にちかに美琴様だけは絶対に渡さん。   作:バナハロ

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潜入ミッションはどれだけ溶け込めるか。

 ある日の平日……今日の美琴は休みで、自主練する為に事務所のレッスン室を借りようとしたのだが「ダメだ、休め!」と怒られたため、仕方なく外を散歩していた。

 しかし、プロデューサーにも困ったものだ。まさか、そんなに自分を休ませたがるとは……いや、休息が大事な事くらいプロとして把握しているけれど、今の自分は青葉に体調と栄養を管理してもらっている。だから、少しくらい無茶したって問題ない。

 ……それに、青葉は最近、帰りがいつもより遅いし、一人で家にいても面白くない……。

 そんなわけで、今日も公園とか土手でレッスンしよう、と思っていた時だった。

 

「一宮、あと何買うの?」

「パクチー」

「えー、アレくさいから苦手なんだけど」

「馬鹿野郎、あれがあるのとないのとでカレーのスパイシーさは大きく変わるんだよ」

「いや、そんな本格さいらないでしょ……」

「カービィで言うなら、ワドルディがいるかいないかの差だよ」

「それはやばいね!」

 

 ……クラスの女子と思われる子と、一緒に街を歩いていた。今の時間は授業中だろうに……と、眉間に皺を寄せる。

 

「にちかも言ってたけど、料理のことなら俺に任せてよ。インドの学校かって勘違いするような香りを漂わせてやるから」

「さんきゅ。楽しみにしてる」

「お前らも作れるようになるんだからな?」

 

 は? と、握り拳を作った。料理ってどういう事だろうか? 制服が似ているところを見ると、おそらく同じ高校のクラスメート。まさか……自分というものがありながら、クラスの女の子と家でお料理教室? 

 

「っ……」

 

 あれ、と自分でも驚いた。なんか……怒るより寂しくなってしまった。そういえば……自分はあの子の学校の姿とか何も知らない。いや……知ろうとしなかった。自分のお世話さえしてくれれば良いと思っていたから。

 でも……それは本当にカップルと言えるのだろうか? 自分は青葉のことが好きだけど……なんだか、何も知らない自分に嫌気がさしてしまう。

 

「……」

 

 というか……もしかしたら、それは青葉も一緒なのかもしれない。美琴の仕事のこととかあまり聞いて来な……いや、食管理の都合上、プロデューサーには色々聞いているだろうし、全然一緒ではない。そこは平気……だと思いたい。

 とりあえず……帰ることにした。何にしても、帰ったら問い詰める。

 

「はぁ……」

 

 ため息を漏らしながら、とりあえず帰宅した。なんか、レッスンする気分ではなくなってしまったから。

 

 ×××

 

「ただいまー」

 

 それから何時間経過しただろうか? いや、実際には一時間半くらいなのだが、美琴には五時間くらいに感じた頃、ようやくそんな声が耳に届いた。

 ぴくっと耳が反応し、自動でツカツカと玄関まで出迎えに行った。

 

「……おかえり」

「ごめんね、遅くなって。今から晩御飯……」

「食べてきたんでしょ」

「え?」

「良いもん、別に」

 

 そう言いながら、美琴は青葉の腕を引く。そして、強引に部屋の中に連れ込むと、そのままソファーの前に移動。そして、無理矢理座らせて膝の上に頭を置いて寝転がった。

 

「私もう食べたから。青葉と一緒に食べれないなら意味ないし」

「え、普通に会話始める?」

「頭」

「え? あ、よしよし……」

 

 頭を撫でてもらいながらそう言ってやる。実際、食べちゃったし、もうクラスの子と食べるような話を聞いてしまったので、今から自分のためだけにご飯を作ってもらうのは嫌だ。青葉の手料理を食べるなら、やはり一緒が良い。

 

「……あの、ていうか何も食べてないんだけど……」

「いや、いいからそういうの」

「いやそういうのって……お腹空いたから何か作らせて……」

「じゃあ、土手沿いで一緒にいた子と何してたの」

「土手沿い?」

 

 惚けているつもりだろうか? ちょっとイラッとした。これが、浮気をした男の反応というやつだろうか? 確かに、殺傷事件になるのも頷ける。

 

「ふーん……惚けるんだ」

「いや土手なんて俺行って……あ、いや通りはしたけどさ」

「……」

 

 全然、惚けていなかった。苛立ちで、頭の中だけとは言え早とちりでイラッとしたことに、またイラッとして……それが、少し八つ当たり気味に芽生えてきて。

 

