ロドスに落ちたトランスポーターがケルシー先生に慰めてもらう話 作:クレジット
息抜きに書いた。反省はしている。
頭が痛え。
最初に思ったのはそんなことだった。ガンガン俺を苛む頭痛は、二日酔いのかほりを際限なく漂わせていた。
「んぅ……」
「ああ、すまねえ。起こしちまったか?」
懐を探って煙草を出そうとする。ん?あれ、昨日飲み過ぎちまったかな、服着てねえや。どことなくべったりすんのは風呂に入らねえで寝ちまったからか?
ってか全部どうでもいいくらいに頭が痛い。
「……今何時だ?」
時計を見る。あれ?ないな、どこにやったんだ?
「時計は、こっちの机の上だ」
「おう、ありがとな」
なるほど、8時42分か。
今日の予定は──って俺、職失くしたんだったな!何もねえや!強いて言うなら就活か?つってもまずは履歴書書かねえとな。
ああ、面倒だがやるしかねえか。トランスポーターの資格って割と正式名称が長えから手が痛くなるんだよな。
「私も、そろそろ起きなければ」
「それがいい」
ケルシーと目が合った。
「なん、どうえええぇぇぇッッ!!!???」
ちびっこがその赤い目を俺に向けた。
膝下まで伸びている長髪はいっそ非現実的なまでに真っ白で、短くない付き合いながら変わらないそれが羨ましい。
「おお、これまた老けたものだな……」
「俺もそろそろ四十路だからな、しゃあねえさ」
「実は遠回しに妾のことを煽っておるな?」
現前のこいつはワルファリン。
ここ、ロドスアイランドにて働く医療オペレーターだ。
艦内に居る俺の知人は両手の指で数えることができるくらいに少なく、その中でも一等古い付き合いのこいつとは入職した時から世話になってる。
そう、俺はロドスに採用されることとなった。俺に採用通知を送る時に手違いが発生して書類が入れ替わり、俺の受け取ったお祈りメールは入れ替わったその人のもの、
実際どうなのかはよく分からない。俺が本来採用されていただとか、書類が入れ替わっただとか、そんなものはロドスに入ったばかりの俺にゃ分からん。
それに、俺と入れ替わった
「失礼する、ワルファリン……どうやら立て込んでいるようだな。また今度出直すことにしよう」
ドアが開いて、その件の人物は足を踏み入れようとした。
だがそれは俺を見た途端に固まって、すぐに廊下へと戻っていく。
「今なら別段構わないが」
「それでは、失礼した」
ワルファリンが引き留めるための言葉を発しようとも、ケルシーはここに止まる気がないようだった。
ドアの閉まる音が室内に響く。
「……このところ、そなたを見かけるとケルシー先生はいつもその場を離れたがる。いい加減に何をやらかしたのか吐いてしまった方が身のためだぞ」
「俺は何もしてねえよ」
ジト目が辛い。
「俺は何もしてない。ただ、俺は……」
俺はきっと。
「ケルシーに何かをするべきだったんだろうな」
その〝何か〟ってのが何なのか俺は知っていた。ケルシーがそれを待っているのだろうと俺は分かっていた。
だが俺は突然発生した二択の問題にノータイムで答えられるほど愚かじゃない。そんでもって馬鹿になれない。
俺はちゃんと答えなきゃいけねぇのに、答えられてねぇんだ。今だってケルシーを追いかけもせずクソみてえな思考にリソースを割いてる。その時点で俺の選ぶべき答えってのは一つだけなんだろうけどな。
「お前の言うことは、妾には分からない。だが、そなたのことを少しは信頼している。ちょびっとだけな。ちょびっとだけだからな!」
あーはいはい、分かったから。
それで何が言いたいんだよ。
「確か明日にそなたの検査があっただろう?」
「ああ」
「応援しておるぞ」
「何が?」
えっ、何が?
「上手くやれ」
ちょっ、次の仕事行く前に教えてワルファリン先生!?俺は何を頑張ればいいんだ!?ワルファリン先生、ワルファリン先生──!?
