麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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四十六話 終わる魔の海域

 

 一夏やアリーシャ達を除いたクラリッサ達は敵のいない指令室にいた。

 念のため罠などがないか確認してから端末に残っているデータを調査していると

 

 「ずいぶんと詰めが甘い…」

 

 クラリッサがつぶやく。革命軍の人間はよほど脱出に焦っていたのか、グングニールの設計図や、革命軍に関係していると思われる組織や企業などのデータなどが残されているのを見て敵は素人なのかと疑うが実際にはそうだった。

 

 革命軍の構成員は、元傭兵や名のある研究者。さらにバックについている資産家などもいるのだが、その他の大半はIS社会から切り捨てられたり嫌気を感じて革命軍に入れ戦闘経験もない素人を強化した一般人がほとんどだった。そのため、あらゆる経験が不足している者が多くこうした証拠隠滅などができていないのもそれが理由だった。

 

 (なんだ、この暗号は…)

 

 ふと、気になるデータを見つけたクラリッサはISに搭載している解読プログラムを使い暗号を解読した。あらゆる軍でよく使われている暗号だったのですぐに解読が終わりデータの中身を見ると

 

 「IS委員会…これは、サミットの警備情報!?」

 

 クラリッサが叫び、部屋にいた隊員たちが集まりデータを見た。

 内容はサミットの警備情報だけでなく、参加者の細かい素性から会場の見取り図。さらに、一部の者にしか知らないはずの会議の内容などサミット全体の重要な情報がすべて記録されていた。しかも、データの一番下にはIS委員会のマークと誰かのサインまで書かれておりこれが本物だと疑う余地はなかった。

 

 「まさか、IS委員会と革命軍がつながっていた…!!っ 隊長!!」

 

 クラリッサは、自身の部隊の隊長であるラウラも警備に参加している事を思いだし、ISの通信システムを作動させるが、すでにラウラ達は会場におり警備中に余計な通信が入らないよう通信に制限がかけられて応答がない。

 

(くっ!! サミットで通信に制限が!! なら軍に報告を…いや、だめだ!!)

 

 首を横に振り、軍に報告しようとした隊員の手を止めた。そもそもサミットがあると言うのに新設された合同のIS部隊を調査に向かわせたのは誰か? そして、自身の所属する軍を簡単に動かせる存在は――IS委員会だった。

 

 サミットの警護を削ぐのが目的だったかもしれないが、IS委員会が自分の抹殺を図ろうとしていたのははっきりした。だが、軍は一体どこまで関与しているのか? まさか、知っていて自分達を見殺しにしようとしたのか? 何にしても、軍に報告し救助を待っても証拠隠滅のために抹殺される可能性が出て誰も結論が出ないまま時間が過ぎていくーー

 

 

 

 朝日が昇らないまだ暗い港で二人の男がいた。

 

「新聞じゃ死んだってあったが…なるほど、ここはお前のいた世界ってことか」

 

 青キジの言葉にうなずく一夏。強い風吹く中一夏と青キジが互いのことを話していた。一夏はこの世界のことを、青キジは自分がどうしてこの世界に来てしまったのかなど。

 

 「まぁ、あれだ。元の世界にいたってやることないし。戻れるまでこっちの世界でのんびりするさ」

 「相変わらずだな…」

 

 コンクリートの上で寝そべる青キジを見て一夏がつぶやく。まだ一味と冒険していた中で出会った青キジことクザンは海軍で大将の地位にいた男だった。かつて三大将と呼ばれ軍の強力な戦力の一つであったが、ある戦争の後に起きた決闘に敗北し軍を去った後でも新世界で何度か会った。

 

 「はぁ、ところでお前さん。こっちの世界でも海賊してんの?」

 「まぁな…そっちこそどうしてたんだよ?」

 「やることないから、世界をぶらついていた。海軍も黒ひげもお前と麦わらたちのせいでいろいろあったからな」

 

 新世界で起きた最後の戦いのことを言っているのだろう。新世界で起きた歴史にも残る最後の戦いがあった。元大将で当時元帥であった赤犬率いる海軍と四皇と呼ばれる大海賊の一人黒ひげの勢力と、麦わらの一味とその傘下の勢力の三つ巴の戦争があった。

 

 かつて起きた元四皇白ひげと、海軍ならび王下七武海の戦争以上に激しく多くの海賊や海軍が戦い、元帥である赤犬が倒れ凶悪な黒ひげを倒し戦争を終わらせて世界の真実を広げ世界を変え、そして海賊王が残した大秘法を手にしたのは今はもうこの世にはいない麦わらの一味の船長だった。

