今やっている革命軍との闘いはなるべく短めにして次に移る予定です。
ヘビヘビの実モデル「ドラゴン」の人型形態になった一夏は、教授の護衛にいたガスマスク兵をあしらい、マドカ達は一夏の姿を見て驚愕していた。
グアァァ…
「ひっ、ひぃ!!」
アリーシャとの戦闘を見ていたはずの教授は一夏の変貌した姿を見て腰を抜かし、後ろに逃げるが壁に背がつき逃げ場を失う。
「い、一夏…なのか?」
初めて見る一夏の能力を見てマドカが何とか言葉を発する。一夏から、悪魔の実については聞いていたが、ここまでの変貌とガスマスク兵を圧倒するとは予想外だった。
一夏は何も答えず、壁際に逃げた教授を睨み、足を一歩進める。
「く、来るな化け物!!」
教授が叫び、その声に反応したのか一夏に両腕を折られたガスマスクの兵が起き上がり、背後から一夏に襲いかかる。強化したことで痛みも感情もない人形兵は教授のために武器を持つことのできない状態でも、体当たりして一夏に攻撃をする。
「邪魔だ… 」
鋭い爪を生やした手で、ガスマスク兵の顔面をマスクごとつかみ床に叩きつける。ものすごい音の轟音がなり、両腕を失い顔面を床に埋めた人形は赤い液体をまき散らして動かなくなった。
「くぅ…わ、私の人形が…」
ドラゴンの姿になった一夏に人形がつぶされ目の焦点が合わなくなる。多くの犠牲を得てできた強化兵が一夏に通用せず、教授にはもはや打つ手がなかった。
いや、最後に一つ。教授自身の手に希望があった。
「はっ、はっ…」
教授は、鈴達に使おうとしていた注射器型の銃を汗ばむ手で握りしめる。
一歩、一歩と近づくドラゴンの一夏と注射器を見てーー
「わ、私は…私はこんな所で終わりたくない!!」
自分の首筋に注射器を当て引き金を引く。中にあった液体が体の中に浸透していき、教授の意識が薄れていく。
「ぐぁぁぁ!!」
「な、なんだ…?」
教授の異変に一夏が止まり警戒する。マドカは鈴達を守るように立ち臨戦態勢を取る中、教授の体が変化していく。
小柄だった体が大きくなり
皮膚がドス黒く変色していき
目の色が緑色に染まる。
「な、なんなの…アレ…」
囚われているシャルがつぶやき、ラウラとセシリアは心の中で化け物の単語が浮かんだ。
教授が今自分に使った薬は、ブラッドや弾に使ったブラックホールの粒子をさらに研究・改造した物だった。
一夏のISのコアに使われるブラックホールの粒子。穴にエネルギ―を与えると粒子が発生し、浴びた生物の能力を上げてくれる効果がある。秋人や簪は偶然の事故で、覇気を使う事がきた。そして革命軍では、この粒子を使い強化兵達を作り世界に戦いを挑んだ。
しかし、粒子は一定量以上浴びてしまうと肉体が耐え切れず、やがて肉体も粒子化して消えていくデメリットがある。そのため何百人もの犠牲をだし、どこくらいの粒子を人体に投与すれば粒子化しないか調べた。
その結果、強化兵やガスマスク兵より強く、そしてISをも超えた存在を作るこの薬品は
「モンスター」と名付けられ、その生みの親である教授自身が今まさに化け物となってしまった。
ァァァアア
うなり声のようなものを上げ、大きく肥大化した足が床を揺らす。大きく開いた口から人間の物ではない牙が見えた。
「こいつ、自分で薬を…っ!!」
轟音が起きたと思った、次の瞬間。化け物となった教授が高速で動き、一夏に体当たりしてきた。異常なまでの強化の力と一夏が疲弊しているせいもあって不意打ちのタックルを受ける。
「ぐぅっ!!」
一夏は教授のタックルを抑えきれず、部屋の壁に激突する。しかし、勢いが止まらず壁を壊し二人は部屋の外に出た。
