にちかに美琴様だけは絶対に渡さん。   作:バナハロ

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ポジティブさと頭の悪さは紙一重。

 せめてクリーニング出させてからにしてください、とお願いした青葉だが、結果的に許可を出していることに少し後悔していた。何故なら、クリーニングから制服が返ってきたからだ。

 

「……」

 

 やはり、これを美琴に着せるのは犯罪臭がする気がする。今からでもやめてもらおうか? 

 ……いや、絶対に無理。そんなこと言ったら拗ねられて小突かれて責められて学祭当日に何をされるかわかったものではない。

 諦めて持って帰ることにした。さて……これ、どうしようか。やはり、青葉としては着てほしい。死ぬほど学生服の美琴は見てみたい。

 でも、やっぱりちょっと迷いがある。なんか、こう……自分から持ちかけた話でもなければ思いついたわけでもないのに、何故か罪悪感がある。

 

「……はぁ、ほんとずるい人だなぁ……」

 

 なんで、自分がここまで人を騙しているような罪悪感に咎められなければならないのか。絶対おかしいと思う。

 ため息をつきながら家に到着したので、とりあえず部屋にぶら下げておいた。さて……今日はどうしようか。美琴は夕方まで戻ってこないし、今日は割と暇だ。

 とりあえず、小腹が空いたし軽く飯でも作ることにした。

 

 ×××

 

 夜になり、美琴が帰って来て食事を終えた。

 

「じゃあ、俺そろそろ寝るね!」

「学生服は持って帰って来た?」

「……」

 

 誤魔化せなかった。この人は一体どこに記憶容量を使っているのか。

 

「あるんだ。じゃあ着たい」

「一応聞きますけど……本気で着て来るつもりですか?」

「うん」

「……学生の学祭に?」

「うん」

「その学校の制服着て?」

「うん」

 

 ……ダメだ。意志が固い。いや、むしろ硬い。カッチン鋼だほとんど。だが……バレた時が取り返しがつかない。てかバレる。こっちは毎日にちかと喧嘩していて、そのくせ成績トップクラスなだけあって教員の間では有名だというのに、その近くに美琴なんていう超絶美少女がいたら、それはもう目立つだろう。

 

「明日、事務所に着て行ってみようかな……」

「やめて下さい!」

 

 どんだけ気に入っているのか。この人の感性絶対おかしい。いや、まぁ似合うとは青葉も思うのですが。

 ……そうだ。それならば、一度着てみて恥ずかしさを自覚すれば良いのかもしれない。

 

「……あの、せめて一回着てみたら? ここで」

「え、ここ?」

「や、サイズが本当に合うかわからないじゃん?」

「まぁ良いけど……」

 

 言われるがまま、美琴は着替え始める。ロングスカートを脱ぎ始めたので、慌てて止めた。

 

「ちょーっ! な、何してんの⁉︎ まだ俺いるし!」

「一緒にお風呂入った仲だし、良いでしょ?」

「よ、良くないから! せめて着替えを持って来てからにしてよ!」

 

 この人の羞恥心はどうなっているのか……いや、元々無い可能性もある。だってアホだし。いや、でも頭を撫でていた時とか最初は照れていたから、

 

「仕方ない……」

「仕方ないのはそっちだから!」

 

 渋々、美琴は別室で着替えに行った。どこまで不本意なのか。……いや、まぁ確かに一緒にお風呂まで入ってるのに照れるポイントではないのかもしれないが……。

 

「はぁ……」

 

 まぁ、でも外で……それこそ、うちの高校の学祭とかに学生服で出掛けるとかよりは全然マシだろう。ここなら少なくとも誰にも見られないし、問題ない。

 ……本当に問題ないだろうか? いやだって、逆に言えば誰もいない二人きりの部屋で、成人アイドルにコスプレさせているわけであって……。

 

「……うん、もう帰ろう」

 

 なんか今日はダメだ。そして明日になったら制服を没収して埋めよう。

 なんて作戦を立てている時だった。

 

「青葉ー」

「っ、は、はい?」

 

