ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
どこまでも、どこまでも変わらない砂の画が続いている。
2人ともプロだ。
警戒はしているが、話でもしていないと暑さで頭がやられそうだった。
行商人はターバンを巻いているが、3人はそれぞれ武器に合った兜をつけている。
無駄口を叩かないカーライルは本当に生真面目な男だった。
カーライルもスチュアートもサラが好きだった。
一人の人間として頼れる仲間、ハンター、母親として。
だから、いつも3人が組む時は、サラが中心になっていた。
ハッピーへブン出身の彼らに両親はいない。
スチュアートは遠い親戚の老婆に育てられた。
2人はサラに母親を求めているのかも知れない。
「君のアイルーのジンベイ君だっけ?結婚式の時以来見ていないけど、ずっと子守か?」
「何だよ。カーライルも無駄口入ってんじゃねーか」
「彼は優秀らしいな。一度でいいから戦っている所を見たかった」
「無視かよ」
「ジンベイはね、私の命より大事な者を守ってくれているの。開店資金も貯まった。だから、ジルに寂しい思いをさせるのはこれで最後… …あれは何?」
オアシスまであと少し。
目に見える距離まで来たところで、右手、3時方向の地平線が、もの凄い土埃を上げていた。
スチュアートとカーライルが双眼鏡で確認する。
「ありゃあ狗竜だな。でも様子が変だ。何かから逃げている?」
「スチュアート、オアシスまで目いっぱい飛ばせ。商隊が巻き込まれる」
最も危険度が高いであろう者の姿はまだ見えない。
しかし、3人は頭を切り替えた。
雪崩のように迫ってくる狗竜を右手に見ながらスチュアートは荷車を走らせた。
イビルジョー
獣竜種
全長 18m以上
肉食で凶暴
貪食の狂王、凶暴竜の異名を持つ
その体より目立つのが大きい顎。
逃げる狗竜、その中でもオスのジャギィより一回り大きく足の遅いジャギィノスをまるでおやつを食べるかのごとく一飲みした。
食べるまでも無く、飲んだ。
時間稼ぎすらなっていない。
やがて狗竜の群れは通り過ぎ、広い砂漠に商隊と化け物だけが残った。
カーライルは走らせながら叫んだ。
「スチュアート、俺とサラで足止めする。お前は行け」
「わかった」
すぐ目の前までイビルジョーは迫ってきている
荷車を降り、待ち構えたカーライルとサラだが、イビルジョーは2人に目もくれない。
その視線の先はフリフリと美味しそうに揺れるガーグァの尻があった。
イビルジョーが2人の横を通り過ぎる。
すれ違いさま、サラは足に刃を一閃放った。
「ギャゥ」と呻いたが、サラには一瞥もせず、イビルジョーは走り続ける。
口からは涎を垂らし、目はイッている。
貪食の凶王の名は伊達では無かった。
2人はすぐに後を追う。
装備が軽い分、サラの方がカーライルより速かった。
ガーグァは恐怖で立ちすくんでしまっている。
スチュアートは商人達を守る為、イビルジョーに立ちはだかった。
右目を狙い、矢をつがえる。
いつもならこちらが先に敵を見つけ、殲滅していた。
今回はアクシデントで商隊までモンスターに詰め寄られたが、ここまでは想定内だった。
しかしここで想定外の事が起きた。