SCP財団の報告書的な物を書いてたら英霊になったんだが??? 作:我等の優雅なりし様を見るや?
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人間っていうのは、一生に一度くらいは後世に名を残して語り継がれる自分の姿を妄想したりする物だ。
でも大抵の場合、それは金銭的な問題であったり、能力の問題で妄想のままで終わる。
そりゃそうである。そう簡単にほいほいと後世に名が残るような功績は挙げられるもんじゃ無い。
で、殆どの人間はそこで諦める。でも私には……ちょっとした能力と知識があった。
それは所謂自分が日本人だった前世の記憶と、転生するときにもらった【保全】という能力。
まぁ、有りがちな話。私は前世はサブカル大好きな日本人で、まぁ何やかんやあって若い身空で死んだ。
それで何か上位存在的な奴の気紛れとやらで、適当な能力を付与されて下位創作世界とやらに送り込まれたという訳だ。
渡された保全の能力は、それなりに使い勝手が良かった。自分が触れた物の状態を、触れた時点でのものに保ち続けるこの能力を俺は自分に使い、転生した先の世界を放浪し続けた。
大体こういう神様転生的な話のお約束として、『原作』という物がある。まずは自分が転生した世界が何処の世界なのか確かめようという訳だ。
結論から言おうと思う。この世界には、そもそも未だ人類が誕生していなかった。
この地球……本当に地球なのだろうか?いや、それを考えても意味は無いだろう。話を戻そう。
この地球(暫定)は、地上を多種多様の恐竜達が闊歩する星だった。つまり、超古代スタートという訳だ。
これで日常物の世界だったとしたならば俺は心の底から上位存在を呪うだろう。日本に文明が生まれ、そこから発展させていくまで何十万年も狭い世界で完結する物語の為に待たなければならないとか軽い地獄である。
だが、如何やらその心配は杞憂の様だ。
この世界には、【超常】がある。それを魔術と名付けるか、魔法と名付けるのか、はたまた奇跡と名をつけるのかは知らないが、前世では考えられない様な物が此方の世界にはある。
私は見た。大地が突然隆起し、周囲の物を巻き込みながら中へと陥没していくのを───そして、見間違いで無ければその中から覗く巨大な単眼を。
天空を駆け、この世界とは我の為にこそありと全身で主張する、巨大にして偉大。高潔にして野生の極地、美しき巨龍を。
この世界では退屈しなさそうだ。私の能力【保全】があれば、この世界を余す事なく楽しみ、探索することが出来るだろう。嗚呼、素晴らしきかな神様転生。人間が誕生する迄の暇つぶしには事欠かなさそうだ。
失敗した、失敗した、失敗した!
くそッ!己の傲慢さに反吐が出る!何処かで過信していたのだ。己のこの【保全】さえあれば、自分は無敵だと!
ああ、そうだろうとも。誰も私を傷つける事など出来ないし、私には餓えも乾きもない。この世界に来た時の状態から少しも損なわれる事が無いのだから。
だが、それは無敵には程遠い。私の身体は傷つきはしないが故に、鍛えられる事もなく、いつまで経っても貧弱な人間のままだ。私が転生してきた地はプレートに近いらしく、幾度ともなく地震が発生した。
当初こそ私はこの非日常を楽しむ余裕があったが、地震によって発生した土砂崩れによって生き埋めになってからはそうもいかなかった。大地深くに埋没したこの身はピクリとも動きはしない。この非力な身では身動き一つも取れはしない。ひたすらに土の中で、何らかの対外的な要因が私を解放してくれる事を祈り続ける日々を数年は続けた。本当に地獄の様な時間だった!
私の【保全】は自らの精神状態にも作用するらしく、狂ってしまうこともできない。結局、龍が偶然地面に自分の尾を叩きつけたのに巻き込まれる事で、まさしく生き地獄から脱却する事に成功した。
私は、学んだ。所詮は自らは非力な人間であり、多少の能力を手に入れたとしてもそれは変わらないのだと。
ノー・アウトドア。ビバ・インドア生活。私は偶然見つけた洞窟に【保全】を掛け、そこで生活する事にしたのだ。
数年の地中での生活は私に一つの気づきを齎した。私の脳内に収められている知識は、一切の摩耗を経験しない。
恐らく生前に読んだ物であろう本の内容や、漫画、アニメすらも想起する事が可能だった。
だが、所詮は一度見た物。一度見た物や読んだ物を何度頭の中で反芻しようとも、全く楽しくも何とも無いのだ。そこで私は考えた。折角、今度こそ安全な地に引きこもるのだ。ここで一つ面白い事をしてみないかと。
私は生前、とある一つの創作物にハマっていたのだ。
其れこそが、SCP財団。海外の掲示板のクリーピーパスタと呼ばれる、画像に各々が好きな設定をつける遊びから始まり、多種多様な世界観が付け足され、多くの人々を魅了し続けるコンテンツだ。
私は、それに登場する魅力的なオブジェクトを、財団を再現してみたかった。そしてあわよくばそれが私の【保全】によって後世に残り、世の人々の想像をかき立て、そして感銘を受けてくれたら良いのだ。
闇の中に立ち続け、光の中に住まう者を護らんとするその信念に。
それからの私は早かった。
洞窟の中を数年かけて工房にリフォームし、唯一の懸念であった『どうやってオブジェクトに異常性を持たせるのか』も洞窟の周辺で死んでいた巨大な龍をこれまた数年かけて完食する事で解決した。
超常の力──財団用語で言う所の現実改変能力を手に入れた私は、ウッキウキで様々な物を作成した。
