幼女が道端に沢山落ちてるから金策しちゃおうって話 作:ぶり大根(元・孤高の牛)
「な……んだ、これ……一体、何がどうなって……」
「やあやあお客人、今日はお楽しみいただけてるかな?」
「お前……お前がここの支配人なのか?」
「あー、立場上孤児院の松崎のジジイの名前を借りてるが実質は俺だな」
「……何が、目的だ」
俺様プロデュースの保護してきたガキ共によるロリアイドル五人組ユニット『てんぺんちいっ!』新曲披露に沸き立つ会場の隅、俺と件の『大切なお客様』である里見蓮太郎は方や驚愕と睨みを効かせた顔、方や口角上げっぱなしで話している。
どちらがどちらかは言うまでも無いだろう。
「そりゃもう金儲けさ」
そもそもこのアイドル活動はわざと風の噂、都市伝説、そんな感じで東京エリアに流し聞き付けた人間を俺様や何だかんだ手を貸してくれたお人好しな所属企業の検問を潜り抜けた善良なアイドルオタクやオタクと行かずとも興味のある連中のみを選別し廃倉庫からここに繋がる地下道を案内され通り辿り着く事の出来るシステムにしている。
悪意を持っていると分かればその時点で文字通り『記憶を消してお帰り頂いている』がその辺は割愛しよう。
因みにユニットは『てんぺんちいっ!』だけでは無く他に同じ五人組の『こくしむそう』と『ふーりんかざん』、そしてそのメンバーの誰かが卒業……つまりは大体は善良な人間の元や民警企業の元へ独り立ちした際に昇格する為の下部組織『研究生(現状十五人)』が存在していたりする。
「お前ッ……」
閑話休題、そんな厳重な検問を『元序列134位であり反逆者であった蛭子影胤討伐』と『第三次関東会戦MVP』である上にその功績で序列210位まで上げてきた今をときめく超有名人こと里見蓮太郎くんを知らない民警なんているはずが無い為どれだけ変装してようが突破なんぞ普通は不可能。
勿論俺様達の企業も総員で蛭子影胤討伐や第三次関東会戦に乗り込んだ。
天才な俺様とあみのコンビや有能揃いの同僚が司令塔や各班長に指名されたお陰で犠牲者が少なくスムーズに里見蓮太郎くんにタスキを繋いで解決出来たから個人的に感謝は尽きない。
それとこれとは話が別だが……何の勘違いからか俺様の人身売買が呪われた子供達を不幸にしていると耳に入ったらしく乗り込んできたという流れになる。
コイツもコイツで呪われた子供達だろうが普通の人間として接しているというのは嫌という程見ているからわざと通した訳だ。
ノコノコと入ってきてる時点でもう少し警戒心を上げてもらいたいものとも思ってしまうが今は好都合、コイツをこっち側に付けられれば厄介な敵が一気に減る。
「オイオイそう熱くなるなよ、里見蓮太郎くん君だって馬鹿じゃないそうだろう? なら今日ここに来るまでに人身売買や孤児院の事やアイドル活動、全部調べあげて来てるんじゃないのかい?」
「そんなの……信じられる訳無いだろ……! しかもIP序列320位『緋剣』の二神冬夜と『針地獄』の二神あみが関わってるなら当然だろ!」
「ちょっと怪しい動きしてる序列三桁前半ってだけでそこまで動くかね」
言い忘れていたが二神冬夜というのは俺の名前だ。
勿論二神あみはあみの事になる。
緋剣ってのは……恐らく俺の特性バラニウムソード、針地獄はあみのガストレアモデル『スズメバチ』から来てるんだろうな。
それとコイツがなんでここまで動いてるのかは俺は既に把握済みだ。
「……それはするだろ。事実元143位がやらかしたんだから」
「ふーん……大方俺様不在の時にしてた臨時講師とやらでここのガキ共がお前んとこのガキ共……延珠とティナの友人になったのがお前が動いた原因だと俺様は思ってる訳だが? そこはどうなのかねえ」
「……ぅぐっ」
思わず呆れたくなってしまうのを抑える。
分かりやすすぎる……本当に元143位とステージVどちらも倒したとは思えねえ……が、俺様自身が最前線でどっちも確認してるから事実なのは確かなんだよなこれが。
そんな悪く言えば心理戦にあまりにも向いちゃいない里見蓮太郎だが、悪いだけでもない。