 

「そうか…確かにいろいろあったな…」

 

 黒騎士から古びた麦わら帽子を取りだし眺める。海賊王となった彼が自ら自首をする直前、一夏に渡した物だった。海賊王となった彼もこの帽子を持ち海賊への道を進み、この帽子は彼から一夏に受け継がれた、受け継がれる意思だった。

 

 一夏は目を閉じると数々の冒険が頭をよぎる。初めて出会った町で腐敗した海軍を目の当たりにし、魚人と呼ぶ種族が支配する町を解放するため命がけで戦い。グランドラインに入る際に知らずに悪魔の実を食べ能力者となった。

 

 その後も、グランドラインに入り砂の国で王下七武海の一人が組織した犯罪組織から国を守り、未知の空の世界や政府と戦って、次第に強くなったが一度一味とはぐれ船長のメッセージを受け取り二年間修行をして、最後の海に一味と共に入った。

 

 最後の海、新世界でも王下七武海や四皇など強豪たちと戦いと冒険の連続を終えて今に至る。

 

「で、お前さんは今からどうすんの?」

 

 青キジに声をかけられ、我に返り帽子をしまう。今島には敵はおらずもはやここには用はない、敵の目的はサミットなのは傍で聞き耳を立てているアリーシャからすでに聞いているためサミットに行きたいのだが、問題があった。

 

一つは厳重な警戒の中うかつに近づけば迎撃される危険があり、すでに一夏もIS委員会から敵と見なされているのは知っていた。ヘタをすれば、秋人や箒たちと戦うことになるため正面からの侵入はさける。二つ目は、この島にいるアリーシャやクラリッサ達のことだった。

 

「ISあるから自力で帰れるかもしれないけど…あいつらどうしたらいいんだ?」

 

 聞き耳を立て木の後ろに隠れているアリーシャのことを思いため息を吐く。怪我はまだ治っておらず、クラリッサ達に任せても捕まえられるだけで、革命軍にいたナターシャを安心して任せるわけにはいかない。そして三つ目はーー

 

「たく、二人して何隠れてんだよ」

 

 アリーシャだけでなく、ナターシャも隠れていた。クラリッサ達には怪我を理由に一人だけ一夏の後をついてきて話を聞いていたのだが、話の内容はアリーシャ同様理解できていなかった。

 

(何なの… 海軍? グランドライン? 異世界だなんて…)

 

 異世界などあるわけがないと思うのだが、実際に一夏の生身の異常なまでの強さと、突如現れた青キジと呼ぶ大男の異能の力。新兵器の類を持っている様子もなく数時間経っても彼が凍らせた森と人形達はまだ凍ったままだ。あの時、なぜ自分達を助けたのか一夏が問いただすと「お嬢ちゃんが襲われるのは、目覚めが悪い」とだけ言い、一夏は何故か納得していた。

 

「ナターシャ!!」

 

 と、指令室にいたはずのクラリッサから通信が入りナターシャが慌てて通信に応じた。クラリッサから、指令室で見つけたものを告げられ慌てた様子で一夏達の前に姿を現す。

 

「た、大変よ!!」

「わかってるよ、通信聞こえてた」

「あ~~わり、俺も聞くつもりはなかったんだが、耳に入っちまった」

 

 と、ついでにアリーシャも姿を出し。「IS委員会のことだろ、聞こえてたサ」と、耳が異常な三人に面くらうが、アリーシャはクラリッサ達との通信を開いたまま話しを続けた。

 

「「隊長に早く伝えなければ!! 」」

「「そ、そうだ!! IS委員会ではなく軍に報告すれば…」」

「「今からでもIS委員会に連絡を…」」

 

 指令室にいる隊員達の声を聞き、一夏はため息を吐き、アリーシャは鼻で笑い、青キジは目を細める。そんな彼らの態度を見てナターシャは怒りではなく、何を考えているのか疑問を浮かべていた。

 

「やめとけ、委員会も軍も連絡したらお前ら死ぬぞ」

「まったく、…今更情報を回したとこで信じられると思っているのか?」

「まぁ、今はどこかに隠れてのんびりしとけ」

 

 と適格な判断を告げた。軍も委員会も信じられないこの状況で彼女達が下手なことをして巻き添えを食らう前に釘を刺したのだが、それが逆に一部の者達の感に触ってしまう。

 

