にちかに美琴様だけは絶対に渡さん。   作:バナハロ

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互角の攻防。

 そんなこんなで、休日。テレビを乗せる台を購入するため、外出する日。そんな日でも、青葉のルーティンは乱れない。まぁ、ルーティンというか、隣のお宅のお世話だが。

 どちらかというと毎朝、早朝ランニングしている美琴に合わせるが青葉のルーティンだった。

 その朝食、後自分の部屋の洗濯物などを片付け、ようやくいつもと違う事をする。分かっていることだけど、一応聞いてみた。

 

「みこ……みっちゃん、テレビの大きさと、どの辺に設置する予定か、そして置く場所の範囲とか測りました?」

「え、まだ」

「ですよね。今から決めてもらえれば、測りますよ。メジャー持ってきました」

「青葉、嬉しいけど一言余計だよ?」

「え、そ、そうですか?」

 

 正直、意識的に言っているわけではないのが困ってしまった。

 だからこそ、直した方が良い癖のような気がして聞いてみた。

 

「あの……どういったところが、ですか?」

「別に、直してほしいとかじゃないから」

「え、そ、そうなんですか?」

「うん」

 

 ……じゃあなんで言ったんだよ、と思ったのも束の間、通じていないのを理解したように、少し照れ笑いを浮かべた美琴が微笑みながら言った。

 

「なんて……にちかちゃんと青葉みたいなやり取りをしてみたかったんだけど……難しいね」

「え……あ、そ、そういうことですか⁉︎ 無理ですよ!」

「え、どうして?」

「だ、だってにちかに言うようなこと、みこっ……みっちゃんに言えませんし!」

「言いにくかったら、みこっちゃんとかでも良いよ?」

「いやその方が言いにくいです! ……じゃなくて!」

「じゃあ……なんで逆ににちかちゃんには言えるの?」

「なんでって……付き合いが長いし……なんかこう……本気でリテラシー的な意味合いでやばいこと言わなきゃ縁とか切られそうにないし……」

「じゃあ分かった。私もそういうこと言われなければ、縁切らないから」

「あの……あなたホント何言ってるんですか?」

「一回だけ」

「……」

 

 なんか折れそうにないので、もう言うしかないのかもしれない。当たり前だが、失礼にも限度はあるし「ヤらせろ」だの「ブス」だのは論外。というか、崇拝する女神に「ブス」と言えるわけがない。

 ……そうか。にちかに言っているようなことを言えば良い。その上で、あまり貶してるような内容にならないように改変する。

 そんなわけで、指を差して少しだけ頬が赤くなってしまいながらも言ってみた。

 

「そ、そのおっぱい、本当に85なんですかー? 本当は88くらいあるんじゃないですかー?」

「……」

 

 すると、美琴はむっと少し考えた後、自分の胸を隠し、ドン引きしたような表情を浮かべた後、声を低くして返した。

 

「……最低」

「……けぇへ」

「あれっ? にちかちゃんって、こんな返しして……あ、青葉?」

 

 いしきはとんでいった。

 

 ×××

 

「で、青葉が倒れた、と?」

「うん……」

「まぁ、それならここに置いて行きましょう」

「いやそういうわけにも……」

 

 少し反省した。今更になって、ちょっとアホな事をした自覚はあった。ちょっと冗談が強烈過ぎたのかもしれない。

 

「大丈夫ですよー。こいつバカですし、すぐに目を覚ましますって」

「いやいやいや……そうでも……」

 

 ない、と言おうとした口が止まる。前に半日以上寝ていた事があるので、実際放置しても戻らない可能性はある。だが、その時は自身を触らせることで息を吹き返した。

 つまり、それを言うわけにはいかないのだが、割とマジでにちかは青葉を置いて出掛けたがっている事だろう。

 ……また触らせればいけるかな。でも、にちかの前でそれをやるのは……あ、そうだ。

 

「にちかちゃん」

「なんですか?」

「さっき青葉と話してたんだけど……まずはテレビを置く場所を考えないといけなくて」

「……確かにそれは大事ですね。まぁ、これだけものが少ないと、どこに置いても良い気がしますが」

「う、うーん……とりあえず、テレビの大きさだけでも測っておきたいかな」

「分かりました! 私やりますよ! 高さ、横幅、奥行きで良いですか?」

「あ、うん」

 

 横幅だけのつもりだったとは言えない。より正確に言えば、そもそもそんな細かく想定出来ていなかった。

 だがまぁ、とりあえずやってもらう。その間に、青葉を起こす。大丈夫、青葉の手を取り、身体の一部を触らせるくらい、5秒もかからない。

 そう思って、とりあえずジッとにちかを眺めた。すぐにでも起こせるように、だ。

 しかし、にちかはこちらをじっと眺めていた。

 

