「ぜぇ、ぜぇ…ちくしょう、かなりの数だった」
いくつもの防護壁を切り、迫りくる武装した強化兵達をなぎ払い基地の奥まで一夏は一人で来ていた。目の前には分厚く巨大な扉がありこの奥に目当ての物があるのかと思い、剣を構えるが、突如扉が勝手に開き中から誰かが来る。
「なんだ?」
「ふふ、待っていたサ…」
赤い髪に着物のような服を着た美女が笑を浮かべながら扉を潜ってきた。
アリーシャ・ジョセスターフ。これが彼女の名で、かつて一夏が誘拐されたモンド・グロッソにて千冬の決勝大会の相手であり、千冬に敗北した女性。
一夏は彼女の事はしらないが、剣を下ろし「あんたも革命軍か?」と声をかけるが
「そんなことは関係ないサ、私はただ…」
腰にある刀を手にし、抜刀し襲いかかる。
「おまえと戦いたいだけサ!!」
カキンッ!!
刀と剣がぶつかり、火花が生まれた。アリーシャは刀を高速で振るい、一夏は光剣で防ぐだけで反撃はしない。
「どうした!? 何故、足を使わない!?」
「この足は女を蹴るもんじゃねぇ!!」
アリーシャは、一夏の答えに眉をひそめ刀に力を込め刃が一夏の頬を掠め血が流れる。
今までに戦ってきた強化兵達以上に目の前の女侍は強く、また女性相手にやりづらいと思いながら、アリーシャの背後にある部屋を見ると、巨大な卵のような機械が動いていた。既にデータを見ていた一夏はあれがグングニールだと気づきアリーシャとグングニールを見る。
「さぁ、どうした!!」
再びアリーシャが迫り、アリーシャの刀だけでも折ろうと剣を武装色の覇気で硬化させることで黒剣となり、刀と剣が再度ぶつかった時。金属同時がぶつかる大きな音がしアリーシャの刀は黒く染まって折れていない。
「な!?」
「どうだ、これが私が…織斑千冬を倒すために手に入れた力サ!!」
二つの黒く染まっている刃がぶつかる。二人は高速で動き周り、壁や機材など部屋中に戦いの跡が作られていく。もはや人間離れした二人の激しい戦いを見て、部屋の前に隠れて待機していたナターシャ達は唖然としていた。ISではない剣を使った生身の人間同士の戦闘を前にこれは夢なのかと現実を疑った。
(だが、今なら…)
一人の女性隊員が敵から奪ったグレネードを震える手で構えた。奥の部屋にあるグングニールを狙い引き金を引きグレネード弾が発射し一夏が戦っている部屋を通り過ぎ奥の部屋に入り爆発が起こる。
「あなた、何を!? っ!!」
勝手な行動をした仲間に怒声をあげるが、爆発が収まるとグングニールは無傷だった。実はグングニールの周りには特殊な強化ガラスが張られており、通常兵器ではそのガラスに傷一つすらつけられないほど強固だった。
アリーシャはグレネードを撃った隊員を睨み、「邪魔をするな」と言って、一夏から距離を取りナターシャ達に向け刃を立て急接近する。ナターシャ達が拳銃やグレネードで応戦するがグレネードの一つを刀で打ち返され彼女達の近くで弾が爆発した。
「ぐっ、う…」
爆発のダメージで気絶し動けない彼女達にアリーシャは刀を立て接近し、誰かの体を刃が貫き床に血が流れる。
「なっ?」
「ぐぅ…」
倒れた彼女達をかばうように立つ一夏の脇腹にアリーシャの刀が刺さる。
一夏は吐血してその場に膝立ちになり、アリーシャは一夏に刺した刀を引き抜き、冷めた目で刀を振り上げる
「雑魚を守るために身を犠牲にしたか…この程度とは残念サ…」
アリーシャは残念そうにつぶやき一夏に向け止めの一撃を容赦なく振り落とす、が
「なっ!?」
「まだだ…」
刀を掴んだ一夏の手に異変が起きる。手だけでなく体中に鱗のような物が出て、服を引き裂き背から翼と尻尾が生まれた。
「俺は…さっさと行かないといけないんだよ。だから、どけ…」
顔を上げた一夏の額に角が生え、口から鋭い牙が見えた。異形となった一夏を見てアリーシャだけでなく、倒れていて意識が薄れているナターシャも驚く。
この姿を知る者はこの世界においてはIS学園で黒騎士の機体が自壊した時コアを持って脱出した際に姿を見た楯無や既に説明をしている束達しかいない。
(なん、なの…あのすが、た…)
気絶しまうナターシャに誰も答えないが、この力こそ、あの世界では悪魔の実で自然系(ロギア)より希少とされる幻獣の力。ヘビヘビの実「モデル・ドラゴン」の人型形態だった。
「くっ!!」
アリーシャが能力者の姿となった一夏に再度刀で斬りかかる。一夏は剣でなく鱗がついた片腕のみで攻撃を受け止める。鱗には傷一つもなく、腕を振り上げてアリーシャを吹き飛ばし彼女は壁に激突し倒れる。
(なんだ、なんなのサ!! あの姿は!? あの力は!?)
千冬を倒すために手に入れた力を入れた彼女は刀を杖変わりにして体を震えあがらせながら立ち上がり目の前にいる異形の姿をした化け物をにらむが、一夏はアリーシャを無視し奥の部屋に入りーー
「うぉぉぉ!!」
力を込めた拳で特殊ガラスを一撃で粉々にし、グングニールを光剣で一刀し金属片が大きな音を立て床に落ちた。これでこの島でISを使うことはできるし別行動しているクラリッサ達がISを回収すればここから何とか脱出でき、もうサミットまで残された時間は数時間しかない。
「ま、まて!!」
アリーシャが一夏に掴みかかる、見れば彼女の右腕は義手でありしかもISの技術を元に作られた義手は並外れた力で一夏の腕を強力に掴むが一夏は何も反撃せずアリーシャを見る。
一夏の腕を破壊しようと力を入れながら、アリーシャは一夏にその姿はなんだ? その力は? おまえは何者だと? 次々と質問攻めをした。
この時、彼女は一夏に恐怖を抱いている訳ではなく、一夏のことを知りたがっていた。自身が負けた千冬を倒すため、世界最強の称号など興味なくただ力のみを求め、事故で失った腕を強力な義手にし、世界を変えようとする革命軍に入り体を強化し多くの戦いを潜り抜けてきた。
そして千冬と同等、いやそれ以上の相手が見つかりアリーシャの中では一夏を倒すことそして、女性としての本能か一夏を自分のものにしたいと激しい欲望が生まれていた。戦闘欲と愛欲が混じった感情のまま、アリーシャが武装色をまとった刀で一夏を切ろうとするが、気づけば刀が粉々に砕けアリーシャは静かに倒れたーー
「…嫌になるな、女を殴るのは」
大量の血を流しながらつぶやき、一夏は人型形態から巨大なドラゴンへと姿を変えて気絶させたアリーシャやナターシャ達を背に乗せ崩れて行く基地の外に出ると島のあちこちで火の手が上がっていた。
一方で火の手が上がる島から少し離れた海にてーー
「…あ~あ、なんだか面倒なことになってんな…」
火の手が上がる人工島の傍を、海の上で自転車をこいで進む人影があり。その人影は、氷の道を作りながら人工島に進むーー