気不味い。
押し潰されそうな程張り詰めた雰囲気が部屋の中に充満する。
俺と対面しているケルシーの目が人でも殺しそうなほど強く睨みつけている。何を睨みつけてるのか、って質問はしないで欲しい。
ケルシーの手に持つクリップボードがみしっと音を立てた。やっぱりお前俺より力あるんだろそうなんだろ。
検査のために招かれた診察室の中には、本来そこに居るはずだった補助役の医療オペレーター、つまりワルファリンの姿が見えなかった。
ワルファリン先生は機器の準備だけ完璧にして俺の検査をバックれやがったらしい。これは教育委員会に訴えて良いレベル。懲戒免職を要求する。
ワルファリンを連れ戻せばいいとも思うが、問題なのはそれが
俺の検査は鉱石病治療を掲げるロドスにとっていの一番にするべきことで、プロファイル編集などのためにも急務だ。ケルシーは逃げられない。
覚えとけ、ワルファリン先生。
後で血液奢ってやる。
俺も覚悟を決めよう。
「なあ、ケルシー」
「なんだ」
「どうして、俺をずっと避けてるんだ?」
先鋒の攻撃がヒット、ケルシーが顔を顰めた!
一瞬にして、室内の緊張は一段階上に到達した。一触即発、剣呑な雰囲気が俺の背筋を凍りつかせる。だがそれに怯むほど俺も耄碌しちゃいない。
「言っただろう、あの朝に。私はもうお前に近付かない。私は二度と勝手な事情で権限を振るわない。忘れた訳ではないはずだ」
「あの時はお前の雰囲気に押されて何も言えなかった。お前を制止する言葉も出せなかった。それも、悪かったと思う」
なあ、ケルシー。お前も自分の勢い任せにそんなことを言っちまっただけなんだろう?確かにケルシーは罰されるべきかもしれないが、被害者の俺がいいって言ってんだからいいだろ。
「二度としないってのは、確かに必要とも思う。だが俺と同じ部屋に居ることすら拒むことかよ。近づかねえなんて言ってたってそれは違うだろ?」
クリップボードが嫌な音を出して、罅割れた。
まさか地雷を踏んだか?そう思ってはみたが、ケルシーにとって触れられたくないことはその真意にあるはずだ。近付かせない、再犯しない、それの先に何かあるはずだ。
やがて、ケルシーが口を開いた。
「お前は、何も分かっていない」
クリップボードが真っ二つになった。
わーお、ジェットコースター。やっべふざけてる場合じゃない、俺はいつのまにかケルシーの地雷を念入りに踏みつけてたらしい。
どの言葉に反応していた?それとも文全体か?分からん。
「お前にとって私はただの一友人で、だからお前は私を許した。二度も同じことはしないと信頼して私を受け入れた」
「それが、どうしたって言うんだ」
「……お前は、お前自身がどんなに私を絶望させているのかすら知らずに、ただ私の行いは間違っていると糾弾している。ああ、これほど怒りを覚えることはそうないだろう」
こいつは、俺が思っていたより余程参ってるな。
「これが不当な怒りだとは、分かっている。お前は私のことを正当に責めていて、私が個人的且つ一方的な感情でその和を乱していることなど分かっているんだ」
「和なんてモンは要らねえよ。ただ俺はお前の様子がおかしくて気になっただけだ」
「その行動が私を苦しめるとも思わずに、か」
「もっと酷いことになって、そん時オレが部外者に扱われてたら嫌だからな」
「……自分勝手だな、ローンは」