「? にちかちゃん?」

「メジャーとかありますか?」

「あ、うん。青葉が持って来てくれた奴なら……はい」

「ありがとうございます」

 

 そうだった。測るためのアイテムを渡さないと、長さなんて測れるわけがない。

 

「あの……美琴さん。何かありました?」

「な、何が?」

「いえ、さっきこっち見てたので、ご用でもあったのかなって」

「ごめんね、にちかちゃんが可愛かったから。耳に髪をかけるのも、綺麗だね」

「ーっ、えへっ、えへへっ……あ、ありがとうございます、美琴さん……! でも、美琴さんの方がとてもお綺麗です!」

「ありがとう」

 

 すごい、褒められて照れ、嬉しさ、そして謙虚さにここまでバランス良くリアクション取ってくれる子、中々いない。可愛い。

 さて、テレビの採寸をにちかが測っている間に、寝ている青葉の手を取った。それを自身に近づけた時だ。

 ……なんか、鼻がむずむずする……。

 

「……へっ、へ……へっくちゅっ!」

「ッ‼︎」

 

 思わずくしゃみをしてしまったと思ったら、口に何か入って変な語尾になる。

 だがそれより気になったのは、青葉が急に身体を起こしてしまったことだ。そして、辺りを見回す。なんだろう、彼に何か刺激を与えた覚えはないのだが。

 

「あれ……みっちゃ……」

 

 自分の方へ顔を向けた直後、ふと顔を赤くする。そこで、美琴はふと気が付いた。さっき口の中に入った異物……もしかして、青葉の指……。

 寝てる男子高校生の指を咥えるなんて、と恥ずかしさが頬を真っ赤に染めた。お陰で弁解が遅くなり、青葉もオーバーヒートした。

 

「……どういうことなの…………」

「あ、青葉⁉︎」

「え、起きたんですか? ……寝てるじゃないですか」

 

 やってしまった……と、美琴はため息を漏らしてしまった。

 

「いや、今一回起きたんだけど……また寝ちゃって」

「もー、美琴さんと出掛ける日に何度も寝るなんて、クソですね」

 

 言わないであげて、私の所為だから、と思っても言えないのが辛い。

 

「もうホントおいて行った方が良いんじゃないですかー? もしかしたら、疲れてるだけかもしれませんし?」

「でも……にちかちゃんだったらどう? 約束してたのに置いたままいなくなられたら困らない?」

「そんなの、こいつの自業自得ですしー」

 

 そう言いつつも、ちらりと倒れている青葉に目を向けるにちか。そして、しばらく黙り込んだまま寝顔を眺めた後、小さくため息をついた。

 

「……はぁ、分かりました。起こしてみましょう」

「ありがとう。起こせるの?」

「寝てる時も、美琴さん関連のニュースには敏感ですから」

 

 そう言うと、にちかは青葉の耳元に口を寄せ、そして囁くように告げた。

 

「……美琴さん、引っ越すって」

「やめて⁉︎」

「おはよう。良い歳して寝坊助」

「……にちか? なんか今、ものっそい衝撃的なニュースを聞いた気が……」

「気の所為だから。それより、早くテレビのサイズ測るの手伝って」

「お、おう? ……あ、みっちゃん。すみません、寝ちゃって……みっちゃん?」

「えっ、み、美琴さんどうしたんですか?」

「……いや、平気……でも10分くらい放っておいて」

 

 高校生二人に心配されてしまった。何故なら、今美琴は真っ赤にした顔を両手で覆って後ろで寝転がっていたから。

 そんな……そんな簡単な衝撃で良かったんだ……と。なんだか起こすために体触らせようとしてた自分が非常に恥ずかしくなった。正直、実際に触られた時より恥ずかしい。こんな大恥をかいたのは久しぶりだ。

 とりあえず、アイドルなりの切り替えという事で、別の事を考えて恥ずかしさを打ち消そうと、頭の中を高速で動かしていると、ふと思ってしまった。

 ……そういえば、気絶した時以上の衝撃を与えたら起きるわけだけど……もしかして、彼にとって自分の引っ越しは指を咥えられる以上の衝撃、という事なのだろうか? 

 

「……あ、むり……」

「「何がですか?」」

「だから放っておいて。お願いだから」

 

 ちょっと……好かれ過ぎていて、逆に恥ずかしい……なんて、久しぶりの情緒に陥ったまま、頭の中で新曲のダンスを復習して塗り替えた。

 

 ×××

 

 さて、採寸と切り替えも終えてマンションを出た。別に高級な家具が欲しかったわけでもないので、近所の家具屋さんへ向かった。

 美琴は変装用のサングラスを装着し、お店に入る。

 

「テレビを置く台……だよね。どんなのが良いかな」

 

 聞かれて、青葉とにちかは顎に手を当てる。せっかく、美琴がアイドルのトレーニング以外に興味を持ったこの機会……ついでだ。他の物も見て回って、視野を広げたい。

 そこまで、二人とも強く思ったのだが、余計な体型分がつくのだ。

 

 ──もう一人いるバカより良い物を探して美琴にアピールしながら! 

