ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合   作:繊細なゆりの花

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触れ合う心

 ジルたちが戦った場所は、その先に道が無く空洞になっていた。

ギギネブラがどのようにして入り込んだのかわからない。

おそらく幼体の1体がここで成熟し、単為生殖したのか… …

だが、それでもその幼体がどこから紛れ込んだのかわからない。

とにかくここは、天然のゆりかごだった。

 

成長し、全部這い出てきたら… …

 考えただけで恐ろしい。

 

 モンスターの解体は全て、村の男たち3~4人がチームを組んでやってくれているようだ。

 

役割分担。

 

ハンターに負担をかけない為と言っているが、村民も暇じゃない。

 冬季に畑の収穫は無いが、その代わりの収入として、鉱石発掘の仕事がある。

男たちはここかU字谷に赴き、凍土でしか出来ない発掘作業を冬場のみ行う。

 

 また、U字谷は永久凍土である。

氷の中から5000~1万年前の氷づけになった動物も稀に発掘される。

全て商売だ

それが今年は全く出来ていない。

 

 

 ̄ ̄ ̄

 ノヴィスは、村へ1時間ちょっとの道のりを、ジルを背負いながら考えていた。

 

 

役割分担… …

 アレクサンドルは、村に残り待機。

 ラックは、手伝いと戦闘道具作り。

 村民達は、村復旧とハンターの手伝い。

中には自ら志願して、戦闘配置に就いた者もいる。

 

 皆、死力を尽くしている。

目の前のすべき事を放りだして、逃げ出す奴なんかいない。

 

… …じゃあ自分は?

 

 先程、撤退しようとした己を殺してやりたい気分になった。

 

「んうっ」

 ジルが目を覚ました。

「ここは?」

「坑道内だよ。無事でよかった」

 

「ジンベイが薬飲ませてくれた所までは覚えてる」

 

 現在、ジルはノヴィスの肩に顎を乗せ、全体重を預けていた。

ノヴィスの背中に揺られる感覚が心地よかった。

「ノヴィスのほっぺ、あったかいね」

「ジルのほっぺはつめたいな」

「ノヴィス」

「どした?」

「命… …助けてくれてありがとね」

「僕は何もしていないよ」

 

 ノヴィスは自分の事を今まで、いや、今も少し役立たずと思い込んでいるが、ジルはそうと思っていなかった。

こんな目に遭いながら、心は折れていなかった。

むしろ… …

 

ノヴィスがいるから戦えている。

自分とジンベイしか、頼る者がいなかった今までの戦いとはだいぶ違う。

だからさっきは迷い無く突っ込めた。

だから氷砕竜戦で気持ちを切り替えることが出来た。

 

 背中を預けられる安心感。

命を預けられる仲間。

ノヴィスの背中に揺られながら、そんな事を考えていたジルは急に恥ずかしくなった。

頬に紅みが増した。

紅ほっぺ。

「ジル?」

「大丈夫。もう歩ける… …」

 そう言うとジルは、足を地面に付け歩こうとした

「っっつ… …と」

 

 しかし、当然よろけてしまい、転びそうになる。

それを、ノヴィスが殆ど反射的に動きジルを支えた。

「まだ駄目だよ。着いてからも半日は絶対安静しなきゃ」

「うん… …ごめん… …」

 

ジンベイもクムもニヤニヤしながらそれを見ていた。

「ジル坊は大人しくしてるニャ。あまりノヴィスに迷惑かけんにゃよ?」

「いやいや、ノヴィスになら迷惑うんとかけてもいいニャよ?」

 

 それを聞いていたジルは、さらに顔が真っ赤になった。

「お前らなあ… …ジルは毒食らってんだぞ?茶化すなよ」

そう言いながらも、ノヴィスは体が熱くなってきているのを感じた。

それはたぶん、ホットドリンクのせいだろうと、勝手に解釈した。

鈍感すぎる男、ここに極まれり。

 

 坑道の入り口が見えてきた。

外は晴れていて、雪の反射も相まってまばゆい光が全員の目を襲う。

入り口にはアレクサンドルとラック、それに数人の村人が待っていた。

 

「お帰りなさい。ご主人サマ。みんな無事かニャ?ジルどうしたニャ??」

「ああ、毒か?おい!」

 

 アレクサンドルが指示すると村人たちが機敏に動いた。

おそらく担架を取りに行ってくれたのだろう。

「あいつらが戻り次第、お前たちは毒怪竜を回収しろ。お2人方には直ぐに家を案内する」

 

 そうこうしているうちに、村人が担架を持ってきた。

 素早い動きだ。

そのままジルは、アレクサンドルが前、ノヴィスを後ろに小屋まで運ばれた。

「ジンベイ君はこの後オトモ武具屋まで来てくれ。武器を渡す」

「ありがとニャ。恩に着るニャ」

「君たちの獲った獲物だ。礼を言う必要は無い。君たちは本当になんて言うか… …真面目だな」

 

アレクサンドルは薄く笑った。

「君たち?」

 

 村に到着してから、わずか半日。

まだ半日。

その短い時間にいろいろあったが、皆疲れなど無かった。

 

 だって、自分の傍に仲間がいるって実感したから。

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