麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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三十一話 大会に向けて

 「キャノンボール・ファスト?」

 

 朝の食堂にて箒達と会話していた秋人が首をかしげそれをセシリアやシャル達候補生がISを使ったレースだと簡単に説明する。

 

「本当だったら、学園際が終わってすぐに開催のはずだったんだけどね...」

 

「? あ、なるほど...」

 

「ま、まぁ確かにな...」

 

 シャルの言葉を察した秋人と箒が眉をひそめる。先日行われた学園際で潜入していた一夏と学園最強である楯無との戦い。これにより起きた学園の被害が大きく復興に時間がかかったのと、学園のシステムが乗っとられた騒ぎで教師である千冬の負傷などいろいろあったために行事が大分変更になりその調整に教師達やとある生徒会長が多忙で汗と涙を流している事に生徒達は知る良しもなかった。

 

「あぁ、そういえば忙しくて気がつかなかったけど...僕と兄さんの誕生日過ぎてたな...」

 

「「「なっ!? なんですって!? / そ、それは本当なのか!?/ そ、そうだったの!?」

 

 セシリア・ラウラ・シャルが一斉に秋人に顔を近づけ真剣に見つめる。

 

「う、うん、そうだけど...僕も最近いろいろあったからすっかり忘れててさ...」

 

 

 秋人の何気ない小さくつぶやきが周りにいた少女達の雰囲気を変え騒がしくなる中、何時の間にか話が誕生日会をしようと流れになり、日にちは大会が終わったにやることになった。

 

「じゃ、場所は知り合いに頼んでみるから...後は鈴と兄さんもだね」

 

「? そういえば鈴はどこに?」

 

 箒の一言でいつまで経っても鈴が来ない事に気づく。一方、鈴はーー

 

 

「へぇ...シャボン玉が浮かんでいる島ねぇ...」 

 

 秋人の部屋にてベッドに座る一夏と、鈴。そしてイスには何故か座り簪もいて黙って一夏の話を聞いている。

 

 朝早くに一夏の所になんとなく足を運んだ鈴だが、部屋の前で偶然簪と鉢合わせし仕方なく二人で一夏を訪ねた。だが何を話せばいいのか迷っていると簪から海賊をしていた時の話が聞きたいと言われ一夏の冒険の話にいつしか二人は夢中になっていた。

   

 最初は、倒れてた町の港で船長と会い、町で介抱された後処刑寸前だった剣士を一緒に助けてから無理やり海賊に入れられた事から話は始まる。

 

 東の海での事や赤い壁を乗り越えた先の海で砂の大国を救い。空に浮かぶ島や仲間を取り返すために世界政府所有の島を落とした後、魔の海域を抜けグランドライン後半への玄関口に辿りついたところまで話が続く。

 

 

「...あの頃は六式なんて使え無かったし俺弱かったからな...」

 

「六式? 確か、さっき話にあった体術の事?」

 

「そうだ、簪は見たことあるよな? 初めて会った時に空飛んだの覚えてるか?」 

 

 そう言われ簪は初めて一夏に出会った時、幼馴染みの本音と共に腕に捕まり、宙に浮いた事を思い出し顔を赤くする。

 

 六式とは、体を極限まで鍛え人体を武器に匹敵させる体術の事で、その名の通りに

 

 鉄塊・指銃・剃・嵐脚・月歩・紙絵 と六種類あり

 

 この中で一夏は、地面を十回以上蹴り瞬発的に移動する「剃」。強力な脚力で空を蹴り移動する「月歩」。そして、この世界ではまだ一度も使っていないが蹴りでかまいたちを起こす「嵐脚」の三つが使えた。

 

「まさか、飛ばされた先であいつらに教えてもらうとはな...」

 

 一夏はそうつぶやき、ある一団の事を思い浮かべる。とある七武海の一人にはるか彼方の島に飛ばされた先。そこで肩に鳩を乗せた男と超人達の事を。

 

 コンコン

 

「ん?」

 

「おはよう~~一夏君、かんちゃんいる?」

 

 目を細め見るからに眠そうな楯無が部屋に入り、無断で空いているベッドに横になり手にしていた書類を床に落とし一夏が拾い上げる。

 

「キャノンボール・ファスト?」

 

 秋人と同じように首をかしげる一夏。鈴と簪も気になり一夏の両隣に移動し、一夏の持つ書類に目を通す。内容は、大会の開催日や会場の簡単な図。さらに進行の手順や選手の名前も書かれており、一年の専用機持ちのみのレースにはもちろん秋人や箒そして、ここにいる鈴と簪の名前もあった。

 

「で? これをわざと俺に見せて何がしたんだよ?」

 

「ぐぅ~~」

 

 明らかに寝たふりをする楯無に一夏は右手に覇気をまとう。何かただならぬ雰囲気を感じた楯無は慌てて起き上がり自白し始める。

 

