兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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※1ご都合主義の極みに至りました
※2今回もルビ振りは諦めてるので脳内変換よろしくお願いします


5話

「……ここは?」

 目が覚めたアルテミスの視界に映るのは見覚えのない天幕の天井であった。

 そしてあたりを見渡そうとするが

「ッ!?」

 全身を走る痛みと頭の重さに顔をしかめ立つことをあきらめ顔だけを動かしあたりを見渡す

「あ、起きたんですね神様。って無理しちゃだめですよ」

 見たこともない真っ白な髪をした少年が駆け寄ってきて笑顔を見せる

「君は……」

「僕はベル、ベル・クラネルです」

 自己紹介をする白髪の少年(ベル)はニコニコと本当にうれしそうに笑顔を浮かべる

「私はアルテミス。月と狩猟を司る神の一柱だ」

 その笑顔を不思議に思いつつも自分の名を告げる。

「すまない、ここはいったい何処なんだ」

 自分を取り巻く状況が全く理解できずベルへと問いかけるアルテミスに

「ここは僕たちがこの森で過ごすために作った拠点です。最も長く使うことを想定してなかったので作りが簡素ですが……」

 恥ずかしそうに笑うベル

「ベル、神アルテミスは起きたのか」

 そこに少年によく似た顔立ちをした灰色の長い髪を揺らすドレス姿の女性が入ってくる

「あ、お義母さん、うん起きてくれたよ。ってそうだ神様が起きたらおじいちゃんが呼んでいってたんだった」

「ちょっと失礼しますね」と席を外し天幕の外へ出るベル

「ああ……」

 困惑気味に答えるアルテミスとその背を見送る女性

「……さて、私の名はアルフィア聞いての通りベルの義母だ。ところで神アルテミスあなたは自分に何が起こっていたか記憶はあるか?」

「……私は」

 アルフィアの質問にアルテミスは考え込む

「アルテミスおぬしはアンタレスに取り込まれておったのじゃ」

 その思考を低く良く通る声が遮る

「あなたは……ゼウス?」

 その聞き覚えがある声の主の名を呼ぶ

「ああそうじゃ、久しいのアルテミス。と言っても天界でも地上でもあまり話したことはなかったがな」

 声の(ゼウス)はベルとよく似た笑みを浮かべる

「そうだったな……それよりも今あなたは何と言った?」

「アルテミス、おぬしはおぬしが封じていたアンタレスに取り込まれていたんじゃ。そしてそれをベルが救い出したのじゃ」

「アンタレス……ッ!」

 混濁していた記憶がようやく鮮明になってくる

 彼女は近くの村からの依頼で近隣のモンスターの排除をファミリアの眷属たちと行っていた

 その際彼女に縁のある精霊に異変があったことに気が付き神殿へ向かいアンタレスの封印が解けてしまっていることに気づく

 眷属たちと共にアンタレスを再び封印するために内部へ入っていった

 アルテミスは神の力(アルカナム)を封じられたままでも並みの冒険者たちよりも余程強かったし眷属たちもそんな彼女の指導やモンスター討伐などの経験を豊富に積んだ精鋭であったし油断や慢心などせずアンタレスに挑んだ

 —しかしその結果は一方的な蹂躙であった

 かの蠍は自分を封じ込めた(アルテミス)を憎悪し復讐をするために力をため込んでいた

 それこそ大精霊の封印を力づくで解くことができるほどに

 そして目の前で1人また1人と大事な家族を奪われ最後はその敵に取り込まれ力と魂を少しづつ奪われていった

「そんな絶望した状況だったが私の精霊がベルを見つけた」

「そこからはあなたたちの方が詳しいだろう」とアルテミスが言う

「精霊たちはベルのそのきれいな心に惹かれたのだろうな。強いだけなら私たちの方が強いからな」

 アルフィアは予想を口にする

「それでもアルテミスの精霊が(ベル)を選ぶとは思わなかったがな」

 ゼウスはアルテミスをからかうように言う

「……『オリオンの矢』を使えるのは清廉な心の持ち主だけだ。どれだけ力があってもあれは邪念を持つものには触れることはできない。ゆえにこの地にいる誰よりも純粋な彼を選んだのだろう」

「—そして私も彼の『宣誓』を聞いたときに私も一目ぼれしてしてしまったのかもしれない」

 大真面目にそんなことを言うアルテミスに2人は唖然とする

「……あの大の恋愛アンチのアルテミスが一目惚れ? まさかベルに恋をしたと?」

 ゼウスがその目を見開きながら問う

「かもしれないというだけだ」

 苦笑しながら言うその姿に

(嘘だ、この女神(オンナ)本気だ。しかも質の悪いことにその気持ちが本当に恋であるか理解していない)