 もう着替え終わったの? と、顔を向けると、思わず目を見開いてしまった。学生服姿の美琴……クリーム色のベストと、長袖のブラウスに、制服のスカート……にちかと同じ制服を着ているはずなのに、にちかとは比較にならないくらいエロい。

 なんだこれ、と冷や汗を流す。にちかでは膨らんでいない部分が激しく主張されているだけでなく、むちむちの太ももがスカートの下から出ている。

 

「〜っ……!」

 

 スタイル抜群の成人女性が制服を着るとこうなるのか……と、目を背けてしまう。布面積は多いのにエロいのおかしい。

 そんなこっちの気も知らず、美琴はいつものニコニコした表情のまま聴いて来た。

 

「どう?」

 

 どうもこうもない。エロい。

 

「エロい」

 

 言っちゃった。口にお札貼りたい。すると、美琴は少しほんのりと頬を赤らめ、一瞬だけ目を丸くした後、すぐに笑みを浮かべてクスッと微笑んだ。

 

「……えっち」

「ごふっ……!」

 

 血を泣きそうになった。なんだろう、その経験豊富そうな女性の顔とセリフ……! ホント、顔が良い人ってずるい……! 

 なんか癪に思えてしまった青葉は、小さく奥歯をかみながら呟いてしまった。

 

「そっちだって処女の癖に……」

「……じゃあいる? 処女」

「な、何言ってんの急に⁉︎」

「いつ欲しい?」

「し、知らない!」

 

 この人は本当に……いや、まぁ今のは自分発信だし仕方ない。とにかく、話題を逸らしてしまおう。

 

「に、似合ってはいるけど、やっぱりコスプレ感があるかなーって……そのまま出掛けるのはやめた方が良いんじゃない?」

「似合ってる?」

「え? うん、まぁ……」

「じゃあ、これで出掛けようよ」

「ねぇ、会話して」

「良いじゃん。双子コーデ」

「いや年齢差的にはギリギリ姉弟なんじゃ……」

「双子」

「あっはい」

 

 顔は似ても似つかないわけだが……まぁ、美琴は言い出したら聞かないし仕方ない。

 いや、でも出掛けるのは嫌だ。

 

「でも、出掛けるのはやっぱさ……」

「お散歩行こうよ。今から」

「聞いてよ」

 

 なんでこの人こんなに推してくるのか。もしかして、羞恥心を感じる心が無いのか? 

 

「いや、勘弁して欲しいんですけど……」

「ほら、行こう」

「いやほんと聞……」

 

 ぐいっと腕を絡まれ、引っ張られた。

 ほぼ強制的に部屋から出され、本当にそのまま二人で散歩に行くことになってしまう。

 

「あの……散歩ってどこまで行くの?」

「うーん……そういえば、レッスン用の下着がダメになってきちゃったから、また新しく買わないと」

「なんでそれなんだよ⁉︎ よりにもよって!」

「いや、そこそこ大きいと揺れて困るから。まぁ大きい方が男の人は好きみたいだから仕方ないと思うんだけど」

「必要な理由じゃなくて、なんで俺と一緒の時かって聞いてんの!」

 

 スポブラとは言え、下着である。というか、自分は今まで彼女がいたことなんてないので、スポブラなら平気とか、そう言う概念もよく分からない。自分なら運動用のパンツを履いていても可能な限り見られたくない。

 

「青葉は嫌? 好きな子の下着を一緒に選べるわけだけど……」

「〜〜〜っ、い、嫌では……ない、けど……」

 

 ていうかご褒美だが……でもやはり憧れの人にはその辺、神秘的な物で隠して欲しかったと思わないでもなくて。

 

「私はいいよ。青葉になら何を見られても」

 

 好きな人の前だとここまでオープンになるんか、と少し困ってしまうまであった。

 まぁ、何にしてもこの良い年して他の人の顔色を窺えない珍しい大人子供は止められない。大人しく付き従うことにした。

 さて、本当にマンションから出てしまった。確かに学生服姿の美琴は似合っているが……こうして背景込みで見ると、やはり少し浮いている。コスプレしている人が街をそのまま歩いているわけだから、その手のイベント中とは訳が違う。

