格上殺しの召喚士「おい、デュエルしろよ」 作:ぺんぺん
「だから言ってるだろなのは。攻撃力だけが全てではない、効果も含めて全てなのだ!」
「いいや違うよ! 攻撃力だもん、力こそパワーだもん!」
「じゃあモリンフェンをメインで使うの辞めろよ……」
今更な事だがこの世界に遊戯王は存在しない。だからこそ、根までデュエリストたら俺はそれを知った心底絶望した。だってデュエルは俺の生活の一部と化した習慣に近い、大事な事だからだ。だから俺は前世じゃ考えられないような事、この世界で遊戯王をやりたいと言う欲求をどうやって抑える、もしくは誤魔化すかで苦悩することとなった。日夜考えて考えて考え続けるが答えは見つからない。その結果、デュエル中毒な俺が発狂しそうになる……が、しかしまるで恐怖新聞の如く窓を突き破って宅配される形で舞い降りた解決策がこの喉から手が出るほど欲しかった遊戯王のカードだ。
そのカードが入ったBOXに付属された手紙によると送り主はあの俺をこの地獄のような世界へと転生させたらしい神様。
それを知った俺はすぐさま神を裏切る事を画策していた人物の如く神殺しを実行しそうになる……が、しかし読み進めていくうちに遊戯王カードを届けるのが遅くなったお詫びに週一に毎週10BOX届けると書いてあって俺は神を崇める信徒に鞍替えを果たしたのさ。手のひらクルックルワイパーだと自分でも思うが聞いてほしい。当時の俺の喜びようは尋常じゃなく、歓喜の極みにて騒ぎ立て、勢い余って机を壊してしまったほどだ。
でもその時点で俺は一つ、カードが揃った事によって浮上してきた問題に気付いてしまう。そう、対戦相手がいないのだ。前世だったら決してそんな事なかったのだが今世に限っては遊戯王と言うコンテンツそのものが存在せず、この世にあるカードも今ここにあるものだけ。どうしたものかと悩んだ結果、俺はこう考えた。
いないのなら作れば良いと。
んで教育に力を入れる事にした俺は理解力が高く負けず嫌いな幼馴染にターゲットを絞り、他人に教えるのが下手な俺が頑張って唯一俺以外のデュエリストへ仕立てられたのがこの俺の肩をポコポコ叩く雑魚だ。まぁその障害としてモリンフェンデッキとか言うやべーデッキを使って俺を倒そうと画策しているからバカだよなぁ。
「ヤダ! これで勝ちたい!」
「またアンタたちそんな会話してんの?」
「なのはちゃん達、カードゲームがほんとに好きだよね」
あ、紹介が遅くなったけどこの通学バスに一緒に一番後ろの席に乗車して俺達へ呆れた表情で物申す金髪美少女がアリサ・バーニングス、紫色のナハハっとしてる子が月村 すずかさん。どちらも将来存分に百合百合してそうな可愛らしい子だ。ッチ、俺の守備範囲が高校生ぐらいのからじゃなきゃ全力で推せたのにく…悔しい。
「好きって言うかコイツが負けず嫌いなだけだろ」
「……確かに。なのはって変にいじっぱりなところあるよね」
「アリサちゃんひどぉーい! 私いじっぱりじゃないもん、ねぇすずかちゃん!」
「え、私!? えっと、その……あはは」
「す、すずかちゃん?」
「ほら、すずかさんも否定できないぐらいだぞぉー いい加減認めろよこのモリンフェン中毒者ぁ」
っとまぁ、こんな感じで今世に転生した俺は気の許せる友人と共に何時も楽しく過ごしているのさ。そんな訳で既前世でも習った事を復習すら感覚で授業を聞いたり、デュエルマッスルを生かした運動を行った後は俺達の大好きなお待ちかねのお昼の時間だ! 今日こそはと考え行動し、1人でデッキでも組みながら食おうと考えていたんだけど……
「何処へ行こうと言うのユウキくん」
「これからデッキを組む予定があるの、失礼する」
「今日は止めて」
魔王からは逃げられなかったよ。って事でデュエルマッスルでの対抗虚しくなのはと言う魔王に捕まり俺はいつもと同じくドナドナされて屋上へ向う事となり、すずかとアリサを加えた四人でお昼を食べる羽目に……っく、一人でデッキを組みたかったぜ。
「よ! お二人さん。これからお昼、一緒にどうだい?」
「……あんたそんなんで恥ずかしくないの?」
え? 女の子に負けるのが恥ずかしく無いかとですと? もう慣れたので問題ありませぬ。
「もうなれた」
「なのはちゃんすっごーい!」
「えっへん!」
まぁそんな訳で俺は新作デッキ片手にもぐもぐと持参した自作ドローパンを食べてます。あ…三人はお弁当か、お可愛い事。ご飯を食べながら話すことも言えば雑談がメインなのだが、俺となのはが居れば自然と遊戯王に関する話にシフトチェンジされる。例えば俺がモリンフェンデッキを使う事を何故重要視するのか問いかけるとなのはがそれはロマンがあるからだと答え呆れたり、なのはが朝のリベンジマッチにと挑んでくるのでそれに応じ、食いながら組んだデッキであるメスガキ粉砕機で文字通りなのはのライフポイントを粉砕して煽ったりと話は弾み、内容は今日やった授業の内容へ移った。
「将来か……」
そう呟くなのはの顔色は余り良くない、何か問題でもあるのだろうか?