やはりと言うべきかこの世は呪われた子供達への差別意識が強く俺様が金策の為に拾ってやらないと食い扶持にすら困る様なガキ共が存在している。
そんな中でコイツはお節介過ぎるくらいそういったガキ共を気に掛けているのを知っている。
店員に理不尽な暴力を受け悪徳な警察に追われていたガキ、盲目を良い事に好き勝手虐げられていたガキ、里見蓮太郎自身いがみ合っていたプロモーターとはぐれたそのバディのイニシエーターのガキ、全員何とかしようと動こうとしていたのを俺は見ていた。
そう、何の因果か全部見ていただけに当時まだコイツに順位も抜かれていなくて400位中盤辺りにいた俺はその順位権限を使って全部先回りして影胤の時以外はそれとなく気付かれない様に裏から手を回し……警察に追われていたガキと盲目のガキは金策の為にここに回収、イニシエーターのガキに関しちゃ、プロモーターがどこ行ったかアテがあったから俺以外の部隊メンバーにその場を任せ俺様と里見御一行で脱出してサポートした訳だが。
まあ俺様は天才だからそれくらい出来て当たり前だがな。
つまりは里見蓮太郎は210位の威厳も何も無くアホみたく分かりやすいが、想いは本物って訳だ。
仲間に出来ればこれ程好都合な事も無い。
「俺が居なかったからって何も知らないと思うなよ、ここにいる半数以上は俺様が捕まえてきた連中なんだからな」
「……つまり俺は嵌められたのか」
「オイオイ人聞きが悪いなあ、お前は街中の呪われた子供達やここのガキ共に良くしてるってガキ共から聞いたから誤解を解いて仲間にしてやろうって思ってるだけなんだぜ?」
「仲間って……人身売買してる様な奴の仲間に俺がなると思ってるのか?」
「ああそうともさ。ここにガキが放り込まれれば少なくとも食い扶持には困らず虐待も無く、奪われた世代による虐殺も防げる。警備として俺様所属の企業民警が数人着いてるからな……事前に爆弾をこっそりセットして爆撃……なんて悲劇も未然に防げちまう」
「……何が言いたいんだ」
「簡単な事……お前が大事にしてる延珠やティナが仲良くなった連中はここにいれば安全安心な上にまだまだ捕まえてこられる、しかも金は湧いて出る程手に入るから孤児院の増築も出来る。…………お前がこれを見逃すならお前の
所属の企業だって最初俺様のしてる人身売買を知った時は流石に協力に難色を示していた、そりゃあ当たり前だ。
だが同時に社長含む上層部は近年稀に見る良識派、里見蓮太郎と同じくこの社会の、呪われた子供達への迫害を何とかしたいという想いが大きく結果的に迫害される子供達が減る事、危険視されているヤクザや浮浪者と手を結んで協力関係を結べば情勢が良くなるメリットの方を選ぶ決断をしてくれた。
俺様が当時400位台の超エリートだったってのも大きいだろうがな。
その辺は自分の才能に感謝しないといけない。
さて一方怒涛の言葉責めにあった里見蓮太郎くんだが……
「確かに……今の法律や警察、世の中じゃ守ってくれないのが現状か……だが本当に信じて良いのか……?」
まだ悩んでいた、というかかなり悩むフェーズまで入ってくれていた。
ここまで来ちまえば後はもう押すだけだろうな。
最後のひと押し決めに行きますか。
「そう言うと思ったからねぇ……ちょっと来てもらおうか」
「ど、どこにだよ」
「孤児院だよ孤児院、ライブも終わったからな」
最後の仕込みはあみに頼んである。
事前に仕込んでおけばコイツとて手も足も出ないだろう、少し卑怯だとは思うが厄介な分さっさと詰ませるに越した事は無いから悪く思うなよ、里見くん。
「で、一体何なんだ」
「まあ落ち着けって。あみ、ライブ終わりで悪いけど連れて来てくれ」
「はーい!」
ライブ終わりのこじんまりとした会議室。
今日の出演者全員を労った後里見をそこに連れて行き、座らせる。
自分の正義感が確固たるものだからこそ揺らいでも中々決められないタイプの人間にゃ決定的な一打が必要不可欠、それも一発で折れるような特大の爆弾が。
里見蓮太郎の『爆弾』なんだと思う?