「え、なんで知ってんの?」

「……見てたから」

「もしかして、浮気してるとか思ってる?」

「……」

 

 バレた。どうせ問い詰めるつもりだったし、別に良いが。

 

「違うの?」

「違うよ! 俺がみっちゃん以外の人に鼻の下を伸ばすとでも⁉︎」

「でも、はづきさんにはデレデレしてるよね?」

「はっちゃんは良いの! 大人の女性で幼馴染だから!」

「は? 良くないけど」

「……うん、良くないね」

「何今の」

「何でもないです……」

 

 こいつ舐めてる? と青筋を額に浮かべている間に、すぐに続きを話した。

 

「でもあれはほんとただのクラスメートだから!」

「でも、カレーがどうこう話してたよね」

「あれはうちのクラスの出し物だから! 文化祭の!」

「へ?」

「へ? じゃなくて! 文化祭だってば。うちの店、超本格ジャパニーズカレー店やるの」

「……」

 

 なんだろうそのカレー屋、と気になったが……それよりも、今聞きなれない単語があった。

 

「文化祭って何?」

「嘘でしょ?」

「え……ごめん?」

 

 しかし、ピンと来ない。

 

「高校の時なかった? 学校によっちゃ中学でもあると思うんだけど……」

「覚えてな……あ、いやあった……かも?」

「マジかよ……」

 

 あまり学校の行事なんて覚えていないのだ。どうでも良かったから。青春は全てアイドル活動に捧げてきたから。

 

「学内でやるお祭りだよ。各クラス、各部活、各委員会で出し物出して、お祭りすんの」

「へー。……あ、それでカレーの話してたの?」

「そういうこと」

「……」

 

 全然、浮気じゃなかった。なんだか疑ってしまって申し訳ない……と、沸々と罪悪感が芽生えてしまう。文化祭の存在を知らなかったとは言え、自分は青葉を信用していなかったことになるから。

 そんな自分の心の中を見透かしたように青葉は小さくため息をついた。

 

「はぁ……そっか。俺って、みっちゃんにとっては浮気してもおかしくない人なんだ……」

「あ……いや、違……」

「まぁ良いけどね……所詮、男子高校生と大人の恋愛ですしー」

「お、大人とか子供は関係ないから……そんなしょんぼりしないで」

 

 どうしよう、落ち込ませてしまった。というか、自分も少し考えが足りなかったのかもしれない。クラスメートと二人で出かける機会くらい、普通の高校生ならいくらでもあるのだろう。

 とにかく、謝らないと……と、なんとか言葉を探していると、膝枕のまま頭を撫でてくれている青葉は、美琴の鼻を摘んだ。

 

「ふがっ」

「なんて……嘘だよ。気にしてない」

「え?」

「ちょっとだけショックだったけど……でも、みっちゃんの職場と違って、こっちは異性が多くいるからね。分からなくはないよ。不安になるのも」

「……」

 

 やはり、優しい。いや、甘いと言うべきか? ……でも、それが青葉の良いとこなのかもしれない。

 本当に申し訳なくて、少し肩を落としてしまっている反面……ちょっとむすっとしてしまった。

 

「……てことは、今私を揶揄ってたの?」

「え、あ……は、はい?」

「そっか。じゃあお仕置き」

「えっ、お、俺がお仕置きされるの……?」

「年上に意地悪したから」

 

 そんなわけで、撫でてもらいながら青葉の首の後ろに両手を回し、ぐいっと自分の顔の前まで抱き寄せ……そして、キスをした。目を開けたままなので、青葉が顔を真っ赤にしているのがよく分かる。

 ぷはっ、と離してあげながら、青葉の両頬に両手を当てた。

 

「ふふ、人を辱めた人には、辱めた罰だね」

「ちょっ、もう……ほんと、あまえんぼの癖に……」

「そもそも不安にさせたのは青葉だし」

「ていうか、逆にあの時間に何してたの。土手で」

「え?」

「今日休みだよね? ……まさか、自主レッスンとか言わないよね?」

「……」

 

 ピタリと自分を撫でていた手が完全に静止する。

 あ、やばい流れ……と、美琴が冷や汗を流す番だった。そういうとこ厳しいのだ。この子は。

 

「……ふーん、なるほど。そういう感じね、みっちゃんは」

「え、いや、あの……」

「それで人の文化祭の現場を見て浮気と思っちゃうんだ」

「……」

 

 ……大ピンチである。まさかの逆転。なんとか誤魔化さないと、と考え込む。

 

