ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
シーラは露出度の多い格好などしてはいない。
ユクモ村の伝統衣装の上に、前掛けまでつけている。
コンラートの視線に気づいてはいるが、村長は話を続けた。
「この村に数人、あとここから北西の村、ジーナ村に腕のいい大工がおりますわ。ご予算はおいくら?」
「30万zと考えています」
言いながら、コンラートは頭の中が冷静になってきた。
邪な事を考えている場合じゃない。
この村での生活と、将来自分自身の第二の人生の話をしている最中と。
「お待たせしましたわ」
シーラの手料理は山菜中心の異国の料理だった。
「お口に合えば宜しいのですけど。その金額なら大丈夫ですわ。診療所と居住スペースでしたわね?」
「はい。二階建てを考えております。これ、サクサクして美味しいですね。なんという料理ですか?」
「ここから遥か東の島国の料理でてんぷらと言います。あいこ、クコの葉、山うどを油で揚げました。全部採れたてですのよ」
「(油?)何故、村長はこの料理の製法を?」
「昔、この地に鉄刀が伝来した時父が異邦人に聞きましたの」
ただ塩がかけてあるだけなのに採れたてなのか苦味も無く、コンラートはあっという間に間食した。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした。ではこれから集会浴場へ案内します。診療所が出来るまでそこで生活をお願い致しますわ。少し窮屈でしょうけど」
そう言いながらシーラは支度を整え玄関に向かった。
あわててコンラートも後を着いて行く。
集会浴場にある客室は狭くも広くも無かった。
「来て頂いて本当に助かりましたわ。この村にお医者様がいらっしゃらなくて困っていた所でしたの」
「今までどうしていたんですか?」
「私が薬を調合していたんですのよ。皆、お手伝いして頂けるんです。後日秘薬の製法をお教えいたしますわね」
「そ、それは大変でしたね(私も何か手を打たないと)では、本日は本当にありがとうございました。停めてある荷車から荷物を運ばないといけないのでこれで失礼します」
「はい。今後とも何卒宜しくお願いいたしますわ」
コンラートはこの時自分が医者になったばかりの頃を思い出し、久しぶりに胸が躍るような感覚に陥った。
翌日、スチュアートとカーライルを見送ったコンラートは村の家々に挨拶を済ませ、早速集会浴場の「小さな診療所」を開設した。
初日から大盛況。
外科も内科もこなせるコンラートは村にとって貴重な存在だった。
料金は外部の者は200z。
村の者は100z。
何故そんなに安いのか聞かれると、コンラートはこう答えた。
「金が払えなくて死んだ者を沢山見てきた。もうそんなのは見たくない」と。
しかし問題もあった。
このままだと持ってきた薬剤が3日と持たない。
コンラートが日数分の計算と行商人から買い付ける金額を頭の中で計算している時、誰かが怒鳴る声が聞こえてきた。
「どいてくれ。道を空けろ。通してくれ。サラがやられた」