ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合   作:繊細なゆりの花

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第三章  新生活に向けて

診療所完成まで1ヶ月を切った。

この頃になるとコンラートはある悩みを抱えるようになった。

ある一人の少女… …

ショートカットの黒い髪。

歳は聞いてないから分からないが、外見から判断するに18・9だろう。

職業はハンターらしい。

何かしらの理由をつけてコンラートの元へ来るようになった。

やれここが切れたから薬をくれだの、あざが出来たから処置してくれだの… …

 

「なるほどな… …サラ、お前は何がしたいんだ?毎日嫌がらせで来るにしても程がある。こう見えても私は忙しいんだ」

 

 こう見えてもどころか彼は毎日忙しい。

サラはそのすきま時間を狙って押しかけてくる。

 

「先生が忙しい事知ってて来ています。嫌がらせに来ているんです」

 

「あのな。めんどくさいから単刀直入に聞くぞ。こんな35のおっさんのどこがいいんだ?君はいくつだ?」

 

「18です」

 

「そうだ。君は18で私は35。親子ほど歳が離れている。村に気のいい同年代なぞいくらでもいるだろ」

 

「そんなの、一人もいません」

 

その場の空気が若干気まずくなり、コンラートは言葉に詰まった。先に切り出してきたのはサラだった。

 

「ご飯は?今夜一緒に夕食なら付き合ってくれますか?」

 

 この村で食事処は集会浴場しかないし、酒を飲むわけにもいかないがコンラートはしぶしぶ了承した。

(これって村長か誰かの罠じゃないだろうな… …)

 

「じゃあ先生、また後で。ジンベイも連れてきていい?いつもご飯一緒なの」

 

「ああ、勿論だ」

 

 返事を聞いたサラは嬉しそうに顔を綻ばせると、部屋を後にした。

 診療を続けながらコンラートは思った。着ていく服なんかあったかなと。

 

 ━━━━━━━━━

 

 

 夕方の食堂は一番込み合う時間帯だ。

空席は殆ど無い。

給仕が忙しく右往左往している姿が目立つ。

 しかし、バーカウンターだけは空席だった。

この村の暗黙の了解でハンター専用になっている。

今は全員出払っているみたいだ。

その一角にサラはいた。

 いつものパンツルックに薄手のシャツではなく、ユクモ村の民族衣装を着ていた。

 

「待たせたか?早く来たつもりだったが」

 

「ううん。ちょっとまだ覚悟が無くて緊張しそうだから早く来たんです」

 

「覚悟?」

 

「後で話す。まず食べましょ」

 

手元を見ると、サラも、ジンベイもナッツみたいな菓子を口に入れている。

酒が欲しくなりそうなつまみだ。

コンラートは向かいの給仕に適当な料理を二、三品頼んだ。

 

「先生お久しぶりですニャ」

 

「おお、ジンベイ君。元気だったか?そうだ、サラさえ良ければ、またジンベイ君にお手伝いをお願いしたいんだ」

 

「いいですよ。依頼が無い時なら」

 

「すまんな。この村に来た時の服しか無くて。せっかくのお誘いなのに」

 

ここでコンラートは『君も何故いつもの服じゃないんだ?』とは聞かなかった。

サラの体に無数の傷があることを一番知っていたからである。

 

「先生、この傷をつけた巨熊、覚えている?」

 

「ああ、忘れるわけがない」

 

「私ね、さっき覚悟って言ったでしょ?先生が来る前に依頼を受けたの」

 

「ま、まさか」

 

「そう、あいつは生きていた。そして今朝木こりのボイルとロッドが渓流で見たんだって。私はもう一度あいつと戦いたい」 

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