ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合   作:繊細なゆりの花

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ありえない事態

北方地方特有のこのログハウスは、寒さを防ぐのに最低な造りをしている。

外の薪が、家の壁に付くようにして積み上げられていた。

家具類は無く、内部は殺風景だった。

「ここに降ろそう。そっと・・・そっとだ」

 

 アレクサンドルとノヴィスがベッドにジルを寝かしつけると、彼女は何か言いたげな目をしていたが、直ぐに閉じた。

「事が起こるまでここで休んでくれ。食事は後で届ける」

「ありがとうございます。後、もう大丈夫だと思いますが、解毒薬分けて貰えますか?切れてしまって… …」

「わかった。用意しよう。他に思いついたことや。足りないものがあったら遠慮なく言ってくれ」

「はい、後ほどリストをお渡しします」

 

 ノヴィスとアレクサンドルが会話をしている間、ラックはずっともじもじしていた。

うまく切り出せないでいたが、勇気を出して話かけた。

「ご、ご主人サマ。正面門の見張り役をボクにやらせて欲しいニャ」

 

 ラックの言動に明かな違いが見受けられた。

以前には無い積極性だ。

ノヴィスは嬉しくはあったが、若干戸惑った。

「なんで急に?」

「さっきご主人サマ達が坑道に入っていたとき、村でも戦闘があったニャ。… …ボクも少しずつ変わりたいニャ。ご主人サマのお役に立ちたいニャ」

「… …アレクサンドルさん構いませんか?」

「勿論だ。助かるよ」

それを聞いたラックはノヴィスの裾をぎゅっと握った。

 

 部屋の片隅に暖炉があり。ソファが置いてある。

台所は石で出来ていて、棚にはアルコール度数の高い酒がいくつも置いてある。

食器類は少しで家具は無い。

全く以って簡素だが、短期間過ごすには十分といえる。

壁にいくつか小さい穴が開いている以外は。

 

 アレクサンドル曰く、ここはそれでもまともな方だと言う。

村中がモンスターの被害を受けていた。

「クム、ラック、外の薪を使って小屋の穴を塞いでくれ」

『了解ニャ』

 

 日が落ちる前にリストに書いた必要物資とジンベイの槌は届けられた。

銘は「ボロスSネコメイス」

氷砕竜の中でも最も硬い部分のみを削りだし、作られたハンマー。

いびつな形をしており、安定したダメージは期待できないが、以前使っていた木槌よりは遥かにマシだろう。

 

しかし、最も必要だったのはノヴィスの矢。

先の戦いで殆ど使い切ってしまった。

今度は強撃ビンを全ての矢に装填させる。

拠点から戦場まで距離が近いからこそ出来る芸当だ。

 

 動きがあったのは深夜。

 

正面門の監視塔で見張りをしていたラックが最初に気が付いた。

ドンッ ドンッ ドンッ

 

「誰か!はやく開けてくれ!」

 男が門の前で叫んでいる。

 ラックは安全の為、直ぐに門を開ける真似はしなかった。

 そして叫んだ。

「誰ニャ」

 

「ポポの小屋の者だ。門を開けてくれ」

 

!!!!!

 

 それを聞いたラックは男の方と雪原に向かって松明を投げた。

今夜は晴れ。

月明かりもあって見晴らしがいい。

運が良かった。

付近に危険が無い事がわかると、ラックは門内側付近にいる者に門を開けるよう声をかけた。

 

 

 ̄ ̄ ̄

 ノヴィスのいる小屋へかすかに正面門の叩く音が聞こえた。

ジルは寝息を立てて寝ている。

頼んでいた道具がいつの間にかドアの前に置いてあった、

 

 彼はジルを起こさないよう、そっと荷をまとめた。

(クム、クム、起きろ。行くぞ)

「あ、ノヴィス。ごめんニャ。寝てしまったニャ」

(あまり声を出すな。ジルがおきる。ジンベイ… …頼んだよ)

 ジンベイが頷く。

 クムは毒怪竜戦でずっと動き回っていた。

この小さい体で。

疲れているのは当然だった。

だから、ギリギリまで起こさなかった。

 

 クムの頭を優しく撫でた。

「ご主人///」

「ん?何か言ったか?」

「う、ううん、何でも無いニャ」

 

 ノヴィスとクムが正面門に辿り着くと、アレクサンドルは既に到着していた。

彼の話だと、どうやらポポの小屋で何か異変があったらしい。

小屋の男はかなり狼狽していてパニくっていた。

「血… …血がっみんな食われちいあhgyy」

「まて、落ち着いて話せ。襲撃者の姿は見たのか?何者だ」

「2… …2頭の眠… …狗竜」

「眠狗竜?他には?他には何を見ましたか?」

「… …」

 

 ノヴィスの問いに男は答えない。

放心状態で心ここに在らずだ。

「もういい」

「はい」

「だいたい分かった。恐らく2頭の眠狗竜が、それぞれ群れを率い合流し、小屋を襲撃。そうなるとバギィも多いだろう。普段現れない場所に出現する、全く読めない状況が続いて疲れていると思う。すまん。眠狗竜相手なら危険は無いと思うが気をつけてくれ」

「はい」

「あの地は飛行船発着場兼波止場でもある。居座られると厄介だ」

「わかっています。行ってきます… …クム、荷車に大樽Gを積むのを手伝ってくれ。3つでいい。アレクサンドルさんもお願いします」

「わかった」

「分かったニャ」

 

 ポポの小屋は眠狗竜ドスバギィ達に襲撃されたという。

ならば何故、男は逃げ延びることができたのか。

 

 彼は… …相方が複数のバギィに噛み付かれ、食い散らかされている隙を狙って逃げた。

 月明かりが雪原を照らす中、ノヴィスたちは出発した。

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