海賊王処刑から数日後。
東の海にある、小さな孤島にて
「逃がすな!!」
「周囲を囲め!!」
何人ものの海軍兵士が走り、一人の男を追っていた。
兵たちがライフル銃を連発するが銃弾の嵐は男に何故か当たらない。
「クソ!! なんだってバレたんだよ!!」
黒の外套を羽織り、腰に剣を帯刀する少年...一夏は叫びながら逃げる。
「逃がさんぞ!! 麦わらの一味の一人 一億八千万ベリー「雑用のイチカ」!! 」
「雑用は余計だ!! 畜生!!」
指揮官らしき白いコートを羽織る男性に突っ込みを入れるが無視されてしまう。
「いいぞ!! そのまま追い込め!!」
兵達が一夏を海岸へ誘導するように次次と銃や大砲で攻撃する。木々が倒れ、燃え盛る中を一夏逃げて森を抜けた先の海岸には
「観念するんだな!! もうこの島は我々が包囲したぞ!!」
海には軍艦が待機し、浜辺にも武装した海兵が待ち伏せていた。
「げっ!?」
既にハメられたことに気づくがもう遅い。後ろからも海兵が迫り前後に逃げ場は無かった。
一夏が慌てて辺りを見ると、小さな洞窟が見え一夏は洞窟の方に走り中に入る。
「ふはははっっ!! まさに袋のねずみだな!! 砲撃用意!! 存分に打て!!」
軍艦から大砲が、兵からのバズーカが洞窟を狙い岩が崩れて行く。
「まじで、ピンチだな...」
このままここに入れば、生き埋め。外に出れば海兵に捕まり死刑。どっちにしても最悪な結末には変わりはない。
「あ~こんな事だったらもっとコーラ、飲んどくべきだったな...」
ため息混じりに、腰の剣を触れる。どうせ捕まるなら。最後は海賊らしく抵抗して散ってやるか
そう覚悟を決めた時だった。
フィン
「!? こいつは!!」
突然、一夏の正面にブラックホールのような穴が出現する。そして、それは紛れもなく、元の世界からこっちの世界へ来たきっかけとなった物だった。
「なんでコイツが...まぁ、今はありがたいか!!」
数年前、惨めだった自分が住んでいた世界。
本当はもう帰るつもりなんて無かったが、一応あの世界でやり残した事や、気になる事は幾つかあり...一夏はブラックホールに飛び込んだ。
「打ち方やめ!!」
洞窟を完全に破壊し、海兵達が突撃する。誰もが一夏の確保を確信していたが現実はそうではそうでは無かった。
「何!! 奴の姿が見当たらないだと!! もっとよく探せ!!」
その後、洞窟だけでなく島全体を血眼に探すが一夏の姿は見つからず、もしかしたら、砲撃の際に木っ端微塵になったのでは? と考えられ数日後の新聞の記事にはーー
「麦わらの一味 「雑用のイチカ」 死亡」
と大体的に書かれていたが、実際はーー
ーーーーーーーーーー
「ふふふ~ん。 おや? 何かおかしいぞ?」
研究資材が大量に置かれたとある部屋。部屋の中央にはブラックホールが出現し、それを観察する奇妙な女性が声を上げる。
うさぎの耳のような機械を頭につけ、端末のキーボードを高速に操り、画面に食いつく。
「ん~? この穴から何か、生体反応が近づいて...」
ドン!!
