ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合   作:繊細なゆりの花

6 / 43
第2章 湯処、湯けむり、ユクモ村

遠方からでも立ち昇る湯気が見えるこのユクモ村は、多くの旅人や、ハンターたちがその疲れを癒すべく、立ち寄る村である。

 なので、付近の村々に比べ、宿泊施設の数や、ハンターが使用する武具の加工技術は群を抜いていた。

 又、この村の特徴として、殆どの仕事を流れのハンターに任せている為、人口351人のこの村に常駐しているハンターは現在1名である。

これは、他の村では考えられない事だった。

 

「ここがユクモ村か・・・のどかだが賑やかだな」

 

「では先生、我々はこれで。一泊したら王都に戻ります。」

 

「じゃあな。先生、、またな」

 

「2人ともありがとう。助かったよ」

 

 コンラートは2人に別れを告げたのはいいが、村長の家が分からない。

日も暮れたし、途方に暮れた。

 仕方が無いので、近くの門にただ座っている男に話しかけた。

(何やっているんだ?こいつ)

 

「あー君、村長の家はどこかな。王都から来た医師のコンラートという者だ」

 

「村長の家なら、あの広場の先のでっかい家だ。行けばわかるよ」

 

「ありがとう。ところで、君はここで何をやっているんだ?」

 

 無駄な時間は取りたくないが、好奇心が勝ってしまった。

「あ?俺?俺はユクモの道案内だよ。一日こうして此処にいるのさ」

 

・ ・・時間の無駄だった。

教えられたとおり、件の家を目指す。

確かに大きい。

村に建てられている民家の三倍は大きかった。

門をくぐり、引き戸を叩くと、女の返事が聞こえ戸が開いた。

(ほう・・・これは)

一瞬だけ思考が停止したが、この村に来た目的を思い出しすぐに我に返る。

 

「あー私は王都から来たコンラート・ローレンツと申します。お手紙のやり取りをしていた者です」

 

「あらあら、ご丁寧に。私は村長のシーラ・ステルヴィアと申します。立ち話もなんですから中へどうぞ。お夕食もお作りしておりますのよ」

 

(何言っているんだ?この女は)

初対面で図々しく食事をするほどコンラートの面の皮は厚くない。

しかし戸惑っているコンラートの腕を取り、シーラは中へ案内する。

 後に彼はすぐ知ることになるが、シーラ・ステルヴィアは合理的な女だった。

 先代が逝去し、すぐに村の長になった彼女は、その娘だからという理由では無く、その才を見込まれ村長になった。

 

「支度しながらでごめんなさいね。お話をお聞きしますわ」

 

 王都で仕事一筋だったコンラートは恋愛とは無縁の生活を送ってきた。

 竜神族。そして十代後半か二十代前半なのはその体つきや顔立ちを見れば分かる。

コンラートは少し照れながら話し始めた。

脈なんか無いのに。

 

「あー手紙、手紙、どこからだったっけな」

 

「滞在しばらくは温泉客室で、その間に空き地に診療所を建てる。までお話はお済ですわ」

 

「そ、そうでした」

 

 言い忘れていたが、ハプルボッカの肉は、精力増強効果がかなり強く、普段のコンラートならこんな事は絶対ありえなかった。

カーライルでさえ、今頃酒場で女性を口説いているだろう。

そんな効能など知らないコンラートは、シーラ・ステルヴィアの尻や、胸ををちらちら見ながら目を見ずに話している。

 コンラートの第一印象は最低だった。

 因みに、スチュアートとカーライルの2人は、この効能の事は知っていたが、まさかコンラートがそんな行動はしないだろうと思っていたので話さなかっただけである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。