言葉に詰まる。ケルシーの怒りが悲しみに上書きされたように感じたからだ。ピリつく感覚が一瞬だけなくなれば誰だって気づく。
「はあ……どうしてそこまで捻くれちまったかな」
「間違いなくお前のせいだろう」
ケルシーが腕を組んで、もう言うことなんて何もないとでも言うように顔を背けた。これでも俺より生きてるはずなんだけどな。
まあ、いいか。
「ケルシー、俺がお前の感情を知ったのはあの朝だ。俺の察しが悪くて今まで苦しめてたってんなら俺は謝る。すまなかった」
「……」
「でもな、その、子供の恋愛みてえになるんだが……お前の感情を知った後で、またちゃんとお前に向き合いたい。俺はまだお前に惹かれてない。だから……」
「言っただろう」
ケルシーが何やら覚悟を決めて、俺の方を向いていた。
「お前は何も分かっていない」
繰り返された否定の言葉がちょっとばかし俺の心に突き刺さった。ケルシーは嘘だとか意地だとかでそれを言ってるんじゃない、そう分かってしまったからだ。
何も言わなくなった俺を見て鼻を鳴らす。ケルシーは席を立ち、俺の背後にまで回った。
「私はな、ローン。お前のことを愛している」
あの朝に聞いたことだった。二日酔いの頭痛に顔を顰めながらリビングに出た俺を待っていたのは、これ以上ないくらい完璧な謝罪と、そして情熱のカケラもない愛の告白だった。
とん、と俺の肩に手が置かれた。
「だから私はお前を求める」
囁くような声でケルシーが言った。俺を襲うくらいなんだから当然だろ──とは言えなかった。俺は酒のせいで、襲われたって事実しか分かっていなかった。
ケルシーのその言葉に込められた欲望は長年来の友人を襲うに足るほどの大きさで、それを正確に理解した俺の身は否応なく竦んで動かなくなった。
「お前は分かっていない。私がどれだけ我慢しているのか、私がどれだけ自制心を動かしているのか、何も分かっていない」
ぐうの音も出なかった。俺はまだケルシーの気持ちを軽く見ていた。どこか子供の恋愛と同じだろうと見ていた俺は明確に間違っていて、ケルシーが怒りを覚えるのも当然だった。
「お前と同じ部屋に居るだけで、私は雑念を幾つも増やすことになる。二人きりなど、まるで襲ってくださいとでも言っているかのようだ。診察室には丁度ベッドがあるのだからな」
首筋をケルシーの指が伝う。ケルシーにそう言われるのが男として嬉しくない訳でもねえんだが、だとしてもさっきの数倍にまで膨らんだ恐怖がその嬉しさを覆い隠した。
今のこの状況がようやくハッキリ見えた。俺は捕食される寸前の料理だ。ケルシーが俺の背後に回り込んだのは、つまりナイフとフォークを持ったってことを意味してるんだろう。
ゆっくりとケルシーの腕を掴む。不安になった俺がつい無意識にしてしまった行動で、ケルシーの手も一瞬だけ硬直したように見えた。
「そういう行為が私に火をつけるのだと、何故分からないんだ……!」
吐息が首にかかりこそばゆい──うおゎっ!?
「な、何してんだ、お前……」
暖かい、少しザラザラとした何かが俺の首を撫でている。それは少しだけ濡れていて、動く度にケルシーの髪が俺の頭に触れる。
感覚で分かる。俺の首筋を伝うコレは、ケルシーの舌だろう。
流石にこれは気持ち悪さが勝った。ケルシー自身が気持ち悪いと感じた訳じゃないが、その行為が最高に嫌だった。
俺の首を舐めるケルシーの頭をどうにか掴んで押さえ──何すんだお前やめろ!?
