ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
言った。
言ってしまった。
こうなったらもう後には引けない。
コンラートは返事に困った。
気休めの言葉はいくらでも言えるが、それではサラが納得しそうに無い。
サラは奥の岩置き風呂へ身を隠すようにコンラートの手を引っ張った。
「な、なにす… …」
サラは立ち上がりまとっていたタオルを全て取った。
「先生、見て。これが今の私だよ」
それを見てコンラートはある話を思い出した。
スチュアートか誰かが言ったのか忘れたが、ある国の兵士の話だ。
お互い敵同士の立場で出会った男女の兵士の話。
2人は幾たびか戦場で相見え、いつしか恋に落ち、戦場で一緒に温泉に入る。
その時は、そんな話が現実にあるかと鼻で笑っていたが、今現実にそれが目の前で起こっている。
そして男兵士と同じことを口に出した。
「綺麗だ… …」
サラに付いた傷は確かに他人から見れば目を背けるほど酷いものだったが、コンラートは何も思わなかった。
それよりサラのプロポーションに目を奪われた。
「きれい?」
「ああ、君の決意は分かった。明日の事もな」
「それじゃあ!」
「全く、こんなおじさんのどこが… …結婚云々はひとまず置く。まじめに今後の事を考える。問題は明日だ。どう見ても君に勝ち目が無い。私は専門家ではないから分からないが、前回ハンター総出で討伐出来なかったんだろ?」
「うん。それについて私に考えと勝ち目があるから依頼を受けたんだ」
「それを聞きたいんだよ」
「その前にタオルつけていい?」
サラはあられもない姿だった。
「あ、当たり前だ。はやくしろ」
「ホントはもう少し見たいと思っていたくせにィ」
「茶化すな。真面目な話をしているんだ」
「うん。あいつはさ、通常固体と比べてパワーも腕のリーチも大きさも桁違いでさ、一見すると全く別の生き物なんだけど」
「ああ」
「習性や動きは同じなんだよね」
コンラートはサラが何を言っているのか分からなくなってきた。
「つ、つまり?」
「動きが同じなら、間合いに気をつければ攻撃を食らわないって事!」
「そんな簡単にいくか?」
「私はやる。ハンターだもん」
「わかった。もう何も言わん。私はここで待っているからな。必ず生きて帰れよ」
「ご主人は必ずボクが守るニャ」
サラはジンベイの頭をモフりながら満月を見上げていた。
さっきはあんな強がりを言ったが、生きて帰れる保障は無い。
が、サラの心はなんだか落ち着いていた。
翌日夜明け前、サラとジンベイは出立した。コンラートは見送りを申し出たがサラは頑なにそれを拒否した。
〔至急 依頼人 ユクモ村村長 シーラ・ステルヴィア〕
以前撃退した巨大青熊獣アオアシラ。この子を渓流奥の森でロッドさんとボイルさんが発見しましたの。監視気球で大まかな位置は把握しています。今回はハンター様が全員出払っている為、増援は出せませんわ。なので、ハンター様には縄張りの調査と、怪我をどれくらい負っているのか。その確認をお願いいたします。絶対に過度な戦闘は避けてくださいまし。