麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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四十三話 共闘

 霧深い魔の海域を巨大な人口島が進んでいた。島のあちこちには植物や建物などの居住ペースがあり、港では沈没寸前の軍艦の姿があり整備士らしき人間が船の中を調べていた。

 

「どうだ、生き残りはいたか?」

 

「いや、生体反応はない」

 

「残りは島に隠れているやつらだけか、まぁ。強化兵がいればすぐに掃除は済むさ…おい、残っているデータはとっておけよ」

 

 整備士たちが作業をする中、船の外にある森の中に一つの人影があったがそれに誰も気づく事はなかった。

 

 

 ダン!! カチカチ

 

「くっ!! 弾が!?」

 

 弾がなくなった銃を放り捨て、ナターシャは木々の後ろに隠れる。周りにいる少数の生き残りたちがそれぞれ数少ない武器を使い敵に応戦するが、一人、また一人と血を流して倒れて行く。

 

 霧の海でISが動けなくなって襲撃を受けた時、ナターシャら一部の操縦者は機体ごと海に沈む前に機体を捨て、船から脱出した仲間と共に島に上陸し敵に追われていた。ISも船に積んでいた武器・弾薬もほとんど海に沈んでしまい、わずかな装備で数時間も応戦していたが弾もなくなり限界が来ていた。

 

「こんなところで…隊長…」

 

 クラリッサは岩を盾にし狙いをつけ引き金を引く。

 

 しかし、防弾チョッキを着込んだ敵兵はまるで予知したかのように弾丸を避け近づいてくる。訓練されたIS部隊の副隊長をしているクラリッサやその他の生き残りたちも敵が化物に見え恐怖すら感じていた。実際に味方の何人かが素手での攻撃を受けただけで骨が砕け、中には悲鳴をあげる暇もないまま絶命したものもいた。

 

「だ、誰か…」

 

 ナターシャは銃弾の嵐の中呟く。今この場に来てくれるか分から無い、黒のISをまとった人物の事を思った。

 

「ぐぁぁ!!」

 

 傍で援護していた一人の仲間が、上から飛び降りて来た敵に襲われ動かなくなる。そして、ナターシャの背後にも敵がおり彼女は背後に気づく前に気を失ったーー

 

「うっ…」

 

 天井の眩いライトに気づき、ナターシャは目を開けた。

 

「ナタル!!」

 

 と、傍にいたイーリスがナターシャが起きた事に気づき声をあげる。

 

「っ…ここは?」

 

 気づけば、周りにはほんの数人の仲間たちがいたが皆持っていた武器がなく顔に生気がなかった。そして、今自分がいる窓一つもないドアが見当たらない白い壁の部屋にいる事に気づき自分たちは敵に捕まったと気づいた。

 

「「さて、IS部隊の諸君。少しは落ち着いたかな?」」

 

 天井に窓が出現し、そこに白衣を着た集団が姿を現す。その中で一人、メガネをかけた男性がマイクを持って話しかけた。

 

「「何も、我々はむやみに命を無駄にはしたくはないと考えている。ただ、この場所に委員会に入られると厄介だし、ここは取引と行こうじゃないか?」」

 

 ナターシャたちは話しかけている男を見て驚いていた。その男はかつて科学者であり一時世界に名を広めていた男だったのだが。男の立場を回復させるためISに変わる発明をした所IS委員会から目をつけられ、科学の世界や社会に居場所がなくなり誰も姿を見なくなり死んだと噂されていた。

 

 そんな科学者がどうして、この島に? 革命軍の施設にいるのか疑問に思っていたが、男は彼女達に提案を言う

 

「「君達の持つ情報をこちらに提供してもらおう、そうすればその部屋から出してあげようと思うが、いかがかな? 」」

 

 仲間達は小声で話し合い、一人、また一人と男に向け要求を飲むと声が上がる。クラリッサら専用機持ち達はそんな仲間にこれは罠だと声をあげるが、ここから助かりたいと思う者達の耳には届かない。やがて、白い壁の一つが開き銃を持った兵達が姿を現す。

 