突然ブラックホールから爆発が起こる。幸い、穴の周辺には強化ガラスが敷かれており、回りの機材や部屋に危害はそこまでなかった。
「!?っ な、何!? え、エイリアン!?」
女性が驚いてあたふたしていると、強化ガラスの中に出現していたブラックホールは消滅し、代わりにーー
「いてて...俺は、生きてんのか?」
黒い外套を羽織った男が立ち上がった。
「え,まさか...いっくん?」
女性が、束が力なくつぶやき。目に涙を浮かべながら男。一夏に近づいた。
「いっくん!!」
束の声で、一夏も彼女の存在に気づき、口を開いて・・・
「ん? あんた、だれだ?」
ズルッ
見事に、天災の博士はずっこけたのだった。
「いてて、い、いっくん。私の事、分かる? てか、もしかして忘れたの?」
「あ...あぁ!! そうか、あんた」
やっと思い出してくれたと思い、束は立ち上がり一夏に抱きつこうとするが
「桜さん家の、○子か」
「違う!!」
「え? それじゃ...あぁ、わかめか?」
「全然違うよ!? なんで日曜のあれなの? もう!!」
このままでは拉致が開かないと思ったのか、束は空間ディスプレイを出し、一夏に画像を見せる。
「これ、昔撮った写真だよ? 箒ちゃんといっくん。それにチーちゃんや、あっくんも...」
「道場の...」
次次と画像が切り替わる。
剣道の鍛錬中の画像
夏休みに祭りに言ったときの映像
みんなで、鍋を囲って食べた記録
それらを見て一夏は
「そっか、そうだった。俺、マジで忘れてたわ...」
次第に涙が流れる一夏を、後ろから優しく抱きしめる束。そして、この時始めて、自分が元の世界に戻って来たと実感したのだった。
「ただいま...」
不意に口から漏れ、今の気持ちが言葉に出て
「うん...お帰り、いっくん」
束は理由も聞かず、ただそう返事をして、暫らく一夏を強く抱きしめるのだった。
ーーーーーーーーーー
同時刻。
ここはIS学園の屋上。
「そ、その久ぶりだな。秋人」
「うん、久ぶりだね箒」
休み時間、幼馴染みの箒に呼ばれ一夏の弟。秋人も返事をする。
「その、元気だったか?」
「まぁ、一応ね」
意気消沈する秋人を見て、箒は内心どう彼を元気づけたらいいのか必死に頭を回転させるが、思い浮かばない。だが、原因は分かっている。
「一夏の事だが...」
その時、運悪く予鈴により箒の声がかき消される。秋人は一言いれ、屋上から去る。残された箒は唇をかみしめて
「一夏の事が、今もなのか秋人?」
箒はそうつぶやき、屋上から立ち去った。
授業が終わり、担当である千冬がクラスの全員に代表を決める旨を告げた。
一人の代表候補生が、回りから推薦される秋人に納得が行かず。流れで決闘をする羽目になる。
だが、後にこれが思いもよらない出来事になるとは。誰も知る余地もなかった。
ーーーーーーーーーー
「ふ~ん?つまり、いっくんは、今まで海賊になってた訳か~~」
過去の画像を見てから、少し落ちつき束ねにこれまでの事を話ていた。
海賊の一味になった事や賞金首になった事。世界政府を倒し、船長の宿敵達を倒し秘宝を手にした事等だ。
それらを話し終えて、一夏は「俺、悪党になってしまったんですが・・・」と言うと。
「大丈夫!! どんなに悪い事しても、いっくんは、いっくんだし!!」
と笑顔で受け入れてくれたのだった。
今度は束の話しになり。一夏が消えた後の話しを聞く。
千冬は実は一夏達を見捨てた訳ではなく。大会関係者から、誘拐の情報をもみ消されてしまって知らなかった。事態に気づいたのは、優勝トロフィーを受け取って数時間後。
爆破された工場を見かけた一般人からの通報で警察が駆けつけ、軽傷の秋人が保護されたことにより、やっと千冬も気づいたのだった。
そして、一夏がどうしたのか聞き、秋人はありのままを--自分をかばって扉を閉め爆発に巻き込まれた事を伝えた。
その時、千冬は涙を流さず秋人を抱きしめただけだったと言う。
「結局、あの姉は...」
「け、けど!! チーちゃんはいっくんの事を今でも!!」
さらに話しは続く。千冬の態度に秋人は我慢できず、どうやら彼女を避けているらしかった。
「はぁ~~なんか、変な事しちまったかな」
「...」
束は何も答えず、一夏は一度あくびをし外套を体に巻いて横になり目を閉じる。
「え? ちょ?」
「すみません、かなりきついんで。お休みなさい」
すぐに寝息を立てる一夏。そんな彼に呆れるように肩をすくみ
「もう、お休みなさい。いっくん」
寝ている一夏の頬に軽く唇を近づけるのだった。
おや? うさぎの様子が・・・?