そこら辺を闊歩していたトカゲを無理矢理捕まえ、サイズを弄くり回し、不死性や肉体に異常な迄の進化性を付与したり、目を離すと首をへし折ってくる彫刻(私が作成したので、かなり不恰好だ)、絶対にそれに対する記憶を保持できない『何か』(私も忘れてしまった。丸く無いことは覚えているのだが)。
様々な物を私は数千年……数万年か?もしかしたらそれ以上かもしれない。
しかし、恐らくは6000個程のオブジェクトを作り終えた辺りで私はふと我に返った。
私が作成したものの中には、明らかにこれから生まれる人類に対して危害を加える物もある。
其れ等が後世に残った場合、それこそ財団の様な組織が結成され、私が作り出したオブジェクト達は人々の目から隠されるのでは無いだろうか。
それは本意では無い。私のこの活動は、過去から未来に向けてのSCP財団という一つのコンテンツの布教活動であり、そのコンテンツが多くの人々に知られる事に意義があるのだ。
それに自分が試行錯誤の上に再現した、前世の人々の類い稀なる発想から生み出された傑作達が隠匿されてしまうのは一人のSCP財団ファンとして不甲斐ない。だが、だからといって消すと言うのも論外だ。
詰まるところ、分けて仕舞えば良いのだ。無害な物は、後世の普通の人でも存在を認識できる様に。
そして有害な物達は、それらを扱える様な者達しか入れない様な地に厳重に収容する。
と言う訳で、財団のサイト───異常存在を収容するための施設を作る事にした。
私が拠点としている洞窟から地下へと穴を掘り、其処に大空洞を作り出す。まずこれで数百年を費やした。
其処からオブジェクト毎の部屋を作り、興がのって機動部隊の装備とか、O5評議会の会議スペース(近未来的な設計にしておいた)を作ったりしているうちに数千年が過ぎていた。勿論、それに付随する報告書も部屋毎に置いた。我が壮大なる布教活動にぬかりなし。
私が再現したオブジェクトの中から比較的無害な物を選び出し、世界中にばら撒く旅を開始する。
もうこの頃になると、隕石が落下した事によって地上の覇者は既に恐竜では無くなっていた。だが、そんな事はどうでも良い。私は数千年をかけた旅の末に、SCPオブジェクトを世界中にばら撒きまくる事に成功したのだ。勿論、報告書(石板に私がゴリゴリと彫り記した物)を近くに置いておくことも忘れない。全てに【保全】は付与してあるので、間違いなく後世に残ってくれるだろう。
そして数千年かけて地球を一周した事で、私は元の洞窟に戻ってきていた。
私が出発した時と変わりない、地下数百メートルにまで及ぶ巨大な収容施設。
私は最後の仕上げをする事にした。私が数万年生活してきた工房。其処に一つの文を刻む事にしたのだ。
数多の報告書に、財団の存在を示唆する記述は溢れ返らせている。だから、ダメ押しだ。
私の愛してやまないあの文章を、ここに記そう。そしたら、もう満足だ。己にかけていた【保全】を解き、永遠の眠りにつくとしよう。
さて、書き初めはこうだ。『人類はこれまでにおよそ25万年もの歴史を歩んできた。しかしその歴史のうち特筆すべきは僅かこの4000年に過ぎない────』
◆
神秘の世界に生きる者も、神秘の存在をカケラも知らぬ者も。
財団と聞けば皆心の中に畏敬の念を抱くだろう。
『財団』。世界中の様々な文明が遺した記録などに示唆されている、太古の存在。それらが人間であったのか、それともそれ以外の存在であったのかは定かではないが、どの記述も『無辜なる者を未知から守護する為に尽力した存在』として記述している。
だが、それだけでは世界に広く分布する神話や逸話の類として見られていただろうが、世界中に散らばる『異常存在』が其れがフィクションである事を否定した。
描かれた少女が中で動き回り、コミュニケーションを取る事ができる一枚の紙片。
文字を食べる文字。人の言葉を解し、尊大に振る舞うが無力なブリキの玩具。
世界各地で発見、あるいは古来より神器として継承されてきたそれらは、世界には科学では解き明かされない物があるという共通認識を生んだ。学校の子供達は歴史の授業で原始人などを学ぶ前に、遥か昔に存在していた超太古文明『財団』について学ぶこととなる。
そして、財団というのは世界の裏に住まい、神秘に邁進する魔術師達にとっては畏敬だけでなく畏怖の対象となる名前だった。
地下深くに作られた、巨大な監獄。其処に収監された魔術では理解できず、熟練の魔術師ですら容易に命を落としかねない存在を収容し、その御し方を後世に遺した『財団』とは、一体如何程の規模だったのか。
そして、それらを束ねていたとされる管理者とは一体誰なのか。そして、何故それらは消えたのか。
魔術師達は、今日も財団の痕跡を追い求める。人類を守護したとされるその行為への畏敬と、それを成し得た強大なる勢力への畏怖。そして、それらが忽然と消えた事への好奇心を胸にして─────。
【登場したSCP】
SCP-682 http://scp-jp.wikidot.com/scp-682 執筆者:Dr Gears
SCP-173 http://scp-jp.wikidot.com/scp-173 執筆者:Moto42
SCP-055 http://scp-jp.wikidot.com/scp-055 執筆者:qntm
SCP-085 http://scp-jp.wikidot.com/scp-085 執筆者:FritzWillie
SCP-1370 http://scp-jp.wikidot.com/scp-1370 執筆者:Sorts
SCP-132-JP http://scp-jp.wikidot.com/scp-132-jp 執筆者:locker