ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
村長シーラ・ステルヴィア
門の前にいる男
薬師レーナ
木こりのロッドとボイル
コンラート・ローレンツも前作に名前は出ていませんがエイスとマーク・シュルツの火傷治療、秘薬を生成し村長に渡したりと一応出ています。
「それを言うために私をここへ?」
「ううん。一番大事なことはまだ怖くて言えない」
「とにかく馬鹿はよせ。今度は死ぬぞ」
「ハンターたちの言い伝えでね、一度戦って負けた相手に勝たないとそのハンターは二度と使い物にならないんだよ。ジンベイとも話して納得してくれた。それにね、私はもうあいつの攻撃は食らわない」
これは本当の話で、研算を積んだ超一流と呼ばれるハンターは同じ固体に対して相手の行動を読めるものがいる。
コンラートはそれを知ってはいるが、サラがそうだとは限らない。
それに初戦は半死半生の目に遭っている。
「だからって… …」
「大丈夫。それとも先生心配してくれてるの?」
「当たり前だろ。馬鹿野郎が!!」
コンラートの大声で周りは一瞬静まりかえったが、ここでは日常茶飯事。
またいつもの喧騒に戻った。
「ごめんなさい。茶化したわけでは無いの。それに私は死ぬつもりも無い」
「傷の… …具合はどうなんだ?」
「平気。実践トレーニングも問題はなかったよ」
17歳も年下の娘に言いくるめられそうになっても、コンラートの中で腹立たしさは無かった。
むしろ不安だけが大きくなった。
こんな話をして料理なんぞ口に入るわけも無く既に冷めていた。
「先生、それ食べないともったいないよ?」
「あ?ああ」
コンラートが口を動かしているのを黙ってサラは見ている。
「はにひてんだ?」
「先生、ちゃんと飲み込んでから喋らないと」
サラの言いつけどおり、全部食べようとするコンラート。
「先生、あのね、この後一緒に温泉入らない?」
ブーーーッ
勢いよく飛び出したソレは目の前にいる食器をかたずけようとしたバーテンダーの顔に思いっきりかかった。
「あっははははは。先生、ゆ、ユクモ村は全部共同浴場だよ?」
腹を抱えて笑うサラ、コンラートは必死でバーテンダーに謝っている。
(何テンパッているんだ、私は… …完全に翻弄されている。しかしこの子はこんなに笑う子だったんだな)
「よし、じゃあ行こっか」
「あ、ああ」
「ボクもいっしょ?」
「うん。ジンベイがいると言う勇気が出るから」
浴場は食堂のすぐ隣にある。
この村では湯浴みタオル一枚で男女一緒に入る。
最初、コンラートはなかなかそれに馴染めず、誰もいない時間を見計らって入浴していた。
今は徐々に慣れてはきているが、それでもこんなに人がいる時間帯に入ったのは初めてだった。
というか、何を話したらいいのか分からない。
コンラートは努めてサラの方を見ずに言った。
「しかし、やっぱり温泉はいいなあ」
温泉客は皆、サラとコンラートをちらちら見ている。
正確には、サラを見ている。
「視線が気になる?」
「ああ、多少はな。だが解らんやつの事はどうでもいい」
「私は先生に救われたの。命を助けてくれた。今こうして元気でいられる。そう思ったらこの傷もだんだん好きになれたの」
客が見ていたのはサラの傷だった。
アオアシラに大小14箇所も付けられた酷く醜い傷だ。
「先生、もし明日生きて帰ることが出来たら私と結婚してください。私はもう、貰ってくれる人がいないし、わかってくれるのは先生だけだから」