察しの良い人間なら簡単に分かるよな。
「つれてきたよー」
「……れんたろー」
「蓮太郎さん……」
「なっ……!? 延珠、ティナ……!?」
そう、身内だ。
「サンキューあみ、なでなでしてやろう」
「んにゃ……わは~おにーちゃんのなでなですき~」
「二神……お前……」
「悪く思うな、そんでさっきも言ったが俺は俺自身が不在でもその時にあった事くらい把握済みなんだよ。だからあみやここの連中が延珠やティナと親交あるのは知ってたって訳。この二人とは街中でたまに会うしな」
「……どこまで俺の上を行くんだ」
隣に座ってきたあみを撫でる手を止めずにジワジワ攻め立てる。
事実延珠とティナを呼び捨てにしてるのはある程度話した事があるからに他ならない上あみは交友関係を良く話してくれる為里見蓮太郎のとこのイニシエーターと交流をしている事は暫く前に知っていた。
自分の最愛の妹の友達を交渉材料にするのはいくら俺でも多少気が引けたがこの際意識さえさせなければ良いだろう。
「ま、お前が10万位台の時からこちとら500位以内だったもんでね。色々裏から手も回せて裏から情報も取れてたって訳だ。因みにお前が気に掛けてたガキ二人に関してもここで保護してる」
「なに……!?」
「ふふふ、怖いだろう?」
眉間に手を当てガックリ項垂れる里見蓮太郎。
心配していた二人の行く末がここに集結してたともなれば最早コイツがこちらを検挙するメリットが無いに等しい。
少なくとも見逃させる事に関してはチェックメイトと言ったところか。
後は協力させられれば良いが……
「……一つ、良いか?」
「なんだ?」
里見蓮太郎は意を決した様に項垂れていた顔を上げる。
その目は先程までの敵意や困惑は無い。
ただ一点俺を見つめていた。
「アイドルしてない奴らは、どうしてるんだ」
「それぞれ得意分野に割り当てている。服飾関係が得意、興味がある連中はアイドル衣装作りに、愛想の良い奴らは俺のいる企業で事務員……という名ではあるが所属イニシエーターの心的ストレスを減らす為の同年代友達枠として雇い入れ、どうしても自分の力でこの世の中を変えたいって連中には稽古を付けてブローカーの護衛……」
「あ、因みにお前が気に掛けていた内の盲目のガキはセラピストとしての才能開花させて奪われた世代の心の傷を多少なりとも癒す仕事をしてたりする。他にも色々やってるがそれは後で松崎のジジイにでも聞いてくれ。……ま、拾ってきた奴ら全員、金策に必要不可欠な連中である事に違いはねえな」
全員が全員、金策に貢献出来る仕事に従事している。
大半は内気だったり怖がりだったりするがウチのアイドルに元気を貰ったとか何とか言って憧れてそっちに偏るがな。
「延珠、ティナ」
「……わらわは、みんなが幸せにすごせるなら協力したいと思う」
「わたしもです。今度はだれかを救うがわになりたい……」
「……………………分かった。二神には前も延珠の友達……夏世を助けてもらった恩もある、信じるよ。情報もある程度流す」
「ふっ、賢明な判断だ」
「れんたろー……ありがとう!」
「ふふ、やっぱりおにいさんはおにいさんですね」
「その代わりだ。……絶対不幸にするなよ」
「幸福感こそ効率に繋がる、当たり前だ」
これで完全にチェックメイト。
良識派且つ俺より上位の210位と協力関係、これ以上の戦果は無い。
しかもあみの友人のイニシエーターのいる企業ともなれば裏切る可能性は皆無だろう。
「とーま、あみも……ありがとう。わらわのどーほーを助けてくれて」
「また来ますね、必ず」
「……俺は利益になるからやってるだけだ。礼には及ばん」
「おにーちゃんはこう言ってるけどほんとーはてれてるだけだから気にしないでね」
「あみー? 余計な事言うなー?」
最後には里見蓮太郎含む全員が、笑っていた。
何だかんだ、こういう世の中になるのは、誰も彼も笑える世の中ってのはさ。
「ねえ、おにーちゃん」
「ん?」
「これからもっと『きんさく』していこーね!」
「言われなくともするさ、俺様の為にな!」
「もー、おにーちゃんはすなおじゃないなー」
「悪いかよ」
「ううん、大好きっ! そんなおにーちゃんだから大好きなのっ!」
悪くないかもなあ、と。
真っ赤になる顔を背けながら思うのだった。
『幼女が道端に沢山落ちてるから金策しちゃおうって話』[完]
※この後水原鬼八とか原作キャラ更に救済して行く事になるがそれはまた別のお話