麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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五十一話 狂気に染まる世界

 一夏達が秘密通路を抜けている間、地上でも変化が起きていた。ブラッドの要求を受け、急遽作られた対策チームがどうにか事態の収拾をつけようと交渉をするが

 

「ほぉ? つまり、我々の要求には応じられないと?」

 

「「と、とにかく先に人質の解放を…怪我人もいるだろうし、そうすれば少しは…」」

 

 モニターに映る交渉人から視線をそらしブラッドは部下にハンドサインで指示を与え部下の一人が倒れている女性委員の頭を打ちぬく。

 

「「なっ!?」」

 

「こんな無駄なことをしている暇があったら、要求どうりにしろ。ここにいる怪我人が、死人になる前にな」

 

 それだけ言い、ブラッドは通信を切る。頭を打ちぬかれた女性委員は議事上の端に集められた人質たちの前にほうり投げ悲鳴があがり、何人かが失禁し気絶した。

 

 人質たちの周りには、複数のカメラが設置されネット配信で全世界に向け配信されていた。そして、地獄と化し死体が転がる議事上を見て人々は

 

「うぉ!! いきなり死体が出てビビった!!」

 

「あ、このおばさん死んだんだ?」

 

「いいぞ!! このままIS委員全員殺しちぃまえ!!」

 

「おいおい、皆殺したら人質いなくなるぞ?」

 

「いいな、俺の知ってる女どもも一緒に殺してくんねぇかな?」

 

 ネットの書き込みもますます増えていき、逆にISを支持する者や革命軍のやり方に異議を唱える者達が意見を述べ、書き込むが炎上を招くことになりこれ以上の混乱を防ごうと対策チームが動くもまったく効果がない。

 

 時間が過ぎていく間にも警察や軍隊が暴動を抑える事態にもなり、IS学園にもその波が迫ろうとしていたーー

 

 

「「我々の血税を貪る学校など必要ない!!」」

 

「「IS学園などなくしてしまえ!! 」」

 

 学園に繋がるモノレール駅に暴動達が集まっていた。拡声器を持ち、大きなプラカードや旗を持ち今まで溜まっていた負の感情を爆発させる。

 

 警察や軍だけでなく学園の警備兵やISまでも出て、市民といつ衝突してもおかしくない状況で、学園にいる生徒や教師はいつ自分達が襲撃を受けるか恐怖にいる者や、すでに事態を見て逃げ出した者もいた。そんな中、理事長室では

 

「警備につく者は市民に怪我をさせないよう徹底を、それと生徒達の安全を最優先で…」

 

 轡木十蔵(くつわぎじゅうぞう)と、彼の妻である理事長が各組織に指示を与えていた。

 

 革命軍の起こした事件のせいでISに関わるもの。その象徴ともいえるここIS学園が狙われている今、生徒達を守ることを優先にするが今ネットでは生徒達の顔写真やプロフィールがどこからか流出し「国民の血税を貪る生徒達を狩る」と名目で生徒だけでなく、生徒の家族までも被害を受ける事態にまで深刻になっていた。

 

「このままでは日本が、いや世界が危険だ…」

 

 十蔵は険しい目つきで、ニュースで報道されているサミットの会場を見てつぶやく。この状況を解決するには会場にいる革命軍をどうにかするしかない。そんなことができるは…

 

「この世界を頼みましたよ…一夏君…」

 

 

 

 

「な、なによこれ…」

 

 寮のある部屋にて、サミットが起きる前に秋人達に因縁をつけ試合でステルス装備をしていた上級生が顔を青くしながら何度も端末を操作し電話をかけるが相手から応答がない。

 

(なんで!? サミットの情報をくれたら私は助けてくれるって、企業に紹介してくれるって…)

 

 実は彼女はISの知識だけでなくPC関連の、主にハッキングなどの技術に精通しておりそこを革命軍に買われ学園内でスパイをしていた。

 

 ISを嫌う革命軍だろうが彼女は自身の未来のためならとサミットの情報を革命軍に渡すことで秋人とその周りにいる候補生たちを陥れ、IS学園での地位を得ると考えていた。

 

