兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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※1今回もルビ振りがおかしくなってるので脳内で修正してください。修正はスマホだとよくわからないので諦めました
※2筆者はこれが初小説のため戦闘描写に期待はしないでください


4話

 神殿内部へと突入した一行が目にしたのは壁一面が赤黒く胎動しまるで生きているかのような姿へと変貌している様であった

「……ジジイここに何が封印されてたんだ?」

 あまりに異様な光景にザルドが問う

「ここはアルテミスがその力と眷属を使いアンタレスという蠍を封じておった場所じゃ」

「蠍? 蠍風情を神々が恐れたのか?」

 アルフィア達は『陸の王者』や『海の覇者』それに『黒き終末』という最強の化け物たちに出会ってきた

 だが故に蠍をアレらすら封印してなかった神々が恐るに足る存在であるのかそういう意味でゼウスに問いかける

「そうだ、かつての神々《我ら》の負の遺産であった」

「しかしこんな急に封印が解けるようにはなっていなかったはずだ」

「つまりは貴様にすらこの状況は全く読めなかったということか」

 アルフィアは疑いの目をゼウスに向ける

「当たり前だ、流石にこんな状況になる前に対策を考えたとも」

 その視線を正面から受け止め威厳を示す

「……ふん、まぁそうだろうなあんたは悲劇なぞ嫌っていたからな」

 かの神が女好きのセクハラジジイであるが誰よりも愛が深い男神であることをザルドはよく知っていた

「? ……?」

 大人達が何を話しているの全く理解出来ず頭にはてなを浮かべ3人の顔を交互に見る

「あぁベル気にするなこちらの話だ」

「お前は女神を助けることだけを考えてれば良い」

「??? うん」

 全く意味は分からなかったが素直に頷き前に進むベル

「それでこの地にいる女神に見当はついているのか?」

 そんなベルの背を見つつ周囲の警戒をするアルフィアが祖父に問う

「女神の名はアルテミス、月と狩猟を司る神だ」

「アルテミス様?」

「そう、そして彼女三大処女神と呼ばれる恋愛アンチの1(ひとり)だ」

「処女?」

 その言葉がベルから発された瞬間アルフィアの手がブレる

「くだらん情報などよこさんで良い」

 次の瞬間には壁に祖父が埋まっていた

「……」

 やれやれと肩をすくめるザルド

 そして祖父が埋まった場所まで走っていき掘り起こすとその崩れた壁から白い球体が見えた

「え……?」

 パキッパキパキ! 

「……ギ、ギィィィィィ!!!!!!」

 蠍型モンスターが産まれた

「ひぃぃぃ!!!???」

 ベルが祖父の足を掴み引きずりながら距離を取る

「!」

「『福音(ゴスペル)』」

 それと同時にアルフィアの一言がモンスターを跡形もなく消し飛ばす

「全くベル、なんだその情けない姿は……」

「先程私たちに啖呵を切ったのにその様で本当に戦う気があるのか?」

 アルフィアの呆れたため息共に吐かれた言葉に「うぐっ」と声を漏らす

「ごめんなさい……」

 しょんぼりとしたベルに

「まぁいい、しかし卵か……」

 考え込むように呟くアルフィアに

「どうやらアンタレスとか言う化け物は自分の子を生み出すことができるようだな」

「いくら雑魚とはいえ無尽蔵に増えたら流石に面倒だな」

 最悪だとため息を漏らすザルド

「これは俺たちの為にも急いだ方が良さそうだな」

「ああ」

「うん、急いで神様助けに行かないと」

 全員が同意を示す

「コイツと同じでより濃密な濃い状態(あじ)の奴はこの真下にいるようだな、話が早くて助かる」

 大剣を構えるザルドとベルを抱き寄せるアルフィア

「フッ!」

 音すら置き去りする速度で振り下ろされた一撃は床を粉砕し目的地までの一本道を作る

「えっ!!??」

「わぁぁぁぁぁぁ……」

 そのまま一行はベルの悲鳴と共に降りていく

 

 

