麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

29 / 65
 ワンピースの新しいOP早速聞きました。

 お気に入り確定です。


二十九話 戦いが終わりーー

  

 一夏が電脳ダイブを行い箒達五人を仮想世界から救出した頃。

 

「お、織斑先生!! しっかりしてください!!」

 

「姉さん!!」

 

「う...ぐっ」

 

 学園内の施設の廊下にて背中から大量に血を流す千冬を抱きかかえる秋人がいた。傍にいる麻耶が涙目で必死に応援を呼ぶが学園のシステムがまだ回復しておらず医療班との連絡が繋がらない。

 

「血が...血が止まらない...」

 

 秋人の体と床が千冬の血で染まって行く。秋人は一刻も早く医務室へ連れて行きたかったが肝心の医者がおらず、ここからISを使い千冬を病院に連れて行こうとしても大量出血している千冬の体力がそこまで持てるか分から無い。

 

 

「ど、どうしたら...」

 

 秋人や麻耶には医療知識など無く一刻一刻とただ、時間だけが過ぎていく。

 

「お願いします!! 誰か、医者を!! このままじゃ、織斑先生が!!」

 

「どうしたらいいんだよ...兄さん...」

 

 麻耶が泣き叫び、秋人の涙が千冬の顔に落ちた時ーー

 

「おい!! 秋人!!」

 

 

「!?っ に、兄さん!?」

 

 

「今から、千冬姉を医務室に連れてこい!!」

 

「え? な、何を...」 

 

「いいから連れてこい!! 千冬姉は俺が治す!!」

 

 一夏の言った事に混乱する秋人。だが、大事な姉の危機に迷う暇などない と覚悟を決め白式のブースタを最大にし千冬を抱え医務室へ急ぐーー

 

ーーーー

 

「...ここは...?」

 

 気づけば千冬は花畑の中に立っていた。澄み切った空に心地の良い風が千冬の髪を優しく揺らす。

 

「そうか...ここが天国と言うものか」

 

 千冬はここに来る前に学園で侵入者と戦っていた事を思いだし、その際に受けた背中にあったはずの傷がない事に気づく。

 

「秋人...」

 

 守ると決めた弟や、教え子達を残し先に自分が逝ってしまった事に無念で心が苦しくなる。そして、永遠に一夏と会えない事に自然と涙が溢れていた。

 

「一夏...」

 

 もはやどんなに願っても叶わない夢に千冬が絶望に泣き崩れた。

 

 

「あぁぁぁぁ...」

 

 千冬が泣き声をあげ、彼女の声が花畑に響く中。花畑に一つの影が近づき千冬は気づかない。

 

「ん? おめぇ腹減ってんのか?」  

 

 急に声をかけられ千冬が慌てて顔を上げると、一人の男が立っていた。顔と胸に傷を持った男を見て一瞬、あの世の使いが来たのか? と思ったのだが、目の前に立つ半袖半ズボンの人物はそんな風には見えなかった。

 

「ほっといてくれ...私はもう、弟に...一夏には会えないんだ...」

 

 もはやどうでもいいと自暴自棄になる千冬。だが、彼の口から思いもよらない事を聞かされる。

 

「へぇ、アイツ知ってんのか? あいつおもしれぇ奴だな!! うちのコックの料理作れるわ、船医とかもできてよぉ!! なんでもできたんだぜ?」

 

「!? 一夏を...知ってるのか?」

 

「あぁ、俺の仲間だ。いや~~それにしても他の皆どうしてっかな~~? 」

 

 まるで懐かしむように言う彼が一夏を知っている事に驚く千冬。彼が何者なのかそして、一夏とはどんな関係なのか聞こうとしたが

 

「千冬姉!!」

 

 突然、一夏の声がして後ろを向くと。小さな光が花畑の上に浮かんでいた。そして、光の中から声がしてよく見てみると、手術室で寝ている千冬に声をかけメスを握りしめる一夏の姿があった。

 

「千冬姉!! 生きろ!! 戻ってこい!!」

 

「一夏...」

 

 必死になる一夏の姿を見て立ちあがり光に手を伸ばすが、手が途中で止まってしまう。

 

「だめだ、私は...姉失格だ。今更、何を言えば...」

 

「んなもんお前が決めんなよ」

 