 だが、彼女が思っていたよりも状況が変わってしまった。このままでは自分の身が危ない。急いでISスーツに着替え警備のため人がいない整備室に入ると修理中の打鉄に乗り、ハッチをこじ開け飛び立つ。

 

「私は生きるのよ…私の未来は、私の未来は…」

 

 何度もつぶやく彼女に向けどこからか対空ミサイルが飛び直撃して修理中で飛ぶことしかできなかった機体はそのまま海に落ちてしまう。どこからか飛んできたミサイルと、撃墜されたISを見て人々が驚くその中で

 

 

 パンッ

 

「なっ…!?」

 

 警官の一人が一番前で看板を持っていた男に向け突如発砲し血が流れる。さらに、市民の一人が笑みを浮かべながらバックに隠してある銃で警官に向け発砲し次々と銃声が鳴り響いた。

 

「「こちらαチーム!! 警官が撃たれた!! 市民が銃を所持している!!」」

 

「「あれは!? 港付近にいる暴動の中に重火器を持った市民がいる!!」」

 

「「ま、まて市民に発砲するな!!」」

 

 軍と警察が武器を所持した市民と衝突した。人が倒れ多くの血が流れる中、IS部隊も市民を止めようとするが、市民の数が圧倒的に多く数体のISでは完全に抑えきれない。

 

「「本部!! 市民の数が多すぎる!! 支給応援を…」」

 

 ISに乗る教員の誰かが応援を要請した時、隣にいた打鉄が持っていた短銃を市民に向け発砲した。まだ若い数人の男女が血を流し倒れ、教員が発砲した同僚を押さえようとしが反撃をくらい倒れる。他にも二体、三体と警備についていたリヴァイブ達がマシンガンを発砲し一方的に市民を逆殺していく。

 

 この暴動とISが市民に向け発砲した状況はネット配信で流れ、ISによる虐殺を見ていた人々の感情が動く。ISは悪だ、ISと言う悪を許すな。

 

 ISに対する憎しみの意識を共有し武器を手にした市民たちは警察・軍・IS部隊と完全衝突した。

 

「世界が変わる…」

これでもう、ISは終わりだ」

 

「ついに、我々の苦労が報われる」

 

 市民・警察・軍隊さらにIS部隊に潜りこんでいた革命軍の兵士達は目の前の戦争と化した状況を見て喜びを感じていた。今までISにしか見ていなかった社会への罰を与えることに成功したと思い、口にするが彼らは気づいていない。

 

 自らが招いたしまった、破滅の道への始まりだとーー

 

 

 

 一方で、秘密通路を抜けた先。会場の地下フロアにて多くの倒れた革命軍の兵がいた。

兵の持っていた端末を奪い一夏は秋人達の居場所を探す中、千冬とマドカは武器の調達のため倒した兵から拳銃などを奪う。

 

「人質の解放にグングニールの破壊、それと革命軍どもをどうにかする…やること多いな」

 

「愚痴をこぼす暇があれば、手を動かせ」

 

 千冬に注意され、一夏は黙り端末を操作する。一人、マドカはあたりを警戒し進んでいると何かの気配を感じ銃のロックを解除し銃口を向けると

 

「久ぶりね、マドカ」

 

 スコールが笑顔で挨拶するが、マドカは警戒し銃を降ろさない。さらにもう一人、オータムも姿を現し持っていたマシンガンをマドカに向ける。

 

「てめぇ、まさか裏切るのか? だったら…」

 

「マドカ、何かあったか…あ?」

 

 マドカの後ろから、一夏と千冬が姿を現しオータムとスコールが警戒した。

彼女達はまさか、こんなところで一夏だけでなく、世界最強の称号を持つ千冬までもがいることに驚きを隠せずにいた。

 

「な、なぜこんなところに!?」

 

「てめぇ!!」

 

 以前学園祭の時に屈辱を味あわされたオータムはマシンガンを発砲するが、一夏が光剣で銃を切り裂く。

 

「やめろ、今俺達はこんなことを…下がれ!!」

 

 オータムを押し倒し、一夏が光剣で飛んできた槍を弾いた。槍が飛んで方から地下通路で戦った時と同じガスマスクをつけた兵がおり、さらにもう一人。体中に鎖を巻いたガスマスクの兵が姿を現す。

 

「まだいるのかよ!!」

 

