幼女が道端に沢山落ちてるから金策しちゃおうって話   作:ぶり大根(元・孤高の牛)

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前編

「……ねっむ」

 

 人類がガストレアとかいうのに負けてから幾年か経った。

 今日も今日とてガストレアさんは我々の平穏を脅かしてる訳だが、それが無ければただの暇な日が続くのみ。

 それは所謂ガストレア退治を主にしている民警も同じ事であり、特に対象がいなけりゃ収入も無し、世界を守る云々よりも気付けば金稼ぎの為にガストレアをちぎっては投げちぎっては投げ……

 命懸けでやっても収入は限られている、そんな中他に何か金を稼ぐ方法は無いか、莫大な金を得られないか考えていた時一つ思い至った事があった。

 

 ……人身売買だ。

 

「さて今日の取引先は……お、いたいた」

 

 それも普通の人身売買じゃない。

 

「おっちゃん、例の子は?」

 

「おうボウズか、手筈通りに……ほらよ」

 

「ひっ……」

 

「ありがとよ、今回も良い収入が入った」

 

『呪われた子供達』、世間的にそう呼ばれているガストレアウイルスを身体に内包した最高齢10歳の幼女達の人身売買だ。

 それもシステムは『廃品回収』、つまりこちらに金を渡せば何かと都合の悪いこの子供達回収しますよと謳っている商売。

 こんなもん儲かるのかと思う人間も多いと思うが外を歩いていれば良く分かる話、金を払ってでも消えてほしいと思う人間の多い事多い事……それを利用しない手は無いとエリア中に散らばった浮浪者やヤクザをブローカーとして雇い『仕入れ』させ金をぶん取りブローカーと俺とで7:3山分けをしている。

 ブローカーの方が多いのは当たり前だ。

 

「しかし今回は手こずったぜ」

 

「あー、土壇場で金を渋ったとか?」

 

「そうそう、ほんとそういう時ボウズの情報は助かるわ。お陰でしっかり揺さぶって借金させて金は徴収、悪に対抗するにゃそれ以上の悪をぶつけるべきとは良く言うがアイツぁ間違いなく近い内に身を滅ぼすだろうさ」

 

「ナイスおっちゃん!」

 

「俺はヤクザだぜぇ? こんなの朝飯前よ」

 

 たまに無料回収しろなんて図々しい奴らもいるが、ブローカーはエリア中に散らばってる為情報屋も兼ねて雇ってる面もあるから簡単に揺さぶれるしその分ブローカーの仲介料の取り分の方が多いのもある。

 それにしても揺さぶって取れるだけ取ってくるもんだから一人100万はザラ、中には1000万で渡してくる連中もいるんだから民警が暇でも裕福な暮らしが出来るって訳だ。

 まあこんなのは序の口であり、メイン収入は他にあるが……今は取り敢えず引き取ったガキを連れて行かなくちゃな……くくく。

 

「んじゃ俺はコイツ連れてくから、また宜しくな!」

 

 金と『金策要員』が手に入ったのだ、口角が上がって仕方が無い。

 幼女は怯えてるが……まあ良い、直に『分からせられ』『洗脳させられる』のだから。

 

「オラ、来い!」

 

「い、いや……もういたいのいやなの……」

 

「あ? 何言ってやがる、折角の金策要員をキズ物になんてする商人はいねえよ。分かったら着いてきな」

 

「ひっ……はい……」

 

 晴天の空の下の道を歩く俺の顔は、きっと極悪人だった。

 

 

 

 

 

「おーいジジイ! 松崎のジジイいるー?」

 

「……全く、君は本当にいつも突然連れて来るね」

 

「しゃーねーだろ、ジジイケータイ持ってないしこの孤児院電話も無いんだから」

 

 30分程歩いて着いたのはモノリスの外と言う訳でも無いが人が住める状態にほぼ無い荒廃した地帯。

 そこに不自然に佇む大きめの建物。

 そここそが俺のメイン収入源が存在する孤児院だった。

 

「それで、そこの子が今回引き取ってきた子かい?」

 

