場所はプールから移動し、室内。勇次郎専用の部屋と言ってもいいこの部屋。そして、暖炉の近くには席があり、セラフォルー、ヴェネラナが勇次郎の前に座っていた。勇次郎はいつもと変わらぬ態度で座り疲れを癒す。
グレイフィア「失礼致します。ワインを。こちらはロマネ・コンティ・マグナム。85年の当たり年でございます。」
ヴェネラナ「ありがとう。」
セラフォルー「ありがとう、グレイフィアちゃん。」
グレイフィア「勇次郎様、お煙草はどうされますか?」
勇次郎「貰おう。」
グレイフィアは3人分のワインを入れ、慣れた手つきで勇次郎に煙草に火をつける。たった1吸いで根元まで吸い、一気に煙を吐き出す。
セラフォルー「コホッコホッ」
ヴェネラナ「物凄い肺活量ね…」
勇次郎「で?俺に何の用だ?情愛の深いグレモリー様は俺に復讐でもしに来たか?」
ヴェネラナ「違います。娘のしでかした行い、本当に申し訳ございませんでした。」
勇次郎「お前たちの甘さが出ている証拠だ。だから、自分と他人の力量も測れない。」
ヴェネラナ「…返す言葉もないわ。」
勇次郎「それで?その為だけにセラフォルーまで連れてきたわけではあるまい。」
セラフォルー「…今回のコカビエルの襲撃で3大勢力で会談を持つ事になったの。そこに勇次郎君も出て欲しいの。」
勇次郎「…」
セラフォルー「馬鹿な事を言っているのは承知よ!でも、この会談が成功すれば…」
勇次郎「いいぜ。出てやるよ。」
セラフォルー「え?」
勇次郎「あんたには一応恩もある。恩を返すには丁度いい。」
セラフォルー「勇次郎君…」
勇次郎「もちろん無償という訳では無い。強いやつを差し出せ。」
セラフォルー「そ、それは!」
勇次郎「殺しはしない。少し遊ぶだけだ。これが条件だ。」
セラフォルー「…分かったわ。丁度若手で貴方と同じスタイルの子がいるの。その子との対戦を組むわ。」
その途端、勇次郎は凶悪的な笑みに変わる。闘技大会前に見せたあの悪魔的な笑みに。
勇次郎「そいつはいい。ちょうどそいつに押しかけようと思っていたからな。名前はなんと言った?」
グレイフィア「サイラオーグ・バアル。世間では魔力を持たない出来損ないと言われているようですが、体術に関しては悪魔一かと。」
勇次郎「出来損ない…。魔力と言ったくだらんものに頼るマヌケよりはわかりやすい。」
セラフォルー「…会談は1週間後よ。」
勇次郎「ああ。」
返事をした瞬間に勇次郎の髪が逆立つ。それは、勇次郎の命を狙う敵がいるということ。それは、敵への死刑宣告でもある。
勇次郎「出てくる。」
グレイフィア「承知しました。存分にお楽しみください。」
そして、勇次郎は外へと出ていく。グレイフィアは慣れた手つきで灰と吸殻を片す。
グレイフィア「皆様。窓をご覧下さい。魔力での攻撃に頼りきっている我々悪魔では決して出来ないことを見られます。」
グレイフィアの言葉を受けて全員で窓を見る。外では、10メートルを超える熊を勇次郎が素手で圧倒する光景であった。そして、その顔は無邪気な子供の様な笑顔に溢れていた。