麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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番外編 2 織斑マドカ

 「死ね!!」

 

 「おいおい、これで何回目だよ...」

 

 束の研究所にて、一人の少女が包丁を持ち一夏に襲いかかる。

 

 一夏はうんざりとした様子で皿をテーブルに置き、蹴りで少女の持つ包丁だけを狙い包丁が床に刺さる。

 

 二日前、ファントム・タスクの誘いに乗りそこで連れて帰ってきた少女ーー織斑マドカは自分を無理やりここに連れてきた一夏を激しく睨む。

 

「たく、もうじき食事だから待ってろよ」

 

「うるさい!! さっさと私のISを返せ!!」

 

「だから、それは修理中って。それに、お前ここに来てからロクに何も食べてないだろうが...」

 

 再び調理の準備を再開する一夏。マドカは地面に刺さった包丁を抜き一夏の背中と包丁を見る。

 

 実はこの二日間。マドカは執拗に一夏を殺そうとし何度も挑んだのだが、全て返り討ちに合うか、今みたいに適当にあしらわれてしまっていた。

 

 夜中に部屋に忍びこみ喉元を切ろうとするも、持っていたナイフを折られ部屋から放り出されたり、束達と食事をして油断している隙を狙い背後から狙うも叩き潰されてしまい何一つ傷を負わせることができなかった。

 

「くっ!!」

 

 マドカは包丁を持ったまま台所から出て行き、外に出る。どうやらここはどこかの孤島らしく近くには飛行機や船などは通っていない。研究所に忍びこみ仲間に連絡を取り助けを呼べばいいのだが、マドカはそれをせずひたすら一夏を狙う事だけ考えていた。

 

(なぜだ? 奴は何の目的で私をここに、それに何故私は奴ばかりを...)

 

「おーい、飯ここに置いとくぞ?」

 

 と、一夏がマドカに声をかけお盆をその場に置いて中に戻る。マドカは用意された食事には手をつけず、ずっと海を眺めるのであった。

 

 

「たく、あいつ包丁ぐらい返せよ...」

 

「いっくん、あの子どう?」

 

 通信機から束の声が聞こえ、一夏は言葉を濁し「まぁまぁ」だと答える。

 

「でさ、あの子のISなんだけどいいの? 黒騎士に使う予定だった装備使って?」

 

「いいですよ、多分アイツは中途半端な物は嫌がると思いますし。それに、アイツを...マドカを連れてきたのは俺の責任ですんでなんとかします」

 

    

 そう言って一夏は通信を切り、夕陽に照らされる海を眺めるマドカの後ろ姿を見るのであったーー

 

 

 いつしかマドカは眠りにつき夢を見ていた。

 

 織斑千冬の血から作られ、クローンとして生まれたマドカに待っていたのは道具としての扱いだった。組織から戦闘に関する訓練からISの操縦まで、休む間もなくマドカを人間扱いせず鍛え上げ、さらに命令違反や脱走を防ぐため体内にナノマシンを入れられるなど命まで握られ、孤独の中マドカは苦痛と恨みの矛先をいつしか千冬や秋人に向けるようになり、本格的に心まで人でない道具と化していた。

 

 しかし、突然現れた一夏のせいでおかしくなってしまう。

 

 まるで自分を人として接する一夏を見て胸が苦しくなりマドカは目を覚ます。

 

「私は...ただ、与えられた任務を遂行する道具だ...それ以外の何もないはずなのに...」

 

「お前は道具じゃない」

 

 と、一人ごとをつぶやくマドカの隣りに一夏が寝そべっていた。マドカは慌てて離れ包丁を構える。

 

「き、貴様!!」 

 

「束さんやクロエさんからお前がクローンだって聞いた時は驚いたよ、本当に千冬姉ぇそっくりだな」

 

「だからどうした!! 私は織斑千冬を殺し、お前たち兄弟も殺すんだ!!」

 

「...なぁ、それでお前は満足なのかよ?」

 