 ゼウスは「あのクソ真面目なアルテミスがこんな冗談を嘘でも口にするわけがない」ということを察する

「失礼します。神様! ご飯ができましたよ!」

 暖かな湯気を上げるお椀をもってベルが入ってくる

「ああ、ありがとうベル」

 お椀を直接受け取りアルテミスが礼を言う

「いえ気にしないでください、ザルドおじさんお料理はとってもおいしいですから食べたらすぐ元気になりますよ!」

 笑顔で謙遜するベルは

「お義母さんもどうぞ」

 アルフィアたちにもお椀を渡す

「ほらベルお前も熱いうちに喰え」

 とベルの後ろについてきたザルドがベルの分を渡す

「あ、自分の分忘れてた。ありがとうおじさん、いただきます!」

 元気よくご飯を食べ始めるベルを見てアルフィアたちも食べ始める

 

 

 食事を終え少しだけまったりとした空気が流れた後

「……ベル」

「あ、はいどうしました神様?」

「レトゥーサやランテ、私の子どもたちはどこに眠ってるか案内してくれるかい?」

 アルテミスは無理を押して立ち上がりいきなりきついことを言ってくる

「は……?」

 唐突な言葉に息を詰めるベル

「私は彼女たちを守れず死なせてしまったのに1(とり)だけ生き残ってしまったんだ。私は彼女たちに合わなければならない」

 強い意志を込めベルに話す

「……わかりました」

 ベルは立ち上がりアルテミスのもとに近づきその手を取り

「まだ本調子じゃないんですから僕に掴まっていてください」

 ゆっくりと彼女たちの眠る場所へ連れていく

「ありがとう助かるよ」

 2人の背を見送り残された3人

「……まあ遺体が残っていただけましか」

 ザルドが呟くと2人も同意を示す

 あれほどのモンスターが暴れた場所で原型をとどめていることは奇跡のようなもでありダンジョンの中で命を落とした者たちは遺品を持ち帰れれば上々であり、遺体をが引き上げられることなどそれこそ大派閥の人間でないと無理である

「それにしてもザルド、お前体は大丈夫なのか?」

 アルフィアが問いかける

「むしろ前までよりもだいぶ調子がいいくらいだ」

 肩を回しながら答えるザルド

 そうアルフィアもザルドも見た目こそ普通だが体の中は生きているのが不思議なくらいにボロボロであり、実際にアンタレスとの戦いでも命を削りながら戦っていた

「ふむ……」

 そのことをよく知る祖父は顎をさすり思考を巡らせる

「……もしかするとアンタレスを喰らったことによってお前の能力がまた一段昇華されたのかもしれん」

 そして1つの可能性へとたどり着く

「どういうことだ?」

「確証が欲しいついてこい」

 質問に答えるためにザルドを連れ天幕を出て

「ザルドあの木に触れて見ろ」

 そこになる普通の木に触れさせる

「ああ」

 待つこと数秒

「よし離してくれ」

 祖父は指示を出し言われた通りにザルドが手を離す

 ザルドが触れていた部分をよく確認し

「やはりか……」

 祖父は驚きを隠せないように呟く

「1人で納得してないで俺にもわかる様に話せ」

 ザルドが問いかけると

「アンタレスは大地だけでなく神からも力を奪い取ることのでき、かつその力で馬鹿げた再生能力を持っておった。そのアンタレスを喰らい力を得たお前の『神饌恩寵(デウス・アムブロシア)』がその力を再現しておるのかもしれん。かつてお前が『ベヒーモス』を喰らいその力を得たように」

「つまりザルド、お前の体はいまだにベヒーモスの毒に犯されておるが侵された分を大地からエネルギーを吸収し自己再生をすることによって拮抗を保っておる」

 自分ですら検証し確証を得てなお信じられない事を告げる

「—嘘だろ?」

 余りの話にザルドの口からつい疑いの言葉が出る

「ワシもそう思った。だがこの木を見ろ、ただ数秒触れていただけのはずなのに」

 そう言いながら先程までザルドが触れていた場所へ手を伸ばし触れるとその部分がボロボロと崩れていく

「この通りじゃ」

「—」

「もちろん今のままでは見境なく触れたものの命を奪い取るから訓練は必要だが」

 と前置きをしつつ

「—」

「この力を上手く使っていけばお前はもっと長く生きていられる。それこそベルが真に英雄へとなるその日を見届けることができるくらいに」

 自分はまだ(ベル)を見まもることが出来ると(ゼウス)に告げられ

「ッ!」

 涙が溢れそうになる息子(ザルド)の頭をわしゃわしゃと撫でる(ゼウス)

 そんな奇跡が起きた彼らを照らすのは見惚れてしまうほど綺麗な三日月であった

 

 

 

 

 

 






一方、1人取り残されたアルフィアは
(それにしても、本気でベルに惚れてるのかあの女神め。ショタコンか?)
とそんなことを考えていたとさ
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