 トンっと柔らかく着地の衝撃を殺し降り立つ一行は眼前に現れたモノに唖然とする

「シュゥゥゥ……」

 先程出会った蠍と形状は似ており予想の通り大型であった

 予想通り出なかったのはその身体から上層にあった赤黒い伸びておりこの大地から命を吸い取っている事までは予想できていなかった

「アレは……まさか!?」

 そして何よりアンタレスの腹の水晶に女神が取り込まれているなんて想像することなど出来るわけがなかった

「チッ、おいジジイ! アルテミス様は無事なのか!?」

「何とも言えん。ただアンタレスめ大地の力だけで無くアルテミスの力と魂を吸い上げおる」

 忌々しいと憤る祖父

「……」

「おいベル大丈夫か? 気を確かに持て」

 一言も発さないベルにアルフィアが肩を掴み声をかける

「ッ!!」

 いきなりベルはモンスターに向かって走りだす

「「ベル!?」」

 ベルの目に映っていたのは取り込まれたアルテミスの姿とアンタレスの足下に転がる赤く染まったものだった

 それを見たベルはトラウマなど忘れて我武者羅に突っこんでいく

「キシャァァァァ!!!!!!」

 アンタレスは近づいてきた侵入者に殺意の視線を向け紫の光を収束させる

福音(ゴスペル)

 アルフィアの超短文詠唱の一撃がその眼を逸らし狙いを外させる

「ちっ硬いな、どんな甲殻をしてる……!」

 レベル7の魔法にかすり傷程度しかつかない化け物はその一撃を見舞った煩わしい存在に標的を変える

「おおっ!!」

 今度はザルドの一太刀がその脚に炸裂しバランスを崩す

「キシャ!?」

 またも自分の攻撃を止められたことに苛立ちを隠せずアンタレスはその強靭な鋏を地面へ叩きつけ足場を崩し光線で薙ぎ払う

魂の平穏(アタラクシア)

 ザルドはその足下まで敢えて突っ込み、アルフィアは音の鎧を身に纏い攻撃をやり過ごす

「ッ!」

 ただアルフィアの魂の平穏(アタラクシア)でも完全には防ぎきれず衝撃で吹き飛ばされつつ体制を整える

「アルフィア! 俺が囮になるまず脚を壊せ!」

 ザルドが指示を出しその意図を察したアルフィアは

福音(ゴスペル)

 先程ザルドが攻撃した脚に魔法をぶつけていく

 

 

 2人がベルの背を守る戦いを始める中ベルは亡骸と共に転がる月と弓のエンブレムが描かれた旗の元に辿り着いていた

「……」

 その身体に触れ既に事切れた人の姿を見てに涙を流し初めて見る人の死体に吐き気が込み上げて耐えきれず胃の中のものを吐き出す

「ベル」

 そんな孫の姿を見下ろし声をかける

「おじいちゃん……」

「僕この人たちを守れなかったよ……」

「必ず助けるって言ったのに……」

 涙を流しながらベルは言う

「そうだな」

 祖父はその言葉を肯定する

「それに神様から武器を託されたのにいざモンスターを目の前にしたら足が竦んで戦えもしなかったんだ」

 ベルは懺悔をするかのように続ける

「……」

 その懺悔をただ聴き続ける祖父

「僕は誰かを助けられる、誰かを笑顔にできる英雄になんてなれないのかな?」

「最後の英雄なんてなれないのかなかな?」

 初めて人の死に直接触れ自分の無力さを痛感し、ベルの心は折れかけていた

 

 

「なら何故お前はここに来た?」

 そんなベルに祖父は問いかける

「え?」

「ベル、お前は何故あの化け物に真っ先に突っ込んで行きこの子らが倒れている場所迄きたのだ?」

「それは……この人達が倒れててまだ生きてるなら助けなきゃって」

「そうだ、お前はモンスターを倒すことよりも誰かを助けることを優先で考えられる優しい心を持っている」

 祖父はその行動の意味を教える

「!」

「いいかベル、確かにお前はモンスターから逃げてしまった」

「だがそれは誰かを生かそうとしたからだ」

「安心しろお前はアルフィア達が望む英雄へと成長出来ている」

「ッ!!」

 ベルの眼に涙が溢れる

「それにお前にはまだ救うべき女神(おんなのこ)がおるはずじゃ」

「うん……うん!」

 その眼涙とは別の確かな意志が宿った

(そうだ、僕は今泣いている場合なんかじゃ無いんだ)

