ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
「スチュアート、カーライル、先生が来てくれた。2人ともありがとう。容態はどうだ?」
「ああ、コンラート先生お久しぶりです。呼吸は落ち着いたようです。スチュアートが全部やってくれました。」
「てめーはよけーな事言うんじゃねーよ」
「お前はどうしてそう言動がちぐはぐなんだ?」
「これは生まれつきだ。直らねーよ」
二人が会話している最中もコンラートはアイルーを起こし少量の食塩水と果実を食べさせていた。
「ロブ、この後も今私がしたことを続けてゆっくり休ませなさい。もう大丈夫だろう。でも後日、小屋の修理忘れるなよ?」
「もちろんだ。2人ともありがとう。スチュアート、カーライル。君たちも命の恩人だ」
「なあに、助け合うのは当たり前だ」
「ああ、その通り」
「丁度良かった。3人に言っておきたい事がある。私は近々この街を離れてユクモ村へ行こうと思っている。もっとのんびり暮らしたくなったからな」
突然の事にロブ、スチュアート、カーライルの3人はポカンと口を開け、思考が停止した。
「君たちの考えは分かる。心配ない。医師会の中でまだ助手だが見込みのある者が後任となる」
いやいや、そういう問題じゃねーよと皆が心の中で突っ込んだ。
コンラートは王都一・・・いや、国一番の医者かも知れない。
しかも貧富の差関係なく診てくれる。
ショックは大きかった。
が、それは自分たちの勝手、口に出せないでいた。
カーライルが尋ねる。
「それでいつ出立されるんですか?」
「ああ、3ヶ月後には立とうと思っている」
「急だな。先生、どうしてなんだ?」
無神経なスチュアートはぐいぐい来る。
この男は決定的に人の心情を察する能力が欠けていた。
他の二人はコンラートの事情を大体は知っていたが、あまり自分のことを話さないコンラートなので、スチュアートに任せることにした。
悪く言えば利用した。
「あ、ああ、王都の暮らしが合わなくなってきてな。どこか静かな所で余生を過ごしたくてね。逃げるみたいで言いたくなかったが・・・」
「余生って言ったって先生まだ30代後半じゃん」
「あ、ああ、とにかく足りない薬の材料や何かあった時は王都へ使いを出すからその時はよろしく頼むよ」
「コンラート先生、その時は俺ら三人でお祝いさせて下さい。な、ロブいいだろ?」
「もちろんだ。今までの恩返しには程遠いがやらせてくれ。勿論何かあったらいつでも俺らを頼ってくれ」
「ありがとう。みんな」
ハッピーへブン以外の区画では、病人や怪我人が出ても、家族以外は殆ど見て見ぬ振りをする。
本人が金を持っていない場合、自分に請求が来る恐れがあるからだ。
しかし、此処では皆が助け合い、少ない手持ちの中から出来るだけのことをする。
勿論コンラートに頼り切っているわけではない。
特にこの3人は、自らの不利益を考えることなく行動する。
そんな彼らがコンラートは好きだった。
(私はなにも善人というわけではない。中心街の一部の連中からは、正規の料金を得ている。君たちのような光を見続けるのは辛い。悪人だらけの街なら私は、今頃遠慮無く、金をせしめていただろうな)