「……あ、いや……えと、違くて……」

「そういえばカップ麺食べたんだよね?」

「え? あ……う、うん」

「じゃあ、今日の晩御飯は俺の分だけだし、自分の部屋で食べるよ」

「あ……待っ」

「香りをいつもの三倍くらい濃くしたカレーにしよっと」

「っ……そ、そんな……!」

 

 そんなの……後でお腹が空くに決まっている。食べたと言ってもたかだかカップ麺。お腹いっぱいになる量ではないのだ。

 

「じゃあ、またね。みっちゃん」

「あ、ちょっと……」

 

 立ち上がって帰ろうとしてしまう。まずい、そんなまさか料理上手特有の嫌がらせをされてしまうことになるとは。

 

「ま、待って。謝るから、私にも一口……!」

「何が悪いか分かってる?」

「……隠れてレッスンしようとしたこと……」

「無理しちゃダメ。休む日は休む。俺も休む必要がある時に休まないで腱鞘炎になったりしてるから。わかった?」

「……はーい」

 

 まるで、母親とわんぱく坊主のような絵面だった。16歳と24歳が。

 さて、その日の夜は二人でカレーを食べることになった。

 

 ×××

 

 それから数日間の間、青葉は放課後にはクラスメート達にカレー作りを教えていたりしている。

 あまり予算がないので、本当ならレシピだけ……と言いたい所なのに、最初に作ったカレーが好評だったからだろう。女子力を求める女子生徒達はわざわざ自腹でその日の練習用のカレーの材料を買ってまで教えを請いてきた。

 まぁそこまでされたら致し方ないので、青葉も教えてあげたりしていた……それは、美琴にも理解してもらっている。

 

「ごめんね、みっちゃん。今日も遅くなって」

「平気」

「すぐご飯の支度するから。何食べたい?」

 

 帰って来て、ご飯の準備……と、青葉は動き始める。その青葉を眺めながら、美琴はジトっと半眼になる。

 

「? な、何……?」

「青葉、ちょっと……」

「え……やだ。俺、浮気なんてしてないよ?」

「違くて。来て」

「あ、頭? 分かった」

「うん、撫でても良いから来て」

 

 撫でても良いからって……と、少し呆れる。撫でて欲しいと思っているのはそっちだろうに。まぁ良いけど。

 そのまま美琴の前まで行くと、何を思ったのか美琴は自分の前でしゃがんだ。

 

「はい、良い子良い子」

「んっ……」

 

 相変わらず撫でられるだけで気持ち良さそうな顔する人だな……と、思っている時だった。美琴は青葉のワイシャツを掴み、ズボンの中から引っ張り出し、お腹を露出させた。

 

「っ、き、キャアアアア!」

「それ女の子の反応」

「な、何いきなり⁉︎」

「柔らかくない? お腹」

 

 ペタペタと触ってくる。人差し指でぷにぷにと突っついたり、親指と摘んできたり。お願いだから恥ずかしい気持ちをわかっていただきたい。

 

「や、あの……」

「もしかして……太った?」

「え?」

 

 恥ずかしさが一気に飛んだ。ビシッ、と全身が硬直し、頭の中が真っ白くなる。

 

「ふ、太ってません!」

「なんで敬語なの」

「や、痩せてる!」

「でも、お腹柔らかいよ?」

「い、いやそれは……」

「ちょっとごめんね」

「え……」

 

 お腹に触れていた両手を腰に回してきて、ぐいっと持ち上げられてしまった。抱っこである。

 男子高校生が抱っこされる……という絵面を思い出し、再度羞恥心が込み上げてきた。

 

「ち、ちょっと! 降ろして!」

「うん、重い」

「おごっ……!」

「なんでこんなに太ったの?」

「げふっ……!」

 

 また羞恥心をショックが塗り替えた。ハートに亀裂が入り、手に何か持っていたら、ゴトッと落としていたかもしれないくらいの衝撃だった。

 いや……まぁ、考えてみたら全然当たり前の話なのかもしれない。お昼と夕食の間にカレーを作る時間があった。

 いや、自分の分は作っていないのだが、指導する側の味見役として結構食べてた。

 その上、育ち盛りの美琴の分のご飯も……。

 

「……」

「心当たりあるんじゃん」

「……はい……」

 

 痩せないと……でも、ただでさえ早朝ランニングに付き合っているのに、これ以上の運動はちょっとしんどい……。

 

