SCP財団の報告書的な物を書いてたら英霊になったんだが???   作:我等の優雅なりし様を見るや?

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一発ネタのつもりでしたが、予想以上の反響にびっくりしてます。1話以降更新するつもりが無かったのですが、遂にサブタイトルのセキュリティクリアランスが5を超えてしまいました。


No.7 閲覧要求セキュリティクリアランス・6

旗を掲げる聖女を中心に、不可視の波動が放たれる。

それによって空を我が物とし、圧倒的なアドバンテージを誇っていたワイバーンは天空からまるで溺れるかの様に滑落し、

それを見た戦士達は雄叫びと共に突貫する。中にはそれを為した少女の姿をその目に捉え、恐怖を露にしている者も居るがそんな事はどうでも良い。

 

私は目を凝らし、彼女───私の知識が正しければジャンヌ・ダルクが持つ旗のポール部分を注視する。

………凄く既視感がする。というか、私が想起しているものに間違いない。ポールの先端の部分に小さく財団の紋章が刻まれているし、あの形は見間違えようが無い。

 

 

『スクラントン現実錨じゃん、怖』

 

 

普通に不味くないか?私が設計し、私が創り上げたスクラントン現実錨は自慢じゃ無いが、地球上で最も効率的に神秘を駆逐できる装置だ。

あれはその試作機であり、本来ならば地面に突き刺す事で場所に根付いた現実性の歪みを抑える物……という設定の、私が注ぎ込んだ現実改変の力を周囲に反射させ、

その強大な力で無理矢理周囲の異常を現実に即した物へと捻じ曲げる代物であり、サーヴァントである私も普通にあの世、つまりは座へとぶっ飛びかねない。

 

 

だが、よく考えてみればそれはおかしい。

現実の彼女、ジャンヌはルーラーとして召喚されたサーヴァント。あの現実錨が私が作成した本物の『スクラントン現実錨』であれば、その効果を発動させた時点で

ジャンヌは強制退去させられている筈だ。と、なると……

私は目で見るのでは無く、感じる事にした。私が作成したオブジェクトは全て私の現実改変能力によって多かれ少なかれ存在を歪められている。

それはスクラントン現実錨も例外では無く、私が作成したオリジナルならばその気配が感じられる筈だ。

 

 

……やはり、あれはオリジナルでは無い。

私の作品に特有の気配というものが感じられない。だが、誰かが作り出した贋作という訳でもなさそうだ。

私の現実改変能力は、一種の世界の管理権の様な物だ。恐らく私が喰らった龍はかなり自然現象や概念に近い物だったのだろう。

そんな私が総力を結集して作り出した作品を誰かが模せるとは思わない。

ならば、あれは何なのか。私が思い当たる点としては英霊としてのジャンヌ・ダルクが持つ宝具という事だ。

 

 

生前の彼女は何処かで私が回収し損ねたスクラントン現実錨の試作品のオリジナルを手に入れたのだろう。

あれは周囲の現実を『正常な形』へと塗りつぶす機能が備わっている。

英霊というものは概して人類総体からの認識によってその性質が変化するものだ。

恐らく彼女が所持しているのは『神秘を打ち破る』という後世の逸話から再現された『スクラントン現実錨』という宝具。

限りなくオリジナルに近いが、それとは似て非なる物。私が創り上げた作品には及ばぬ不完全な代物だ。

 

 

私は密かに手の中に展開していた炎を握り潰し、安堵する。

もしもあれがオリジナルであれば彼女を『終了』しなければならない所であった。

何であれ、私を害する者は排除する。私はあの日満足して死んだ筈だった。だが、人という物はいざ機会が与えられると

インスピレーションが湧き出してくる物だ。

 

 

さぁ、生前は作れなかった物を創ろう。

報告書の中だけで留められていた『彼等』を現実へと招待してあげよう。

嗚呼、素晴らしきかな。この世界は未だに深い闇と混沌に満ち満ちている。そうだ、私の『財団』をあんな所で止めるべきでは無かったな。もっと、もっとだ。何を作ろう。何処ぞにいる宝石翁でも締め上げて並行世界を作る術を吐かせようか。

