麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

37 / 65
 


三十四話 IS学園の日常

「てぁぁぁぁぁ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 学園のアリーナにて、鈴の甲龍(シェンロン)と、秋人の白式が飛び交う。甲龍の肩にある龍砲から放たれるが、砲弾を察知した秋人が回避し、雪片を握りしめ接近する。

 

「くっ!? なんでさっきから当たらないのよ!?」

 

 攻撃が一切当たらない事に焦りを感じつつ、両刃の青龍刀、双天牙月を持ち、白式の雪片と何度かぶつかり互に引かない。

 

「僕だって!! 少しは強くなっているんだ!!」

 

「私だって負けないわよ!!」

 

 互いに声を上げ戦意を見せるが、二人の顔には笑みが浮かんでいた。

 

鈴は幼馴染みの成長を心から嬉しく思い、秋人はやっとISの戦闘で鈴達に追いついた事を実感し、同時に彼女達に心の中で感謝をしていた。

 

「行くぞ!! 鈴!!」

 

「来なさい!!」

 

 白式を第二形態移行(セカンドシフト)させ、雪羅(せつら)の荷電粒子砲を構え二人の戦いはさらに激しくなり、結果はーー

 

 

「くぅ...エネルギー切れで負けるなんて...」

 

「でも、操縦はかなり上達してると思うよ」 

 

 夕陽に照らされ、学園の屋上でベンチうなだれる秋人を慰めるシャル。

 

 白式はもともと燃費の悪い機体で、しかも第二形態になってからはさらに燃費が激しいのだが、秋人は勝負を焦りエネルギーの残量を考えず戦ってしまい。エネルギー切れで敗北。

 

「だが、相変わらず嫁の動きは異常だ。なぜそこまで相手の動きが読めるのだ?」

 

「それは...」

 

 試合中に見せた、相手の攻撃を完璧に避けれる秋人にラウラがうなる。

 

 まだ、一夏から覇気の力について聞いていない秋人や、今はここにいない同じ力を持つ簪もわからず、未だに困惑していた。

 

「って、いけない。そろそろ面会時間が...」

 

 秋人が何かを思い返し、箒達に一言告げ屋上から出て行く。

 

「そういえば、千冬さんの退院もうすぐだったな...」

 

「そうですわ!! 先生の退院をクラスでお祝いしませんか? 例えば、皆で料理を振舞うとかはいかかでしょうか!?」

 

「「「「いや、それはダメだ!!」」」」

 

 セシリアを除いた、四人の少女達の反対する声が屋上に響き、段々と日が傾く。

 

 

 

 そして、秋人は学園内にある医療施設に入り、千冬のいる病室を軽くノックし、中に入る。

 

「姉さん、調子はどう?」

 

 イスに座り外の景色を見ていた千冬が秋人に気づき、彼女は大丈夫だと告げる。

 

「もうすぐ退院だって聞いたけど、何か必要な物ってあるかな?」

 

「あぁ、大丈夫だ...それにしても。弟にここまで心配されるとは、私も落ちぶれたな...」

 

 力なく笑う千冬を見て、慌てて秋人が話題を変える。

 

「そ、そんな事言わないでよ...そ、そうだ!! 今度、皆で僕らの家に行くんだけど、何か取ってくる物ってある?」

 

「家に、だと?」

 

 千冬が眉をひそめ秋人を見る。と、ここで千冬が一夏が海賊をしていたまでは知っていたが、天竜人のシンボルについてまだ知らないのを思い出し、病室にあったメモとペンを持ち、竜の蹄を描き千冬に見せた。

   

「でも、未だに信じられないよ...異世界で、海賊だなんてさ...? 姉さん?」

 

「これは...」

 

 千冬の目が大きく開かれ、何かに驚く。彼女の脳裏には幼い頃の記憶蘇っていた。

 

 母の背中にあった同じ焼印。そして、今は顔もまともに思い出せない父の持ち物にもまた同じ印があった事をーー

 

 その後、面会時間が終わり、様子がおかしい千冬の病室を後にする秋人。あの絵について何か知っているのか聞きたがったが、千冬から戸惑いを感じ、聞くべきではないと思い聞かなかった。

 

「あら、秋人君」

 

 自室に戻ると楯無があたりまえのように、椅子に座っていた。手に持つ扇子には「おかえりなさい」と書かれており、とりあえずなんでここにいるのか? 聞いてみたが軽く無視されてしまう。

 

「ところで~~…一夏君から何か連絡きてないかしら?」

 

 何故か楯無は、秋人と会う度にこの質問をしてくる。自分から一夏の居場所でも聞き出そうとしているのか…とにかく、こちらから一夏に対して連絡手段がないため、正直に返事をすると、楯無はがっかりしたように目をそらした。

 

「えっと、用事はそれだけですか?」

 

「ううん、もう一つ…秋人君にも伝えようと思って。ねぇ、秋人君。最近起きてる事件の事知ってるでしょ?」

 

「あ、はい...異常な力を持った人達が襲ってるて...」

 

 

 事件と言うのは、主に女尊男卑に染まった女性。又はIS関連の権力者達が次々と襲われている事だ。犯人達は、ISにより地位や名誉を失ったり、被害を受けた者が中心で、彼らは異常な身体能力を持ち、事件は世界中でも広まっていた。

 

 

「でね、これなんだけど」

 

 と、楯無がどこからか書類を取り出し秋人に見せる。 

 

 書類には事件について書かれており、拘束した犯人達にはいくつか共通点があった。 一つ目は、事件を起こす前まで行方不明になっていた事。二つ目は彼らの背には、ある焼印がされていた。

 

「この印は...」

 

