The story after the trip〜短編集〜 作:カズめぐ
突然だが、みんなにとってバレンタインデーとはどんなものだろう。
普通、彼女がいる男にとってバレンタインデーは楽しみな行事である。
しかし、僕の場合は違う。
むしろ逆。
非常に危険な1日なのだ。
なぜなら、この日はアスカの機嫌がいつもの数倍悪い。
理由は嫉妬だ。
聞くだけならとても可愛い理由だが、実際見てみるとそんな気すら起きない。
これは、そんなアスカと僕との間で起きたバレンタインデーの話である。
〜〜〜
朝、目を覚ますと、いつも横で寝ているはずのアスカの姿がなかった。
こんなこと、年に数回しかないので今日がなんの日かわかってしまった。
「今日はバレンタインデーなのか…。」
僕はため息混じりにぼそっと呟く。
数分間、物思いに耽ったあと、覚悟を決めて起き上がる。
そして、リビングへと向かった。
「おはよう。アスカ。」
「おはよう。バカシンジ。今日は随分寝坊助さんなのね。」
「アスカが早いだけだよ。」
「まあいいわ。支度して学校行くわよ。」
「朝ごはんは?」
「学校に着いたら、パンをあげるわ。」
「家で食べたいな…。」
「なに?文句でもあるわけ?」
アスカがこちらを睨んでくる。
こうなると、何言っても無駄なのである。
「わかったよ…。」
僕は渋々、学校へ行く支度を始めた。
………
学校に着くと、アスカは自分の下駄箱より先に僕の下駄箱を開けたのである。
「ちっ、朝早ければないと思ったのに。」
僕は不機嫌そうなアスカを横目に自分の下駄箱を覗き込んだ。
中には可愛らしい包装がされた小さな箱が数個入っていた。
いわゆる、バレンタインチョコだろう。
「アスカ、上履き取りたいからどいてよ。」
「ダメよ。少し待ちなさい。これは私が預かるから。」
そう言うと、アスカは数個のチョコを乱暴に紙袋に突っ込んだのである。
「アスカ…。預かるのはいいけど、もう少し丁寧に扱おうよ…。」
「別にいいのよ。彼女持ちだと知ってる男にチョコを贈るなんてありえないから。」
「義理かもしれないじゃないか…。」
「いーや。これは絶対本命よ。こんな可愛子ぶっちゃって。あー、気持ち悪い。」
「アスカ、言い過ぎだって…。」
「へー、モテモテのシンジ様は彼女より、他の女の子の肩を持つのねー。さすが浮気者ね〜。」
「別に方を持ったわけじゃないし。浮気もしてないよ。」
「どうだか。」
アスカはそっぽを向いてしまった。
いつもなら、こういう時は大抵先に教室に行ってしまうのだけれど、今日は違った。
一歩先を歩きながら周りに牽制をしている。
「惣流さん。今日は一段とガード固いね…。」
「ねっ、これじゃあ渡せないよ…。」
「渡せたとしても、碇君の手に行かず、惣流さんに処分されちゃうんじゃないのかな…。」
「なにそれ。詰みじゃん…。」
女子たちから、このような会話が聞こえてくる。
はぁ。
僕、目立つの嫌いなんだけどな…。
しかし、僕の気持ちとは裏腹にアスカの行動は全然控えめにならないのであった。
………
昼時。
「飯や飯!」
トウジが待ってましたと言わんばかりにはしゃいでいる。
「なんや、シンジ。飯食いに行かんのか?」
「今日はその…。徹底マークされてるから…。」
僕はとある人物に目線をやる。
トウジはそれに釣られてとある人物を見る。
「なんや、惣流となんかあったんか?」
「トウジ、察してやれよ。今日はなんの日だ?」
ケンスケが、呆れながらトウジに話す。
「あっ?バレンタインデーやろ?それがどないしたんや?」
「それだよそれ。」
「まさか、惣流のやつバレンタインデーだからいつもより機嫌悪いんか?」
「うん…。」
「なんやそりゃ…。確かにシンジはモテるけど、なんの心配もいらんやろ…。シンジほんまにお気の毒やな…。」
トウジが哀れみの目で僕を見てくる。
そんなことを話してるととある人物が近づいてきた。
「ハーイ。シンジ。お昼ご飯一緒に食べるわよ。」
「アスカ…。いつも通り、トウジやケンスケ達とじゃダメかな…?」
「はぁ?アンタ、彼女とご飯食べたくないわけ?」
「いや、そんなことはないけど…。」
「つべこべ言ってないで、ほら、行くわよ。」
こうして僕はアスカに手を引かれながら教室を後にしたのであった。
………
屋上にて。
僕とアスカは無言でご飯を食べている。
胃が痛い。
沈黙に耐えきれずに、僕はとある質問をした。
「どうして、そんなに周りを警戒するのさ。」
「アンタを取られないためよ。」
アスカは真剣な眼差しで僕を見てくる。
どうやらこれは、本心らしい。
「僕はアスカ以外に靡かないよ。」
「わかってるわよ。私たちと他の人じゃ、一緒にいる時間も濃さも全然違うってことくらい。」
「じゃあ、どうして?」
「不安なのよ。アンタがいつか私の目の前からいなくなっちゃうじゃないかって…。」
アスカは震えていた。
「アンタにとって私は数ある大切なものの中のひとつかもしれないけど、私にとってアンタは唯一の大切な者なのよ…。」
「そんなことないよ、僕にとってアスカは唯一の大切な者だよ。」
そう言って、僕はアスカを安心させるために抱きしめた。
「ありがとう…。これからは、少しはアンタを信じるわね。」
「少しはなのね…。」
「アンタ信頼できない者。」
「どうしてさ。僕はアスカ一筋だよ?」
「証拠見せなさいよ。証拠。」
「証拠?どうすればいいのさ?」
「kiss me please!シンジ。」
「なっ!?ここで??」
「できないのかしら?やっぱり、浮気者なのね。」
アスカがジトーっと、僕を見てくる。
「はぁ、仕方ないな…。」
僕はアスカの唇にキスをした。
「これでいいの?」
僕は恥ずかしさで顔を赤くしながら聞く。
「やればできるじゃない。」
「なんか、納得いかないけどな…。」
「まあ、いいじゃない。これからもよろしくねシンジ様!」
こうして、この年のバレンタインデーは幕を閉じたのであった。
しかし、これが毎年の恒例行事になるとはこの時は思いもしなかったのであった…。
お読みいただきありがとうございます。
こういった感じで、イベントごとの短編集を作れたらなと思います。
こういったイベントを書いてほしいというリクエストがあったら、感想で送っていただければ幸いです。