 再び後ろにいた男に声をかけられる。

 

「アイツ、俺たちと旅をしてる間姉に会いたいって言ってたんだぞ。だから、行ってやれよ」

 

「...っ!!」

 

 男の言葉に突き動かされて、千冬は再び光に手を伸ばし花畑から千冬の姿が消える。

 

「にししし!! さぁて、腹減ったな~~」

 

 そして千冬を見送り、名を語らなかった彼は花畑から離れるのだったーー 

 

 

 

  

「ぅぅ...」

 

「!? 織斑先生!?」

 

 意識が戻った千冬に気づき、麻耶が慌てて病室から出て行き誰かを呼びに行く。

 

「...私は...生きている、か?」

 

 背中の痛みを感じながら胸に手を置いて、心臓が鼓動しているのを感じ深く息を吐きだす。そして、花畑の事を思いだし彼の名前を聞くのを忘れていた事に気づいた。

 

 

 そして、千冬が目を覚ました頃。

 

 

「一夏、いままでお前は何をしていたのだ?」

 

「一夏。約束よ、話して」

 

「あ、あのですね...あの黒いISは何なのですか?」

 

「ねぇ、黒い剣ってどうなってるのかな?」

 

「嫁の兄よ、貴様は何故そこまで強いのだ?」

 

「あ、あの...」

 

「そういえば、学園祭の時に見たあの姿って何かしら?」   

 

「兄さん」

 

 千冬の治療から二日が経ち。学園内も落ち着き始めた頃一夏は質問責め受けていた。上から箒 鈴 セシリア シャル ラウラ 簪 楯無 秋人 が順に聞いてきて

 

「だぁ!! いっきに聞いてくんな!! 俺と秋人は千冬姉に輸血するために大分血ぬいたんだぞ? 少しは休ませろ!!」   

 

 少しだけ顔色を悪くした一夏が声をあげ、同じように顔色が優れていない秋人がすかさず聞き出す。

 

「それにしても。兄さん、どこでそんな医術を習ったの? 姉さんを診た先生が言ってたけど。こんな高度な技術は見たことないって...」

 

      

「ん、あぁ...うちの船医に習っただけだ」

 

「船医?」

 

「俺、海賊やってたから」

 

 海賊。一夏から発せられた単語に七人の少女達が首をかしげる。

 

「...仕方ない。話すって約束だったもんな? アレは、俺らが誘拐された時だがーー」

 

 一夏は秋人と共に誘拐された日の事から話始める。

 

 爆発に巻き込まれた後、自分は大海賊時代の世界に飛ばされていた事。

 

 その世界で様々な仲間と出会い、過酷な海を旅をし力をつけた事。

 

 そして、大秘宝を手に入れ船長が処刑された後、海軍に追われている途中で穴に入り、気づいたら束の研究所にいた事までを話す。

 

「...すごい」

 

「な、なんだか信じられない話だけど...」

 

 未だに信じられない と表情に出す者がいるが。秋人と簪だけが驚いたいた。

 

「兄さん...僕、その穴見たんだけど...」

 

「私も」

 

「何? そうか、だからお前ら二人に見聞色の...」

 

 一夏の呟きに、秋人が聞き返すが一夏は一人ごとだ、とだけ言い

 

「とにかく、その穴見つけても手を出すなよ? 何が起こるかわからんしな」 

 

 と、一応注意をする。

 

 もし、ブラックホールにエネルギーを入れそこから出る粒子が人間の持つ力を目覚めさせる事を知れば、何をしでかすか分から無いからだ。

 

「一夏、その...姉さんと一緒にいたのか...」

 

「あぁ、それにしても相変わらず元気だよな? あの人は」

 

「黒騎士も姉さんからか?」

 

「まぁな」

 

「一夏、貴様…姉さんと一緒に何をしておるのだ?」

 

「...それも、言わないといけないか?」

 

「あたりまえでしょ!! アンタねぇ!!「織斑君!!」 」

 

 鈴が怒りで声をあげると、突然麻耶が部屋に入り込む。そして、彼女から千冬が目を覚ました事が告げられ、一同は急いで病室へ走るのだった。

 

「姉さん!!」

 

「馬鹿者。織斑先生だ」

 