「アリサちゃん、すずかちゃん、ユウキくんはもう決まってるんだよね?」
「ふんわりとね。いっぱい勉強してパパとママの会社のあとを継がなきゃいけないから」
「私は機械好きだから工学系で専門職がいいなぁっと思ってるけど」
「そっかー……二人とも決まってるのね」
知ってた。アリサの親がやってる会社はかなりの大手だからそうなるだろうと予想はついていたし、すずかさんに関しては前から将来の事で相談を俺が何故か請け負っていたからなぁ……
「ユウキくんは?」
俺へと問いかけて来てるなのは。そういえば他人の将来の相談を聞くばかりで自分の事は一切話してなかったな……そのせいかな、なのは以外の二人の目が若干キラキラさせてるのは。そんなに気になるの、二人とも。
「えっと……」
で、でもなぁ。できれば言いたくないんだよなぁ。だって今世では誰もいない職業だもんなぁ。でも、ここで言わなかったらアリサあたりからかなり煽られるんだろうなぁ。
「デュ、デュエリスト」
「────」
声を失ったみたいな、何とも言えない微妙な表情を晒しているなのはに頭を抱えて痛そうに抑えるアリサ。その横ではあははっとすずかが呆れているようだった。し、仕方ないじゃないかこの世界には遊戯王が無い。だから俺がペガサスの如くデュエリストになって世界中に広めるしかデュエリストを増やす方法はねぇーんだよ!
「……あんたばっかじゃないの」
うっせアリサ、我ながらそれは自覚してる。
「────」
ごめんなさいすずかさん。何が悪いか分かりませんが取り合えず謝るのでそのような目で私を見ないでくだされ。心が死ぬぅ。
「……あはは、何と言うかユウキくんらしい答えだね。何かやりたいか決まってない、特技も無い私とは全然違うよ」
「────」
俺は思わず言葉を失った。 いや、言葉を失ってる暇あったら俺を言わなきゃ。流石にこれは酷いぞ。
「ばかちん!」
「はぅ!」
俺の想いを代弁するかのようになのはへレモンの一切れがぶっ飛び破断。飛ばした人物であるアリサは割とぷんすかした表情で珍しくなのはに怒っているようだった。なんとなく緊迫した雰囲気に興奮した俺は同時に百合の波動を感じて強欲の効果でドローパンを再度ドロー。ガッチャ、たまご味だぜ。
「自分からそーゆーこと言うんじゃないの!」
「そーだよ。なのはちゃんにはなのはちゃんしか出来ない事がきっとあるよ」
「アリサちゃん、すずかちゃん……」
おぉー! っと俺が気配を消した途端始まるは女同士の友情を感じさせる激励の言葉。聞いてるこっちまで心が熱くなるぞー!
「大体あんたは理数系の成績じゃあたしより良いじゃないの! それで取り柄が無いとはどの口が言う訳ぇ!」
「だ、だってぇ! 私文系苦手だしぃ!! 体育も苦手だしぃ!!」
「ふ、二人共止めてぇぇ!!!」
ホントそこん所謎だよな。筋力だけなら普段デュエルマッスル維持の為に鍛えてる俺よりもあるくせに体育の成績は何時も低いんだよなぁ。
ってか二人の絡み合いを見てたら中々に百合度が高い絡み合いだぜ。っく、やってるやつがJSでなかったら俺はきっと萌え死んでいただろう。悔しい、悔しい……
「俺は草だコンクリだ鉄柵だ。全ての気配を無にして百合を探る者」
ってかいつまでこうやって無に偽装してたら良いんだろ。寂しい、寂しい……
こうやってお昼の時間が過ぎて行く。これまた何時もの日常、いつもの風景。多少変化はあってもこの光景は変わらない日常の一片だと俺は頭の何処かでそう考えてた。だからこそ、その帰り道やその日の夜に日常が激変する出来事に遭遇するなんて考えもしなかったんだ。