「おう。結構虐待されてたみてえだしまずは治療してやってくれ」

 

「分かったよ。さあもう大丈夫だ、ここに来たからには虐待も差別も無いんだよ」

 

「…………え?」

 

 ガキがぽかんとした様な素振りで俺とジジイを見比べる。

 ったくどいつもこいつもなんで似た様な反応しかしないのかね。

 俺としちゃ一刻も早く傷を治して元気になって俺の為に働いてほしいもんだ。

 

「ぼさっとしないで早くそのジジイに着いてけ」

 

「えっと、その……」

 

「ほっほっほっ、そいつは言い方はキツいが君達の様な存在を助けているだけなんだ。誤解せんでやってくれ」

 

「よ、余計な事言うんじゃねえよっ」

 

 実際ほんの少しだけならそういう世直しみたいな事を考えてもいるが本当にほんの少しだけだ、何もこんな小さい子供が心身共に一人ぼっちになってるのが哀れだとか許せないとか悲しいとか見てられないとかそんな事はちっとも思っちゃいない。

 

「……お、おにいさん」

 

「あん?」

 

「…………あ、ありがとう……」

 

「……あぁ」

 

 礼なんて言われる様な事はした覚えは無い。

 だが言われるなら一応返事だけはしといてやる、一応はな。

 ガキはそれだけ言い残すとジジイに連れられて孤児院の奥へと消えていった、これで仕事は終わりだな。

 

 さて、終わったからには暇になる。

 そういう時民警としてバディを組んでる相棒がいつも来るはずだが……

 

「おにいちゃ~ん!」

 

「おー元気そうだな、あみ」

 

 と、来たか。

 この黒くて長い髪と人懐っこい性格のコイツの名前はあみ、前の家族から名前すら付けられる事も無く捨てられていたところを民警なりたての俺が拾って家族として育てた。

 本当は形だけでもバディが組めればという道具として使うはずだったが育ててる内に懐かれ俺も何だかんだ満更でも無くなってしまいバディとしても日本有数のタッグになってしまったのだけは誤算だったが些細な事だろう。

 

 本当の兄妹の如く関係もそこまで悪いものでも無いしな。

 

「またひろってきたの?」

 

「まあそんなとこだ。くくく……」

 

「……おひとよしだよね、おにいちゃんって」

 

「……バカ言うな、俺は金稼ぎの為にやってるだけだ」

 

「そーいうことにしときます」

 

「ぬぬぬ……」

 

 一つ不満を言うならこやつこの様に妙に俺の事を見透かした様な言い方で不意打ちしてくるところだろうか。

 別に俺は金稼ぎの為に拾ってきてるだけだっての。

 だからその『全部分かってますよ』的目線を止めろ、可愛いのは認めてるが。

 

「そういえば今日は『あの日』だよね?」

 

「ん、おう。新曲の振り付けは出来てるか? センターでも結構簡単なもんになってたはずだが」

 

「うん、みんなバッチリ! 金伏さんの教え方じょーずだからわかりやすいし!」

 

「ま、伊達に俺様が選出したダンス講師じゃねえって事だわな」

 

 話変わって今度は何の話になってるか教えてやろうか。

 何を隠そうこれは『俺のメイン収入』の話だ。

 そう、話の流れ通り俺は捕獲してきた連中を使ってアイドル活動を行わせているのだ。

 会場は浮浪者や暇してた俺の所属企業に話を付けて大改装した地下、孤児院を作る前松崎がガキ共を匿っていたところになる。

 

 ウチの企業はどうもお人好しの集まりらしく、呪われた子供達だろうがなんだろうが良くも悪くも分け隔てなく一人の人権ある人間として見る様な清々しいまでのバカだからか社長自ら含めたお留守番という名の事務員数名以外社員総動員で地下大工事をした、してしまった。

 その結果想定より大分広い空間が出来、その分得られる収入も大きいものとなった。

 

 有り余った体力の矛先は孤児院近くに放置された数箇所の廃倉庫から会場に繋がる地下道だった。

 本当に想定外過ぎたが怪しまれず大人数を一度に会場に運べる為悪くは無いだろう。

 