 男の提案に乗った数人が兵と共に部屋から出て扉しまり、要求を拒み残ったナターシャ達は天井の窓から自分達を見下す男を睨む。

 

「「そんな顔をしなくても、君達も彼らと共に行けばいいと思うのだが。君達はまだ若い、命は無駄にするものではないだろう?」」

 

「ふざけんな!!」

 

「彼らをどうする気なの!?」

 

「「彼らの事より、自分の心配をしたまえ。それでは、私は忙しいので」」

 

 それだけ言うと天井の窓が消え、部屋の扉も閉まる。やりきれない悔しさからイーリスは壁を蹴り、彼女の声が部屋に響くのであった。

 

「教授、部屋から出した捕虜達はいかがしましょうか?」

 

 先ほどまでナターシャ達と話していた教授と呼ばれた男が、白衣を着た部下に声をかけられ少し考えてから口を開く。

 

「必要な情報を全て吐き出させたら、例の粒子の実験に。どうせ生かす必要のない敵ですから今度は肉体の限界まで注入しましょう。」

 

「よろしのですか?」

 

「私は「部屋からは開放してあげようと」としか言ってはいない」

 

「では、残った専用機持ちの操縦者は…」

 

 別の部下からの声で教授は再び思考し始める。専用機持ちの女性は肉体も精神も丈夫で研究材料には利用できる。だが、いきなり使い潰してはもったいない、もっと何か…そう、自分を社会から追い出した女どもに屈辱と絶望を…

 

「そうですね…彼女達には見せしめに使わせてもらいましょう。ガスと映像の用意を」

 

 教授の指示を受け部下達が準備をしマイクを持ちナターシャ達のいる部屋に声が響く。

 

「「これが最後の警告です。我々に協力してくれるのでしたら。今すぐに…」」

 

「くたばりやがれ!!」

 

 男の声に怒りが燃えイーリスが上を向いて叫ぶ。一度ため息をついて他の専用機持ち達に要求を飲むか確認するが全て拒絶された。教授は部下達に指示をあたえ、再びマイクに向け話しかけた。

 

「「全く困ったものだ、ISと言うくだらないもので女性がここまで堕ちぶれるとは…せめて来世ではまともな人間になりなさい」」

 

 それだけ言い、マイクの電源を落とす。そして、部屋の空気調整から紫色の霧が徐々に出てきた。

 

「ど、毒ガス!?」

 

 誰かが、叫びパニックに陥る中毒ガスはどんどん部屋に充満されていくーー

 

「…ここで強化兵を作ってた訳か…」

 

 研究資料がまとめられた部屋で一夏は端末を操作しこの島で行われていた研究のデータを眺めていた。世界中にあちこちに出現する黒い穴。

 

 そこにエネルギーを加えると人の潜在能力を引き出す高エネルギーの粒子を採取し多くの被検体達を使った強化兵の作成。さらに高エネルギーを解析し、剥離剤の技術を応用して作られた対IS用兵器「グングニール」は一度発動すると広い範囲でISを展開できなくなる機能があり既に量産され世界中の紛争で使われていた。

 

「グングニール、こいつのせいで黒騎士がおかしくなったのか…他には…っち」

 

 さらに情報を引き出そうとしたが、アクセスができなくなり一夏は資料室から素早く去り近くまで武装した兵が近づいていた。

 

 その後、身を隠しながら施設の中を進む。基地の奥で機動されているグングニールを破壊しないとこの島では黒騎士は使えないし脱出もできないが

 

「まぁ、自力で飛べば帰れるか…ん?」

 

 一つの部屋の前に複数の見張り達がいた。彼らは壁に付けられた端末を見て何かを言いながら笑っており一夏が部屋の気配を感じると、人の苦しんでいる気配を感じた。

 

「さて、そろそろガスが充満する頃だが」

 

「へっ、女なんざISがなかったら弱いもんだな」

 

「今まで俺達をコキ使いやがって死んで侘びやが、ぐへっ!!」

 

 背後から足技だけで見張り達を気絶させる。男達がみていた端末には紫色のガスが充満した部屋で人が倒れているのが映り一夏は光剣を抜き、分厚い壁を切り壁が倒れ紫色のガスが外に流れた。