 一夏が立ち上がりマドカに近寄る。

 

「例え俺達を殺したとして、お前には何が残るんだよ? それが、本当のお前の希なのかよ?」

 

「う、うるさい...」

 

「お前の本当の事を言えよ!! お前はどうしたいんだよ!? 」

 

「うるさい!! 貴様には関係ない!!」

 

 マドカは大声を上げ包丁を握りしめ一夏に接近する。そして、一夏は避けもせず包丁が脇腹に刺さり、血が流れる。

 

 マドカは一夏が何故避けようとしなかったのか疑問に思っていると

 

「関係なくはない、俺とお前は兄妹だろうが!!」

 

「きょ、うだい?」

 

「お前の血は千冬姉のもんだろ? だったら兄妹見たいなもんあろうが...」

 

 脇腹に刺さった包丁を抜き、一夏はマドカを強く抱きしめる。マドカは一夏の暖かさに触れ二人はしばらく抱き合うのだったーー

 

「...」

 

 温め直した食事を黙々と食べるマドカと、脇腹に包帯を巻いている一夏。

 

「そんじゃ、食べたら部屋戻れよ」

 

 と言い、一夏は傍に置いてある酒瓶を一瞬見た後、その場から去る。そして、久ぶり食事を摂ったせいかマドカは再び眠りにつくーー

 

 

 「...なんだ、ここは?」

 

 マドカは何時の間にか花畑の中心に立っており、呆然としていた。また夢なのかと思いつつ花畑を静かに歩く。

 しばらく歩き続け誰もいない、まるで自分だけが世界に取り残されたかのように思いにマドカは身を震わせその場に膝をつきーー突然背後に何かが落てきた。

 

 ドォン!!

 

「!?っ」

 

「うはっ!! 俺の肉が!!」

 

 大きな風呂敷を背負い、手に肉を持った男が叫ぶ。マドカは目の前にいる男が敵なのか迷っていると、男がマドカに気づく。

 

「ふぐ? ふぁえだ、おふぁえ (ん? 誰だ、おまえ?)」

 

 肉を食いながらしゃべり何を話ているのか分から無い。なんなんだ、この男は?

と思っていると、男の背負う風呂敷から酒瓶が落ちマドカの足元に転がり拾う。

 

 酒瓶は調度一夏が持っていたのと似ていて眺めていると、肉を飲み込んだ男がマドカに

近づく。

 

「わりぃ、わりぃ。それ俺のだ。昔エース達と盃で飲んだのと似ていたからな、ありがとな」

 

「盃?」

 

「あぁ、一緒に酒を飲むと兄弟になれるんだぞ!! そんじゃな!!」

 

 と名も知らぬ男は去って行く。そして、残されたマドカは男が言った盃の事と、一夏が持っていた酒を思い出し、何かを考えたところで目が覚めてしまう。

 

 

 「...アレは、夢なのか?」

 

 花畑の事の事を思いだし、部屋の隅に置いてある酒瓶を見るマドカ。

 

 「おいおい、そんなところで寝たら風邪ひくぞ?」

 

 二つの盃を持った一夏が声をかける。そして、一夏は酒瓶を持ち視線をそらしながらマドカに声をかけた。

 

「その、なんだ...知ってるか? 一緒に酒を飲んだら兄妹になれるってさ。昔知り合いに聞いたんだ、だから...」

 

「分かった」

 

 マドカは短く答え一夏から一つ盃を取る。一方で予想外なマドカの反応に呆然とする一夏だが、すぐに笑を浮かべ酒瓶を開け自分とマドカの盃に酒をついで二人は盃を飲み干した。  

 

「よし、これで俺達は本当の兄妹になったんだ。だから、もうお前は一人じゃないからな? マドカ」

 

「...あぁ」

 

 そっけいない態度だが、道具として作り出された少女の心は人に戻ろうとしておりマドカの表情には小さな笑が浮かんでいたーー 

 

  

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