 

 と。

 そんなわけで、まずは青葉が美琴に声を掛けた。

 

「そういえば、みっちゃん。布団で寝てると仰っていましたけど、ベッドとかは考えてないんですか?」

「え、どうして?」

「ベッド、良いですよ。寝る所以外に装飾がつきますし、ぬいぐるみとかも飾れるので」

「そうなんだ……青葉はベッドに何か飾ってるの?」

「はい! 俺は……!」

 

 言いかけたところで口が止まった。自分がベッドに飾っているもの……緋田美琴の写真がデカデカと印刷されたクッション枕。まぁ頭を乗せて寝ているわけではないが、ベッドの角に立てるように飾り、朝イチで目を覚ましたらまず目に入るようになっている。

 ……でも、それを本人に言うのはちょっと恥ずかしかった。

 

「……枕を」

「それ布団でも飾れない? ていうか、枕って飾るって言うのかな」

 

 嘘は言わなかった。枕の用途で使ってはいないから。

 その様子を見ながら、にちかはほくそ笑む。ふっ、物を飾りというアプローチは自滅に繋がるんだ、と同じクッションを飾っているにちかは学んだ。先手必勝のつもりだったのだろうが、毒味の役割を果たしてくれてありがとう。

 

「美琴さん、ベッドの利点はものにもよりますけど、ベッドの下に引き出しがつけられるんですよ」

「引き出し? タンスじゃダメなの?」

「ダメって事はないですけど、部屋のスペースが空くじゃないですか。その分、たくさん物を置いたり出来ますよ」

「え、あんまり物置きたいわけでもないし……」

 

 そうだった。そもそも美琴は美琴オタクじゃない。美琴が出てる雑誌、CD、DVD、写真集を買って収納する必要はないし、美琴のライブで購入した限定品を傷つかないよう保存する事もない。

 そんなにちかを見て、絶好のキラーパスが飛んできたようにニヤリとほくそ笑んだ青葉は、今度こそと言うように提案する。

 

「ベッドなら、ベッド脇に電気スタンドとか置けますよ。ホテルみたいな感じで。その上に物を置くのは割と便利で、スマホの充電、電気スタンド、目覚ましとか……あと朝使うもの置いとくだけで、とても便利になりますよ!」

「む……なるほど。スマホを枕元に置けるのは良いかもね」

「はい!」

 

 ようやくまともなプレゼンできた! と、青葉は目を輝かせ、にちかはマズイと爪を噛む。

 少しノッた美琴は、顎に手を当てて朝使うものを考えてみる。

 

「歯ブラシとかあったら便利かも……」

「え、は、歯ブラシですか? 俺、歯磨き粉つける前に歯ブラシ一回流す人なんですけど……みっちゃんは流さないんですか?」

「あ、そっか。じゃあ、化粧ポーチ?」

「いやあの、化粧しないから分からないんですけど、朝イチでするものなんですか? 想像ですが、顔洗ってからーとか……朝飯食ってからってイメージのが強くて……」

「……じゃあ、青葉は何置いてるの?」

「えっ、お、俺はー……寝る前に読んでた漫画とか……」

「そっか……私は漫画とか読まないから、あんまりいらないかな」

「……」

 

 人の生活に合わせた家具をすすめるのって難しいなぁ……と、青葉が押し黙るのを眺めながら、にちかはニヤリとほくそ笑んだ。実用性という攻め口は良かったが、肝心なところが分かっていない。今こそ、さっきの切り口が使えるだろうに。

 

「美琴さん、そういう時は写真を飾ると良いですよ。嫌な事があった時とか、その日の夜に目に入ると元気がもらえますし、逆に朝、辛い日とかもそれを見ると勇気がもらえます!」

 

 自分もつい最近、そういう事があった。……期末試験当日、試験結果配布日、通知表が帰ってくる終業式に、美琴のライブの生写真を見て元気をもらっているという部分は丸々カットして。

 それを聞いて、少しだけピンときていないのか、美琴は顎に手を当てて考え込んだ。

 

「写真……例えば?」

「家族とか、友達とか……ゆ、ユニットメンバーとかです!」

「……」

「っ!」

 

 青葉が「こいつ……!」という顔をするが、もう遅い。ユニットメンバーを押すために間を置いた上に、おそらく青葉の立ち位置で一番、当てはまる友達は真ん中にして印象を薄める作戦に出た。

 止めようにも「ありかも……」と、思ったのか、美琴はスマホの写真を選び始めてしまう。

 

「じゃあ……これ、現像しようかな」

「ど、どれですか!」

「わ、わーわー! みっちゃん、にちかの写真なんてそんな……!」

 

