SCP財団の報告書的な物を書いてたら英霊になったんだが??? 作:我等の優雅なりし様を見るや?
No.2 閲覧要求セキュリティクリアランス・1
ロマニ・アーキマンは悩んでいた。
現在、カルデアが陥っている状況は最悪と言えるだろう。
レフ・ライノールの裏切りによる管制室の炎上、及び多数の資産の喪失。人員の喪失も悪夢的だ。
一般スタッフだけでは無く、あの時管制室に居たAチームを含む多数マスター達。
ただの医療部門のトップである自分が、カルデアという組織全体のトップに立っていることからも事態の重さは窺えるという物だ。
「『彼』を頼るか……?」
自分に割り当てられた部屋を歩き回り悩んだ末に、彼は一つの結論に辿り着いた。
カルデアの創始者、マリスビリー・アニムスフィアが遺した遺産。
このカルデアの地下奥深くに隠匿された、英霊召喚システムの成果の一つであり、天体科のワイルドカードの一つ。
恐らくこの切り札を切れば、大抵の事は解決するだろうが切った時点での“カルデアという施設ごとの”封印指定は免れなかっただろう。
だが、マリスビリーはどんな窮地でもコレを使う事は無かった。それはその存在への敬意からか、それとも自らの保身の為か。
だが、今重要なのはカルデアにとっての───否、人類種が未曾有の危機に対して切り札を切る時が来たという事だ。
ロマニは自身の壁に備え付けられた、自身の友人にして理解者の工房に直通する固定電話の受話器を取った。
「レオナルドかい?僕達は決定を下す時が来たみたいだ。 最下層に降りて、彼と話そう。マシュと立香ちゃんも呼んでおいてくれ。」
藤丸立香は困惑していた。
自身に降りかかった重すぎる責任にも、たった今自分が直面している事にも。
全てはあの日、献血をした時からだった。マスター適正とかいうのが有るとか言われて、あれよあれよと言う間に南極の国連施設に就職。
そして爆発、レイシフト、グランドオーダー。頭がパンクしそうだった。
「大丈夫ですか?先輩」
何処か上の空だった自分の手を握り、心配そうに此方を覗いてくるこの少女が居なければ、自分はあの炎上する都市で全てを投げ出していただろう。世界がどうとかよく分からないけど、彼女の為になら頑張れるかもしれない。
「大丈夫だよ、マシュ。心配かけてごめんね!」
紫の美しい目を見つめ、なるべく溌剌と見えるように返答する。
すると、空気を切り替える様にロマンがパンパン、と手を鳴らす。
「それじゃあ、今から此処にいる皆んなでちょっとしたお使いに出かけようか」
マシュが首を傾げる。
「ドクター、このカルデアが壊滅的な打撃を受けている状況でそれは優先すべき事なのでしょうか?」
「良い質問だね、マシュ。その質問にはこのダ・ヴィンチちゃんが答えようか!」
耳朶を心地よく揺らすその声の持ち主は、何処か楽しそうに此方を見やる。
彼女……いや、彼?はレオナルド・ダ・ヴィンチ。このカルデアの技術顧問であり、英霊でも有る。
なんでも、芸術を愛するあまり自らの性別すら改変してしまった筋金入りの変態だとか。
「その答えはYESさ、マシュ。と言うかこれをする事が、カルデアが危機的状態にある上での最優先事項と言えるだろう。」
要領を得ない答えにマシュが首を傾げるが、それ以上はダ・ヴィンチちゃんも何も言おうとしない。
ロマニは苦笑いしながら応えた。
「まぁ、『彼』に出会えば自ずと分かるさ。この状況下で『彼』に出会う事の重要性をね。』
◆
「カルデアの地下にこんな施設があっただなんて……!先輩、これは所謂秘密基地という物では無いでしょうか!」
マシュが目を輝かせ、地下へと通じるエレベーターシャフトを見つめる。
ロマニは笑いながら複雑なパスコードをエレベーターのコンソールに打ち込み、重々しい音を立てながら開くエレベーターのドアの中へと私達を促す。
「そりゃあ僕とレオナルド、後は前所長しか知らないからね。このカルデアの中枢に食い込んでいたレフですら此処のことは知らないだろう。」
エレベーターの中は、建設以来誰も乗った事がないのでは無いかと思わせる程に埃まみれだった。
軽く10人は入る事が可能なエレベーターは、軋む様な音を立てながら地下へと私達を運んでいく。
私は我慢出来なくなり、ロマンへと尋ねた。
「ねぇ、ドクター。お使い、って言ってたけど、今から誰かに会いに行くの?」
ロマニは静かに指を立て、自分の口の前に置いた。
「『彼』の名前を呼ぶ事は、魔術の世界では禁忌に等しい。それだけの意味と価値があるからね。
こればっかりは実際に会ってもらうしかない。」
ドスン、と腹の底に響く様な音と共にエレベーターが下降を停止する。
どうやら、その『彼』とやらが居る場所へと着いた様だ。
エレベーターのドアが開き、一本の廊下を天井に備え付けられた弱々しい蛍光灯の光が照らし出す。
その奥には、一枚の厳重に閉ざされたエアロック式の扉。そしてその扉には余りにも見慣れたマークが印字されていた。
「あれって……!」
3本の矢印が中心に集い、それを二つの円が囲い込む。
世界中で用いられている図表であり、高潔の代名詞。歴史に疎い私ですら知っている。
あれは、『財団』のエンブレムだ。
過去に存在していたとされる、超高度的な文明を保持した集団。今の科学では理解できない存在を収容し、後の世に生きる人々から隔離してきた存在であり、人類の守護者。何故そんな物が此処に。
ロマニはゆっくりと歩き出し、その扉の中央に備え付けられた埃を被ったパネルへと指を走らせる。
それと同時に中性的な合成音声が、ロマニへと問いかける。
『黒き月は吼えているか?』
ロマニは一瞬目を瞑り、意志の篭った目で告げた。
「ただ、衰える時にのみ」
ブーンという何かが駆動する音だけがロマニの声に答えた。
何かが扉の向こう側で変形し、動き、何かを整えている。
『認証を確認しました。ようこそ、ロマニ・アーキマン。管理者がお待ちです。』
カチャリ、カチャリ、と一つ一つロックが外され、老人が咳き込むかの様な音と共にそのドアは奥へと開いた。
其処は、厳重に守られていたにしては余りにも簡素な部屋だった。
一脚の椅子と、机。そして机の上に散らばる無数の何かが記された紙。そしてその椅子に『彼』は座っていた。
だが何故だろう。顔が認識できない。
灰色のスーツに身を包み、此方を見つめる[ソレ]の顔は何か黒いモヤを纏っているかの様に認識できなかった。見ようとすれば一瞬で焦点から逃れ、その顔を記憶できない。
ロマニが一歩進み、膝を突く。
「契約に基づき、貴方の御力をお貸し願いたい。人類の守護者、監督者を監督する者。高潔なりし財団の管理者よ。」
何処か、彼が笑ったかの様に見えた。
◆
転生先がFGOの世界だった件について