ユクモ村ハンター ジル・ローレンツの場合 作:繊細なゆりの花
しかし、まずはサラの治療に必要な物を揃えなければならない。
ひとまず部屋のことは後回しにした。
「ジンベイ君のご主人が治るまで、引き続き私の手伝いをして欲しい。私の名はコンラートだ。よろしくな」
「ご主人は・・・ずっと一人だったニャ。そりゃボクがいつも一緒にいるけど、ご主人はどこかいつも寂しそうだったニャ・・・うまく言えにゃいけど、ボクはご主人の傍をはなれにゃいのニャ」
「そうか。わかった。サラの傷を早く治さないとな。この村に薬草採取を専門にしている者はいるか?」
「んー。えと、えと、レーナって女の人がいるニャ。よく村長の家に素材を持って行ってるニャよ」
「じゃあそのレーナさんの所に行って、この紙に書いてある物を、それぞれ買えるだけ買ってきてくれないか?お金はひとまず3万z渡す」
「た、大金ニャね。分かったニャ」
「気をつけろよ?頼む」
ジンベイに使いを頼んだコンラート自身は、村長へ相談に向かった。
雲ひとつ無い青空。
広い道。
さえずる鳥の声が心地いい。
しかし、村の空気とは裏腹に、コンラートは憂鬱だった。
(はあ・・・大の男がこんなくだらない事で・・・王都なら部屋の事なんかで悩まなかったのに。いやいや、よそう。もう戻らないと決めたんだから)
どん どん どん
引き戸を叩く。
「村長さん、ステルヴィアさん、コンラートです」
「はーい。今行きますわ」
声は家の中からではなく外から聞こえてきた。
草むしりをしていたらしい。
(この家に手伝いはいないのか?)
「どんなご用件でしょう?」
「あー・・・」
「???はっきり仰って下さらないと分かりません」
村長の声色がやけに冷たい。誤解だというのに・・・
「えとですね。先日サラを治療しまして、部屋を別けて欲しいんです。手狭でして」
「それは出来ませんわ。追撃に向かったハンター様達がまだ戻って来ておりませんの。その方たちにもしもの時、部屋を空けておきたいのですわ。それに、これ以上客室をお客様以外にお貸しできませんの。分かってくださるかしら」
この村の主な収入は温泉である。
他に南の漁港と林業、武器防具売買も盛んであるが、温泉の益は比べ物にならないほど高い。
その為村長はこれ以上宿泊客を減らしたくは無かった。
「ではどうすれば?」
「簡単です。木のついたてをつければ解決します。丁度大工さん達が到着したのでお家の建築ついでにでもご相談をどうぞ。」
「最後に。前に仰っていた秘薬の作り方をお願いします」
「分かりました。後ほど診療所に伺います」
そう言うとシーラ・ステルヴィアは家の中に入っていった。
(そうか。ついたての手があった。何もこんなに悩む事はなかった。馬鹿か私は)
そしてこの日からコンラートは多忙を極めた。