 見せてもらったのは、この前ベランダで撮った青葉とのツーショット写真だった。

 

「なんで青葉なんですかー!」

「こっ、こここ困っちゃうなー……俺なんかの写真でそんな元気もらえるか微妙ですしー」

「何まんざらでもなさそうな顔してんの⁉︎ それが一番、直近の思い出ってだけだから!」

「まぁ、少なくともにちかとの写真より良いと思われてるだけで俺としてはもう弾け散らんばかりの光栄に身を包まれてるよね」

「弾けて包まれんの⁉︎ そ、そもそも美琴さん、なんで青葉なんですか⁉︎」

 

 聞かれて、美琴は顎に手を当てる。

 

「うーん……確かに一番新しい思い出っていうのもあるけど……でも、青葉が一番近い距離で心身共に応援してくれてるから。……だから、青葉との思い出が良いかなって」

 

 にこりと微笑まれ、にちかは固まった。確かに、青葉は物理的にも一番、近くで応援しているし、食事も作っているから援護射撃的な意味合いでの応援も青葉は大きい。

 そんな風に言われては、にちかは何も言えなかった。……まあ、どうせドヤ顔している青葉にはボロクソに言うが……と思って横を見ると、青葉は顔を背けていた。……まるで、赤くなったのを隠すように。

 

「……あんたが照れても全然可愛くないんだけど。いつもみたいに煽ってくれた方がマシ」

「……うるせーよ」

「え、可愛くない? こういうとこ」

「うるさいです!」

「まぁ、でもベッドは今度かな。そんなにお金ないし」 

 

 結局か、と思う余裕もなく、美琴の後に続いて見て回った。

 

 ×××

 

 さて、そうこうしている間に、テレビを置けそうなスタンドを見に来た。元はと言えば、デビ太郎も一緒に飾るための台を見に来たわけだし、せっかくなら良さげなものを選びたい。

 色々並んでいるものを見て、美琴が声を漏らす。

 

「うーん……どうしよっか」

「デビ太郎だけ飾るんですか? それはそれで寂しい気もしますね……」

「え、そう?」

「あ、いえ。私はそう思っただけなので」

 

 思ったより共感してなくてにちかは困ってしまったが、美琴は顎に手を当てたまますぐに呟く。

 

「確かに……青葉のテレビは華やかだもんね……」

「いやいや、あいつはオタク趣味なだけですよー。美琴さんはゲームとか興味ないでしょう?」

「まぁね。……でも、そうだな……じゃあにちかちゃんの写真でも飾ろうかな?」

「えっ⁉︎ な、なんでですか⁉︎」

「せっかくだから」

 

 どんなせっかく⁉︎ と、思う前に……想像してしまった。なんかテレビの前に自分の写真飾られるのは普通に恥ずかしい。

 そんな中、青葉がまた口を挟んだ。

 

「みっちゃんは、DVDとかのデッキは無いんですか?」

「あるけど……どうして?」

「あるなら、テレビの下に置けると便利ですよ。配線をテレビに繋がないと使えませんし」

「あー……なるほどね」

「まぁないと思いますけど、ゲームもやるなら置き場所確保しないといけないから、テレビより広めの台座買った方が良いと思いますし」

「美琴さんがそんなのやるわけないじゃん」

「いや、今後の話。家具はその場の勢いで買うもんじゃないだろ」

「あー……そっか。じゃあ、どうですか?」

「えー、あー……どうだろ」

 

 考えてなかったんだな、とすぐに青葉は察しても口にしない。この人、本当に基本的にはアイドル関係以外に興味ないらしい。

 

「青葉とにちかちゃんはゲームとかするの?」

「まぁ、割と」

「私は青葉に誘われないとしません」

「嘘こけ。コテンパにしてやった日はずっと練習してんだろお前」

「し、してないし!」

「実力の伸びが夏期講習でメキメキアップ並みだよ」

「じゃあ……私もやろうかな」

「いやそんな金掛かるしやめた方が良いですよ。やりたい時はうちに来てくれれば全然、一緒にプレイしますし」

「ほんとに?」

「いやあんた何、さりげなく自分の部屋に美琴さん呼んでんの? そもそもファンとアイドルの関係わかってる?」

「お前が言うな」

 

 なんてまた喧嘩が始まった間に、美琴はどれにするか選び始めた。

 実際……DVDくらいは見られるようになりたい。自分のLIVEディスクが出た時の反省会用に。

 あと……念には念を入れて、デッキもう一つ分入るようにしたい。

 

「……うん。大きさはそんなものかな……」

 

 あとは、デビ太郎を置くのだが……それだけ置いても寂しいと言うし、他に何か置いた方が良いのだろうか? 