「ダイエットね」

「嫌だ!」

「ダメ」

「いーやーだー!」

「もう……ワガママ」

 

 運動は嫌だ。やはり基本的には苦手なのだ。体育の成績だけは毎回2だから。

 

「間食やめれば?」

「え、いやそれは仮にも料理を教える側の人間として出来ない。ちゃんと味見して評価を下さないと。最近は男子も来るし」

「じゃあ夜も走る?」

「やだ!」

 

 絶対に嫌だ。走ると疲れるし、大変だから。

 

「……青葉。でもそのままだと太ったままだよ?」

「学祭終われば元に戻るから!」

「食欲は元に戻らないかもよ?」

「えっ……」

 

 それはつまり……学祭が終わった後も食べすぎるかもしれない、と言うことだろうか? 

 ……あり得る。料理の練習にかこつけて、間食をもっさもっさと貪る。

 

「……うう〜」

「それとも青葉は、私と走りに行くのが嫌?」

「……」

 

 その言い方はずるい。断れなくなる。美琴とは例え火の中水の中あの子のスカートの中、どこにいったって楽しいものだ。

 

「……わ、分かったよ」

「うん。決まりね。今から」

「今⁉︎」

「とりあえず、外出るのは大変だと思うから、足を持ってあげるから腹筋」

「え……そ、それはちょっと」

「大丈夫、50回で良いから」

「そんなに⁉︎」

「少ないから。ほら早く」

 

 そのまま強引に連行され、床に押し倒される。襲われる、なんて思ったのも束の間、すぐに膝を曲げられて揃えられ、ホールドされた。

 

「はい、腹筋」

「え……あの、勘弁して欲しいんだけど……」

「1」

「や、あの……」

「1」

「や、1じゃなくて」

「次の1までにやらやかったら、60回に増やすから」

「わ、分かりました!」

 

 そんなわけで、上半身を持ち上げる。大丈夫、10回くらいならいけるはず……そう心に言い聞かせて、上体起こしを始めた。

 

「そういえば、青葉」

「1……2、え、何?」

「文化祭、私も行って良い?」

「や、良いけど……3っ、でも、彼女って……バレたら、4……やばいからっ……!」

「え、なんで?」

「腹筋させてお願いだから!」

 

 もう限界が近づいてきた。下している時よりお腹痛い。て言うか、運動中に会話すると余計に疲れるだろうに……この人、自分でそれをさせておいて何故、その辺を察してくれないのか。

 

「……5っ……ろ、6……」

「え、もう限界?」

「い、いや……あと、4回はいきたい……」

「いやあと44回は行って欲しいんだけど」

「……ぐふっ」

 

 心が折れた。無理。あと約10倍は無理。

 

「や、やめようやっぱり……」

「はい、7?」

「お願い……せめて、休憩……」

「7〜?」

「わ、分かった……今日は寝る時膝枕+ナデナデ追加してあげるから……」

「6?」

「何で減るの!」

 

 この体育会系みたいな煽りと筋トレ、なかなかキツい。自分と同い年の運動部はみんなこれを乗り越えているのだろうか? もはや尊敬の念すら起こる。

 

「……もう、仕方ないなぁ」

 

 そう呟いた美琴は自分の両足の裏に両手を伸ばし……そして、胸を足にむぎゅっと押し付けた。

 直後、目が覚醒した。柔らかいこの感触……柔らかい脂肪の奥に備えられた硬い大胸筋が二段構えで襲い掛かるハーモニーに、下半身の一部が覚醒した。

 

「み、みみみみっちゃん⁉︎ 何して……」

「男の子っておっぱい好きだって聞いたから」

「子供の知識で大人のやる気スイッチを押すな! あ、いやそれより離れて……!」

「やだ。終わらせないと離れない」

 

 憎たらしいほど可愛い。

 でも、まずい。下半身のそれは、仰向けだとかなり目立つ。もし……それに美琴が興味を持ってしまったら……。

 

『青葉、なんかテントみたいになってるよ? (ツンツン)』

 

 24歳の無知シチュが完成する! 興奮するけど許されない! 