 その美琴は、大人びた顔なのに無邪気に見える笑みで微笑みかけて来た。

 

「どう? 若く見える?」

 

 ダメだ、こんなアホなことしているし聞かれているのに可愛くて仕方ない。なんだこの成人女性。

 

「可愛い……」

 

 思わず口に漏れてしまった。全然聞かれたことと別のことを言ってしまったことに後から気付き、慌てて弁解しようとしたのだが……。

 

「っ〜〜〜! っ……そ、そう……アリガト……」

 

 なんで普通に褒めただけの時が一番、照れているのか。この人の感性は絶対におかしい。なんならこっちにまで照れが移ってくる。

 

「い、いえ……」

「……」

「……」

 

 困った。今更になって初々しい空気が流れるとか、よくわからないことになってきた。

 というか、今になって思うのは、本当にこんな綺麗な人なのに、今まで恋人とかいなかったんだろうなぁ……なんていう感慨深さ。それを自分が崩してしまったような罪悪感もあるけど、もう気にしないようにしている。

 とりあえず……20代の女性に学生服を着させている時点で、どう考えてもこの初々しさはおかしいので空気を変えることにした。

 

「そ、そうだ。みっちゃんは、俺がもしにちかと浮気とかしたらどうする?」

「青葉を殺して私も死ぬし、なんなら今から殺しそう」

「……ごめんなさい」

 

 振る話題を間違えた。わずか数秒で初々しさから殺伐とした空気に変わってしまう。

 

「え、何。浮気するつもりなの?」

「いやまさか……」

「したら本当に許さないよ。悪いけど。初めて好きになった男の子にそんな裏切られ方したら、正気でいられる気しないから。で、どうなの? 正直に白状するなら今のうちだよ?」

「いや本当にないから! ごめん、俺が悪かったから勘弁して! 怖い怖い怖い!」

 

 目が秒で虚になってしまって、それはまた謝り倒した。なんか、色んな方面に情緒が激しく揺れ動くので、結構神経使わされる。可愛いけど。

 ……なんて思っていると、隣からむぎゅっと腕を組まれた。

 

「っ、え……?」

「……君は、私のだからね。フラフラしないように捕まえておかないと……」

「……あー……ダメだー、可愛いが過ぎるー……」

「怒ってるんだけど」

 

 それがまた可愛すぎて、もう目を閉じて堪能するしかなかった。

 

「今の、録音したい……」

「分かった。おちょくってるんだ。歳下なのに生意気」

「いだだだだ! 腕折れる、腕折れるって!」

「潰したほうが、手綱は握りやすいかな」

「何怖いこと言ってんの⁉︎」

 

 この人、もしかして少し病んでいるのだろうか? と思わないでもないが……とりあえず勘弁してもらう事にした。

 

 ×××

 

 さて、そのままさらに人が多いところまで来てしまった。それに伴い、周囲の人は美琴のことをチラ見するようになる。やはり浮いていた。25歳の学生服は。

 だが、本人は一切気にしていない。一応、伊達メガネで変装はしているものの、それを無にする素敵な笑みで声をかけてきていた。

 

「ふふ、青葉。なんだかドキドキしてきたよ。母校でもない高校の制服で外出なんて……」

「俺もだよ……ドキドキと言うか、ドギマギというか……」

 

 というか、ファンなら遠目から一発で美琴と分かりそうな物だが……大丈夫だろうか? 少なくともバレたら自分は消されるだろう。

 ミッション・インポッシブル。絶対にしくじってはならないミッションだ。

 

「なんだか、学生の頃を今から体験してるみたいだな。あの頃に後悔とかないけど……もう少し周りに目を向けて、友達とか作ってたら今、もう少し青葉に迷惑かけなかったのかな……って思わないでもないかな」

「……」

 