 美琴が黒の棚を指差して青葉に声を掛けた。

 

「青葉、これなんてどう?」

「テメェマジ……あ、はい。良いと思います。ただ、黒だとデビ太郎目立たないんじゃないかな、とは思いますけど」

「あー……なるほどね」

「色調で言えば、俺はグレーを選ぶかな……みっちゃん、派手なイメージないので」

「なるほど……」

「はー? あんたセンス足りなくない?」

 

 そこで競うように口を挟んだのはにちかだった。

 

「美琴さんなら、むしろ白でしょ。白って明るい色ではあるけど、美琴さんの部屋は周りも白だから馴染むし。美琴さんの綺麗で真っ白なイメージが超出ると思いますよ!」

 

 最後の部分は美琴に向かって言っていた。それに対し、美琴は笑顔で答える。

 

「ありがとう。そうだな……確かに、白も……」

 

 そう言いかけた直後だった。青葉は、にちかがにやりとほくそ笑んだのを見逃さなかった。

 

「待って!」

「な、なに?」

「みっちゃん、せっかく最初に買ったインテリアが周囲に溶け込むような柄で良いんですか? それに、テレビの近くでカレー食べて飛沫が飛んだら、白だと汚れ目立ちますよ」

「あ、あーそっか。汚れた時とかもあるのか……」

「大丈夫です。美琴さん。家具は古くなるほど、汚れるほど味が出てくるものです」

「あ、そうだね」

「だからってあからさまに汚れやすい色を選ぶ事ないですよ」

「うん、分かった。二人とも落ち着いて」

 

 ちょっと、青葉とにちかが白熱し始めたので落ち着かせた。よくもまぁ二人ともそんなに口が回るものである。まぁ、二人の言う事も別に間違いではないのだろうが。

 でも……こう言ってしまっては申し訳ないが、両方ともピンと来ない。

 

「……うーん……」

 

 考えてみたら、そもそも自分はなんで棚が必要なのかをもう一度思い出した。そうだ、デビ太郎……つまり、思い出を飾る為だ。だから、もし今後その手のグッズが増えた時、今デビ太郎に合うものを買っても、後になって合わないものを飾るだけなのだから、あまり意味はなさそうだ。

 

「二人とも」

「「なんですか⁉︎」」

「もう少し見て回ろう」

「分かりました。少し待っていて下さい。俺が最高の一品を用意してきます」

「は? 10年早いから。それを用意するの私です!」

 

 なんで息合わない方向に息が合うのか。そもそも、思い出を飾るものを買うのに、二人がいないと意味がないだろうに。

 笑顔を浮かべたまま、美琴は二人に自分の考えを言った。

 

「うん。気持ちは嬉しいけど、三人で見て回りたいな」

「なんでですか?」

「これは俺とにちかの、みっちゃんへの愛を競う戦いでもあるんですよ?」

「でも、これから買う棚はみんなで遊んだ思い出をまた並べていきたいなと思っているから、三人で考えて欲しいなって」

「「…………」」

 

 言われて、青葉とにちかはハッとして目を丸め、そして目をお互い別々の方向に逸らして頬を赤らめる。

 

「……まぁ、みっちゃんが言うなら、そうします……」

「足引っ張らないでよ、アホ葉」

「お前が言うな」

「じゃ、行こっか」

 

 キュン死寸前の笑みによって二人を引き連れて、見て回り始めた。

 

 ×××

 

「あ……これ。人をダメにするクッション!」

 

 急にそんな声を上げたのはにちかだった。それにより、美琴と青葉はそっちに顔を向ける。置いてあったのは、大きくて四角いクッション。見るからにもこもこしそうだ。

 が、形状よりその名前が気になった美琴は、キョトンと小首をかしげる。

 

「何それ?」

「腰を下ろすと、人の形にフィットするんですよ。ほら、大きくて形がない形してるから」

「なるほど……でも、なんでダメになるの?」

「気持ち良過ぎて立てないんですよ! これに座ったら」

「そんなに?」

「という売り文句ですから」

 

 意外とクリアな事を言うにちかは「そうだ」と声を漏らした。

 

「気になるなら、座ってみてはいかがですか?」

「え、いいのかな」

「結構、座ってる人いますよ。お試しで」

「流石に枕投げとかしたら怒られますけど」

「俺とにちか、小学生の時にそれやって怒られたしな」

「あーあったあった……って、美琴さんに余計なこと教えなくて良いから!」

「ふふ、二人の小学生時代のビデオとか、見てみたいな」

「「やめて下さい!」」

「て事はあるんだ?」

「「……」」

 

 にちかは「はづきにビデオ見せないよう言っておかなきゃ」と、そして青葉は「家にある思い出ビデオが詰まってる押入れに鍵かけなきゃ」と強く思ったりしている間に、美琴は座ってみることにした。

 

「じゃあ……座ってみようかな」

 

 そう言って、お試しで腰を下ろしてみる美琴。お尻をクッションの上に乗せ、体重を預けるように背中をかけた時だった。

 ふと「あれ、これ良い」と率直に且つ切実に思った美琴の表情を、見逃さなかった。

 そのまま、ホッ……と天井を見上げている。

 