「味は手の平と首で違うようだな」
「これ以上舐めたら殴るからな」
「分かっている」
感想とか要らねえんだよ。恥ずいとかじゃなくて普通に怖気立つわこんなモン。
「分かっているから、そうしたんだ」
声のトーンが一つ下がった。まただ。またケルシーの感情がぐちゃぐちゃになった。
振り返った先でケルシーは、俺に掴まれている腕から血を流していた。
そして掴んでいない手の指先、もっと言えば爪から血が滴り落ちている。よく見れば、腕に出来ている傷は、何本かの線で出来ていた。
俺に掴まれた方の手を引っ掻いたのか?それも、出血するほどに。
「何してんだ、お前」
「……」
何も言わずに懐からアーツユニットを取り出し、腕に向けて撃った。
緑閃光のような淡い緑色が輝き、指先の血が少しだけ付着したアーツユニットを、またケルシーはどこかへ仕舞った。
「お前に近づくというのは、こういうことだ」
その言葉には諦念が滲んでいた。
「お前は私を拒絶しなくてはならない。私はお前から離れなくてはいけない。それが自然で、そして合理的な反応だ」
今、分かった。
ケルシーが舌を這わせたのは俺に拒絶してもらいたかったからだ。俺はケルシーの言葉でようやくそれが分かった。
そうだ、一つだけ覚えていることがある。俺がケルシーの家にまで行って、そんで一言だけずっと頭に響いている。
『私にお前を刻ませてくれ』
ケルシーは俺とあれきりにするつもりだったんだ。自分の抱える感情も欲もあの夜だけのものにして、俺には近づかない。
それがケルシーの予定していた未来だった。
だが俺はそれを無遠慮に踏み躙った訳だ。
リュドミラにも言われていたんだ、お節介焼きな部分を直せと。そう簡単に直るもんじゃねえって考えはやっぱり正しかったみてぇだな。
「……もう、私に近付くなよ」
ケルシーが俺の手を振り払おうとした。だががっちり掴んだ俺の手はそれっぽっちの動作で外されるほどじゃない。
はっ、誰が離すかよバーカ。
「ローン、この期に及んで何が言いたい」
どうやら察しが悪いのは俺だけじゃねぇみたいだな、ケルシーさんよ。
俺のこの期に及んで言いたいことなんかどう考えても一つだけだ。
「俺はお前に近付くに決まってんだろ、馬鹿野郎」
「どうして、お前は……っ!」
「俺がお前の友人で、俺が親の責務を終えたからだ」
「何の、ことだ」
「俺がまだ親だったら、そりゃお前とは距離を取っていただろうな。なんてったってリュドミラにそういうのは早い。正直今でも早い。彼氏連れてこないでほしい」
来たら殴る。どんな優男だろうが一発は殴る。
「でもな、リュドミラはもう大人になった。俺は子供に対して責任を負うことがなくなった。だから、ちょっとくらい間違ってたっていいんだよ、ケルシー」
俺は規範になる必要がなくなった。ケルシーが間違っていようが無理して罰する必要はない。潔癖に生きるなんてのは、子供には言えねえが面倒だ。
「生憎だが、俺はお前を嫌ってない。まだ友人として親しくしたいってのが素直な感情だ」
「だが、それでも……お前は私に犯されたんだ」
そりゃ何かしらの形で罰は欲しいけどな。
「私はお前を弄ぶために採用契約を蹴ったんだ。お前を追い込んで、私がそれを救って。だがそれは余りにもぞんざいな計画で、上手く行くはずがなかったんだ」
俺が前の会社を辞めちまったから、つい魔が差したってことか。
「……元から、ロドスには入れたくなかったというのもある。お前は外部のトランスポーターで、巻き込みたくなかったんだ」
ロドスに来た俺はワルファリンに会って、そんでアーミヤちゃんに会って、そこでようやくケルシーがバベルに所属していたことを知った。
バベルの仕事は報酬こそ良くてもそこそこ厄介で、依頼がケルシーの方から出てたって言われた時には納得したもんだ。
あの頃、俺は前の職場を辞めてバベルに来ないかと誘われていた。リュドミラがまだ独り立ちしていなかったから断ったが、ケルシーが居ると知っていれば、逆に俺は独り立ちさせる名目で龍門を離れたかもしれない。
絶対に泣いただろうけどな、リュドミラじゃなくて俺の方が。
「上手く行ってしまったことこそが誤算だった。上手く行ってしまえば私の抑えが効かなくなることなど分かっていた」
ケルシーは俺がロドスに入って欲しくなくて、欲の部分では俺がそれで困ったらいいな、なんて考えていた。そしてその欲は実現出来てしまった。
夢物語が現実になってケルシーは抑えられなかった。だがそれは人として最悪の行為で、頭の中で終わらせるべき妄想だった。
「だからお前はそれで終わりにしたかった訳だ」
またその最悪な行為をしてしまわないように俺から距離を取った。だがそんな心境を俺は一ミリも理解せずにこうして部屋の中に居る。
だから、ケルシーは俺に警告した。
自分のことを理解させ、昂った情動は自傷行為で鎮めた。それはきっとケルシー自身のためじゃなくて、俺のためなんだろう。
「お前が誰かに奪われることさえなければ、私はきっと満足していられる。もうお前は随分と歳を食った。唯一の懸念も、恐らく心配は要らないだろう」
「そりゃ俺は結婚できねえだろうな」
「だから、もういいんだ」
はあ?そんな訳ないだろ。
もういい、なんて言葉で諦められることじゃないってのは恋愛だとかに疎い俺でも知ってることだ。
「最後に私はお前に欲望の限りを尽くした。お前がまだ私のことを友人として見てくれるだけで、どうしてか救われたような気がする」
「やめろ、それは本音じゃねえだろ。お前は俺を好きになっちまったんだから、それで終わってるはずがない。救われたなら、そんな悲しそうには笑わねえさ」
「……もしそうだったとしても、私は嘘を吐くだろう。そう言って自分を納得させることが一番丸く収まるだろうからな」
丸く収まる、だって?お前の感情を精一杯押し殺しておくことが一番最良の選択肢だって言ってんのか?お前はバカみてえに傷ついて、俺がそれに心を痛めて、それがか?