 

 毒ガスのせいで部屋の中で倒れていた者達は突然部屋の壁が崩れたのに驚き顔を上げるとそこには光輝く剣を持った一夏の姿があり。部屋にいた全員が呆然としていた。

 

「おい、生きてるか?」

 

「だ、だれ…」

 

「そ、外に、外に出れるぞ!!」

 

 部屋から出れることに気づくと気力が残っている者が倒れている仲間を支え部屋の外に出て大きく咳き込む。と、少しだけ落ち着きを取り戻したナターシャが一夏の方を見て

 

「あ…あなたどうして…」

 

「まぁ偶然通ってたら…って、とにかく逃げるか」

 

 基地内部で警報がなり、どこからか声や足音が聞こえた。このままここにいても捕まるだけと判断しクラリッサ達は一夏が倒した兵から銃や無線を奪いその場から逃げようとするが毒ガスのせいでイーリスら何人かが足がふらついていた。

 

「仕方ねぇ、行くぞ!!」

 

「な、何を!?」

 

 イーリスや何人かを抱えて走る一夏。突然年下の男に体を持たれて普段女性らしい事はしないイーリスの顔が赤くなり、他の抱えられた者も同様の反応をしていた。

 

「いたぞ、やつらは…ぐはっ!!」

 

「邪魔だ!! どけ!!」

 

 現れた敵兵を蹴り飛ばし、突き進む。手が塞がっているため蹴りのみで応戦し、背後からクラリッサらが敵から奪った銃で援護をするなどして進む中、彼について来ている女性達の心の中ではーー

 

(彼が織斑一夏…織斑教官の弟であの黒騎士の操縦者…)

 

 後ろからついてきているクラリッサが冷静に一夏を見て何故彼がここに? どうして自分達を助けてくれたのか分析するが、人を数人抱えながら自分達が苦戦していた敵をほとんど一撃で黙らせている足技に驚く。

 

(つ、強え…)

 

 抱えられているイーリスが、次々と倒されている敵兵と一夏を見る。人を抱えているのに汗も息すら切らせていない。しかも、敵が撃った弾が自分達に当たらないように動き理由は知らないが守ってくれていた。IS乗りの一人として、世界中を騒がせていた黒騎士とは戦って見たかった彼女だが、その気持ちが別の物に変わろうとしていた。

 

(…やっぱり、優しいのね)

 

 イーリスとは反対の手で抱えられているナターシャが呟く。福音を革命軍の手から返してもらい、さらに自分と仲間達の命を救ってくれた一夏を思うと胸が熱くなる。福音を返してくれた礼も言いたい。けど、今は一夏の事をもっと知りたい。

 

 敵の基地を駆け巡る中、各国のIS乗りの女性達は一人の海賊に夢中になるのであったーー

 

 

「驚いた、あなた医療知識もあったのね」

 

「船医に結構教えてもらったからな」

 

 薬の保管庫らしい部屋で一夏は薬棚にあった薬を使い毒ガスで苦しんでいるナターシャ達の仲間の解毒をしていた。どうにか安全な場所を見つけ身を潜めてこの島からの脱出方法について話し合うが

 

「グングニール…そんな兵器がこの島で」

 

「まさか世界中で起きている紛争も、やつらが…」

 

 革命軍が開発した対IS用兵器を知り、愕然とした。剥離剤以上の効果を持つこの兵器がある以上この島からの脱出や外部との連絡などできない。そもそも、今彼女達はISを持っておらず、この島にいる強化兵達とまともに戦っても勝目はない。一人を除いては。

 

「とにかく、グングニールを破壊しないと俺はともかく、お前らが出れないからな…」

 

「え? 黒騎士は使えないはずじゃぁ…」

 

「俺は自力で飛べるからいいんだよ」

 

 一夏の言葉に彼女達は疑問に思った。自力で飛ぶなど、一体どういう事か聞こうとするが一夏は部屋の奥に行って薬品棚をいじり答えない。と、ナターシャが一夏の隣に立つ。

 

「ねぇ…」

 

「ん?」

 

「その、お礼がまだだったわ。本当にありがとう」

 