 一夏が叫ぶと鎖の兵が、一夏に向け鎖を投げ一夏の腕に巻き付くと突然力が抜け一夏がその場に膝をつく。

 

「こいつは海楼石!? 」

 

 能力を封じる海の力を持つ石の存在に気づくが槍を回収した兵が一夏に向け槍を向け動き、千冬が一夏の前に立ち刀で槍を防ぐ。どうにか腕に巻き付いた鎖を外そうとするが、きつく巻かれているせいで外れず膠着(こうちゃく)していると。

 

「どいつもこいつもなめやがって!! 死ねぇ!!」

 

 オータムが切れ、鎖の兵と槍の兵に向けマシンガンを放つ。千冬たちは巻き添えを食らう前に退避し、二人の兵が高速に動き弾丸を回避する。さらに、オータムの背後からグレネードを持ったスコールが援護射撃をして爆発が起きた。

 

「スコール!! なんなんだあの気持ち悪いのは、私は聞いてないぞ!!」

 

「私もよ…どうやら、私達も消すつもりだったようね」

 

「ちくしょう、ISが使えれば…」

 

 空になった銃器を捨てる二人。このまま一夏達が通った通路を使い脱出すればいいが、このまま徹底してもこのままでは彼女達の気が収まらない。

 

「貴様らが、秋人と一夏を…」

 

 すでにマドカから聞いており、一夏達を誘拐したのが彼女達だということは知っていた千冬は刀を握り二人殺気を出すが鎖を解いた一夏が前に出て千冬を止める。今はこんなところで争っている場合ではない と告げ光剣を構えていると鎖の攻撃が飛んできた。

 

「厄介な物だしやがって!!」

 

 鎖を光剣で弾き、もう一人槍の兵をマドカが押さえた。このまま三人でこの二体を相手にしていては時間がない。既に敵にはこっちの存在は気づかれているはずで、応援などを呼ばれれば厄介だ。

 

「いい加減にどけ!!」

 

 鎖を掴み、体に力が抜けるが。それでも、鎖を引き寄せ兵の胴体に拳を一撃入れる。さらに、弾を補充したスコールが銃弾の嵐を兵に向け体中に風穴を作るがそれでも倒れない。

 

「いい加減にくたばりやがれ!!」

 

 叫ぶオータムを一夏が見ると、大きなガトリング砲を両手で持ったオータムがおりガトリング砲の火が吹く。

 

「死ねぇ!!」

 

 大量の弾丸が排出され、連続した発砲音が鳴り続けた。ガトリング砲の弾が空になるまで打ち尽くしオータムはガトリングを放り捨てると「借りは返したぞ、クソガキ!!」と叫び一夏は「巻き添えになるところだった」とつぶやいてかつて人の形をしていた肉片と、血だらけになった鎖を見る。

 

(なんでこの世界に海楼石が…やべ!! 鈴達も、クソ!!)

 

 能力者は、海に落ちると能力が使えなくなり沈むが、他にも弱点として海の固形物と呼ぶ「海楼石」がある。これは加工が難しいが能力者に対し有効のため、手錠から兵器まで様々な道具があの世界では開発されていた。

  

(あの世界から来た奴がいる…こいつは…)

 

 槍の兵と戦う千冬とマドカを見て一夏は自分の知ることを秋人や千冬に打ち明けるか悩んだ。この秘密は、罪は家族たちに背負わせる必要はない と考えているとスコールが槍の兵に向けボウガンを向け放つが、槍で弾かれる。

 

「一夏!! 先に行け!!」

 

「ここで時間を無駄にしている場合ではない!!」

 

 千冬とマドカが叫ぶ。そして、新たな銃を手にしたオータムが「行けよ」とつぶやき槍の兵に向け発砲した。千冬、マドカ、オータム。スコール。本来なら敵同士の者達が共通の敵を倒すため力を合わせていた。

 

 一夏は四人に「先に行く!!」と言い、一人地上に向かう階段を上がっていく。

 

 かつて、冒険の中でも敵だった者がいつの間にか強大な敵を倒すために力を合わせた経験があり、その原因である“彼”はもういないはずなのに不思議だな とつぶやき笑みを浮かべて出口の扉を開いたーー

 

 

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