 いつもどうりの彼女の姿に思わず嬉し涙を流す秋人。秋人だけでなく、千冬の姿を見て楯無・簪を除き箒達は安堵し涙が出ていた。

 

「...」

 

 一夏は無言で部屋の外に立ち気まずそうにしていると。

 

「行こう」 

 

「ほら、行きなさい」

 

 

 簪が一夏の手を引き、楯無が背中を押し一夏が部屋に入る。

 

「!! いち...か...」

 

「あ、その...具合悪いとこある? 血は俺と秋人の輸血したから大丈夫だと思うけど何かあったら...」

 

「一夏君~~?」

 

 後ろから怒りを含めた楯無の声がし、一夏は黙る。一夏と千冬が視線を合わせる事なく部屋の中に暫らくの間沈黙が生まれる。

 

「...お前が、私を治してくれたのか?」

 

「あ、あぁ...」

 

「そうか...ありがとう」

 

 素直に感謝の言葉を述べる彼女の姿に、一同が驚き。一夏は

 

「その、ごめん。いろいろと」

 

「!?っ 謝るのは、私のほうだ...すまなかった。お前の話も聞かずに、私は姉失格だな」

 

「違う!! その、俺こそ何も話さずにいたからいいんだ!!」

 

    

「そ、それは...うっ!!」

 

 傷から痛みが走り息を荒げる千冬。その後、学園の医療班が来て処置を行い、一夏ら一同は病室から出て行く。

 

「ねぇ、一夏君。暫らく学園にいない?」

 

「更識、一体何を?」

 

「楯無って呼んで。暫らくの間、先生の傍に居てあげて。それと今学園を守れる人もいないから、今は貴方が頼りなのよ」

 

「俺なんかいていいのかよ? この間、アンタと俺、敵だったんだが?」

 

「でも、この間戦った時…貴方は私を殺さないようにしてくれたんでしょ? それにあの姿についても聞きたいしね」

 

「そうかよ...」

 

 また面倒が増えたとため息をつく一夏。と、そこで楯無がどこからかの通信に応答し少し困った顔をして

 

「まだ食堂しまってるんだって、流石に何日も続くと生徒達の生活に支障がでるわね

...」

 

「なら、私が腕をふるって」

 

「いや、セシリア。あんたやめなさい!!」

 

「でも、どうしよう? 今から外に出ると大分かかるし...はぁ、また備蓄されている非常食かな?」

 

 鈴がセシリアの料理を全力で却下し、シャルが昼食をどうするか考えていると

 

「仕方ない、材料はあるか?」

 

「「「 え? 」」」」

 

「一応、コックから料理学んだからな、まぁ。味は合うかどうかはわからんけどな?」

 

「そう? じゃ、お願いしようかしら?」

 

 一夏の提案に楯無が承諾する。他の生徒や教員達にバレないように食堂に移動し早速調理が開始された。

 

  

 ーー数時間後。

 

 この日。学園の学食はいつもよりも生徒達が集まっていた。

 

 

「お、美味しい!!」

 

「な、何なのこれ...いつもと違う!!」

 

「お、おかわり!!」

 

 いつもどうりに食堂に入る生徒達。だが、いつもより味が格段に美味しく。それが噂になり学年に関わらず多くの生徒達が食堂に押しおせていた。      

 

「だぁ!! なんで人が集まるんだよ!?」

 

「そりゃ、アンタ...こんだけ美味しいのが出れば当然よ...」

 

「あれだけの者は誰だって食べたがるだろうに」

 

 調理室で忙殺されている一夏を横目に野菜を切る鈴と箒。二人は一夏の料理を食べており、「料理の腕が格段、いや数十倍に上がってる!?」と思わず言ってしまう程驚いていた。

 

「でも助かったよ、俺一人だと流石に無理だったからな」

 

「おまえもまだ体の調子が悪いのだろう...それに、助けてもらった恩もある」

 

 箒が顔を赤くし呟き、調理室に秋人が入って来る

 

「兄さん、次の注文来てるよ?」

 

「はいはい」

 

 調理室から出る事が出来ない一夏は鈴と箒の三人で調理をして、残りのセシリア ラウラ シャル 秋人が生徒達に配り、簪と楯無が会計をしていた。

 彼女達の助けもあり、食堂の回転がスムーズに進み昼を過ぎた頃には大分生徒達の姿が少なくなっていた。

 