「別に、助かったんだから気にすんな」

 

「今の事もだけど、あの子を、福音を返してくれてありがとう…ところであなたの目的ってなんなの? それに、あなたは今までどこで何をしていたの?」

 

 一夏の顔を真剣に見つめる。そこには、国家代表としてのナターシャではなく、ただ一人の女としての彼女がいた。背後では隠れて聞き耳を立てるイーリス達がおり一夏は聞き耳を立てている事に気づきながら答えた。

 

「海賊やってた。今でもそうだ、船員達とは別れたけど、俺の冒険は終わっていない」

 

「海賊? 冒険?」

 

 一夏の顔は真剣でふざけて答えている気配がない。

 

「それに、俺にはやることがあるしな。そのためにもここまで来たんだが…」

 

 そこ言葉を切り、無言になる。喋りすぎたかと眉をひそめてナターシャから目を背け薬棚に手を伸ばそうとした時

 

「その、あなたのやるべき事が終わったら…私と一緒に軍にこない?」

 

「冗談、俺は海賊だ、海賊は自由にやってこそなんだよ」

 

 なんのためらいのない返事をし、いくつかの薬を持ってイーリス達の所で戻る。聞き耳を立てた者は慌てて横になる。一夏から渡された調合した薬を使い苦痛や疲労を和らげイーリス達は動けるようにまでなった。

 

「なぁ、あんた。どうしてそんなに強いんだよ?」

 

「言っただろ、俺は海賊だって。それだけだ」

 

「で、では私達に協力を…」

 

 元気なったとたん、イーリスやクラリッサらから質問が飛ぶ。一夏は適当に答えるが、その他の者から「助けてくれ」「私達の仲間に」など声が上がり、勝手に作戦会議に参加させられる。

 

「やはりグングニールの破壊を…」

 

 

「まずは装備と、我々のISの奪還、そして本部への連絡手段を確保を」

 

「ミスター織斑の情報によると…」

 

「それと、他の隊員達の救出もだ」

 

 敵地の中でまともな戦力も援護もない状態なのに、彼女達の顔には絶望の色はなかった。基地の構造を頭に入れながら作戦の内容ができ、一夏は仕方ないと諦めた様子でため息をつき行動を開始する。

 

 一夏から得た基地の情報を元に彼女達は二つのチームに別れる。一つは自分達のISや装備を確保し残りの仲間達を助けるクラリッサが担当するチーム。もう一つは基地内部にあるグングニールの破壊をする一夏のチーム。

 

 グングニールは基地に最新部にあり、もっとも警備が厳しく慎重に進むべきだが

 

「おらっ!!」

 

 一夏は通路の壁の壁を切り裂いて突き進む。迎撃にくる兵士達を容赦なく蹴り、殴り一人でどんどん先に進んでいく。

 

「…むちゃくちゃだわ」

 

 保管庫から出てきたナターシャが呟く。破壊作戦に行くはずの彼女達は一夏に置いてきぼりにされてしまった。恐らく彼女達が足でまといと思い、一人で行ってしまったのだろうが、いくら一夏が強いと言っても数が違いすぎる。

 

「行くわよ!! 彼だけにやらせる訳にはいかない」

 

 僅かな装備を手にし、ナターシャ達は一夏の後を追う。

 一方で、一夏が起こしている騒動に基地にいる革命軍達は焦っていた。

 

「くそ!! こいつは化け物か!!」

 

「強化兵を出撃させろ!! 奴を抑えろ!!」

 

 司令室では、怒鳴り声と警告音がなる中。ある男女だけが冷静に監視カメラに映る一夏を見ていた。赤毛の女性、アリーシャは腕に抱いている白猫を優しく撫でながら怪しい笑を浮かべながら部屋を出ていく。

 

「ふむ、あれが黒騎士のパイロット…強化兵を相手にしているあの力…調べたい物だ…」

 

 教授は一人、何かを考えてつつ部屋を出るアリーシャの後ろ姿を見て。

 

「まぁ、最悪死体でも検査する価値はあるか…」

 

教授はカメラに映る基地の奥地まで来ている一夏の姿を見て呟いたーー

 

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