「「何よ!! 横からでしゃばって!!」」

「「私たちは命がけで戦ったのよ!! 」」

 

 指令室にいる隊員が怒りの声を出し、一夏達をけなす。そもそも、命がけで戦ったのも、毒ガスで死にかけたのを助けたのは一夏なのだが、これまでの疲労や救援が望めない絶望から半自暴自棄になり、革命軍の基地を制圧した功績を自分の物にしようと実は軍と委員会に報告を入れてしまっていた。

 

後は増援が来て一夏とアリーシャを引き留めて売り渡せば、自分達の評価が上がる。輝かしい将来が来ると思い笑みを浮かべ、異変に気付いたクラリッサが彼女達が触れていた端末を調べ舌打ちをした。

 

「お前たち!! っ!!」

 

 突如島に振動が走る。島に近づく艦隊からの遠距離狙撃が島の一部に当たり爆発が起こり全員がISのセンサーを起動させると島を囲むように五隻の艦隊から無数の戦闘機とIS三機が出撃し島を攻撃し始める。クラリッサやナターシャ達は味方の識別コードを出すが軍隊は攻撃を止めない。

 

「「ねぇ!! 私たちは味方よ!! 攻撃をやめて!!」」

「「この島のデータと、機密情報は手に入れた!! これを委員会に!!」」

 

 状況を理解せず、自分の保身のために通信を開く隊員にクラリッサは怒り、彼女達を気絶させ黙らせる。ISでどんなに通信を入れても無視され、SOS信号などあらゆる手段で艦隊に告げているが何も応答がない。つまりーー

 

「私たちを敵と見なしているのか…」

 

 唇をかみしめるクラリッサ。信じていた軍や委員会に裏切られ、拳を強く握りしめる。ここで応戦すれば誤解が取れず自分達は革命軍の一員と疑われたままで、例え武装を解いて投降しても助かる見込みはない。

 

「隊長、すみません。私は、どうしたら…」

 

 力なくクラリッサがつぶやき、普段から冷静であった彼女の目に涙が浮かんだ時、画面に映っていた一機のISが撃ち落とされた。

 

「「たく、女泣かせやがって…」」

 

 回線が開いたままだと気づいて、慌てて目を拭いていると島の港では黒剣を持った一機のISがいた。黒騎士が空いている手をかざし見えにくい糸を出し警戒して飛んでいた二体のISが動かなくなる。

 

「「あ~~これじゃ、寝られないな…」」

 

 海から魚雷が近づく中、片手を海につけ青キジは

 

「「アイスエイジ」」

 

 次の瞬間、まるで氷河期のように海だけでなく魚雷や五隻の戦艦が凍りついた。突然の事に敵も味方も自分の目を疑ったーー

 

 

 

「お前、いいのか?」

「本当なら関わる気なんざなかったが…まぁ、無視しても目覚め悪いからな…」

 

 口調は緩いがその目は、真剣だった。残った戦闘機部隊は二人に攻撃を定め接近してきた。青キジが目の前に巨大な氷塊を作りだし、一夏が力いっぱいに氷塊を砕くと、氷の破片が接近してきた戦闘機部隊に襲いかかる。マグマでも溶けにくい頑丈で強固な氷の破片は翼やエンジンを潰し、たった一撃で残存勢力を削るがまだ残っている。

 

「まかせて」

 

と、ナターシャが前に出る。自身のリヴァイブを展開しサブマシンガンを取り出して残りの戦闘機を撃墜させた。そのことにクラリッサが声をあげナターシャに声をかけると

 

「もういいのよ、軍とか委員会とか。どうでもよくなったわ。ねえ、クラリッサ、あなたはどうしたいの?」

「「どう、とは?」」

「もう私たち、軍からも捨てられて行く場所もないし…だったら、私は私の戦いをするだけ。あなたは、これからどうするかはよく考えなさい」

 

アリーシャの言葉に目を閉じクラリッサは考えた。自身は何のために、戦ってきたのか? 国のため、信用でき背中を預けられる仲間のためそして…

 

「「隊長…」」

 

 何か吹っ切れた顔をしたクラリッサを見て、ナターシャは笑みを浮かべた。そして、朝日が昇り氷の世界を背にしている一夏と青キジを見て

 

「そういうわけだから、よろしくね」

 

 と告げ、彼女達の新たな道が生まれた。

 

そして、その日。世界中が注目しているサミットが始まり、それがさらなる世界の混乱の始まりでもあったーー

 

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