ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合   作:繊細なゆりの花

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戸惑い

ボルボロス亜種

別名 氷砕竜(ひょうさいりゅう) ※以降は氷砕竜と表記

雪原のスノーダンパーの異名を持つ。

砂原に生息する通常種よりも一回り大きい体格を持ち、縄張り意識が強く攻撃的。

分泌物で雪を体に纏い、それは氷となり堅い鎧になる。

主食は昆虫だが、手錬のハンターでも討伐が難しいほどの危険種とされている。

それをすぐ後に、ジル達は体験することになる。

 相手が氷砕竜だと分かるとジルとノヴィスは手信号でジンベイとクムを呼んだ。

ラックとポポ、シモンスキーは後方へ移動させた。

 しかし様子がおかしい。

こちらに気づいているはずなのに、一心不乱に岩を掘り起こし、何かを食べている。

よほど腹が減っているらしい。

 

「チャンスだね」

 

「チャンスだ」

 

「弱点は… …」

 

「わかってる。僕が注意を引くから、尻尾を切って!」

 

「了解」

 

ジルが迂回したのを確認したノヴィスは、氷砕龍の前足を狙い矢を放った。

ガンッッ

 

(何?????)

 

 鉄兜3つは貫通する霊弓ユクモを弾いた。

表面の氷を砕いただけだった。

オオオオオォォォン

氷砕竜の咆哮

腹の底がしびれるような重低音が氷の大地に響き渡る。

敵の殺意がノヴィスを射抜く。

この時、瞬きをしていたら死んでいた。

まるで、人が小石を投げるかのような軽い動作でスコップのような頭を使い、岩をぶつけてきた。

質量はあるが、先程ジルにぶつけられた雪珠より速さは無い。

そのおかげでノヴィスは避ける事が出来た。

真正面だったことも幸いした。

氷砕竜は手を休めない。

頭を下げ重心を低くし、突進の構えを見せる。

 その隙をジル、ジンベイは見逃さない。

ジンベイが、思いっきり氷砕竜のすねを槌で叩く。

転びはしなかったが、体勢が崩れた所にジルが尻尾に切りかかった。

ガキンッッッ

またしても攻撃が氷に拒まれた。

振り回される尻尾を避けつつジル達は考える。

 

「完全に攻撃力不足ニャ」

 

「なんとかしないとね」

 

 一方、正面で相対しているノヴィスたちも、攻めあぐねていた。

ただでさえ大きく固い頭に氷が付着して、氷砕竜はそれを盾にしていたからだ。

 

「どうすれば… …」

 

「我輩に考えがあるニャ。ノヴィスは奴の注意を惹いて欲しいニャ」

 

「わかった。任せる」

 

 ノヴィスはクムと距離をとり、数射矢を先程と同じ箇所に当てた。

今度は全矢命中。

クムは閃光玉を投げ、信号弾をジル達の方角に打ち上げると、手信号でコンタクトをとった。

“自分とジンベイの立ち位置を交代する”

 

「なるほど!!!」

 

 頭をハンマーで叩き割り、尻尾を剣と刀で切断する作戦だ。

交代中、ノヴィスやジルは前足や尾を攻撃し続けた。

 目眩ましから立ち直った氷砕竜は怒り狂い、再度ノヴィス達に突進をかけた。

近くにいるジル達よりも、中距離にいるノヴィスたちへの突進は、スピードを上げられる分攻撃力も増す。

2人は回避に専念するしかなかった。

執拗に氷砕竜は追い回してくる。

2人はぎりぎり回避を心がけていた。

狙っていたからだ。

何を?

氷砕竜がいいかげん止まろうとした時、ジンベイは頭上から槌を振り下ろした。

突進の為頭を下げていた氷砕竜は衝撃で地面にキスをする。

着地と同時に右っ面にもう一発。

続いて左。

 脳震とうを起こした氷砕竜は、たまらずぶっ倒れた。

ジル、クムが尻尾に切りかかる。

執拗な攻撃にとうとう尻尾は切断された。

ノヴィスも手を休めない。

その時ジルの後方から赤色の射線が何本も伸びた。

氷砕竜へ着弾と同時に、ドンッドンッと小気味のいい音を出し、辺りは雪と炎の煙でホワイトアウトになった。

 何も見えぬ中、剣が突き刺さる音がして氷砕竜の断末魔が聞こえた。

「すまない。遅くなった。U字谷の調査に赴いていたのでな」

「ごめんなさい。でも間に合ってよかったわ」

 視界が晴れ、雪原に立っていたのは見慣れぬハンターだった。

 

 

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