「そう。一夏君が話してくれた竜の蹄と同じ...これって偶然かしら?」

 

 まるで問い詰められている気がして、無意識に拳に力が入り秋人は「知らない」と一言だけ言い、首を横に振る。

 

「ごめんなさいね? もしかしたら、何か知ってるかなって思って...」

 

「いえ...」

 

 そこから二人は無言になる。秋人は、視線を合わせないよう書類をみつめ、楯無は息をのみ何かを伝えようか迷っている様子だった。

 

 書類には続きがあり、異常な力を持った者達が武装した状態でISを落としている事も記載されていた。

 

 生身の人間が、世界最強の兵器を倒すなどあるのだろうか? と思った瞬間。生身でISの剣を使い、三体ものISを撃破した人間を一人思い出し声を上げた。

 

「気づいたと思うけど…生身でまともにISと戦える人間。そして、彼らの背にある印を知る人は...」

 

「兄さん...」

 

「...ごめんなさいね、私帰るわ」

 

 空気が重くなり、書類を持ち部屋から出る楯無。一人、残った秋人は深刻な表情を浮かべてベッドに腰かける。と、ドアがノックされ秋人が立ち上がり、扉を開くと

 

「箒...」

 

「だ、大丈夫か...」

 

 秋人の疲れている顔を見て心配する箒…秋人は「大丈夫だよ」と短く答え、箒を部屋に入れる。

 

「それで、どうしたんだよ急に?」

 

「あ、いや...その...一夏から、何か連絡はきてないか?」

 

 楯無と同じ事を聞かれ、秋人は黙って首を横に振り答える。

 

「そ、そうか...と、ところで秋人、もうすぐ千冬さんの退院するだろ? それで、クラスで...」

 

「ごめん、箒...今、一人にしてくれないか...」

 

箒の言葉を遮り、秋人が気だるそうに告げる。様子のおかしい彼に、どうしたのかと聞くが。

 

「ほんとにごめん。今、考える事が一杯で...」

 

「...わ、わかった...」

 

 秋人を心配して見つめ、箒は部屋から静かに去る。一人になった秋人はベッドに横になり大きく息を吐き出し目を閉じる。

 

「...何やってんだろ僕は...」

 

 偶然触れた事でISが動き、そのせいでIS学園に入学して。そして、姉である千冬が初めて教師なのを知り、しかも担任になった時はかなり気まずかった。

 

 誘拐された時。兄と自分を見捨てたわけではなく、政府から誘拐の事を伏せられて知らなかったのは聞いたが、それでも最初は許す事ができなかった

 

 学園生活の中、自分を助けてくれた一夏をまるで忘れたかのように振舞う千冬を見て怒りが湧いたが、千冬が瀕死の状態になった時には、死なないで欲しいと強く願い、それ以降は少しだが、千冬を許すようになっていた。 

 

 そして、死んだと思っていた一夏が生きており、自分と同じくISを使っていた。しかも異世界で海賊をしていたと話を聞かされた時はかなり驚いてしまった。

 

「兄さんと一緒にいた人達ってどんな感じだったんだろ?」

 

 三本の刀を持った剣士、長い鼻をした狙撃手。さらに、強欲で子供に優しい航海士や料理を担当するコック。さらに、一夏を海賊へと導いた船長。

 

 兄の話を思い出すうちに、秋人はいつしか眠りについていたーー

 

 

「...ん? あ、あれ?」

 

 秋人が慌てて起きると、そこはベッドの上でなく。花畑の中だった。 

 

 「ここ、どこ? ...まさか、夢?」

 

 すぐに夢だと気づき、秋人は目が覚めるまでどうしたらいいのか と考えていると

 

 「ん? 誰だおめぇ?」

 

 後ろから声がして振り向くと、赤い上着に胸に✖の傷をつけた男が立っていた。不思議な夢だな…と、秋人が思っていると、目の前の男が

 

「ん? おめぇ、イチカか?」

 

「!? 兄さんだって!?」

 

 「兄? ...あぁ、そういえば…アイツ、弟がいたって言ってたな...まぁ、いいか」

 

 目の前の男から予想外の事を聞き、呆然となる秋人。

 

「それにしても、アイツに似てるな、おまえ。」 

 

「え? ちょ、ちょっとまって!! あなたは一体? それに、ここはどこなんですか?」

 

「あぁ俺か、俺は...」

 

 と、ここで秋人の視界が歪み。目を開け慌てて起きるとべッドの上だった。

 

「...やっぱり夢だったんだ...」

 

 真っ暗な部屋の中、夢の事を思い出し秋人は

 

「ルフィ...」

 

 と、男の名を口にするのであったーー

 

 

 

 そして、場所が変わり。

 

「ったく、あいつらから手に入れたデータ。役に立たねぇし...」

 

 森の中にある半壊した建物から、黒騎士を展開し立ち去る一夏。実は先日、亡国機構(ファントム・タスク)から手に入れた情報を元に、革命軍を追っていた。

 だが、情報のあった隠れ家についたのだが、既に建物には「処置」がされており、何も手がかりを得ることができなかった。

 

「流石に一人じゃ探すのキツいな...けど、アイツのISはまだ完成してないし。それに束さんに頼んだ新兵器もまだだしな...」

 

 一夏はマップを展開し、唸る。革命軍に関わる場所は世界中に無数に点在しており、これらをしらみつぶしに探していたらキリがない事にため息をつくと、

 

 ぐ~~っ…

 

「...腹減った...」

 

 漆黒の夜空に腹の虫の音が響く。「とにかく先に飯だな」とつぶやき、一夏は日本のとある場所に向かうのであった。

 

 

 

  

 

 

    

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。