麦わらの一味の一人「一夏」   作:un

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 更新遅くなりすみません。

 忘れられていると思いますが、一応最後はどうするかは決めていますので

 最後までやって行きたいと思います。

 何卒、よろしくお願いいたします。


五十七話 逃げ行く者

対IS用兵器「グングニール」のコントロールルームにて、千冬とブラッドの戦いが起きる中。会場内での戦況は大きく変わりつつあった。

 

 「お、おいどうすんだよ…」

 

 「知るかよ!! 俺だって、こんなことになるなんて聞いてないぞ!!」

 

 会場に残る革命軍兵士達が、自分達が追い込まれていることに不安を感じて声を荒げた。

 兵士達全員は超人に強化はされているが、訓練はほどんどされていない。指揮権を持つ、ブラッドはこの場におらず。副官であるエレンも不在だった。

 

 この場にいる唯一権限を持つ教授は、束の手により個人情報が世界中にばらまかれた事に怒り、兵を指揮するどころではなかった。

 

「とにかく、俺はこれ以上は嫌だ!!」

 

「何が、世界を変えるだ、ふざけやがって!!」

 

「な、何をする!?」

 

 悪態をついた兵士達は、白衣を着た研究員達に銃を突きつけ何かを奪い取る。黒く、拳程の大きさがある石。それは、一夏のIS黒騎士の中にある「黒穴(ブラック・ホール)」の粒子が凝縮されたのと同じ物だった。

 

 兵士達は、黒石を傍にある装置に埋め込み、彼らの前に大きな黒穴(ブラック・ホール)が生まれた。

 

 黒穴(ブラック・ホール)はエネルギーを加えることで、高エネルギーの粒子を出し消失する。そして、粒子を浴びた者は秘められた力を得ることができ、実際に秋人と簪は覇気の力を使えるようになった。

 

 一方で革命軍では粒子を集め、人体実験を行い。弾のような強化人間だけでなく、ラウラの部下であるクラリッサ達を追い詰め、一夏達が会場地下でガスマスク兵のような戦闘マシーンを生みだした。

 

 そして今、革命軍が新たに開発した黒穴(ブラック・ホール)は、集めた粒子の塊を使い、空間移動が可能となり、この黒穴を通ったことで革命軍達は厳重警備のこの会場の中に侵入することができた。

 

 そして、現在宇宙開発基地にて作戦を遂行しているエレンが会場の外に出れたのは、この技術があったためだ。

 

「お、おい!! 逃げるのかよ!?」

 

「仕方ないだろ!! あんな化け物どもと戦えるわけねぇ!!」

 

「わ、私だって!! こんなところで捕まるなんて嫌よ!!」

 

 一人、また一人と黒穴(ブラック・ホール)に足を踏み入れ逃げていく。自身の保身のため、あるいは力を得て優越に浸っていた者達の集団はまとまりがなく、黒穴に消えていく。

 

「きょ、教授!! 兵隊が勝手に装置を使って…教授!! 」

 

 研究員達が、逃げていく同士たちを前に教授に報告するが返事がこない。何度も、何度も通信機のスイッチを入れ、声を張り上げるが頼みの人物が出ることはなかった。

 

「教授、教授!! 」

 

研究員達の悲痛な叫びは届かず、教授は大部屋にてガスマスクの兵を連れて、注射器型の銃を手に拘束している鈴達の前に立っていた。

 

「…使えんやつらめ」

 

 監視モニターに写る黒穴を使い逃げる兵士を見て悪態をつく教授。

 

「そんな…千冬さんが…」

 

「教官!!」

 

 コントロールルームにて、ブラッドに追い詰められている千冬を見て鈴達が叫ぶ。

 

「やはり、使うなら人形でないとな…」

 

 教授は、一夏達を苦戦させたガスマスク兵を見てつぶやく。強化に強化を重ね、人格を消し命令どうりに動く「人形」は最高傑作であった。そして、教授は新たな人形を作ろうと鈴達に向け注射器型の銃を向ける。

 

「貴様ら女はISがなければ何もできない。だが、私は違う。どんなに無能だろうが、私の手にかかれば良い人形ができる」

 

「っ!! 悪趣味だね…」

 

 シャルが教授を睨み悪態をつく。体に巻かれている海楼石の鎖のせいで力が抜けており、鈴も、セシリアも、ラウラも抵抗できない。

 

「貴様のようなクズの人形になる気などない」

 

「そうですわ!! もう、貴方たちの負けは見えていますわ!!」

 

ラウラとセシリアが教授に吠え、強気な態度を見せる。人質になっている彼女達の中では、自分達を必ず救ってくれる兄弟を信じており、臆した様子がなかった。

 

「ふん!! あんたこそ、人形がなかったら何もできないじゃない!!」

 

「この、くそガキ共が…」

 

 最後に、鈴が吠え教授は鈴達を人形にするために注射器型の銃の引き金に指をかけーー

 

 「そこかぁ!!」

 

 「うぁぁぁ!!」

 

 突如、壁が吹き飛び同時に教授も部屋の端まで吹き飛ばされた。

 シャル達は、突然の事で呆然としたが。一人、鈴だけは聞き覚えのある声を聞きーー

 

 「一夏っ!!」

 

 「鈴!!」

 

 鎖に巻かれている鈴達を見て、一夏が近づこうとする。が、ガスマスクの兵が一夏を殴り飛ばし、壁にめり込んだ一夏に容赦なく拳や足で襲いかかる。

 

「ぐっ!? まだいたのか…」

 

 地下で千冬たちと共に戦った強化兵を見て、舌打ちをし。連戦で消耗していた一夏は、反撃できず防御をし、壊した壁からマドカが後から入ってくる。

 

「マドカ!! 鈴達を頼む!! こいつは俺が…」

 

 俺がやる と言い終える前に、一夏の顔に拳が入り壁にめり込む。そして、一夏の防御が薄くなったところで、さらに一夏に攻撃を続け床に血が流れていく。

 

「くそ!! 一夏!!」

 

 マドカはナイフを投げ、ガスマスク兵の背に深く刺さる。が、痛みを感じていないのか一夏を殴る手をやめない。

 

「や、やめて…」

 

 先ほどまで一夏の姿を見て笑みを浮かべていた鈴が、目を伏せつぶやく。助けにきてくれた希望がいきなり打ち砕かれ、シャルやマドカの表情に絶望が浮かんでいた。

 

「ふははっ、どうだ? 私の人形、は…」

 

 吹き飛ばされたが、なんとか立ち上がる教授。容赦なく攻撃され、床を血に染める一夏を見て笑いを浮かべた。

 

「島での戦闘は見せてもらった。あの姿はとても興味がわいたよ。生きたまま解剖したかったが、まぁ死体で我慢するとしよう!!」

 

バキッ 

 

 教授の狂い笑いが大きくなる。中、突如何かが砕ける音がした。始めは、一夏の骨でも砕けたのかと思われたが、一体のガスマスクの兵の両手が変な方向に曲がり血が流れ倒れていた。

 

 

「へ…?」

 

 教授の口からおかしな声が出る中、さらにもう一体のガスマスクの兵は窓を突き破り海へと叩き落とされた。

 

 グァァァ…

 

 獣のようなうねり声がなり、一夏の姿に異変が起きる。それは、魔の海域で戦ったアリーシャの前で見せたドラゴンの姿だったーー

 


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