 ……まぁ、確かに常識があまりにもない。炊事洗濯家事全般出来ないし、掃除も出来ると言っても、指導してようやくゴミ捨てや掃除機を覚えただけ。窓拭きとかそう言うのはやらない。

 でも……今、それを聞いてちょっと拗ねたくなった。

 

「……でも、みっちゃんが最初から家事出来たら、俺も世話焼く必要なくて仲良くとかならなかったと思うよ」

「……そっか。そうかもね」

 

 残念ながら、自分の取り柄はそれだけだと理解しているので、正直このダメさ加減に救われているとこはあるかもしれない。

 

「……ありがと、みっちゃん。もう一生、そのままダメでいてね」

「ふふ、生意気が過ぎると腹立つだけだよ?」

「痛だだだだ! 腕折れる、腕折れるってだから!」

 

 またギリギリと締め上げられている間に、スポーツ用品のお店に到着した。

 正直、青葉はあまりここが好きではない。スポーツが好きじゃないからだ。特にダンベルとかプロテインとか見るとちょっとだけ嫌気がさす。

 とはいえ、まぁ今日は自分の買い物ではないため、普通に付き添うが。

 

「じゃあみっちゃん、俺他のところ見てるから、終わったら呼んで」

「ダメ」

「なんで……」

「一緒に買い物来てるから」

「女性用の下着買いにきたのに……?」

「一緒に選んで」

 

 ……まぁ、もう仕方ない。なんか有無を言わさない感じだし。それに……まぁ、レースだのなんだのついているものよりマシだろう。

 

「はいはい……」

「カッコ良いのと可愛いの、どれが好み?」

「あんまえっちじゃないの」

「下着だよ?」

「……」

 

 ダメだ、どんなに考えても美琴の下着って時点でえっちだ。これをすけべと言わずして何がすけべなのか。

 もうこうなったら……目を閉ざして行動するしかない。

 

「お、あった。どんなのが良いかな?」

「何も見えない……」

「え? ……なんで目閉じてるの」

「見てはいけない……」

「……」

「いだだだ! 力技やめて!」

 

 瞼を人差し指と親指を当てて強引に開かせにきていた。もう失明させられてもおかしくない気がして、観念して目を開いた。

 

「わ、分かったから待ってって……」

 

 とりあえず、この人を満足させないといけない。その場所の下着を見ると……なんか、思ったより見られた。どれもスポーツウェアみたいなデザインと生地で、変に意識することはない。

 

「なるほど……」

 

 ……なんか、ちょっと納得。これは恥ずかしくないのかもしれない。

 

「どれが良いと思う?」

「うーん……まずは性能で選んだら? これだけ種類あるんだし、何かあるでしょ」

「あー、うん。じゃあ……」

 

 と、見て回る。普通に運動も出来ない青葉に女性物の下着のことなどなおさらわかるわけがないので、とりあえず待機することにした。

 しばらく待っていると、すぐに美琴が指を差して言った。

 

「あれだ。いつも買ってるシリーズ。あのアイコンならなんでも良いよ」

「分かった」

 

 分かりやすく左胸の下のあたりに小さなマークが入っている物を見る。どんな色が良いだろうか? 

 スポブラ……あまり見られても恥ずかしくないタイプのアスリート向け下着、と言うことだろう。あまり派手な色はダメだ。外にランニングとかする時、白いシャツを着ることもあるだろうが、透けてしまうから。

 派手、と言うか黒とか赤とか、そう言うのがダメ。ブラ透けが大好きな自分としては、それを他人に見られると思うだけで腹が立つ。

 

「……」

 

 つまり、薄い青とか黄色とかそう言うの……それならば、あまり目立たないし、なんなら似合うだろう。……いや、黄色は似合わない。イメージ違う。

 そんなわけで、水色を手に取ってみた。

 

「これとか……?」

「……なんか大人しい色じゃない?」

「嫌なの?」

「嫌じゃないけど……まぁ、青葉が選んでくれた奴だから大丈夫か」

 