 大会中にまたファントム・タスクや革命軍が攻めて来た時のために一夏の力が必要との事で、もちろん答えは

 

「いやだ」

 

 即答で断った。だが、両サイドにいる簪と鈴が悲しい表情になり一夏を見つめる。

 

「一夏...」

 

「また、どこかにいっちゃうの?」

 

「一夏君...」

 

 三人の少女が迫り後ろに下がるが背に壁がついてしまう。六つの眼差しに見つめられ一夏は強く否定できず

 

「...ぁあ、分かった!! 分かったから、そんな目で見るな!!」

 

 結局流されてしまい、悲しい表情をしていた少女達が笑顔になるのだったーー

 

 

 

「てぁ!!」

 

「はぁぁ!!」

 

 その日の昼。貸切となったアリーナにて二体のISが試合を行っていた。一人は白式を纏う秋人でもう一人は打鉄弐式を操る簪だ。

 

 二体のISは空中に飛び白式の荷電粒子砲「雪羅(せつら)」と弐式の背中にある春雷(しゅんらい)から粒子砲が放たれるが、どちらの弾もあたらない。 

管理室にいる楯無と隣りに座り黙って見ている一夏。

 

(あの動き...二人は見聞色の方が向いてるようだな)

 

 まるで相手の動きが分かっているかのように避ける二人。既に開始十分以上経っているがどちらの機体もかすりもしていない。

 

「すごい...ラウラの時もそうだったけど。秋人の動きってまるで相手の動きが分かってるみたいだよ...」

 

 空いた観客席に座るシャルがつぶやき、隣りにいるラウラも頷いた。

 

「あぁ、初めて戦った時何故か私の攻撃は全て躱された...あの力は一体...」

 

「秋人さんと言い、簪さんのあの動き。何か、特殊な訓練でもされたのでしょうか?」

 

 

 観客の空いた席にて感想を言い合う中、箒が黙って秋人を心配そうに見つめる。そして、ただ一人何かを考えている鈴だけが管制室にいる一夏を見ていた。

 

 (一夏...あんた、何を考えているの? )

 

 実はこの試合を提案したのは一夏だった。大会中の護衛は引き受けたが、もしもの為にと訓練をすると言い出し最初に選んだのが秋人と簪だった。

 

 何故この二人が? と一夏に聞いたがはぐらかされてしまう。しかし一夏が「もしかしらた覇気が...」とつぶやいたのが聞こえていた。

 

 やはり一夏は何かをまだ隠している。だが、どうやって聞き出せばいいのか考えていると爆発が起き、気づけばエネルギーを大分消費し地上に降りている秋人と簪がいた。

 

 秋人は呼吸を整えながら雪平を両手で持ち、簪も接近武器である薙刀を構える。このま

ま遠距離で戦っていてもエネルギーの無駄と分かり二人は接近戦に変え二つ刃がぶつかる。

  

(さっきまでの動きといい、やっぱり更識さんも僕と同じ物を?)

 

 ラウラとの戦闘で覚醒した未知の物を目の前にいる少女も持っている事に気づく秋人。そして、同時に簪も同じ思いを持っていたが二人は武器を下ろす気配がない。

 何故か二人はこの戦いを何時の間にか負けたくない思いが生まれ、互に全力で戦っていた。

  

(このままじゃ先にこっちのエネルギーが持たない...なら!!)

 

 打鉄弐式のミサイルポッドから最後のミサイルが発射され白式に向かう。ロックオンシステムにより追尾性を持つミサイルが迫ってくるが秋人は逃げる事なくミサイルを切り捨て爆発が起こる。 

  

 

「なっ!?」

 

 秋人の予想外の行動に動揺し、煙に包まれた中センサーを使い白式を追う。そして、煙の中に光る剣が見え簪が薙刀を振るうが、そこには雪平しかなかった。

 

「!? どこに!!」

 

 簪が驚いていると背後から白式が現れる。背後の気配を感じ彼女が振り向こうとした瞬間雪羅の荷電砲が発射し二式のエネルギーを0にした。

 

「「試合終了 勝者 織斑秋人!!」」

    

 試合終了の合図が鳴り秋人は白式を解除し座りこんでいる簪に近づき手を伸ばして

「良い試合でした」と声をかけた。

 一瞬手をとるのをためらう簪だが、すぐに秋人の手をつかみ立ちあがる。

 

「ありがとう、その...敬語はもういいから」

 

「そ、そう?」

 

 かつて専用機の開発を後回しにされた事で秋人に怒りを持っていた簪だが、この戦いで少しは解消し笑みを浮かべていた。

 

「はーい、二人ともお疲れさま。いろいろ話したい事はあるみたいだけど、まずはそこからどこうか?」

 