 そう判断した青葉は、フルスロットルした。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎‼︎」

「おお、すっごい」

 

 終わらせた。

 一気に後になってズキっとお腹に痛みが響く。メチャクチャにお腹に効いた。これ明日筋肉痛確定……だが、守った。自分の憧れの人に、自分の汚いものを見せると言うクソみたいなシチュエーションを。

 

「お、思った以上の効き目だね……」

「ぜぇ、ひぃっ、ふぅ……」

「でも、おっぱいくっついただけで加速出来るって事は、普通でも出来るよね」

「えっ」

「明日からはちゃんとやること。このえっち」

「……」

 

 これだから体育会系は……と、思わず頭の中で悪態をついた。

 

 ×××

 

 さて、夕食の時間。二人で四川風麻婆豆腐を食べていると、改めて美琴は聞いた。

 

「で、文化祭だけど、行っても良い?」

「ああ、うん。良いけど、一緒に回らないよ」

「……なんで?」

「えっ、いや大騒ぎじゃ済まないから」

 

 アイドルが高校生と付き合っている……なんてことが公になれば、大衆に焼き殺される。美琴が。

 

「大丈夫じゃない?」

「その楽観的な感性は一周回って羨ましくもあるけど、絶対に無理。アイドルでなくても、未成年と付き合ってるってことで犯罪だから。その上、ほぼ同棲みたいになってんだし」

「ええ〜……」

「罰受けるのみっちゃんだよ。万が一、書類送検で済んでもアイドルは確実に終わりだし、そしたらみんなを歌と踊りで魅了することも出来なくなるよ」

「……むー」

 

 言うと、納得していなくとも従うように唇を尖らせる。

 

「……じゃあ、付き合ってるってバレなきゃ良いんだよね?」

 

 全然、従う気もなかった。

 

「無理でしょ! 俺は例えどんな格好しててもみっちゃんだと見抜くから!」「他の人ならそうとも限らないんじゃない?」

「いや……変装するにしても、みっちゃんはカッコ良くて綺麗で可愛いパーフェクト人類なんだから、どんな格好でもバレるって!」

「ワイルドなら?」

「は?」

 

 それは想像したことなかったが……でもそんな服あるのだろうか? 

 しかし、なんかやたらと自信ありげな顔で自分を見ているが……。

 

「青葉のお姉ちゃんの服、借りられる?」

「……え?」

 

 なんか言い出した。

 

 ×××

 

 さて、食事を終えてから青葉の部屋に入った。

 確かに青葉の姉は今でこそ落ち着いた服を着ているが、少し前までは中々、活発そうと言う意味で露出度の高い服を着ていたものだ。

 ……ただ、それを美琴が着るとなると……。

 

「どう?」

 

 今、着ている美琴の服は、青い縦縞のブラウスに黒のジーンズ。胸元にサングラスを掛けている……のだが、エッチだ。どエッチだ。あまりにも。

 

「好き。そんな姿は他の男に見せられない」

「え〜……」

「写真だけ撮らせて」

「あ、うん。どうぞ」

 

 写真を撮ってから別の服を選んだ。

 続いての服は、ダボダボのトレーナーと黒いスラックス。大きく露出度が高いわけでもないが、問題は下半身。ピッタリタイプのスラックスなだけあって、下半身の完璧なお尻と引き締まった足が完璧に見えてしまう。

 

「ダメダメ! そんなカッコ良いみっちゃん見せられない! でも写真撮らせて」

「うん」

 

 そんなわけで、また写真を撮って別の服に着替える。

 次は、ジーンズ生地の短パンに長い黒のソックス、上半身はグレーの迷彩柄のTシャツで、ブカブカのパーカーを肩まで羽織らず袖だけ通して着こなすラッパーっぽいスタイル。

 絶対ダメ。短パンと靴下の間に挟まれたムチムチ太ももがちんちん爆裂波。

 

「ダメだよ! 太もも出すとこを男どもに見られるたびに目潰しして回らなきゃいけないじゃん!」

「……何なら良いのそれ?」

「うっ……」

 

 いや、それを言われると申し訳ないのだが……でも、どれもダメだ。むしろ美琴だと思われない為には、それなりにオシャレを嗜む人が選ぶようなものではなく、ちょっとダサいくらいのもの……いや、そんな姿を他人に見させるのはアイドル的にダメだろう。

 つまり……やはりこれしかない。

 

「やっぱり来ちゃダメ痛たたたた!」

「ひーどーいーぞー」

「仕方ないでしょー!」

「……あ」

「え?」

 

 何か思いついたらしいが……何故か嫌な予感してしまった。人間というのは不思議なもので、良い予感は当たらないのに嫌な予感は確実に当たるものなのだ。本当クソである。

 

「青葉ってお姉さんと同じ高校?」

「え? うん」

「じゃあお姉さんの制服貸して」

「……は?」

 

 なんかすごいこと言い出した。

 

 

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