「……ほんとだ。ダメになっちゃいそう……」

「「ンッ……!」」

 

 美琴より先に、高校生二人がダメになっていた。珍しくだらけているのに、やはり何処か気品と持ち前のクールさが漂っている姿を見て、二人とも思わず惚れなおしてしまうレベルだった。

 

「ほんと……何しても美しい……」

「新たな一面を見せてくれるたびに惚れ直させられる……」

 

 本当なら写真も撮りたいくらいなのだが、一応店内のためそうも行かない。

 どっちが切り出す? みたいなやり取りを視線でした後、にちかが「座ったら?」と言ったのを考慮し、青葉が言った。

 

「……あの、みっちゃん……そろそろ」

「もう少しだけ」

「え、いやこれ売り物ですし怒られ……」

「お願い、青葉。……あと、五分だけ」

「……」

 

 残念ながら、もう美琴はダメになってしまっていた。そして、そんな美琴に、まるで娘が甘えるように上目遣いで懇願されてしまえば、当然青葉のハートにもクリティカルヒットするわけで。

 

「し、仕方ないですねー」

「アホかあんたは!」

 

 隣のにちかが青葉の頭を引っ叩いた。

 

「お店で五分もクッションを試してたら迷惑だよ!」

「ちょっとくらい良いじゃないか、お母さん!」

「なんで夫婦みたいな呼ばれ方しないといけないわけ⁉︎ あんたが夫とか絶対に嫌!」

「みっちゃんだってたまにしか来ない所に来てはしゃいでるんだよ!」

「このタイミングでその呼び方、ほんとに娘っぽいからやめて!」

 

 だめだ、この男バカすぎた。もう完全に甘やかす気満々である。

 ……それならば、ここは自分しかいない、とにちかは覚悟を決める。美琴が嫌がるような事はしたくないが、これも美琴のためだ。

 

「はい、青葉。攻守交代。これで美琴さんを動かせたら、美琴さん愛は私の勝ちだから」

「…………は?」

 

 その一言で、魔法が解けた。

 

「待てコラ! それテメェ狡ィぞ!」

「知らないから! 自業自得でしょ⁉︎」

「このっ……!」

「はい、退いて!」

 

 強引ににちかは青葉を退かして、美琴の前に立ち塞がった。

 

「美琴さん! そろそろ……」

「にちかちゃん」

 

 相変わらずサングラスの奥でとろんとした瞳を向けた美琴は、にちかに向けて両手を広げた。

 

「おいで?」

「行きます!」

「お前の方が早ェじゃねェか! ふざけんな⁉︎」

 

 にちかは美琴の足の間に座り、後ろから抱き抱えられた。直後、背中のパイ圧と抱擁により、クッションに直接触れていないのに、美琴以上にとろんとした顔になる。

 

「おっふぅ……」

 

 陥落まで、僅か0.2秒だった。

 ダメだ、このクッションと美琴のコンビは強過ぎる。少なくとも自分とにちかには特攻ダメージが入り、藍染に護廷十三隊くらい歯が立たない……というか、にちかテメェ羨まし過ぎんだろ、と諦めかけていた時だ。

 

『一体いつから、鏡花水月を遣っていないと錯覚していた?』

 

 幻聴が聞こえた気がした。その時には遅かった。美琴の手は、自分にも向けられる。

 

「青葉も、おいで?」

「っ……!」

 

 これ、行くしかないのか? 行っちゃった方が良いのか? この女の花園に! そりゃ羨ましいとは言ったが、こんな所で美琴とほぼゼロ距離で甘えてしまって良いのか? 

 いやいやいや、良いわけがない! そもそも、入ったらまるで百合に挟まる男みたいで一番やっちゃいけない事だ。

 でも……身体が、言うことを聞かない……! と、キュッと目を瞑った時だ。

 

「お客様……店内でそのような事はご遠慮願いますか?」

「「「……」」」

 

 店員さんの無月で、にちかも美琴も無言で立ち上がった。

 

 ×××

 

 さて、改めて棚探しを再開し始める事、10分。美琴は足を止めた。

 

「みっちゃん?」

「どうかしたんですか?」

 

 それに気付いて青葉とにちかが声を掛ける。美琴の視線の先にあるのは、木製の台だった。足は黒い鉄製で二段になっていて、条件はそれなりに満たしているものだが……割と素朴なものだった。

 

「これ……良いかも」

「なるほど……アンティークな感じですか」

「よっしゃ。今度こそ白黒つけたら」

「いや、競争はもういいから」

 

 腕まくりして分離し始める二人を美琴は止める。にちかも青葉も「なんでそれが気に入ったんですか?」と思って視線で聞くと、美琴はその台に手を置いて答えた。

 