死で作られた世界を作ろう。人間と動物の立場が入れ替わった世界を作ろう。

我が脳内に巣食う衝動に終わりは無く、なればこそ輝かしい『財団』の物語に果ては無く。

嗚呼、本当に楽しみじゃあ無いか──────

 

 

「そんな、貴女は───いや、お前は!お前ら逃げろ!魔女が出たぞ!」

 

 

戦場の熱気が冷め、勝利の余韻が消えかけた頃。

砦の中にいた兵士達の恐怖と、一抹の罪悪感が感じられるその声からまるで逃げる様に近づいてくる旗を持ち、先程ワイバーンへと立ち塞がった少女を私は見やり、自分の思考を中断する。

 

 

「あの、先程はありがとうございました!」

 

 

盾を降ろしたマシュが彼女へと近づき、ぺこりと頭を下げる。

だが、彼女は何処か恥ずかしげに首を振った。

 

 

「いいえ、あれは私が聖なる方のお力を借り受けて為したもの。私自身の力ではありません。

それに私は当然の事をしたまでです。それよりも……」

 

 

彼女が私の顔を見つめ、軽く俯き何かを考え込む様な仕草を見せる。

だがそれも束の間の事。直ぐに顔を上げ、此方をその毅然とした目で見つめてきた。

 

 

「既に彼はご存知の様でしたが、今一度。私はルーラー。真名をジャンヌ・ダルクと申します。」

 

 

 

 

 

 

 

現在、カルデアの一行は深い森の中で野営を行なっている。

ジャンヌ・ダルクを名乗る少女は、自らを現在フランスにて魔女として語られているジャンヌとは別の存在であり、この特異点を解決する為に召喚された存在であると語った。

彼女とカルデアは───つまり藤丸立香は協力体制を築き、こうして彼女と共に野営をしているのだ。

簡単な食事を済ませると、立香は直ぐに寝てしまった。やはり気丈に振る舞っているとは言え、ついこの前まで普通の日本の女の子だったのだ。やはりストレスも溜まっていたのだろう。

地面は舗装されているわけもなく、お世辞にも寝るには適しているとは言えない状況であったものの彼女は直ぐに寝てしまった。

 

 

マシュとジャンヌは暫く火を囲み、お互いを励まし合っていた。

完全な召喚ではなく、己に英霊としての役割が果たせるのかと悩むジャンヌと、自らがデミ・サーヴァントでありジャンヌと同じ完全には英霊としての能力を発揮できないマシュ。

彼女達はお互いの胸襟を開き、まるで旧知の中であるかの様に語らっていた。

 

 

「ふぁ、あ……」

「マシュ、貴女も寝たほうが良いのでは無いですか?身体に睡眠の必要が無くても、貴女の心はまだ睡眠を覚えている様です。見張りならば私と『彼』にお任せ下さい。」

 

 

数度の押し問答の末にマシュは身体を彼女のマスターたる少女の側へと横たえる。

彼女にとっても緊張の連続だったのだろう。直ぐにその場は火にくべられた枝が微かに弾ける音と、二人の少女の寝音だけが響く静寂な空間へとなった。

ジャンヌが焚き火を見つめ、取り留めのない思考へとその身を委ねる事数分。彼女の背後で何者かがパキリと枝を踏みしだく音が響いた。

ジャンヌがその旗を掴み、瞬時に後ろへと振り抜かんとするがその人物が自らの知る者であった事に気づき、安堵の溜息を漏らす。

 

 

「貴方でしたか、ルーラー」

『驚かせてしまったかね?申し訳ない。』

 

 

その顔は彼女には窺い知れないが、申し訳なさそうな雰囲気に苦笑する。

そのまま『彼』は彼女の側へと腰を下ろし、炎を見つめ始めた。

暫く、二人の間に静寂が流れる。温かさを感じさせる火の音と、二人分の寝息。暫くしてぽつりとジャンヌが呟いた。

 

