ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
「先生、俺たちユクモ村まで送ります。荷物と手紙を村まで運ぶ仕事を請けたので」
「あの村の温泉いいよな。それに最近村長が代わったらしいじゃねえか。若い女らしいな。お前もそれ目当てで仕事請けたんだろ?」
「ああ、半分はな?もう半分はコンラート先生を見送りたいからだ」
「おめーもむっつりな野郎だな」
下卑た笑みでスチュアートはカーライルをからかったが、彼は冷めた目でそれを見ていた。
「俺が言っているのは温泉の事だ。お前、昨日娼館に行ったばかりだろ?頭が病気じゃないのか?」
あっはっはっは。
2人のいつもの漫才に、酒を飲みながら聞いていたコンラートは、腹の底から大笑いした。
やはりこの二人はいい。
腹の探り合いをせず、話が出来る。
料理は皆、既に食べ終わっていた。
「そろそろお暇しよう。あまり酔ったんじゃ、たどり着けそうに無いからな」
そう言いながら、コンラートは2人の杯を見た。
最初の一口しか減っていない。
これから仕事に入るプロハンターの意識だった。
「先生、俺からもあるんだ」
言い出す機会を伺っていたロブが口を開いた。
「先生がいなくなった後のガーグァの世話や小屋の維持はやらせてくれ・・・後、これなんですけど」
「なんだ。これは。金はいらんと言っているだろう。君たちの気持ちで十分だ」
コンラートの受け取り拒否にロブは一歩も引かなかった。
「そうはいかねえ。今まで死にそうになった奴らを治してくれた時も先生は無理に金をせびらなかった。これでチャラにしようとは思わないが、頼む。受け取ってくれ」
馴れ合いではなく、人間として対等でありたいロブにコンラートが折れた。
「・・・あい分かった。ありがとうロブ。遠慮なく頂くことにする」
肩の荷が降りたのかロブは深いため息をついた。
「ガーグァ達の事もいいのか?事業所に伝えて他の者にやらせることも出来る。無理にしなくてもいいんだぞ?」
「あ、いえ、やらせてくれ。少しは給金出るんだろ?」
「ああ、本当に少しだがな。具体的に言うと月に400zだ」
「問題ない。先生ありがとう」
「こちらこそ助かったよ。助手の負担も少なくなる」
コンラートは助手にガーグァ達の世話をさせ、直に触れ合う機会を多くすることで、獣医師として様々な経験を積ませようと思ったが、ロブの意思に押され、それは言わないでおいた。
「では先生、そろそろ出発しましょう。スチュアート、起きろ。お前が先生の荷車の御者を頼む。俺は別の荷車で仕事の荷を運ぶ」
「りょーかい」
「あ、いや私は自分で・・・」
「大丈夫ですよ。着いたら起こします。その酒は後からガツンと酔いが来るんですよ」
確かに飲み始めた時より若干回っているようだったので、コンラートは2人に任せることにした。
こうして3人はユクモ村へ出発した。