「なんていうか……ちょっと木製って良いなって思って……よくよく考えたら、私はこれから思い出になるものをこの台にどんどん並べていくと思うし、デビ太郎に合わせて決めちゃうと結局、後からミスマッチになると思うんだよね。……それなら、あんまり色調とかは気にしないで、これからたくさんの思い出が木になりますように……って意味合いで、木製のものにしたいなって思ったんだ」

「美琴さん……」

「みっちゃん……」

 

 二人揃って、思わず感動したように目を潤ませる。……それと同時に、家具を買うだけでそんな想いを込めてしまうなんて、ちょっとこの人可愛過ぎやしませんか? と、胸の奥をキュンキュンさせる。

 その美琴は、言ってから少し恥ずかしくなったのか、ちょっとだけ赤らめた頬をポリポリと掻いた。

 

「て、わけなんだけど……どうかな?」

「「優勝です」」

「な、なんで泣いてるの……?」

 

 こればっかりは二人とも競い合う事なく親指を立てて涙を流した。

 さて、そうと決まれば購入手続き。その辺は当たり前だが美琴がするので、にちかと青葉は少し離れた場所で待機。

 少し、二人とも感動してしまった。美琴が、まさかあんな風に思ってくれているなんて。

 それに引き換え、自分達はどうだろうか? 互いに負けないように意地を張るばかりで、美琴のことを考えてあげられていなかったのではないだろうか? 

 今日も、馬鹿みたいに競い合いにはなったが、競う前に優先すべき事は美琴である。

 

「……ねぇ、青葉」

「別に、言わなくても分かってるわ」

「……そっか」

「俺の勝ち。なんで負けたか、明日までに考えといてください」

「違う!」

「冗談だよ。……今後は、少しは喧嘩控えねえとな」

「うん。私達がギスって美琴さんがつまらない思いしてたら、意味ないし」

「……ん」

 

 流石、幼馴染。お互いの主張など手早く丸めて、すぐに今後を決めた。まだ夏休みは始まったばかり。もしかしたら、三人で出掛けることもあるかもしれないのだから。

 そんな風に思いながら、店の前で待っている二人が頭の中で握手をした時だ。

 

「お待たせ」

 

 美琴が戻って来た。……大きな段ボールを持って。思わず、青葉は半眼になる。

 

「……手で持って帰るんですか?」

「他にどんな手が……?」

「車で来たわけでもないのになんでそういうことするんですか⁉︎ 郵送とかあったでしょう!」

「大丈夫。そんなに家遠くないし、持てるよ」

 

 この人は本当に……と、少し呆れてしまう。……だが、そこで閃いた。これはチャンスかもしれない。男っぽさをアピールできる。

 

「っ……じ、じゃあ俺が持ちますよ」

「えっ」

「いやいいよ、別に。一人で持てるから」

「しかし、男として女の人に重たいものを持たせるわけにはいきませんから」

「ありがとう。……じゃあ、交代交代で持とうか」

「はい! 先に俺が持ちますよ!」

「ふふ、お願い」

 

 よっしゃ、と青葉は気合を入れる。

 その様子を眺めながら、にちかは不安げに声を掛けた。

 

「あ、青葉……やめといたら?」

「なんでだよ。女の人にこんな重いもの持たせられるか」

「いやでも私達そういうの青葉に期待してないから。お姉ちゃんにも手伝い断られてるじゃん」

「それ中一の時の話だろ? もう3年も経ってんだから大丈夫だって」

 

 そう言いながら、青葉は美琴が一度、地面に置いたダンボールの持ち手に指を絡める。

 

「よし、せーのっ……!」

 

 だが、びくともしない。あれ? と、青葉と美琴は小首をかしげる。

 

「どうしたの?」

「いやちょっと……大丈夫です」

 

 今度は両手の指を絡める。が、やはり持ち上がらない。いや、少し浮いたが、本当に少しなので地面に擦ってしまう。

 

「青葉?」

「いやほんと大丈夫なんでっ……」

 

 それでも、強引に両腕に力を入れ、上半身全体で持ち上げようとした直後だった。

 ゴキッ、と鈍い音がする。青葉の腰から。

 

「「えっ」」

「あっ」

 

 そのまま、青葉はダンボールに手をついたまま動けなくなる。心なしか、プルプルと身体が小刻みに震えていた。

 

「今すごい音したけど……平気?」

「……」

「……青葉?」

「……身体が、起こせない……」

「え、腰?」

「……」

「だから言ったじゃん……」

 

 ため息をついたにちかは、青葉の脇腹に容赦なく指を差し込んだ。

 

「ひゃふっほごっ……⁉︎」

 

 くすぐったさと痛みが同時に襲ってきて青葉は倒れそうになるが、それを美琴が支える。

 

「にちか……テメェ……!」

「自業自得でしょ。言ったじゃん、やめといたらって」

「……はい」

「えっと……どういうこと?」

 