 

「貴方は……聖アドミニストレータなのでしょう?」

『そうだ。まさか聖人に列挙されているとは知らなかったがね。』

 

 

彼が余りにも何でも無いことの様に話すので、ジャンヌは軽く吹き出してしまった。

今、自分と共にこの森の中で火を囲んでいるのが、只の村娘だった自分が教会で祈りを捧げていた相手だと思うと、随分と奇妙な感慨に襲われる。

弱者の守護者。神聖にして高潔なりし財団を創りし者。そして、自らが手にする聖遺物へと力を授けてくれている聖人を統括する者。

彼女は肩に立て掛けていた旗の柄をその白く美しい指でなぞり、『管理者』へと話しかける。

 

 

「ルーラー……いえ、聖アドミニストレータとお呼びした方が良いですか?」

『ルーラーで構わない。』

「では、ルーラー。貴方ならば既に分かっているのでしょうが私の持つこの旗は、聖スクラントンの槍を元にしています。

貴方が統括し、率いた多くの聖人達の一人である聖スクラントン。彼は私が超常なる者に打ち負かされそうになるたびに

私に力を与えてくれました。ですが……本当に、私はこの旗を担うに相応しいのでしょうか。聖女と祭り上げられていても、私の手は血で汚れている。

決して、あの日耳にした啓示を受け入れた事を悔いたことは有りません。ですが……」

 

 

『管理者』は静かに手を挙げ、彼女の言葉を遮る。彼はその声質を悟らせない特徴的な声で彼女に語りかけた。

 

 

『スクラントンを知っているのならば、君はクレフを知っているかな?』

「苛烈なりし聖クレフ……の事で合っているでしょうか。」

『……そう、その苛烈なりし聖クレフの事さ。』

 

 

彼は少し身体を震わせながら答える。

遠い過去の事を思い出しているのだろうか。その声は何処か、何かを堪えているかの様にもジャンヌには聞こえた。

 

 

『彼は人に仇を為す、現実を意のままに歪める者達を狩る事が得意だった。

彼は其れらを決して許さず、そう……苛烈に其れらを狩り続けた。』

 

 

悪魔狩りの聖クレフ。彼は著名な聖人であると同時に、武勇を今に伝えられる英雄でもある。

多くの現実をねじ曲げる悪魔を祓い、無辜なる人々を救い続けた。だがその聖人の話を何故したのか。ジャンヌが顔を疑問に染めると、『管理者』は続きを語り始める。

 

 

『では何故、君へと協力するのはクレフでは無く、スクラントンなのか。

それは、君が根本的に守る者だからだ。スクラントンは歪める者達を狩るのでは無く、力無き者達が其れらから身を守る為の物を作り出した。その一つがまさしく君が今持っている物だよ。ジャンヌ・ダルク。君は己の信じるものの為に立ち上がり、そしてその過程で多くを守り続けた。『財団』を率いた者として断言しよう。君はその旗に何も恥じる事はない。

スクラントンも喜んで君に力を貸している事だろう。』

 

 

ジャンヌの眼からぽつり、ぽつりと水滴が零れ落ちる。

彼女は己の進む道に何も恥じる事も無く、後悔も無かった。だが、迷いは常にあった。何故自分なのか。本当に自分で良いのか。

其れらが全て肯定されたのだ。他でもない『財団』の創設者たる聖アドミニストレータに。まるでジャンヌは只の年相応の少女の様に、膝に顔を埋めて涙を溢す。ジャンヌには自分が握り締める旗が、静かに此方を励ましている様な気がした。

 

 




主人公「苛烈なりしクレフwwwうっそだろお前www」



SCP-2935 http://scp-jp.wikidot.com/scp-2935 執筆者:djkaktus
SCP-280-FR http://ja.scp-wiki.net/scp-280-fr 執筆者:Torrential
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