ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
「私が以前言った処置をしているか?」
「ああ、俺の家で横になってる。水も少しずつ飲ませているよ」
「恐らく大丈夫だろうが、命の危険もあるから軽く見るなよ」
「だから先生を呼んだんじゃねえか。今回のアイルーは俺の相棒だ。・・・だから・・・」
「前回も君が助けたのだろう?君のアイルーじゃないのに。私は君のそういうところが好きだ。金は要らんと言ったのに押し付けやがって」
「いや・・・まだ全額払ってない・・・」
「うるさい。なら後日、小屋の修理とガーグァ達の遊び相手になってくれ。それでいい」
「コンラート先生、ありがとう」
コンラート・ローレンツの自宅は、王都中心街にある。
しかし彼は殆ど自宅に帰らず、人目を避けるように生活していた。
タダ同然で病人を診ているコンラートを疎ましく思った医師会の連中が嫌がらせを始めた為、嫌気がさしていた。
「そのアイルーは今、誰が見ている?」
「ああ、今回はスチュアートとカーライルの二人に見てもらっているよ」
「遠征から帰ってきたのか。三週間経つのは早いな」
ハッピーへブン。ここは中心街より100メートル離れた場所にある。
住人たちが楽しい天国と名づけた掃き溜めである。
孤児や罪人、財産破綻者などが住み着き、スラムを形成した。
ここではおよそ1143名が生活している。
スチュアートとカーライルはここ貧困街〈ハッピーへブン〉の出身である。
この国でラストネームを持つということは、国へ幾度も貢献した者または献金した者に限られる。
市民権が発行され、物価の税や入国した際、優先して入ることが出来る。
彼らはハンターだが、貧困街出身者というだけで、まだ市民権を得ていない。
木こりや死体洗いなどの仕事もそれに含まれる。
ロブの家も貧困街のバラック郡(簡易木造の小屋)にあった。
この地域の平均月収は1世帯約700z。
鼠や猫も捕らえて食べるため、この辺りには一匹もいない。
そう聞くと治安の悪さが思い浮かぶが、ここは中心街より治安が良かった。
盗人は殆ど存在せず、住人は皆で協力し足りないものは補っていた。
なにより子供たちが笑顔でいることだった。
「友達がいるからここを出たくない」
と口をそろえて言う。
此処には個々の幸せがあり、毎日朝から晩まで働き、生きる希望があった。
この場所で一生を終える者も少なくはない。
コンラートは内心ここに来ることが楽しみだった。
鼠や猫は食べられないが・・・
ロブのアイルーの容態は落ち着いていて静かに眠っていた。