「お疲れ様です皆さん!! 織斑君...あ、確か一夏君でしたね」

 

 秋人のクラスの副担任である麻耶が調理室に入り労いの言葉をかける。麻耶から夕飯前に調理師達が学園に到着すると連絡が入ったのを知らされる。

 

「それにしても皆さん美味しいそうに食べてましたよ!! 生徒だけでなく、教師の方々も満足していたみたいで!!」

 

「それは、何よりだ」

 

 「もう少しですので頑張ってくだい」とだけ言い、部屋から出て行く麻耶。彼女の言動を見て一夏は内心善人だなと思った。

 あの世界では、悪行を行うが根がいい者がいれば、権力に腐り人の尊厳も命もなんとも思わない人間もいた。最も、この世界でも同じように差別と権力があるが。

 

 

 

「どの世界も同じか...って、あんた何してんだ?」 

 

「一夏君の料理が待ちきれなくて、来ちゃった♪」

 

 表で会計をしていたはずの楯無がいつの間にか調理部屋に入り、一夏の背後に立っていた。箒と鈴が驚き声をあげるが、一夏だけは気にしない。

 

「食堂の方は大丈夫なのかよ?」

 

「大丈夫、秋人君たちが頑張ってくれたおかげで回ってるから。それと、少しだけ話いいかな?」

 

「? 何だ?」

 

 いつもの軽い雰囲気ではない彼女目を向ける一夏。楯無は、一夏と目をそらしながら話す。

 

「さっき言ってた海賊の世界なんだけど...昔、変な夢を見たのよ」

 

「夢?」

 

「うん、子供の頃…家の家業がいやで家出したことがあって。その時、海で溺れてたら海軍の人に助けられたの。で、その人の事知ってるかなってさ」

 

 

 楯無が昔の事を語り、そしてその海軍にいたと言う者の名を告げようとするが。次の注文が入ってしまい、声が途切れてしまう。  

 

「今は無理みたいね。じゃ、私戻るわ」

 

 気まずくなってか厨房から出て行く楯無。一夏は頭に? を浮かべつつ。そのまま料理を作り続けて行き、やがて生徒達が出て行った後。

 

「疲れた」

 

 調理室でイスに座りクタクタになる一夏の姿があった。

 秋人達は食堂で一夏の料理を食べているが、侵入者である自分は人前にでる訳にはいかないため出れない。

 

(ひとまずクロエさん...クロエが暮桜のコア持ち帰ったはずだから。革命軍と亡国機構を探さないと、連中を放置してると秋人達が危ないし...)

 

「一夏?」

 

 険しい顔をする一夏に声をかける鈴。食べ終えたのか、空の食器を水につける。

 

「おう、鈴?」

 

「...まだ、隠してる事でもあるの?」

 

「...まぁ、一つ、二つぐらいかな?」

 

「はぁ...まぁいいわ。無理に聞き出しても、答えてくないんでしょ? あ、そうだ。これ覚えてる?」

 

 話を切り鈴がポケットから写真入りのペンダントを一夏に渡す。

 

「これは...」

 

「アンタが作ってくれた奴よ。昔から一夏、変な所で器用だったから」

 

「そうだったな...図工で余った奴で作ったんだったな...っ!?」

 

 ペンダントを見る一夏の様子が変わり、鈴がどうしたのか声をかけるが返事がなく、何かを呟く。

 

「なんで...この印がこれに?」

 

 鈴から渡されたペンダント。蓋には刻まれた三本の蹄の印があった。

 

 

 

 そして、病室で眠りにつき夢を見ている千冬。

 

 「父さん、母さん...」

 

 夢の中で幼い千冬は、家の中で両親を必死に探す。母の部屋を開けると一人の女性が背を向けており、その背中には三つの蹄の焼印がされたいた。千冬が母に声をかけようとするが、そこで目が覚めてしまう。

 

「夢...か?」

 

 窓から見える赤く染まる夕陽を眺め、夢の中で見た物を思い浮かべる。

 

「母さんのあの背中は、一体...」

 

 母の背中にされた紋章。それがなんなのか千冬が知るのは長くは無かったーー 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。