 そう言われると少し胸に刺さる。適当に選んだ、と言うわけではないが、自分基準で選んでいたから。美琴が選んで欲しいのは、似合うか否かだろうに。

 

「試着してみるね」

「え、試着するの?」

「? 下着買うんだよ? するでしょ」

「俺はしないけど……」

「……あ、そっか。男の子だもんね」

「なんだと思ってたの?」

 

 そんな話をしながら、とりあえず試着室に向かった。

 

「じゃあ、つけてみるから待ってて」

「え、ま、待つの?」

「うん?」

 

 なんで待つ必要が……せっかくなら、何か健康増進調理器具があるかも、と思ったので店内を見てみたかったとこあるのだが、まぁそう言うなら仕方ない。

 美琴の後に続いて、試着室の前で待った。美琴は中に入り、着替えを始める。

 しかし……試着室、ということはこの薄い布一枚の向こうで、上半身裸になっていると言うことだろう。

 なんか、人類ってすごいな、と思わないでもない。自分なら恥ずかしくて絶対に無理だから。

 

「……」

 

 というか、これ試着室に盗撮カメラとか置かれていたら、危ないのではないだろうか? 

 特に、ここはランジェリーショップなどではなく、スポーツ用品のお店。男性客もこの試着室を使うわけで。

 

「みっちゃん待った!」

「え?」

 

 シャッとカーテンを開けると、もう上は裸になっていた。下着はつけているから、それは外でも普通にアウトである。

 

「もう……青葉。まだ私着替えてないよ。えっちだな」

「っ……ご、ごめっ……!」

「ほら、早く閉めて」

 

 そう言いながら、美琴は青葉の手を引いて中に入れながら、カーテンを閉めた。

 危なかった。他の人に見られたくないばかりに、自分で他の人に見せびらかしてしまうところだった。

 とりあえず、カーテンが閉ざされたことにホッとし……。

 

「ってなんで俺まで中に入れるの⁉︎」

「チャンスかと思って」

「何の⁉︎」

「今、出たらまた私の裸他の人に見られちゃうかもよ」

「このっ……バカの癖に小賢しい真似を……!」

「この口?」

「ふぉへんふぁふぁい!」

 

 頬を抓られつつも、だ。ちょっとピンチだ。何せ、下半身は学生服、上半身は下着姿だ。それは、まるでアホな学園系ラブコメでよく起こるラッキースケベのワンシーンのようで。

 

「っ、お、俺向こう見てるから!」

「どうぞー」

 

 との事で、着替えが終わるまで待つことにした。……狭くてちょいちょい体と体がぶつかる。と言うか、異様に柔らかいところが当たっている気がするのだが……わざとじゃないだろうな? なんて思いつつも、とりあえず周囲を見回す。

 とりあえず、監視カメラ的なものはなさそうだ。

 

「はい、終わった」

「あ……ど、どうも」

「どう?」

 

 振り向くとそこにいたのは、下着姿の美琴。すぐに後悔した。スポーツ用ブラとはいえ、試着するのは美琴なのだ。どんな物であってもエロくならない理由がない。

 

「ーっ……!」

「似合う?」

「っ、お、俺出るから着替えてて!」

 

 限界だったので、逃げることにした。

 試着室から出て、煩悩を振り払うためにお試し用器具の元に向かった。ダンベルがあったので、それを持ってフライパンを振う真似をしながら頭を冷やす。

 やはり、下着を買うとか自分が参加して良い物ではない。破壊力が宇宙中の気を集めた元気玉レベルだ。

 こんなの、もう死んじゃう。

 

「……」

 

 ……。

 …………。

 …………。

 

「……大きかったな、かなり……」

 

 いくら一度はお風呂に入った仲とはいえ、やはり思い出すとこの煩悩は抑えられない。

 まぁ、正直青でも十分だったが……なんか、イメージ的に守りのイメージが強くて攻めの似合う色ではない。ガノタで言うところの「好きなMSはザク」と牽制する奴みたいな。

 もっと、安定を崩して似合う色はない物だろうか? 

