タダ君ヲ想フ~春日野原学園恋愛シュミレーター~   作:さと かんひこ

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opening

「やぁ、今日から遂に僕達も高校三年生だね。最後の一年、改めてよろしくね!」

 

 長い髪を三つ編みにした、可愛らしい顔の人物がそう言ってはにかむ。

 さして高くない身長と、色の白い肌に、前述したその長い髪。その体には少し大きなブレザーとスラックスを履いた様は、事情を知らぬ者からすれば何処からどう見ても女性に見える。

 

 ()の名は五色優(ごしきゆう)。幼稚園の頃からのあなたの幼なじみで、そして貴方の一番の親友だ。

 

「おう! よろしくな」

 

 貴方は右手を挙げて言う。優は、こそばゆそうに、また笑った。

 風が吹く。桜の花弁が、まるでシャワーのように降り注いだ。

 

 

 *

 

 

 ……僕は知っている。この世界がゲームだと。

『私立春日野原学園恋愛シュミレーター』。それがこの世界の名だ。

 

 僕には赤ん坊の頃も、主人公たる彼との日々や出会いも、そして今までの経緯も存在しない。ただ、全ての記憶が設定としてあるだけだ。

 

 僕に与えられた任務は一つ。このゲームの主人公を、彼が望むエンドへと導くこと。それが、親友としての()()を与えられた僕の存在意義。

 何百何千何万回と続けてきた、僕の責務。

 

 さぁ、今日もまた始まる。彼を導く、恋の薫る一年が……。

 

 ――君が幸せになるためなら、僕はなんだって出来るんだ――

 

 

 *

 

 

「……それでさ、俺は思うんだよ。結局この世の中で頼りになるのは、男同士の熱い友情だってさ!」

 

 通学路の河川敷。いつものように、彼はそう声高に熱弁する。どうやらヒロインの一人を怒らせてしまったようだ。

 顔も声も性格も良いのに、自分に向けられた好意に対しては人一倍彼は鈍い。ここまで来ると、鈍感を通り越してバカなのではないだろうかと思ってしまう。

 

「あーはいはい……君の言いたいことは良くわかるよー」

「おぉ、そうか! わかってくれるか、優!」

 

 こうやって棒読みながらでも賛同してやると、すぐに彼は嬉しそうに笑いながら喜ぶ。要はチョロいのだ、彼は。

 

「いやぁー、俺の事わかってくれるのはやっぱお前だけだな! ……よし、俺は決めたぞ!」

 

 彼はそう言って立ち上がり、夕日をバックに僕に宣言する。

 一体、今度はどんなバカなことを言うのやら――

 

 

「――俺は、お前と結婚する!」

 

 

 

 

 

 えっ……?

 

 

「ち、ちょっと、それって……流石に冗談だよね?」

 

 待て待て待て、こんな展開シナリオにはないぞ……一体全体どう言うことだ?

 

「あーいや、すまん。お前がそんなに慌てると思わなかった。ちょっと調子乗ったわ。悪い……でもお前、顔も性格も良いし、料理だって上手いし、趣味だって合うだろ? 法律さえ乗り越えられたらなぁ」

 

 な、なんだ。ただの冗談みたいだな。一安心だ。

 まぁ何万回と同じことを繰り返していたら、そりゃ一回ぐらいはシナリオと違った事も出てくるだろう。

 

 それに、そもそも彼と僕が結ばれるシナリオなんて、それこそどこにもないのだから。

 

 

「もうじき日が暮れるね。……帰ろっか」

「おう、だな」

 

 

 夕日が西に沈む。

 例え結ばれないとわかっていても、それでも僕は――――

 

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