本当にそうだって言ってんなら──最高にバカな野郎だ、お前は!最高にバカでアホらしくて、ンなこと絶対許さねえに決まってんだろうが!
「お前は、俺の話を聞け!俺はお前の感情なんざ全部受け入れるっつっただろうが!お前が我慢してるのを知って、俺がどうとも思わねえ訳がねえだろうが!お前が我慢する必要なんかねえんだしよ!」
馬鹿みてえな話なんだ。ケルシーが必要のない我慢をして、我慢させた俺は嫌な気持ちになって、それで仲も悪くなる。最悪だ。そんなことには絶対させねえよ。
「お前は俺を惚れさせる努力をしろ!遠慮なくな!そんでもって俺がどう思うかは俺の勝手だ、お前はただ自分の感情に従え馬鹿野郎!研究者!アホ!」
「……そうか。お前はそういう男だったな。まさかあれだけのことをされてそんなことを言うとは、私はお前のことを低く見誤っていたようだ」
ケルシーは苦笑しながらそう言った。
……なんか不安になってきたな。
「なあ、酒のせいで具体的な内容を全く覚えてねぇんだけど、お前俺に何した?」
ケルシーは納得したような顔で、視線を逸らした。
おいちょっと待て。
「俺はお前に何をされた?」
「…………」
「おい」
ちょっと、ケルシー?ケルシー゠サン?
「二言はないな?」
「待て俺はそこらへん甘かったかもしれん、説明しろ、おい、ベッドに向かうのをやめろ、そしてこの手を離せ!開き直るのはもうちょっとだけ待ってからにしろ!」
「……唆るな」
「このシチュエーションまで楽しんでんじゃねぇよ!?おまっ、アレだからな!?出るとこ出るからな!?」
俺にそんなギラついた目を向けるな……っ!
「くはっ、くははは……っ!」
「怖えよその笑い方!?あっ、やめろ、覆い被さるな!!待って、本当に待って、ほらここ診療室だから!」
「愛している、ローン」
「ばっ──馬鹿じゃねぇの!?この状況で誰が告白すんだ!ちょっとキュンとした俺の純情を返せ!」
なんでこうなったんだよ!
クソッ、ああもう、馬鹿野郎が!
「俺がお前を嫌いになっても知らねぇからな……ッ!」
「好かれているのに嫌うなどお前が出来るはずもないだろう」
「さっきと発言が正反対じゃねえか!」
「ああ、お前は私を信頼させたんだ。誇るといい」
「それがこんな信頼じゃなきゃ──脱ぐな!」
「無理だ」
ケルシーが久しぶりに笑った。
いつも通り、憎らしいくらいに整った笑顔だ。
そんな風に笑えるんなら、いっつも笑っとけよ。
「もう、我慢なんてしないからな」
バーカ、最初からそのつもりだっての。
もっと笑えよ、ケルシー。
ハーレムは?
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あり
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なし