 そう思いながら、気が付けばさっきの下着コーナーに戻っていた。

 

「……」

 

 料理でも、たまに大事になるのがバランスの良い味ではなく尖った味。一つの料理でも、口に入れる度に若干、味が変わったりするのが相手を飽きさせない料理を作ることにも繋がる。

 エロくて、尚且つカッコ良さ……その二つを求める色はなんだろうか? そう思って見ていると……目に入ったのは、美琴が選んでいたロゴのコーナーの一つ隣。同じロゴではあるが、カラーリングが違う。これはもうほとんどオシャレな大胸筋矯正サポーターだ。

 その中でも目を引いたのは、黒と紫のスポブラ……いや、サポーター? 中取って、おっぱいサポーターを選んだ。

 黒基調で紫も含まれているもの。二色というオシャレさ、10割カッコ良い黒と3割カッコ良く7割エロい紫……そして、10割エロい美琴の胸が複合されれば、それはもう無敵だ。

 それを手に取って、試着室に向かってみる。ふと、試着室から出てきた美琴が、また学生服姿で出てきた。不意打ちKOされそうになったのをガッツで堪える。

 

「あれ、青葉?」

「あっ……や、えと……」

 

 今思った。これなんて言って渡せば良いのだろうか? 「改めて似合うと思った下着持ってきました!」って変態臭しかしない。

 どうしよう、と悩んでいると、美琴は何もかも見透かしたようにクスッと笑みを浮かべると、青葉が持ってきた下着を受け取った。

 

「ありがと。えっち」

「……うるさい」

 

 今更だけど、周りから見たらどう見えているのだろうか? 学生服を着た成人女性に下着を選ぶ同じ学校の制服を着た男子高校生……店内の客が少ないのが幸いだった。

 結局、美琴は二着とも買ってた。

 

 ×××

 

 帰り道。色々とその後もカフェとかに寄ってから帰宅。美琴は気にしていない様子だったけど、青葉は全力で気になって仕方なかった。

 やはり、この格好で学園祭は危険だ。なんとかして誤魔化さなければならない。

 

「あー、楽しかったね。青葉」

「そ、そうね……」

 

 頭の悪さもここまで来ると長所だなぁ、と思わないでもない。

 

「どうだった? 制服デート」

「た、楽しかったけど……心臓がもたないどころじゃないから……」

「ふふ、スリル満点。この様子だと、学祭はもっと楽しそう」

 

 仕方ない、と小さくため息をつく。結果でこの人の親ではないが、甘やかしてきた結果だ。

 

「……ね、みっちゃん」

「何?」

「やっぱり、学生服で学祭はやめておこうよ」

「……どうして?」

 

 落ち着いて言葉を選んだ方が良い。一番の理由は最初に言わないと伝わらない。結論から述べるのと同じだ。

 

「もしバレた時、みっちゃんが職質されるようなことになって欲しくないから」

「え……し、職質?」

「普通の一般客が来るとはいえ、普通は私服で来るし、うちの高校となんの関係もない人が制服で着たら、怒られるじゃ済まないと思う。アイドルがそれはまずくない? 歌やダンスで魅了なんて、一生出来なくなっちゃうよ」

「……」

 

 効いている。まずは脅し。心苦しいけど、事実を言えば信じる。その上で、次に畳み掛けるはメリットだ。

 

「その代わりに、学祭以外なら制服デートで済むと思う。例えば……遊園地とか、水族館とか、そう言うの。行こうよ。制服で」

「……良いの?」

「もちろん、変装はしてね」

「分かった。じゃあ当日はやめる」

 

 よし、なんとかなった。ほっと胸を撫で下ろしつつも、我慢してもらうばかりでは申し訳ない。

 

「ありがと、みっちゃん」

 

 そう言いながら、頭を小さく撫でた。その直後、美琴の目が見開く。それと同時に、魔が良いのか悪いのか、マンションに到着してしまった。

 

「青葉」

「え、なに?」

「今日は制服のまま二人でいよう」

「え……」

 

 この後、死ぬほど甘えられた。

 

 

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