 状況を理解できていない美琴が聞くと、にちかは真顔で答えた。

 

「青葉、運動音痴が過ぎるんです。まぁ、上半身だけでも見れば分かりますけど、ガリガリのヒョロヒョロですよ。昔から運動が苦手な奴で、握力に至っては小3から21キロのまま変化してませんから」

「え……」

 

 軽く引いたような視線が、美琴から向けられ、青葉の胸に突き刺さる。

 

「それでなんで持とうとしたの?」

「……お、男として……」

「たまにこういう見栄っ張りが出ます。アホなので」

「……」

 

 冷ややかな視線が美琴から向けられる。青葉は涙目だった。

 今度は美琴が説教するように青葉に告げる。

 

「……青葉、無理しなくて良いから。人には得手不得手があるんだから、見栄とかで無理するのはやめて。怪我されると困る」

「…………すみません。食事的に困りますもんね……」

「別にそれだけじゃないけど……まぁ良いや」

 

 そう呟いてから、美琴は青葉の腰をさすってあげながらしゃがんで、下から覗き込むように青葉を見た。

 

「立てる? 歩ける?」

「行けます。全然……」

「ほんとに?」

「……うそかも」

「はぁ……もう」

 

 さて、どうするかだが……まぁ、普通にタクシーがベストだろう。そう思って、美琴はスマホを取り出した。

 

「タクシー呼ぶね」

「あ、待ってください、美琴さん」

「ん?」

 

 にちかがそれを止めた。

 

「戒めの意味でも、ここは青葉にとって一番、罰になる形で帰りましょう」

「? 何?」

「テメっ……にちか、何する気だコラ⁉︎」

「耳貸してください」

「うん」

「どんだけ鮮やかなシカトしてんだ!」

 

 こしょこしょ、と美琴の耳元でそれを告げるにちか。嫌な予感がする……と、青葉の頬を冷たい汗が伝った。

 さて、その2分後。にちかがダンボールを持ち……そして、青葉は美琴が持った。お姫様抱っこで。

 

「おろして──────ー!」

「ダメー」

 

 崇拝するアイドルからのお姫様抱っこ、男が女性にお姫様抱っこされることへの客観視、それも真っ昼間からが重なり合い、青葉は羞恥で真っ赤に染まり上がった。

 怪しさがないわけではないが、辱めが9割を占める。

 

「じゃあ、帰りましょうか」

「うん。……にちかちゃん、大丈夫?」

「大丈夫です! ムキムキにちか計画、継続中ですので!」

「ふふ、そっか」

「いっそ殺せえええええええええ‼︎」

 

 一人騒ぐ青葉だが、美琴には効かない。むしろ、笑みを浮かべて、青葉にウインクを至近距離から放った。

 

「青葉」

「な、なんですか……⁉︎」

「騒がない」

「……は、はひっ……」

 

 ダメだった。勝てない。にちかとしても「羨ましい」より「ザマーミロ」が大きく勝っている。

 心臓がバックバクいっている青葉は身動きが取れない。腰の痛みで抵抗さえ出来なかった。

 それを抱えたままの美琴は、歩きながらにちかに声を掛けた。

 

「ちなみに、にちかちゃん。青葉って虚弱体質だったりするの?」

「いえ? 普通ですよ。ただただ運動不足です。泳げませんし、走ったら1分もたたずに息切れしますし、自転車は坂道を上がれません」

「それはー……ちょっと心配になるレベルだね。仮にも若人なのに」

「食事も3食揃ったバランスは摂っていますが、食べる量は少ないですし、太ってないのはその影響だと思います」

「お前何ここぞとばかりに余計な情報ツラツラと詠唱してんだ⁉︎ 覚えとけよホント!」

「青葉、静かに」

「は、はひ……!」

 

 黙らせてから、美琴は少し考え込むように空を見上げる。

 

「うーん……でも、それはそれで心配だなぁ。私とは違う意味で不健康だよね……」

「そうですね」

「うん。早朝にしてるランニング、青葉も一緒に走ろっか?」

「「ええっ⁉︎」」

 

 予想外の展開に、にちかまで声を漏らしてしまった。

 

「普段、私が面倒見てもらっちゃってるからね。私もお返ししてあげないと。……良かったら、にちかちゃんもどう?」

「! い、良いですね!」

「お、俺無理ですよ! そんなの、絶対迷惑かけ……」

「青葉」

 

 反論しかけた青葉を、美琴が黙らせる。そして、再びウィンクをしながら、言い聞かせているみたいなのに優しい声音で諭した。

 

「返事は?」

「……は、はひ…………」

 

 過去一番キツい夏が、始まろうとしていた。

 

 




長くてすみません。やってるうちにネタが浮かぶとついやり過ぎてしまう。次からは一万文字以内には収めたいと思います。
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