トレーナーさんを管理するのは愛バとして当然では?   作:森林 木

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昨日、某怪文書ステークスにてこの作品の元ネタとなる怪文書が紹介された嬉しさと、コメントを頂いた嬉しさに舞い上がり一日の突貫工事で書き上げました。
Goodボタンを押してくださった方々、本当にありがとうございます。
皆様に楽しんで頂けて光栄です。

なお、本話については一日で書いた為、大幅に修正する場合がある事をご了承ください。


プラン:君子豹変

 私、エイシンフラッシュは「うーん、むむむ…しゃいっ!」などと奇怪な言葉を発しながらノートパソコンの前で唸っているファルコンさんに見てほしいモノがあると言われてかれこれ4分18秒待たされています。スケジュール的に多少の余裕があるとはいえ、無為に時間を過ごしたくないのですが…

 ファルコンさんは「よし!」と意を決したように立ち上がった。

 

「フラッシュさん!これを見てください!」

「これは…ネット掲示板?」

 

 ファルコンさんが私に見せてきたのは掲示板サイトだった。トップのタイトルと思しき位置には太文字で

【悲報】友人がヤバい件

と表記されており、友人が自身のパートナーに依存しすぎているのではないかといったような相談がなされていた。私はこういったモノを見たことがないが、何となく常識外れの方々がやっているイメージがあった。そもそも匿名性の高く、確かな情報を精査することが難しい場で相談など意味があるのでしょうか。

 

「まぁ、この方もパートナーの行動記録をとっているのですね」

「そんなことするのフラッシュさんだけだよ!」

「なっ…」

 

 どうやら、この相談をしたのはファルコンさんのようです。そして、友人というのは…私のようです。

 

「何故このような事を?確かにあの行動記録を公表しても良いとは言いましたが…なんの意味が?」

「いい?フラッシュさん。並大抵の一般的な人達がどういう反応をするかって確かめる為には不特定多数の意見が必要なの。それで!この意見の数々を見て!」

「ストーカー…怖い…重い…」

「分かった?これが普通の感性を持った人の感想なの、フラッシュさん」

 

 掲示板の内容は私の普段行っている行動記録について否定的な意見が多く、恐怖すら感じているようだ。

 

「理解できません…」

「フラッシュさん?」

「パートナーの行動を把握できるメリットに対して然したるデメリットもありませんし…」

「いや、その方法がかなりタブーであって…」

「肯定的な意見だってあるじゃないですか。あくまで否定的な意見が多いというだけで肯定的な意見を排他するのは行き過ぎかと…」

「いや、ヤンデレに愛されたいとかあの辺はネタでやってるか拗らせた人だから…」

「そもそも、一般的な感性を持っている保証なんてありません。いわゆるサンプルセレクションバイアスでは?その…モテない恋愛経験の乏しい方々の意見ばかりなのでは?」

「すごい偏見!」

「その、後半に書かれていたウマ娘と結婚されたと記載していらした方も、妄想なのでは…」

「それは!…否定できないけども!」

 

 やはり匿名性の高いモノは信憑性に欠けますね。しかし、不特定多数の意見を取り入れて聞き入れるのは悪くありません。

 

「ファルコンさん。ありがとうございます」

「え?改めてくれる気になった?」

「この行動記録を広報部に持っていって学内でアンケートをしてもらいましょう。そうすればより正確なデータが得られます。題してPlan君子豹変です」

「ダメ!ゼッタイ!フラッシュさんの尊厳を守らせて!何の為に匿名性の高いネット掲示板で相談したと思ってるの!?」

「それほど匿名性が重要なのですか?」

「重要です!そのアンケートの発信源がフラッシュさんだって分かったら大スキャンダルだよ!?記者さん達黙ってないよ!」

「ふむ…確かに…」

「それに、サンプル…?よく分からないけど意見が偏ってるって言いたいならトレセンだってほとんど歳の変わらない女の子しかいないよ?男性意見ゼロだよ?」

「!?そうでした…私としたことが失念していました…」

「だからネットの力に頼ったの」

「なるほど…」

 

 やっと私にも理解できました。手軽に男女問わず意見交換が出来るうえに、記者によるリテラシーやモラルの低い記事のネタになる危険性を下げられる合理的なモノだったのですね。まさかファルコンさんに情報収集で負けることになるとは思いませんでした。今度、利用してみましょう。

 

「それで、見て貰えば分かるけど、フラッシュさんの行動記録はストーカーって言われるレベルなの」

「えぇ、遺憾ですがそのようですね」

「遺憾の意を示さないで…それで、解決策として出してくれた意見なんだけど、その活動記録をフラッシュさんのトレーナーさんに見せて反応を見る。それでトレーナーさんが問題なしって言ったらこれからも続けるって感じでどうかな?」

「えぇ、見せることに関して何も問題はないのですが、懸念事項が一つ…」

「突っ込み所が多くて何を懸念してるか分からないよ…」

「この記録を見たことによりトレーナーさんの行動が変化する可能性について、彼のスケジュールを狂わせてしまうのではないかt」

「それ言ったらキリがないので早く見せてください」

「わ、分かりました…」

 

 正直、トレーナーさんのスケジュール管理の邪魔をしてしまわないかが不安だけど仕方がない。他ならぬファルコンさんの言葉だ。無視する訳にはいかない。トレーナーさんの行動記録を携帯のカメラで写真を撮り送付しようとする。

 

「フラッシュさん?」

「どうやら、きちんと充電できていなかったようです。明日直接見せようと思います」

「あ、うん。別に一分一秒争うようなモノじゃないからタイミングはいつでも良いんだけど…珍しいね?」

「えぇ、コードが劣化しているのでしょうか。新しい充電コードの購入を週末のタスクに入れておきます」

「あ!ファル子予備のコードあるからあげるね!」

「ありがとうございますファルコンさん。おいくらでしたか?」

「良いってば、買い替えた時におまけでついてきた奴だから」

「本当に、ありがとうございます。頭が上がりませんね」

「もう、フラッシュさんたら大袈裟だよ」

「あ、もうそろそろ9時になりますね」

「うん、そろそろ寝る準備しなくちゃね」

 

 各々のベッドへと移動し、部屋の明かりを落とす。

 

「おやすみ、フラッシュさん」

「はい、おやすみなさい。ファルコンさん」

 

(ごめんなさい、ファルコンさん…)

 

 頭まで布団を被り携帯を起動させる。私は嘘を吐いてしまった。本当は携帯のバッテリーは40%もある。計算通りの消費量だった。にも関わらず、私は行動記録の送付を躊躇ってしまった。

 

(トレーナーさんの行動記録…つまり間接的に私の行動記録でもある…)

 

 トレーニングやプライベートも含めるとかなりの時間トレーナーさんと行動している。そうなると私の行動も記録せざるを得ない。つまりそれは、私の日記のようなモノだ。

 

(そんなモノを見られるなんて…恥ずかしい…!)

 

 冷静に考えれば考えるほどこの記録を見せることが恥ずかしくなってきた。ファルコンさんや赤の他人に見られるならまだしも、当人に見せるとなると話は別だ。

 

(どうしましょう…このタスクをこなすには何をすべきなのでしょう…)

 

 いくら考えても答えは出ず、私の睡眠時間はスケジュールよりも4時間8分1秒も短くなってしまった。




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