兎は最後の英雄を目指し歩む   作:むー

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6話

「……待たせたなお前たち」

 白髪の少年に肩を借り恐ろしい程に整った顔の女性が眼前の遺体に声をかける

「レトゥーサ、最期まで良く足掻いてくれた」

「ランテ、よく頑張ってくれた」

 1人1人に声をかけ愛おしそうにその顔を撫でる

「……」

 それに着き付き従いベルは1人1人に花を1輪供えて黙祷を捧げる

(僕がもって強ければ……僕がもっと早くこの場所に来れていれば……)

 後悔が頭をよぎる

「……ベル」

 最後にベルの頬を両手で優しく包み込む

「は、はい!?」

 突然のことに驚きと羞恥を隠せず顔を真っ赤に染めるベル

 今までは精神的に参っており気にすることが無かったが目の前で自分の頬を包み込んでいるのは人知を超えた美しさをもつ女神様なのである

 アルフィアという美人な母親を持つベルではあるが義母以外の女性と接したことなどほぼないため女性への免疫など皆無である

 そんな初情なベルにとってアルテミスは劇薬にも近い

(本当に女神様って綺麗だなぁ)

 年相応の男の子の感情を出しつつアルテミスの話を待つ

 そんな初情なベルを好ましく思いつつ

レトゥーサ(私の子ども)達が死んだのは君のせいではないよ」

「……えっ?」

 アルテミスはベルの心を見透かして告げる

「いいかベル、私たちは月と弓の旗の誇りにかけてアンタレスと戦って力及ばず敗れ命を落としたんだ。君たちが間に合えば私たちを助けられたかもしれないと言うのはは私たちへの侮辱だ」

 厳しい一言を送る

「ご、ごめんなさい」

 自分の驕った考えに気づき頭を下げるベル

 そんなベルの頭を撫で

「君の優しさは嬉しく思うよ、でも自分がいれば何て後悔はしないでくれ」

「それに君は私を助けてくれただろう? 失ったものにばかり目を向けるのではなく救えたものを見えておくれ」

 俯くベルをあげさせその目を助けられた神様(自分)へと向ける

「助けてくれてありがとう私の英雄(オリオン)

 飛び切りの笑顔を送る

「ッ!! ……」

 その笑顔に涙があふれる

「こっちこそ助けさせてくれてありがとうございます……!」

 縋りつくようにアルテミスの手を握りしめ礼を口にする

 そんなベルに苦笑を浮かべ

「助けさせてありがとうなんて、おかしなやつだな君は」

 その手を優しく握り返す

「神様、僕もっと強くなりたいです」

「ああ」

「今度こそ誰も失わなくて済むくらいに」

「ああ、頑張れベル」

 少年は家族と神に強くなることを誓う。

 アルテミスがもう2度と家族を失わなくて済むように

 アルフィアたちとの約束を果たすために英雄となることを

 

 

「うう……」

 女神相手とは言え縋りついて泣いてしまい恥ずかしそうにするベル

「ふふっ」

 そんなベルとは対照的に笑顔をうかべるアルテミス

「……」

 そしてそんな2人を見て苛立ちを隠せないアルフィア

「「……」」

 巻き込まれないように空気に徹する親子(ザルドと祖父)

 これからはベルの家族がまた1人増える

 より賑やかにベルは過ごすこととなる

 —そしてアルフィアの訓練に加えアルテミスの訓練も加わることになるベルは今までの倍以上死にかける事となる

 




短いですがキリがいいので今回はここまで

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