夜、セラフォルーはふと目覚める。明日からまた仕事ということもあってだろうが、すぐには寝付けないと思い軽く散歩でもしようと部屋を出る。少し歩いていると、何か金属同士の擦れるような音が聞こえ、ふと中庭の方に訪れると先程までは無かったはずの巨大な丸い石がそこにありその目の前には範馬勇次郎がいた。
勇次郎「誰だ!」
セラフォルー「わ、私よ、勇次郎君!これは…」
勇次郎「打岩だ。」
セラフォルー「だ、打岩…?」
勇次郎「中国拳法によるトレーニングの1つ。己の五体のみを武器と化し、巨大な岩を丸みに帯びていくトレーニング。しかし、未熟であれば手足に傷を付けるが、長く手練を行った者にはそんなもの出来はしない。」
セラフォルー「そ、そんな無茶なトレーニングを…。」
勇次郎「所詮はお遊びだ。こんな岩など!!」
そして、勇次郎は見事なまでの正拳突きを放つ。見ているだけで綺麗な正拳突き。そして、丸みを帯びた岩はたった1発の正拳突きで木っ端微塵に砕け散る。何の苦もないように。
セラフォルー「(す、凄い…!魔力を纏ってもこうはならないし…。彼ならあの大会に…!)ね、ねえ、勇次郎君。大会に出てみない…?」
勇次郎「大会?」
セラフォルー「そう。冥界には娯楽がかなり少なくて、レーティングゲームというのとあと1つ。闘技大会というものがあるの。」
勇次郎「ほう…」
セラフォルー「しかも、この闘技大会。最上級悪魔クラスが推薦した者以外出場する事は出来ない上、ルールも武器を扱わなければ何をしてもいいという超実践級の大会。どうかな…?」
セラフォルーは勇次郎の顔を恐る恐る見る。ふざけるなと一蹴されるかもしれないと思ったがそうでは無かった。それどころか、口を釣り上げて笑ったのだ。その笑った顔は悪魔という他無く、悪魔であるセラフォルーですら寒気を覚えるほどに。
勇次郎「ふははははははは!!そんなルールを聞けば、出る他あるまい!!セラフォルー!俺を推薦しろ!!」
セラフォルー「え、ええ。分かったわ。大会は1ヶ月後よ。」
セラフォルーは後悔した。もしかすれば、自分は大変な事をしてしまったかもしれないと。もしかすれば、世界の歴史を…。真の大悪魔を生み出す瞬間を作ってしまったかもしれないと。そして、夜が明けたら次の日、勇次郎はまたあの森へと向かった。強者を求めて。
そして、闘技大会の話から丁度1ヶ月が経った頃、勇次郎はセラフォルー達の元へ戻ってきた。前よりも体を大きくして。