麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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四十九話 動き出す力

「ここが隠し通路の入り口か」

 

 四本の刀とボディースーツを装備した千冬が会場からかなり離れた小島にて木々に隠された通路を見てつぶやく。

 

 傍で束が端末を操作し中で作動している防御システムを解除し真耶が装備の準備をしていた。

 

「ずいぶんと手の込んだ真似を…」

 

「けど、ここが唯一の侵入路だけどね。それと、後からいっくんと…もう一人来るからね」

 

 もう一人と言うのはマドカのことで、束は一応彼女が千冬クローンである事は伝えてある。千冬は自身のクローンを勝手に作られて怒りがあったが、マドカ自身に対しての怒りは なかった。

 

「心配するな…私の敵は、お前の生み出した物を冒涜するものだ」

 

「ちーちゃん!!」

 

 束に声をかけた後、千冬は真耶と共に隠し通路に入った。中の通路は用心の脱出などのためか頑丈な作りになっており空調システムもしっかりと稼働していた。通路には罠などもなく二人は長い通路をひたすら進む。

 

「あの、織斑先生…」

 

 真耶が声をかける。二人は小声で話しながら辺りを警戒しつつ進む。

 

「やっぱり、一夏君ってすごいですね…学園や生徒達を何度も守ってみんなから慕われて…でも、未だに海賊だった話は信じられなくて…」

 

「確かにな…」

 

「それで、この戦いが終わったら。先生は秋人君たちと三人で暮らされるのですか?」

 

「さぁな…それはあいつ次第だろう」

 

 短く答える千冬。こんな態度をとるのは別に一夏のことが嫌いとかではなく、一夏に会った時に何を言えばいいのか戸惑っているからだった。

 

 一度刃を交わし、重傷を負った時には少ししか話せなかったが、これも夢の中で会った“あの男”のおかげだろうか?

 

 と考えていると、遠くの方から複数の足音が聞こえて、真耶がリヴァイブを起動させた。ここはまだグングニールの効果が及んでいないようで装備した強化兵達が銃口を向ける前にリヴァイブの両手に持つサブマシンガンが火を噴く。

 

「ちっ!! 下がるぞ!! グングニールの近くまでくれば、ISなど…」

 

 無力になる と言いかけたところで隊長らしき男が気絶する。抜刀した千冬が峰内で敵を無力にし、真耶もサブマシンガン内にある実弾ではなく敵を気絶させるだけのスタン弾で強化兵の数を減らす。

 

 数では兵達の方が上だが、彼らも所詮はただ強化されただけの素人であり、たった二人の侵入者を前に数分もせずに壊滅させられた。

 

 「…ふん、この程度か」

 

 汗一つも流さず、刀を鞘に戻す千冬。応援を呼ばれる前に倒せたが、向かわせた部隊からしばらく連絡がなければ当然敵が来るため、急ぐ必要があった。

 

「…もうじき会場につく。ここから先はISは使えないから君はもう戻れ」

 

「し、しかし…」

 

 弾もエネルギーも十分にある。だが、グングニールの効果範囲に入れば、真耶も無力となり千冬の足でまといになるのはわかっていた。真耶は千冬の体を心配しもう少しだけ護衛にいる と告げようとした時、傍の壁が開きガスマスクをした兵三人が現れる。

 

「強化兵か」

 

 不気味な三人に向け千冬が言葉をかけるが、反応がない。

 

 三人はそれぞれ、刀、鞭、大砲と武器を構え素早い動きで襲いかかる。刀を持った兵が千冬と交戦し、残りの二人がリヴァイブに乗る真耶に接近する。

 

「は、速い!!」

 

 先ほどの兵達とは比べものにならない動きに驚き、マシンガンを撃つが当たらない。

 

 鞭を持った兵と、大砲を持った兵は何度も壁や天井を蹴りスタン弾をかわす。と、両手のマシンガンの弾が切れ、鞭を持った兵がリヴァイブの右腕に鞭を巻きつけた。

 

「くっ!?」

 

 鞭を引き離そうとするが、兵はしっかりと鞭を持ち動かない。反対側から大砲を持った兵が構え対IS用の弾丸が放たれ真耶はとっさにシールドで防ぐが、大きな爆発と共にシールドが粉々になりエネルギーが大幅に減ってしまう。

 

「貴様ら!!」

 

 ボロボロになったリヴァイブを見て二刀流で鞭の兵に向かうが、刀の兵が立ちふさがる。何度も、何度も千冬の二刀流と兵の特別性の刀がぶつかり火花が暗い通路を照らす。

 

 真耶は何とか、立ち上がり反撃しようとブレードを出すが鞭で弾かれ落としてしまう。

 

「これが、強化兵…」

 

 真耶は息を何度も吐きながらつぶやく。人間にISを足止めできるほどの力なんて本来ならないはずだが、革命軍のこれまでの研究により人間がISを超えるために、例え人間としての尊厳や心を消し去ってしまってもいい思想が生んだ産物は着実に進化していった。

 

 ガスマスクをつけたこの兵達は、魔の海域で一夏が出くわした人格を消した人形達をさらに強化した人形以上に思考し命令を遂行する機械であり、もはや人間ではなく元はどんな人間だったのか今となってはわからない。

 

(マシンガンの弾はない…残りは…)

 

 リヴァイブに残された武装は、いくつかの銃器とショートソードだけ。こんな狭い場所で火力のあるものを使えば千冬を巻き込む可能性があり、ショートソードと短銃を手に応戦する。

 

 鞭も特殊につくられリヴァイブの装甲にダメージを与え、大砲も頑丈で何度も真耶をつぶそうと大砲で叩こうとして接近してくる。

 

 リヴァイブの装甲が限界に近づくが、反撃しようとショートソードで鞭を持った兵に接近するもショートソードを素手で捕まれ粉砕されてしまう。刃のかけらが床に落ち、呆然とする真耶の背後で大砲を両手に持ち、真耶をつぶそうと大砲をハンマーのように振り落としーー

 

 

 大砲を持った兵が吹き飛ばされた。

 

 「え?…」

 

 真耶が目を開くと、目の前に一人の黒いISを解除した少年が足を燃やしながら立ち、大砲を持った兵は大きな音をたて壁にめり込む。もう一人、鞭を持った兵にも少女がナイフを突き立て攻撃していた。

 

「こいつら、島で見た奴らと違う…っな!!」

 

 蹴り飛ばした兵が起き上がる兵を見て一夏が再度攻撃をしかけ一夏の足技に兵も格闘技で応戦する。

 

 一方で、マドカも鞭の攻撃を回避し急所を狙うが刃を何度もよけられてしまう。

 

(一夏君!? それに、もう一人は…)

 

 いきなり現れた二人に驚くが、真耶はマドカを見て驚いていた。千冬に似ていて、他に兄妹はいないはずと だが、今は戦闘中であることを思いだしリヴァイブをどうにか動かすが、生身で戦う三人の姿を見てうつむく。このまま自分がここにいても役に立つのか? 

 

「うおぉぉ!!」

 

「はぁぁぁ!!」

 

「邪魔だ!!」

 

 千冬の刃が、一夏の足が、マドカのナイフが、異形と化した強化兵達とぶつかる。

 

 

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