閉ざされている」

「神様がここに入れない様にしてるの?」

「その通りじゃ」

「でもこの中に『助けて』って言ってる人がいるんだよなんで神様がそんな意地悪するの?」

「それはなベル、神が意地悪をしてるんじゃなくて神がここに閉じ込められていてそれを嘆いた精霊がお前に助けを求めたんだ」

 当たり前の疑問をぶつけるベルに答えたのはアルフィアだった

「いや、閉じ込められては正しくないな神が下界を守るために自分ごと脅威を閉じ込めているんだ」

 そしてその言葉を訂正する

「脅威?」

 ベルが首を傾げる

「モンスターだ」

 ザルドが答える

「神が危険過ぎると判断し自分ごと封じ込めるだけ凶悪なモンスターがこの地にいる」

「え……?」

 その言葉を聴きかつての記憶が呼びおこされる

 ベルはアルフィア達に出会う前にゴブリンに殺されかけるという経験をしていた

 その時は祖父が助けてくれ、その背に憧れ英雄というものに興味を持ち始めた

 そしてアルフィア達と出会い訓練を重ね強くなった

 —だがしかしまだ1度もモンスターと戦った事は無かった

 ベルの中に残っているのはかつてゴブリンに殺されかけたというトラウマだけでありモンスターという存在は未だにトラウマの象徴そのものだった

「……」

 そのことを祖父から聞いているアルフィア達は今回の遠征であわよくばベルをモンスターと戦わせるつもりではあった

 しかしそれは自分達がどうとでも出来る状況を整えてからおこなうつもりであったのだ

「ここはお前にはまだ早い、というか俺たちでもどうにか出来るか分からん状況だ」

 言葉に詰まるベルを更に追い詰めるかの様にザルドが続ける

「逃げるのは恥では無いぞベル」

 アルフィアは頭を撫でて俯くベルを慰める

(僕は……逃げるの?)

(またあの時みたい何も出来ずに?)

(あれだけお義母さんやおじさんに鍛えてもらったのに戦いもせずに助けてと言っている神様を見捨てて?)

「……そんなのは嫌だ」

 ベルは小さなしかし確かな声で宣誓する

「何もせずに誰かが何とかするのを待って逃げる何てもうごめんなんだ」

「ベル……」

「何よりお義母さんとおじさんと約束したんだ、僕が『最後の英雄』になるって」

「!!」

 眼を見開く2人に尚も続ける

「お義母さんとおじさんが願ってる最後の英雄はこんなところで逃げ出したりしない」

「どれだけ絶望的な状況だってどうにかする、昔にはなし崩し的にでもミノタウロスを倒してお姫様を救った英雄(アルゴノゥト)だっているんだ」

 かつての英雄の様に唇を曲げ笑顔を作り

「それに僕にはお義母さんもおじさんもおじいちゃんもついてるんだ」

 英雄達をその気にさせる意志を紡ぐ

「ガハハハハハハハハハハハ」

 そんな空気も読まず腹を抱えて笑う祖父は

「この状況でその顔でその名を出すか、我が孫ながら大物じゃなぁ」

「いいだろうジジイは最後までお前に付き合ってやる」

 満面の笑みを浮かべ祖父は誓う

「……ガキにそこまで言われちゃ逃げる訳にはいかんな」

 ザルドは苦笑しながら

「全く、強情なところばかり母親に似ているな」

 ベルの頭を小突きながらアルフィアも覚悟を決める

 そうして神殿に挑まんとするベルの前に一際大きな光が来てベル前で止まる

「必ず貴方を助けて見せます、だから待ってて下さい神様」

 その言葉を聴き目が眩むほどの光を放ち

「これは槍?」

 その姿を変化させ、ベルの手に収まるとその先から光を放ち神殿の扉を開ける

「いいやベル、それは矢だそれも神造の」

 驚きながら祖父が言う

「こんなに大きいのに矢なの?」

 率直なベルの疑問に

「細かいことは気にするな、様はすっごい武器だと思っておけば良い」

「ただここ1番の時以外は使わないようにするんじゃぞ」

 祖父の注意に素直に頷くベル

 そんなベルの頭を撫でながら内心で冷や汗をかく

(まさかあのアルテミスが(ベル)に自分の力を託したのか? あの堅物の処女神が?)

(ひょっとしたらベルはワシ以上の女ったらしになるかも知れんの)

 ニヤリと笑いを堪えきれず孫バカを発揮するに祖父

 そんな祖父の様子を気持ち悪いものを見る様に遠ざかるアルフィア達

 気を取り直しベルは矢を握りしめ

「神様を助けに行こう!アルフィアお義母さん、ザルドおじさん、おじいちゃん」

「「「ああ!」」」

 

 最後の英雄を目指す少年の冒険はここから始まる

 


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