「さて君たち。 今日から本当の意味で《
やけに芝居がかった口調でそう話す上司、もとい育ての親にセシリアは黙って頷いた。
貧民として死にかけていた所を目の前の上司……眩しい金髪を持った美女であるダリアに拾われたのだった。
経緯は違えど、セシリアと同じようにダリアに集められた同僚の三人もダリアに頷いて返す。
するとダリアは満足気に笑った後に、ゆっくりと話を始めていく。
死者の国を治める冥界神のダリアによって結成された組織《
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セシリアは愛を知らない少女であった。
生まれた時から親はおらず……と言うよりも捨てられたことによってずっと一人で生きていた。 貧民街で。
セシリアがどれだけ必死で働いたとしても……貧民として動き出してしまった
衛生的にも良くない環境で育っていた彼女は、流行病にかかって……齢十五という早すぎる……しかし同時に貧民街ではそう珍しくない年齢で息を引き取った。
そして……死後の世界に落とされた時……ダリアにこう持ち掛けられたのだった。
『なるほど……君の才能……失うにはあまりに惜しいものだ。どうだろうか? 私に着いてきてくれないかい? そうだね……もしかしたら君は《愛》を知ることが出来るかもしれない』
『愛……?』
セシリアは聞き慣れぬ言葉に戸惑ったが……それと同時に形容し難い不思議な高揚のようなものを感じていた。
だからこそ……セシリアは同意した。
そして……約2年の訓練を超えて一人前の《
《
到底不可能に思えるその任務目標なのだが……冥界神であるダリアがいれば話は別だ。
天界の神と対になる存在であるダリアは、無数にも思えるような膨大な数の全ての異世界を『観る』ことが出来る。
もっとも、ダリアが見ることが出来るのは『将来的に地獄に行く人間が発する力のようなもの』で詳しく見ることは出来ないという。
夜空に輝く星々のうち、よく光るものは目につくだろう? 私が『観る』人間の力というのも、それと同じようなものさ、とはダリアの言葉である。
つまり《
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「……さて。 君たちが《
じっと黙り込んでダリアの話に聞き入るセシリア達四人組。
この四人が共に《
チームの士気が高いことに満足気に頷いた後、ダリアはコホンと咳払いをした。
そして……
「一つ、絶対に無理をするな。 君たちが相手にするのは本来ならば地獄行きが確定しているような輩だ。 勿論必ずしもそれが極悪人だとは限らない。 君たちのように……やむを得ない理由で地獄行きが確定する人達だって存在するからね」
「「「「……」」」」
ダリアの言葉に四人はさらに黙り込んだ。
セシリア達《
「……っと、話が逸れてしまったね。 そして二つ、不必要に異世界へ干渉をするな。 君たちが関わったことで本来の世界の運命とは違った運命が定められてしまうかもしれない。 つまり……そういった改変は必要最低限に治める必要があるのさ」
「その……すいませんダリア様。 ひとつよろしいでしょうか?」
「うん? どうしたんだいアリス?」
恐る恐るといった様子で手を挙げた少女アリスにダリアは応じる。
修道女の格好を身にまとったアリスは、当てられたことでビクッと肩をふるわせた後にポツポツと呟き始めた。
「その……もしですが……道端で襲われている人を発見したとしても……助けるなと。 そうおっしゃるのでしょうか……?」
「ふむ……なるほど。 それは考えていなかったよ。 そうだね……セシリアはどう思う?」
顎に手を当てて考える素振りを見せた後、ダリアはセシリアへと発言を促した。
美しい銀髪の少女は同じように考える素振りを見せた後に……アリスとは対照的に堂々と口を開いた。
「……見捨てるべきだと思う。 ……不必要に干渉しちゃいけないと言うのならばね」
「……そんな! セシリアさん!?」
「落ち着いてアリス。 私だって貴方の気持ちは分かるわ……でも……!」
「ちょいといいですかい御三方? あっしも少しばかり意見があるのでございやすが……」
「「……!」」
ヒートアップしていたセシリアとアリスの論争に割って入ったのは、三角笠を目深に被りその上に外套を羽織るという統一感のない服装の男……ガイザであった。
ガイザはセシリアとアリスが自分を見つめていることを確認した後、ゆっくりと口を開いた。
「あっしは戦乱の世の中で死にやした。 生憎自分が死んだ時のことはよく覚えてはいないんでやすが……とにかく一つ言えることがありやす。 それは……『人の命の軽さ』でござんす。 つまり……たった命ひとつの為に自分達の使命を危ぶませるのは如何なものかと」
「なっ……何を! ガイザさん! いくらあなたと言ってもそれはッ!」
「落ち着いてアリス。 ガイザが言ってることは間違ってない」
「セシリアさんまでッ!」
ガイザと同じように貧民街という命が軽い場所で生きていたセシリアは、人の命が存外軽いことを知っていた。
「はいはいストップ! ちょっと! 一回落ち着こ?」
ヒートアップする三人を止めたのは《
「ちょっとダリア様! 何でさっきから黙り込んでいるんですか!」
「……! いやぁすまない……色々と考え込んでしまってね」
「本当にしっかりしてください! それで……アリスの質問はどうなんですか?」
サロメの言葉にダリアは一瞬考える……そして……
「それは君たちが決めることだろう? 君たちはチームなのだから」
問題を丸投げした。
「「「「……は?」」」」
「そんな事より! もう時間が無い。 早く君たちを異世界に送らなくては」
「いやちょっと……? なんか魔法陣が床に出てるんですけど?」
「うるさいぞ! ……もう時間がない! とにかく三つ目だ!」
予め出発の時間に合わせて転移魔法を組んでいたようで、床に現れた魔法陣が少しづつ光を増していった。 残り時間が少ないことは誰の目にも明らかであった。
「三つ目。 それは君たちが異世界で果たしたい君たちの『我よ……」
ダリアの話の途中だった。 そこで魔法陣が完成してセシリア達は異世界へと送られたのだった。
「君たちの『我欲』を果たせ……って、もう居ないのか」
一人取り残されたダリアは、寂しそうにそう呟いたのだった。