(僕の目の前に助けてと言っている女の子がいるんだ)

 そしてベルは立ち上がり、その手に神から授かった矢を持って

「そうそれが女神救う唯一の武器だ」

 祖父はその背を押す

「うん!」

 ベルは迷い無くアンタレスへと向かっていく

「泣いてもいい、挫けてもいい勝者は常に敗者の中にいる」

「願い貫き想いを叫べ。さすればそれが1番格好の良い男の子だ」

 かつて英雄達に送った言葉を英雄に憧れる少年へとおくる

 

 

「『福音(ゴスペル)』」

「キシャャャャ!?!?」

 実に10発目のアルフィアの魔法がアンタレスの脚へあたりついに強靭な脚がもげる

 悲鳴をあげるアンタレスだがその数秒後にはもげた脚は元通りに生え変わっていた

 ザルドはそのもげた脚を手にとり急ぎ距離を取る

「貴様が神の力を喰らいつくすというのならば俺は貴様のその力ごと喰らいつくしてやる」

 そしてその手に持ったアンタレスの脚を噛み砕き嚥下する

「貴様のそのうんざりする様な耐久に馬鹿正直に付き合っていたら先に限界が来るのはこちらだ」

 アルフィアが言う

「ならばこちらも相応のリスクを覚悟するだけだ」

「ウオオオオオ!!!!!」

 獣の様な雄叫びをあげザルドが先程迄とは比べ物にならない速度でアンタレスに肉薄し

「オラァ!」

 その脚を切り裂く

「キシャ!!??」

 アンタレスは人間の力が跳ね上がったことに動揺し反応が遅れる

「ッ!」

 大剣が振り下ろされるたびに自分の強靭な脚が全てを切り裂いてきた鋏が切り落とされているのを見て

「キシャァァァァ!!!」

 —ようやく本気を出す

 神の力を吸い上げることに集中していたアンタレスが死力を尽くして戦うべき相手であることを悟った

 その殺意は先程までとは比べ物にならない威力の光線としてザルドを穿とうとする

「『炸響(ルギオ)』」

 だがアルフィアの魔法の残滓が再び弾け狙いを逸らす

「『父神(ちち)よ、許せ、神々の晩餐をも平らげることを。貪れ、獄炎(えんごく)の舌。喰らえ、灼熱の牙!』」

 その隙を見逃さず魔法の詠唱を始めるザルド

「『レーア・アムブロシア』!!」

 そして大剣の振り下ろしと共に魔法が発動する

 煉獄の炎共に黒き風がアンタレスの全身に襲い掛かる

「キシャァァァァ!!!!!!」

 それに合わせて紫色の極太光線を放つ

 ガッ!!! 

 2つの力が拮抗する。

「チッ!」

 渾身の一撃を相殺する化け物に思わず舌打ちが漏れる

「ザルドそのまま奴の足を止めておけ」

 アルフィアが声をかける

 そしてその拮抗は全く関係のないところから崩される

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ザルドの背後からベルが『矢』を放つ

 矢は神々しくその身を輝かせながら一直線にアンタレスへと吸い込まれていく

「……」

 悲鳴すら上げられずアンタレスはその身を消滅させていく

「ッ!」

 ベルは急ぎ女の子の元へ走って迎えに行く

 パキッという音をたてアルテミスの閉じ込められた結晶にヒビが入り

 次の瞬間にパリンと澄んだ音を響かせアルテミスが解放されベルの腕の中へ落ちて来るその身体を優しく抱きとめる

「……ん」

「あっ……」

 その吐息が聞こえきて安堵の息を漏らすベルはアルテミスに着ていた服を被せかける。

 

 

 彼の初めての冒険は誰かに頼りっぱなしであったがそれでもその意志でもって女の子を助けることが出来たこの経験は彼の英雄譚に置いて重要な第一歩であったのだった

 






と言うことでご都合主義なのでアルテミス生存ルートです
まぁ正史と比べて早めに着いたのでギリギリ間に合ったと言うことでここは一つ許してください
ついでにアルゴノォトのスキルなしのためギリギリアンタレスを倒しきれつつアルテミス本体にはダメージを与えずにすんだと言う設定になってます
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