テイク・クラウン ブレイク・ザ・スローン 作:黎明のカタリスト/榊原黎意
◽︎ムンドゥス暦1423年6月20日:王都貧民窟:ドウェイン
テイクラというゲームがある。
正式名称は『テイク・クラウン ブレイク・ザ・スローン』。
スマートフォン向けアプリの所謂ソシャゲ、ソーシャルネットワークゲームの一つで、この時代数多あるソシャゲの中でも僕自身かなりやり込んでいたと思う。
様々な手法が凝らされて多様化してきている今どきのソシャゲには珍しい正統派なRPGで、システムには某社の大作のようなターン制コマンドバトルが採用されている。
主人公は世界の王を目指す者『王選候補者』となって、先々で増えていく臣下たちと共に『アストルム』の地を征き王を目指す。というのが本当に大まかなストーリーだ。
数多の神絵師と名だたる声優、某有名音楽家らを起用した稀に見る豪華制作陣。
まるで大作アドベンチャーゲームのようなストーリー、豊富なシナリオ分岐。
曰く、五部構成で最終的な結末はそこまでのプレイヤーの選択肢によって決まるとか。第二部終了時点でプレイヤーによって結末が違っており、先日配信された第四部では国の興亡すら違っていたらしい。どんだけだよ。
ゲームシステムとしては使いやすさやロールの相性、スキルなどの差はそれなりにあるものの、全てのキャラクターがレア度1から始まり最大のレア度5まで昇格できるノーレアリティな仕様。人権と呼ばれるような一強的キャラクターは基本的に存在せず、強いて言えば初期配布キャラの一人、というか主人公がサービス開始から常に人権キャラである。
本ゲームの良点を挙げる上では、必ずと言って良いほど上記の制作陣や凄まじいまでのシナリオ文字数、レアリティ格差の撤廃が挙がる。
確かに昨今のソシャゲでは有り得ないような良心的仕様の数々だが、それでもこのやり方こそが正しいのだとこのゲームは売り上げで証明してみせた。
だが、このゲームが人気になった理由はそれだけではない。
それは偏に、このゲームの世界観とシナリオの厚みだ。
テイクラの世界は基本的にポストアポカリプス後に再建された高度文明と、上流階級の腐敗、特に理由の無い亜人差別が横行する地獄のような様相だ。
ファンタジーを下地にしていながらも、どこか近未来的かつ退廃的でディストピアな世界を舞台に繰り広げられるダークでシリアスなストーリーと、この救いの無い世界で各々の目的のために王に成らんと戦うキャラクター達の魅力。キャラクターひとりの生き様だけでも軽く小説が書けてしまいそうな程に、というか実際にキャラクターに焦点を当てたスピンオフ小説が数多く出版されていた。
そういった厚みが、たくさんのプレイヤー達の涙腺と性癖に刺さった。
それは僕もまた例外ではなく。
このゲームについて語ろうと思えば、それこそ丸一日かけても足りるはずはない。
今じゃプレミアも付いている設定資料集や特典CD、スピンオフ小説、漫画も全部買い揃えた。この世界における魔法、ルーンの文字も全部覚えたし、それくらい熱があった。
結論。テイクラは僕にとって最高のゲームだった。
……さて、どうして僕がテイクラのことを過去形で最高のゲームだと評したのか。
何故、いきなりテイクラについて語り出したのか。
その答えは僕が踏み締めるこの大地に在った。
盤上世界アストルムの七国が一つ『王国』、その首都『王都』。
ガラス張りの摩天楼が犇めく中、遠目からでも見える立派な城『キャッスル・オルド』が世界に威容を知らしめる。そんな古今織り交じるような大都会を守る防衛壁、の外にあるスラム街。
明らかに不衛生そうな環境。棲む人々は生気の無い顔で蹲り、ひと握りの人間だけがここから抜け出そうと必死に今日を足掻く貧民窟。
目覚めた時、ぽつんと一人。ここに相応しい貧相な身なりで放り出され、知らないけれど確かに辿った軌跡の記憶を携えて。
―――僕は今、テイクラの世界に居た。
Tips.
『テイク・クラウン ブレイク・ザ・スローン/
世界は王を求める。石と石、剣と剣、魔法と魔法、銃と銃。武器を手に取り、人は王座を目指す。
ここに命は価値を無くし、その在り方と軌跡のみが歴史となって刻まれ往く。
我は冠を戴く者、我は玉座を破壊する者、我は理想に殉じる者。
今、聖戦が幕を開ける。
というあらすじのソシャゲ。リリース四年目でDL数700万、ストアでの評価は4.7/5とそこそこの高評価。爆発的な人気こそ無いが売上は毎年1.5倍で黒字。某社の某名作RPGのようなターン制RPG。