麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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四十一話 霧の海と疑問

「しかし、深い霧だな~~」

 

 霧がかかる魔の海域にて、黒騎士を操縦する一夏がぼやきながら進む。以前、ファントム・タスクのオータムとの取引で手に入れた革命軍の情報を元に世界中を回っていた。既に廃棄された研究所や人目のつかない秘境に作られた基地に潜入したりした。

 

「連中の狙いはサミットだが…ここに、仕切っている奴がいれば…」

 

 既に革命軍の次の狙いは分かっていたが、そちらは別の方に任せると判断し霧の奥に進むと、黒騎士に異変が起こる。ディスプレイの表示に歪みが生まれ、機体が安定せずどんどん降下していく。

 

「何!? っしかたね!!」

 

 機体の操作が不能になる前に、一夏は黒騎士を解除し体術の一つである月歩で空中を移動する。突然のことで驚きつつも海に落ちなかった事に安堵しながら足を高速で動かし一夏は進んだ。

 

「あぶねぇ…海に落ちたらまずかった、一体何が起きた…ん?」

 

 海上に煙をあげ、沈みかかっている軍艦を見つけ一夏は艦の上に着地した。束に連絡を取ろうとしたが、通信が入らない。ISの製作者である束の黒騎士や端末が作動しないとなるとそれほど強力な何かに妨害されているのに気づき舌打ちをする。

 

「やっぱり罠か」

 

 月歩を使いこの海域を抜けるには遠すぎる、かといってこの今にも沈みそうな船を使っても近くの島まで行けるか分から無い。移動手段を失い、ため息をつきながら船の中を探索してみた。

 

 倉庫には脱出用のボートはなく、船室には船員達の物や備品があちこちで散乱しており

誰一人もいない船の中は不気味だった。やがて、荒れ果てた操舵室に入り電源が生きていたPCの記録を見てみた。

 

「「敵襲だ!! IS部隊、応戦を!!」

 

「「せ、船長!! ISが、ISが作動しません!! 」」

 

「「それどころか、操縦者達が海に!! 早く救助を!! うわぁぁ!!」」

 

 映像には、どこからか攻撃を受け慌ただしく走る船員達と悲鳴の声が聞こえた。さらに、船の上空で待機していた数機のリヴァイヴが力なく海に落ちる姿まで映っている。

 

「「だ、だすけて!! き、機体が動かない!! 」」

 

「「いっ、いや!! み、水が!!」」

 

「「き、機体から出れない!!  」」

 

 水中からの防御機能まで動いてないせいで、操縦者達は鉄の塊を身につけたまま海に沈んで行く。仲間であった他の二隻の軍艦は霧の中からの攻撃により爆発を起こし音を立てながら沈む。それから、艦長らしき人間が退避命令を下し操舵室が爆発した所で映像が終わる。

 

「機体が動かない…船にいた人間は全員…!?」

 

 突然船が大きく揺れ、一夏が外を見ると島があった。さっきまでこんなに近くには島などなかったはずだが、実は島の方が船に向って動いていた。島の港に当たる所から大きなアンカーが放たれ、船を捕まえると船は引っ張られ島の方に動いていく。

 

「畜生、嫌な事思い出したじゃねぇか!!」

 

 動く島と引っ張られる船の中で、一夏は影を奪う海賊の事を思い出しながら声をあげたーー

 

 

「…やっぱり、サミットか…」

 

 自室のベッドで端末にあるメールを見てため息をつく弾。

 

「ちくしょう、俺はどうしたらいいんだよ…」

 

 弾の頭の中では、自分の所属する組織と戦っている親友の姿があった。学園祭で再開した親友は、自分が犯してきた罪を告げても軽蔑も差別もせず昔と変わらず接してくれた。

 それなのに自分は世界を変える力を与えられ、任務をひたすらこなした。世界を、歪んだ社会を変えるために。だが、弾の中では大きな疑問もあった。

 

 こんなことをいつまでも続けてもいいのか?

 

 最近の革命軍は強化兵の実験が成功したせいか、自分と同じ境遇または社会などから捨てられた者を強化し世界中の戦いに送りこんでいた。限界まで強化された者は、体が耐え切れず粒子となり、開発した研究側は人が消えてしまう事に悲しいなどの言葉を口にはせず、どうでもいい使い捨ての道具をみる目をしていた。

 

 自分は一体何をしてきたのか疑問に思い、悩んでいるとスマホの方に電話がかかり応答すると

 

「「あの、おはようございます…虚です」」

 

「え!? あ、お、おはようございます!!」

 

 思いもよらない人物からの電話に背を正す弾。

 

「「あの、もし無理ではなかったら…一緒にどこかにいきませんか?」」

 

 電話が終わると、弾は慌てて寝巻きから着替え髪を整えて外に出る。家の方から妹の蘭が声をあげるが弾は気にせず走り続けた。強化された体が役に立ち数分でIS学園へ行くモノレール駅に辿りつきそこには私服姿の虚がいたーー

 

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