 あとダンス講師だがこれは元ダンサーの同僚民警に頼んだ、金は出すと言ったがダンスを他人にまた見せられる教えられるだけで充分と言い放ち俺を呆れさせたのは記憶に新しい。

 

「……ねえ、おにいちゃん」

 

「……どーした?」

 

 ニコニコとしていたあみが唐突にスっと表情を少し遠くを見つめる様な、物憂げな、10歳がする様な顔では無いものにさせる。

 流石にこんな顔されたら俺だって真剣になるしか無い。

 

「わたしね、今とってもしあわせなの。おにいちゃんにひろわれて、いたいのもかなしいのもくるしいのも無くて、おにいちゃんも松崎さんもやさしくて、みんなといると楽しくて。アイドルもかわいいおようふく着れるし歌もダンスも楽しくて」

 

「そうか」

 

「でもね、わたし……だからちょっとだけね……こわいの」

 

「そう……か」

 

「夜になるとね、くらくて、しずかで、寝ておきたら全部ゆめで……またこわい所にいるんじゃないかって」

 

「……ッ」

 

 いつもの天真爛漫な表情はそこには無かった。

 あるのは未だ癒えぬ心の傷、本来癒しであるはずの、温もりであるはずの家族から付けられた大きな大きな傷跡。

確かに俺はそういう境遇にあるガキ共を奪って使って金儲けをしようとしているし実際している、それもそうやって傷付けられたガキ共を奪って利用して、だ。

 だが、だがそれでも俺はガキ共だって一人の人間だと思っている。

 だから、流石に家族の、あみの、そんな塞がらない傷を見せられて黙っていられる程外道では無い。

 

「……あみ」

 

「……おにい、ちゃん?」

 

「俺はここにいる。ずっとお前の傍にいてやる。他のガキ共はいつかここを巣立ってそれぞれの生き方を選択するんだろうが、俺はあみがどんな選択をしても着いてってやる。だから怖くなんてねえよ、夢なんかじゃねえよ、一丁前に不安になんてなるなよ。ガキはガキらしく目の前にある幸せを受け取っとけ……な?」

 

 抱きしめる。

 慣れない事を、らしくない事をしてるのは自分自身分かってる。

 それでも目の前にこんなに辛そうにしてる人間がいて、何もしないなんて事出来る訳が無かった。

 あみ以外だって、何度だって死にそうな顔をした呪われた子供達や人間を見てきているしそんな世の中になっている。

 せめて、自分の手の届く範囲の人間くらいそんな顔にさせたくは無いと思うのは俺みたいなクズでも許されると思いたい。

 

「…………あり、がとう。……おにーちゃんがおにーちゃんで、ほんとによかった」

 

「……そうかよ」

 

「……うん。だいすき」

 

 何だか妙に顔が熱くなる。

 こんな10歳相手に照れ臭くなるとか俺もまだまだだな。

 目線を逸らして頭をトントンと優しく撫でながら俺は誤魔化し次いでにわざとらしくテンションを上げる。

 

 今日はアイドル活動と言っても『特別な事』もあるしな。

 

「……うし、ほんじゃそろそろリハーサル入れとくか!」

 

「わぷっ。ってリハーサルするには少し早くない?」

 

「くくっ、今日は『大切なお客様』が来るからな。その対応でトラブっても問題無い様に早めにリハは終わらせておく、つー訳で30分後に地下集合だからアイツらにも伝えといてくれ」

 

「? はーい」

 

 さてさてさっきまでのしんみりした空気は終わりだ。

 こっからは俺の金策ショーをお客全員に楽しんでもらわねえといけないから気合いが必要だ。

 

 今から『大切なお客様』の驚愕と困惑に染まる顔が見れると思うと口角が上がって仕方がない。

 何せ相手はこっちをマヌケにも検挙しようとしに来てる相手だ、これが笑わずにはいられないよなぁ?

 

 

 

 

 

 なあ、『里見蓮太郎』くん?

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