 スピーカーから楯無の声が聞こえ、気がつけば観客席に座るシャル・ラウラ・セシリア・箒が殺気を込めた目で睨んでおり急いで控え室に走り簪もその後を追うのであった。

 

 

「で、君は何がしたかったのかな? あの二人を戦わせて、そろそろお姉さんに教えてくれていいんじゃないかな?」   

 

 管制室でマイクの電源を切り目を細め一夏に問い詰める。これは流石に言わないといけないと判断し、秋人と簪が持つ力「見聞色の覇気」について話を始める。

  

「あらゆる動きや気配を察知する力...」

 

「恐らく、例のブラックホールから出る粒子を浴びたからだろうがな。本当なら習得するのに何年もかかるの物なんだが...」

  

 

「ブラックホール...ねぇ、一夏君。これ、見てくれるかな?」

 

 突如空間にディスプレイが出現し、ブラックホールの画像がいくつも写し出された。

 

「そのブラックホール…表向きには内緒にされているんだけど、実はあらゆる国でも同様な事が起きていて調査中なんだ。けど、その粒子にそんな力があるってまでは解明されていないわ...もし、人を強くするのが分かってしまったら...」

 

「間違いなく悪用されるな、しかもISを嫌っている連中からしたらかなり便利なもんだ。どんな奴でも強くなれるからな」

 

 

「そうね...」

 

 二人は頷き、控え室で待っているだろう秋人達に会うために部屋を出て行く。

 

 

 そして、その日の夜。

 

 

 IS学園から離れたとある町にて。

 

 薄汚いスーツ姿の男が人気のない道を歩き何かをつぶやいていた。

 

「女...くそ女ども...」

 

 呪詛のようにつぶやき、殺気を放ちながら歩いていると派手な格好をした女性に呼び止められ荷物を持つように命じられる。男は首を軽く横に振り拒絶の意思を現すと近くにいた警察を呼ぶ。

 

「この男を逮捕してください。私に乱暴をしました」

 

 理不尽な事を言い悪意がこもった笑を浮かべる女性。そして事情を聞かず警察官が男を連行しようとし突如悲鳴が響く。

 

「女の言いなりになりやがって...」

 

「うぁぁぁぁ!! う、腕が!!」

 

 

 ありえない方向に曲がった腕の痛みに倒れる警察官を見て男が吐き捨てるようにつぶやき悲鳴をあげる女性。すると黒服を着た、恐らく女性の護衛らしき屈強な体をした男が二人が現れた。

 

「あ、あいつをどうにかしなさい!!」

 

 護衛の男達に命ずる女性。男達は命令どうりに取り押さえようと近づくが数秒後二つの悲鳴が響き、二人の護衛が血を流し倒れていた。  

 一方でスーツ姿の方の男は痩せた体型をしており特別な武術を使っているわけではないのだが、実は見えない硬い鎧を体にまとっていた。

 

(どいつもこいつも、女の言いなりになりやがって...)

 

 男はつい先日まで中小企業に勤めていたごく普通の人間だった。だが、ある日普通に道を歩いていたら見知らぬ女性に荷物を持てと命じられ、断ったら警察を呼ばれ逮捕されてしまったのだった。何を言おうが誰も聞いてくれない、家族も信じてくれず何もかもを失った、しかし今は力を手にした。この世界を腐らせた元凶共を駆逐する力を。

 

「や、やめて!! お願い!! お金なら上げるから!!」

 

 

 怯えている女性の声を無視し髪を引っ張り無理やり立たせる。

 

「こ、ころさないで!! 助けて!!」

 

「...お前みたいのがいるから...」

 

 拳を振り上げ容赦なく女性の顔面を殴り顔の骨が折れる。

 

 ベキッ!!

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

 骨の折れた音がしそれでも男は殴るのをやめない。心の中でこれまで失った物を数え殴り続ける。

 

 家族と友人との信頼。 

 社会における地位

 そして、男としての尊厳や止まる事のない憎しみ。

 

「が、ぎゃ...」

 

 殴り続けて顔が潰れた女が気絶しているのを見て道端に投げ捨て男は止めを刺さずその場から立ち去る。命を奪わなかったのは男の慈悲ではなく、人前で出れない顔で一生苦しめと酷い仕打ちであった。

 

「まだだ、まだこれだけじゃ社会は変わらない...もっと、もっと力を...」

 

 再びつぶやきながら道を歩き立ち去り翌日の新聞やニュースに出ていたが実は同様の事件があちこちで起こっていた。

 

 被害者は主に男性をアゴで使っていた女性がほとんどであり、犯人が特定でき逮捕しようとしても返り討ちにあって死亡者も出ていた。ついには軍隊も出現し怪力で次次と兵を殺す犯人をやもなく射殺する事態も起こっていた。

 

 そして、犯行をしていた者達の背には不思議な焼印がーー竜の蹄の紋章があり謎は一層深まるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

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