「ウガァァ!!」
薬のせいで知性が無くなった教授は、一夏の顔を掴み廊下の壁に叩きつける。
「がっ、あっ!!」
ドンッ ドンッ 抵抗する暇を与えずひたすら一夏は壁に叩きつけられ、血が床に流れていく。
「てめぇ…」
一夏は、低い声を出し深紅の目で教授を睨み、顔を掴んでいた教授の腕を引きはがし、顔面に一発。覇気をまとわせた拳を入れる。
普通の人間はくらっていたら死ぬほどの威力だが、皮膚が強固なのか、または痛みも感情も無くしたのか、口の端から血が流れていた。
「いい加減にしろ!! こんなバケモンになりやがって!!」
教授に向かって叫び、一夏が突撃する。
IS委員会の建物を次々と破壊しながら二人の怪物がぶつかり合う。科学が作った化け物と悪魔の実から生まれた人型のドラゴン。
元教授だった者は、怪力を使いひたすら殴る・蹴る。さらに、壊した建物の破片を投げて攻撃する。悪魔の実でさらに希少とされる幻獣種の力を持つ一夏もひたすら殴り・蹴りをするが、時折距離を置き嵐脚で遠距離攻撃をする。
瓦礫が剛速球でなげられ、脚力から生まれたかまいたちが瓦礫を切り裂く。
ドラゴンの鋭い爪が、大木の腕の皮膚を刺すが致命傷にならない。
まるで映画を見ているかのような戦いは、次々と建物を破壊していく。気づけば、二人は建物の外に出て、両者とも息を切らしていた。
「ウガァァ…」
「ぜぇ…ぜぇ…くそ、こんな所で…」
一夏は目の前の教授を見て吐き捨て頭の中で戦いとは関係ない事が浮かぶ。
自分から醜い姿になったこの男も、IS優遇の社会のせいでこんな事になった。
いや、教授だけではない。強化人間になった弾や革命軍の兵士達は社会から理不尽な扱いを受け、苦しんできた「海賊になる前の自分」と同じではなかったかと頭に浮かんだ。
「確かに、俺もこんな世界も社会も何もかも嫌だった…消えてしまいたいって毎日考えてたさ」
一夏は言葉が通じないと分かっていても、多くの人を傷つけ、鈴達を拘束した相手のはずだが一夏は話を続けた。
「俺もあんたと、いや。あんた達と同じだ。けどな…」
教授たちと一夏は違う。違っていたのは自分を織斑千冬の弟でも、IS社会でみじめに生きている子供でもなく「一夏」として受け入れ共にいてくれた仲間がいたから、歪まずに自分の自由で生きる事ができた。
「俺の仲間に手出したことは、許せねぇ!! お前らは絶対に止める!! そんで、アイツを引きずり出す!!」
一夏が教授にではなく、誰かに向かって叫ぶ。
そして、教授は再度一夏にタックルをしかけてくるが、二人に向かって何かが飛んで爆発した。
「何!?」
一夏が教授から目を離すと、離れた場所から一人、バズーカを持った男が見えた。逃げ遅れた革命軍兵士だろうか、恐怖におびえながら一夏達に向かって砲弾が襲いかかる。
「し、死ね!! この化け物ども!!」
かつて自分の指揮官だった化け物と、一夏の周りに弾が着弾し地面が崩れる。
「っ、やべぇ!!」
一夏は翼を広げ飛び立とうとする。下は海、悪魔の実の能力者である一夏には致命的だ。落ちれば助からない。
「ガァァ!!」
教授は足場が崩れていても必要に一夏を追い、足を掴み離さない。
「クソ!! こんな時に!!」
一夏は足にしがみつく教授の重みで落下する。このままでは海に落ちる、そう思い教授を振りほどくとしたが、教授の体が粒子化して消えて行く。
「なっ!?」
強すぎる薬のせいで、ついに限界が来たのか。教授の体は足から胴と消えていき、それを見て動き止めてしまい一夏は海に落ちてしまったーー